リレー小説2
<Rel2.ガウィー1>

 

数週間後…
テラフォーミングにより、一部ではかつての地球とほぼ同等の生態系を再現するまでになったとはいえ、
火星の大地はその6割が未だ赤い荒野に覆われていた… 
発掘されたという遺跡から南東に約3km、赤黒く霞む小高い丘の上に一人の男が立つ。 
光学双眼鏡を覗きながら男が呟く。
「ちィ、子供か…」 
鞄からノートパソコンを取出し、先日入手したSFESデータベースにキーワードを入力する。 
 『satellite cannon』
(これか…)
 −サテライトキャノン− 
 魔王の遺産 
 火星の衛星より照射されるマイクロウェーブを受信、 
 極大出力のエーテルビームを発射する魔導兵器 
 尚、衛星はリフレクターとしての機能も兼ねており、 
 2つの衛星、フォボス、ダイモスを中継することで、 
 火星の地表の何処へでも砲撃が可能 
 更に、最大出力で発射した場合、地球を…… 
 ……発射、起動不可能… 
 …トリガーの所在は不明 
 …凍結…
所々欠落しており、肝心の情報が読取れないという有りがちな展開に、キーボードを叩く音も荒くなる。
(どうやら本物のようだが… 
  トリガー…何か鍵のようなモノが必要なのか… 
  それに、あのクロノとかいうガキの頭の赤い石…まさかな…)
どうやら既に煙の能力で遺跡内の情報を得ている様だ。
サングラスを掛け直し、煙草に火を着けるガウィー。
そこへ一台の車が近付いてくる。 
エンジン音、風切り音、地を擦るタイヤの音さえも立てず近付く車『スカイライムmkU』であった。 
車から二人の女が降り立つ。 
苦手な相手の登場に、露骨に不機嫌そうな表情を見せるガウィー。 
そんな彼の顔色、お前ら来るんじゃねぇよという彼の無言の意思表示など気にも留めない二人の女。
「調子はどーかね?」 
フルーツレイドの垢抜けた声に場が脱力する。
「…ぼちぼちだ」 
御座なりに返答するガウィーにシストライテが詰寄る。 
「どうかしら。 
 サボってただけなんじゃないの? 
 いっつも一人で勝手にコソコソやって! 
 アンタほんとにSFESと殺り合う気あんの!?」
顔を背けるガウィー。 
「…クサい」 
不意に槍を返し、石突で彼女の鼻を小突く。 
「ふがッ!」
顔を歪ませ蹲るシストライテ。 
その青髪の隙間には、やはりあった10円ハゲ
「女装が趣味のようだな」 
正体を現すハゲ。シストライテに化けていた『グレート・ブリテン』であった。
「き、貴様!」 
胸倉を掴み合う二人。 
事情により今は同じ組織に与するも、名古屋大戦時には死闘を演じた二人である。
そう簡単に友情など芽生えるものではなかった。
「は〜い、二人とも罰金〜♪ 
 決めたはずでしょ?  
 1.名古屋大戦の事は水に流す 
 2.私怨による喧嘩は罰金(仲裁者に支払い) 
 …って」
「……………」 
渋々と財布を取出し、小銭をフルーツレイドに放り投げるガウィーとブリテン。 
「毎度〜♪」
執筆者…Gawie様
固より本気ではなかった。 
共通の目的があるとはいえ、単に利害が一致しただけの『一応仲間』
SFESに対する怨恨によって成立つ即席組織。
各々の思惑も承知の上である。
ただ、そんな疑心暗鬼を子供じみた茶番で紛らわせばそれで良かった。
「で、どうだったの?実際」
「ああ、間違いない。サテライトキャノンだ。 
 遺跡内には政府のエージェントが数人、
 そいつらが発掘した異形が数体、それと子供が四人。
 今のところSFESの介入は認められない」
「じゃ、さっさと押さえちゃう?」
「無駄だな、遺跡の半分が埋っている上、 
 肝心のサテライトキャノンが使用不能、 
 ただ……いや以上だ。 
 『サテライトキャノンは使用不能、Dキメラの確保を優先させる』 
 ユニバースにはそう伝えてくれ」
「ふぅ〜〜〜〜ん」 
上目遣いで躙り寄るフルーツレイド。
「……………」 
サングラスに映り込んだフォボスが淡い光を放つ。
「まぁいいわ、そういう事にしとく」
「ところで、ごとりん博士に頼んでおいたアレだが、 
 持って来たんだろ?」
「あ〜ダメダメ、博士今別の研究で忙しいから、 
 ウイルスの解析は後回しだって」
「………… 
 ならお前…何しに来た?」
「あ、忘れてた! 
 地球からのお客さんが宇宙で迷子だってさ」
101便か、レシル達が付いていたはずだが?」
「詳しい事はちょっと〜」 
「解った、一度博士の研究所に戻る」 
そそくさと帰り支度を始めるガウィー。
「ちょっと待った、遺跡の方はどうする?」 
「さっき言ったろ?後回しだ」 
「いや、俺が代わりに調べよう。文句はないな?」 
「好きにしろ」 
そう言うと、フルーツレイドを助手席に押込み、そのまま走り去ってしまった。
101便の異変に気付き、ごとりん博士の研究所に向かうガウィーとフルーツレイド。 
残されたグレート・ブリテンは遺跡の調査を続行する。
執筆者…Gawie様

