リレー小説2
<Rel2.京都焼き討ち3>

 

合体したヒバゴンズ…『ヒバゴンジャー』は 
流石に巨体なだけあって歩幅も広く、 
あっと言う間に敷往路家前迄来てしまった。
「あ゛ー。麿が命ずる。 
 怨霊共よォォ、出でよ!出でよォォ!!」 
バケモノの叫びと共に、敷往路家中の怨霊が実体化してゆく。 
「ままままま街に火を放てェ… 
 皆殺しに…あわびゅ!?
異形が其の後を言う事は出来なかった。 
口に剣の様な形をしたエーテルの塊が突き刺さったからだ。 
のた打ち回るヒバゴンジャーの足元には、紺色の長髪をしたローブの男が立っていた。 
「…いい加減にしろ化け物が……」
「○△※×!!」 
ヒバゴンジャーが口から剣を抜きながら意味不明な事を口走る。 
「ま、麿の口になんてことをするんぢゃあああ!!」 
異形は男に向かって霧を放つ。すぐに男が霧の中に隠れる。 
「グギュギュ・・・・愚がな・・・死゛ぬがいい・・」 
が、次の瞬間男が剣を振って霧を吹き飛ばした。 
「にゃにい!?」 
男は異形の胴に向かって剣で斬り付けた。が、剣は鈍い音をたて弾かれる。 
「無駄ぢゃああああ!グギュギュ・・・・」 
男は剣を拾い少し眉をしかめる。 
(こいつは少し厄介かもしれんな・・・・)

 

エース達が駆け付けたのは、そんな時であった。 
ゼェゼェと息を吐きながら走って来、ローブの男の存在に気付く。 
「な…なんだアンタ?」 
「この異形を屠ろうとする者だ。 
 だが、1人では少し厄介だ。協力してくれるか?」 
ローブの男は落ち着いた様子でエース達に話し掛けた。 
「勿論だ!アンタ、名は?」
「・・・・『デルキュリオス』。デルキュノと世の中では名のってるがな・・・・」 
「そうか。・・・よし!行くぞ!デルキュノ!」 
「・・・ああ。こちらもよろしく頼む。」 
三人は異形に向かって走っていく。
ところが、走っている途中『青』がバランスを崩した! 
胸を押さえ、転倒しかける『青』。 
「だ、大丈夫か!?『青』さん!?」 
「いや、心配はいらない・・・アイタッ・・・。」 
エースが見守る中、ヒボタニウムの杖を支えにして立ち上がる『青』。 
そして何事もなかったかのように、ヒバゴンジャーに立ち向かう。
だが、エースは気になっていた。彼の上半身から漏れている赤い光を・・・。
その頃デルキュノは慣れた剣さばきで、ヒバゴンジャーと対決していた。 
すでにヒバゴンジャーは、腕は1本もげている。
執筆者…is-lies、鋭殻様、A夫様
「ぐっぴぴぶっ、がぼっ、ぐぴぐぷぷぷ・・・!!」 
腕を切られたにもかかわらず、ヒバゴンジャーは全く怯んでいない。 
むしろ、怒りで容赦がなくなっているようだ・・・ 
巨体を生かした怒涛の攻めに、さすがのデルキュノも少し疲れている。 
そんな矢先、『青』が爆薬をヒバゴンジャーのみぞおちに撃ちこんだ。
「お!こりゃいいじゃないか・・・。」 
その後も『青』が前面で、ヒバゴンジャーに直接攻撃を加えていく。 
事態は次第に、五分五分のようになっていくのである。 
そして・・・
「俊隼連撃!!」 
エースの得意技の1つ、俊隼連撃。それがヒバゴンジャーに炸裂しようとしていた。 
しかし、ヒバゴンジャーはとてつもなく下品な方法で反撃してきたのだ!
なんと口から(以下自粛)を吐き出したのである・・・。 
その下品さに、エースも思わず攻撃の手をゆるめてしまった。
「ヂネエエェェェェェエエエ!!!」 
其の隙を狙ったモンスターが鉄拳を繰り出そうと… 
「おい」 
其の声に驚愕し、視線を聞こえて来た頭上に向ける異形。 
何時の間にかデルキュノはヒバゴンジャーの頭の上に乗っていた。 
振り落とそうとする暇も与えず、デルキュノの剣が、UMAの額に突き刺さった。 
「アギャアアアアァァァァァアアアア!!?」
痛みの余り、口から火を吐きながらのた打ち回る異形の巨体。 
「もがくだけ無駄だ・・・・・せめて安らかに眠れ。」 
デルキュノがトドメを刺そうとした、と、その時! 
「ガアアアア!」 
突然怨霊が現れデルキュノに向かって火球を発射した。 
「クッ!」 
デルキュノは火球を受け、少しよろめく。
執筆者…A夫様、is-lies、鋭殻様