  遺跡・深部
「ったく、瓦礫ばかりで碌なモンがねぇ… 
 こりゃガウィーの言う通りに帰った方が良かったかぁ?」
落石か何かがあったのか、滅茶苦茶になっている遺跡内を歩いているのは 
謎の組織の一員グレート・ブリテンである。 
遺跡は規模こそ大きかったものの、 
魔物等は既に火星政府によって掃討されていた様だ。 
そして、火星政府の人間達も此処には僅かにしか残っていない。 
グレート・ブリテン得意の変身能力で火星政府の人間に化け、
警備を任されているエージェント達から情報を集めた所、 
どうも発掘した魔物が逃げ出してしまい、其の捕獲に向かった様だ。
「ん?」
もう帰るかと思った其の時、妙な広間に出た。 
其処等から濃いエーテルが充満していて、 
普通の人間でも息苦しくなるかも知れない。 
中央の台座には龍の形の石像と薔薇の石があり、 
其の両側に聖者らしき銅像が置かれている。
「この像は……洗礼者ヨハネに…聖バルトロメオ……? 
 おいおい、此処は火星だろ……
 …………其れにこの圧倒的な邪気……まさか……」
額に汗を浮かべ、すぐさまに踵を返して駆け出すグレート・ブリテン。
ダダダダダ…ズドン……ドゥ……ダダダダダダダ…
(…なんだこの物音は。)
ふと思った時その音は遺跡に響き渡った。 
(戦闘か・・・?)
グレートブリテンがそう思いつつも音のほうに向かっていった。
と、目前の壁がいきなり大きな爆音と共に崩れ去った。
ちょうど壁一枚はさんだところで戦闘が繰り広げていたのだ。 
グレートブリテンは瓦礫の山から脱出すると、素早く残った壁の裏に隠れた。
「あれは…『火星帝』レオナルド・フォアレイ・シルバーフォーレスト!?…政治家どもまで・・・」
火星の支配者が護衛と共に魔物…核分裂異獣と戦っていた。
本来なら、こんな遺跡に存在する魔物ではない。
とはいえ、火星帝の部隊の人数の方が圧倒的に多く、
魔物達はあっという間に掃討された。
「こりゃ…報告する事が増えたな…」 
壁から事の次第を見守っていたグレートブリテンは、 
火星政府の人間に化けてから遺跡を後にした。
執筆者…is-lies、タク様

     火星最大の都市アテネより約900km
  かつての地中海を模した人工の海に臨む商業都市
        ―アレクサンドリア
遺跡の調査をグレートブリテンに任せ、
一路ごとりん博士の研究所に向かったガウィーとフルーツレイドは
アレクサンドリア市内、某地下駐車場に車を停める。
慎重に辺りを見回しながら車を降りる二人、
エレベーターの『▽ボタン』に親指を当て…
「…オレだ」
《指紋、声紋、照合… 04と認識》
ドアが開く。
SFESに対抗するために作られた組織『セレクタ』
しかし、戦力的に不利な状況、最も優先すべき項目は
情報収集や戦力強化ではなく、『セレクタという存在の隠蔽』であった。
エレベーター内、二人の間にぎこちない沈黙が続いていた。
ドアの上の階層表示はB7で止まったまま、
エレベーターは尚も降下していく。
「あ〜、エレベーターの中の沈黙ってイヤよねぇ」
地下30階辺りを通過したところでフルーツレイドが口を開く。
「そうだな。B7からB30まで間に、
 ケイジ内で音を立てると、爆発する仕掛けになっているからな。
 いざ喋ってはいけない状況になると、結構緊張するものだ」
「やり過ぎなんじゃないの?セキュリティ」
「知るか。造ったのは博士だ」
「あ、そう言えば、博士の新作、そろそろ完成する頃だわ」
「別の研究で忙しいとか言っていたヤツか。
 また碌でもない発明じゃあるまいな?」
「今回はマジよ。
 まぁ、モノは見てのお楽しみだけどね」
「ほう…
 だが、今は101便が先だ。悪いがそれは後回しにしてもらう」
「アンタが言ってた地球からのお客さん、心配ね?」
「…さぁな。
 レシルの情報では冒険者風の者が数人乗込んだそうだが、
 それが誰なのかは解らん。
 オレはただ、『破滅現象』に関する情報をリークしただけだからな」
「破滅現象? なにそれ?」
例の現象を仮にそう呼称しただけだ。
 もしも、あの手の現象に心当たりがある者がいれば、
 必ず食いついてくると思ったのだが…タイミングが悪かったな…」
「アンタ……結構無責任よね」
雑談すること約10分、エレベーターは漸く最下層に到着した。
執筆者…Gawie様

「おお、戻ったか」
辺りに散乱する怪しげな機器やケーブルの山を
掻き分けながら入室するガウィーとフルーツレイド。
彼等を見遣りながらも端末に向かったままなのは、
結晶科学の権威、ごとりん博士であった。
「状況は?」
「はい、101便、発進直後に通信が遮断され、
 以後、消息不明です。ただ…、
 それにも関わらず、宙港は至って平常を保っています」
ガウィーの質問にセレクタの研究員が答える。
「レシルからの通信は?」  
「ありません。こちらからの通信にも全く反応なし。
 完全にロストです」
「事故ったってコトは?」
「それはない。宇宙空間を航行する船にとって、
 通信機能は最後の命綱みたいなもんじゃ。たとえ機体が大破しても、
 通信機器だけは単独でも機能するように作られておる。
 何者かが故意に通信を遮断しとる以外考えられんのじゃ」
ごとりん博士が言う。
暫く考え込む4人、そして…
リゼルハンクに動きは?」
「いえ、特には……
 あ、ちょっと待ってください。航宙機が政府専用回線に何か送信しています!
 こ、これは…!?」
    ………BIN☆らでぃんなり。 
    この航宙機はアタクシ共が乗っ取った。 
    ぼっくんの要求……
    最終的には航宙機自体を日本へ落とす! 
    解ったか………… 
「シャトルジャック!?
 …この時期に…あのBINらでぃん如きがか?………黒幕はおそらく…」
「うむ、乗客乗員合わせて約200人。
 その中にはうちのレシルとシストライテ、研究員達、
 それにお前さんが言っておった『お客さん』
 今、SFESに勘付かれるのはマズいぞ」
「だが、場所が場所なだけにこちらからでは手の打ちようがないな」
「そうでもないんじゃない。ね?博士?」
「おお! そうじゃ!」
そう言うと研究室奥へ走っていく博士とフルーツレイド。
執筆者…Gawie様