「しっかしやばいもんだなー。」 
『青』達が戦ってる中、少し遠くで見物している2人組みがいる。 
1人は長身で、背中に三日月形の何かを背負っている。右腕にアームガード、重戦士の類であろう。 
もう1人は長身で痩せ気味。忍者のようにも見える。 
三日月形の荷物を背負っている方が喋る。 
「あんなのでA+か?ちょっとヒヨッコじゃないのか?」
忍者風の男が言い返す。 
「だろうな。名古屋での働きが認められて昇格したようなものだ」
「ガハハハハハ。って事はもし俺たちがこいつ倒せばA+に上がれるか?」
「だと良いけどな。念のため加勢するか?」
「俺は別に構わないぜ。『空竜(くうりゅう)さんはどうだ?」 
忍者の男・・・空竜が答える。 
「加勢しよう。あんたも最近動いてないだろう?」
「ガハハハハハ。やっぱあんたには一本取られるぜ。
 よし、『ゼイノ・カズミヤ』の名を広めるチャンスだ。ついでに運動不足解消と行くか!」
「ふん、やはりあんたはサムライの息子だな。充分名前は広がってるはずだ。」
「上の奴らにも知らしめるんだよ!行くぜ!」
2人は『青』達とヒバゴンジャーが戦っているところへ向かっていった。
執筆者…塩味枝豆様

空竜とゼイノがヒバゴンジャーに飛びかかる。その時・・・
凄く重たい打撃音があたりに響く。それと同時にヒバゴンジャーの腕がもう1本 
肩から綺麗に切り落とされていた・・・いや、断ち切られていたのだ。 
激痛に口から嘔吐物を撒き散らし、もだえるヒバゴンジャー。
「ンム!?今のは誰の仕業だ!?」 
「ゼイノよ、あいつだ。ほら、あの赤い服の・・・。」 
「見たところ基礎体力も腕力も悪くなさそうだが、どうもハンデを背負っているようだな。」 
プロの空竜とゼイノは、『青』の不調を見抜いていたようだ。 
まぁ、周囲で戦っているデルキュノとエースの様子も見ればわかるかもしれないが。
さて、当の『青』本人はエースとデルキュノと共に戦いつつ、体の不調に耐えていた。 
・・・周期的にくる頭痛と、体の焼けるような痛みに。
「くっ・・・そろそろカタつけてやる。」
空竜はクナイを無数に投げ、 
ゼイノは背負っていた三日月型の剣を振るった。 
この2人は本気を出していない。既に敵が相当弱っていたからだ。 
『青』は右腕をマシンガンにし、エースは槍技で異形に応え、 
デルキュノの剣はモンスターに休む暇無く襲い掛かる。 
凄まじい攻撃であった。 
A+級並の能力を持った者達による集中攻撃。 
其れに対してヒバゴンジャーは余りにも無力である。 
脚は千切れ、腕は吹き飛び、眼を潰され、体中に風穴を空けられた。 
「アヂャパハアアァァアア!!」 
そして……遂にトドメの一撃が下された。
俊隼連撃ーっ!!
エースの攻撃を受けたヒバゴンジャーの体はバラバラになり、すさまじい勢いで燃焼していく。 
そして大気中へ、塵となって消えていった・・・。
「・・・空竜さん、全然出番なかった気が。」 
「おいおいゼイノよ、そういうのは無いだろ・・・まぁ、俺から見れば雑魚だったと思うがな。」
その場にいる全員は、勝利を確信していた。いや・・・一人を除いて。 
「・・・まだ、お、大物がいそうな・・・予感が・・・。」 
『青』は確信した。まだバックに何かがいることを。 
その何かとは・・・そう、藤原公である。
執筆者…A夫様、is-lies
「おのれ・・・折角の計画が!」 
(マズイ、アゼラル様・・・申し訳ありませんでした・・・。)
藤原・ストグラ共にそうとう悔しい様子を見せていた。
・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ。
そんな藤原に『青』が遅い足取りで接近する。 
「ほう、あなたは・・・何者だ?」 
「本名は言えねぇな。俺は・・・『青』と名乗らせ、うっ!」 
藤原に近づいた『青』は、今までより強い頭痛に襲われた。 
(な、なんだってんだよ!この感覚は!ううっ!!)
頭痛のひどさに頭を抱える。そして彼の視界に藤原から立ちのぼる 
赤い翼を模したオーラが目に入った。
「・・・む?どうしたのかね?」 
のた打ち回って頭痛と上半身の痛みに苦しむ『青』を尻目に、冷たく一言を言い放つプロノズム。
「作戦は失敗です・・・・一度体勢を立て直す事にします・・・よろしいですね?」 
「構わないが・・・・・・ストグラよ。
 この作戦、まだ完全に失敗したという訳では無いと思うのだが?」 
ストグラはその言葉にハッとする。 
「!!・・・確かに・・・・・藤原殿、貴方方は退避してください。後は私が。」 
それを聞き、藤原は走り去っていった。 
「クッ・・・・ま、待て・・・」 
『青』達は追いかけようとする。が、 
「ガアアアア!!」 
怨霊達が現れ、道を塞ぐ。 
「な、なんだぁ!?」 
ストグラは怨霊が集まったのを見て、叫んだ。 
「怨霊達よ!街に火を放て!」 
その言葉を聞き、怨霊達は火球を放ち始める。
「し、しまった!このままでは!」
突然の事態にあせるデルキュノ。そしてエースは、『青』のもとへ大急ぎで駆けつけていた。彼の容態は急変している。 
激しい頭痛。激しい上半身の痛み。そしてプロノズムを見たときの妙な感覚。 
・・・これらの謎は、後の方で明かされるだろう。
「うぐぐぐ・・・!!」 
「『青』さん、しっかり!!ヤバイ、高熱だ!」
そうこうしている間に、どんどん京都は焼かれていく。 
そして無秩序化した都市に、怪物が外からどんどん侵入していく。 
エースたちはまさに絶体絶命の状況に立たされていた・・・!
執筆者…A夫様、鋭殻様

 


アゼラルのアジト
「おお!!」
「すげえ・・・・」 
二柱の前支配者は映像に見入っていた。
「ストグラ、良くやりました!フフフフ・・・フハハハ!
 さあ!これからが宴の始まりです!魂を食らう宴のね!
 参加できないのが残念です!フハハハ!それにしても愉快だ!」 
・・・・もはやイッちゃった声で笑うアゼラル。
(コイツ、やっぱイカれてるよ!ヤバイよ!)
モイシスも笑ってはいたが内心、アゼラルのヤバさに引いていた。
「・・・別に、いいのではないか?もっとも俺は魂から生きものが死ぬことに、何も感じぬがな。」 
モイシスの後ろから力強いが暗い声がする。その声の主は前支配者アウェルヌス
「フハハハ!!フーッハッハッハッ!!アウェルヌスよ、どうだ? 
 私と一緒に宴を見て楽しまないか?フハハハハ!!」 
完全にいっちゃってるアゼラル。もっとも、普段からこんな調子だとは考えにくいのだが。 
しかしアウェルヌスはそんなことに興味は無いようで、反応はなかった。 
・・・いや、表面上だけだが。内心では愉快に感じていた。 
流石にアゼラルの濃さに圧倒されているようである。
そして、もう一つ映像が写った。それに写っていたのは藤原とプロノズム。 
「む?何かと思ったらプロノズムじゃねえか・・・そいつ誰だ?」 
真っ先に反応するモイシス。 
「うむ、私はいかにもプロノズムだ。そしてこの者は・・・」 
「私はこの度、プロノズム様の『直属』となった藤原と申します。」 
藤原の口から、ちょっと意外な発言が飛び出した。 
「なんと、人間の身で直属とはな・・・別に構わないぞ。」 
わりと熱血だったり冷静だったりするタイプのアウェルヌスも、 
このことにはほんの少し驚いているようだ。
「フハハハ、これはまた愉快だ!今から映像保存して後でも楽しもうか・・・!」 
・・・全然気が付いてない奴一名(?)。
「さて、本格的に京都も崩壊しかかっている。だが身の危険を感じたので帰還することにした。 
 とりあえず、直属の藤原を残すことになるがな・・・。」 
その後、映像は消滅した。
執筆者…鋭殻様、A夫様