暗がりの中、博士の声が高い天井に響く。
「こんな事もあろうかと、こんな事もあろうかとッ!」
スポットライトに巨大な物体が照らし出される…
「今し方ロールアウトしたばかりの新型パワードスーツ!
 エニルオークmk-U…の試作機じゃ!」
「…巨大人型ロボットか、いつかやると思ったが…
「むぅ、つまらん男じゃ。何じゃそのリアクションは。
 もっと驚け! 感動せい! 男の子なら!
エニルオーク(Enil-Oiek)mk-U
博士が名古屋大戦の際に使用したものより二回りは大きく、
身長は7,8メートルはある。上腕部、大腿部の大型スラスターを見る限り、
かなりの機動性が期待できそうではある。
試作機ということもあり、デザインに関しては目を瞑ることにする。
「こいつで宇宙に出る気か? 使えるんだろうな?
 SFESが相手なんだ。単なる人型の乗物では意味がない」
「心配ない。
 単独で大気圏突入、脱出が可能じゃ。
 戦闘に関しても、既にTAKE戦のデータを基に調整済みじゃ」
「ほう、ではあのTAKEと対等以上に戦えるという訳だな?」
「スペック的にはな。
 あとはパイロットの腕次第じゃ」
「なるほど、では今すぐ発進してくれ。時間がない」
「あ? わしは行かんぞ。
 これからわし専用機の製作と武装の開発に取掛からにゃならん」
顔を見合わせるガウィーとフルーツレイド。
研究員は聞こえないふりをしている。
と、その時。
「その任務、俺に任せてもらおう」
研究室の奥から長い黒髪の男がフラフラと歩いてきた。
アルベルト、もういいのか?」
「ああ、世話になった、ごとりん博士」
「ガウィーには紹介してなかったな。
 彼はアルベルト、『D−キメラ』じゃ。
 SFESの戦闘員に追われとるところを保護した」
「D−キメラ? では…」
「残念ながら、お前さんが探しとったタイプではない。
 彼はSFESで創られた戦闘用D−キメラじゃ」
「SFESか…」
訝しげにアルベルトを睨むガウィー。
「一応、精神、身体検査も問題はなかった。
 D−キメラに関する情報も提供してくれたしな」
「疑うのも当然だ。
 だからこそ、この任務で疑念を晴らしたいのだが」
睨み返すアルベルト。
だが、その目は焦点が合っていない。
さらに襟元で蠢いている奇妙な物体が彼の嫌疑を助長する。
(コイツ…目が…)
 話にならんな。
 点数を稼きたいなら、もっと簡単な任務からにしてくれ」
「…試作機には、自爆装置を取付けておいた…
 こちらで遠隔操作出来るようにしてある…」
そう呟きながら胸のポケットから端末機を取出す。
アルベルトはそれを受取り、ガウィーの前に差出す。
「…頼む」
「ちィ…」
「浪花節〜」
とフルーツレイド。
「うむ、エニルオーク、発進準備!」
研究室内、全てのコンソールに電源が入る。
計器のダイオードが瞬き、機械音が鳴り響く。
「エネルギー充填。
 航路のデータ、入ります」
「アルベルト、妖精の調子はどうじゃ?」
「良好」
「よし、エニルオークのセンサーを妖精に直結する」
「確認する。SFESとの接触も予想されるが、
 予備の脱出ポッドを積んでいるために碌な武装がない。
 直接戦闘は避けろ。
 乗客の保護が最優先だが…それが不可能な場合は…船を破壊しろ。
 判断は任せる」
「了解だ」
「飲みもの何にする?」
「水でいい」
「エネルギー充填完了。
 アレキサンドリア沖、第2射出口開きます。
「エニルオーク、発進!」
101便救出のため、アルベルトは宇宙へ飛立つ。
執筆者…Gawie様

1日後……
アルベルトが試作エニルオークで飛び出した後、 
ごとりん博士は、研究所の奥に篭ったまま、
食事も睡眠も取ることなく、自前のPCに向かって黙々と作業を進めている。 
ガウィーはソファーで仮眠中。 
辺りには弁当の空き箱や、空になった酒瓶、タバコの吸殻が散乱している。 
じゃんけんに負けて買出しに行ったフルーツレイドは戻ってこない。 
そのままバックレたものと思われる。 
101便の行方は未だ分からず、2,3名の研究員が交代で監視にあたっていた。 
「アルベルトさん、異常はありませんか?」 
研究員がなんとなくアルベルトと通信してみるが… 
《…ない》 
そっけない返事が返ってくるだけで、あっさり通信は切られる。 
丸一日が経過し、研究員の間にも諦めムードが漂い始めていた。
その時、漸く変化が訪れた。 
宇宙ステーションを監視していた研究員が異常を知らせ、寝ていたガウィーが飛び起きる。
「宇宙ステーションからミサイルが発射されました!」 
「いきなりか」 
「はい、何の発表もなく突然です。 
 演習でもありません」 
「しめた…」 
「はぁ?」 
「チャンスだ。 
 ミサイルの軌道をトレース!弾道予測! 
 101便の航路データと照らし合わせろ」 
「出ました! 
 やはり、僅かにずれています!」 
「こちらガウィー、アルベルト聞こえるか? 
 101便の位置が分かった。データを転送する」
執筆者…Gawie様
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