一方その頃エースたちは、必死になって活路を開こうとしている。 
併し圧倒的な怨霊達の炎に段々と体力を削られていく。
もう何十体も倒したであろうエースも肩で息を始める。
其れを見計らって集中砲火を始める怨霊達。
「っ!?」 
死ぬ…そう彼が思った瞬間、怨霊達の炎は一斉に霧散した。
「な…何…だ……?」
「やれやれ…編成が甘いな……」 
焔の壁の向こう側に揺らめく影… 
老人の声であった。
「アンタは…!」
炎を割って目前に現われた老人を、信じられない様な眼で見詰めるエース。
「…雑魚は任せろ」 
大名古屋国大戦の勇者…日本一の極悪魔術師
『イルヴ・ロッド・ヴェインスニーク』が不敵な笑みを漏らす。 
隻腕の後姿が、歴戦の勇者を彷彿とさせ、妙に頼もしく見えた。
「間に合いましたね」 
長峰達を率いて駆け付けるテロ司令。 
倒れた『青』に医療班を割いてから、事の次第を告げる。 
「住民退避は完了です。 
 後、イルヴさんも呼ばせて頂きました」
「ふぅ…助かった」
「気を抜くな。大物が近くに隠れているぞ」 
其の言葉を受け、空竜達が直ぐ、周囲に視線を巡らせた。 
すると、何かが飛んでいる音がしてきた。
「・・・・・・・・・!あっちの方向か!」 
皆はその方向を向く。 
音は大きくなり、焔の壁の中からそれは近づいてくる。 
そして、それは姿を現した。 
「これは・・・・・!」 
その姿は昆虫を彷彿とさせるものだった。 
ハエのような羽、蜘蛛のような足。そして蟻地獄のような角。 
それは他の怨霊達とは明らかに違っていた。 
その異形の影から、ストグラが現れる。 
「フ・・・・・・・・・・貴様等、あの異形達を相手によく此処まで生き残れたな・・・
 ・・・だがコイツと私には勝てぬまい。我々の怒りを買った事、後悔させてやろう!行くぞ!」 
ストグラは叫ぶと、異形と共に黒刀を持ち飛びかかってきた。 
「仕方ない・・・おい!誰か『青』を医者の所へ!」 
長峰が戦闘に入る前に、部下に指令を行う。 
この状況はさすがにまずいと判断したようだ・・・。
そして、『青』は京都郊外の医者の元へと運ばれていった。
一方、エース達は異形との激しい削りあいを展開する。 
相手の素早さに翻弄されつつ。
執筆者…is-lies、鋭殻様、A夫様

敷往路家の屋根に立つ3つの影。 
1人は肩に使い魔の小さな竜を乗せ、結集した戦士達を楽しそうに眺め、 
残る2人は冷静に事の次第を見守っている。 
彼等、傍観者に共通するもの…其れは 
いずれも、人の領域を超えた争いの渦中に身を置いているというのに 
まるで平然と構えている…という事だ。 
「ほお…これはこれは…… 
 今回は見に来た甲斐があったというものですね。 
 これ程、実力者達の戦いを見れるのですから」 
「………『直属』……」 
笑みを浮かべるゼロを無視し、少年がポツリと呟く。 
「ん…何か御存知の様ですね?」 
「…『ヴァンフレム』に報告した方が良い…」 
又もやシカトされるゼロさん。だが本人は気にして居ない様だ。 
其の内、辺りを漂う異形達が、この3人を発見し 
炎や体当たりで攻撃を仕掛けるものの、其の攻撃は全て虚空に消える。
執筆者…is-lies
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