リレー小説2
<Rel2.エーガ2>

 

  日本宇宙ステーション最下部、最下部警備室

 

小部屋にはエーガの言うSFESのメンバーが揃っていた。 
司祭服のヘイルシュメル、傭兵みつお01、Dキメラ紅葉、 
黒衣の暗殺者翡翠、ついさっき引き抜かれた科学者のフランソワーズ茜、 
そして赤鼻の異形トッパナ… 
彼等は正面モニターに表示された会議室の様子をじっくりと眺めていた。
「おーおー、頑張ってんな〜」 
「シシシ、実は結ばないけどね。先の行動は決まってるんだ既に。 
 にしても日本の小泉もロシア首相も、随分と革新的なアイデアを出すね〜」
其れを然も詰まらない様子で見詰めるのは、
金髪の魔術師風の青年『ルウ・ベイルス』…。
運び屋として名高い超ド級の能力者である。
彼の傍には愛犬であるチェインも一緒だ。
「詰まらないのか?まあ、無理も無い。 
 君が興味があるのは…こっちかな?」
言って翡翠が足元の黒いアタッシュケースに視線を落とし、指を鳴らすと、 
アタッシュケースが勝手に開き、中から札束が顔を覗かせた。
「…キャッシュとは話が早いですね……」
「遠回しは好きではない。まあ、少々高い買い物になったが… 
 貴方の方も今回の事はくれぐれも内密に頼むぞ」 
ヘイルシュメルの言に頷くルウ。
どうやら何らかの取引がされていた様だ。
同時に警備員らしき男がトッパナへ報告を入れる。
「あの…トッパナさん…… 
 …これ…ちょっと……」
男が指差したのはモニターの1つ、 
資材置き場の監視カメラの映像だった。 
サッチーを救出したエーガの姿がしっかりと映っている。 
だが後ろ向きな為に顔は見えない。
「……これ…ダクトとかから入って来たのかな?」 
「ヘイルと翡翠は何やってたなの? 
 あんなオバサン1人殺せなかった訳じゃないなの」 
「あ……其の、私が止めてしまいまして… 
 ほら、あんな人でも一応、ついさっきまで話し合ってた訳ですし…」 
余計な仕事が増えたと言いたそうな表情の紅葉に、 
茜が済まなさそうに言い訳をする。
「まあ、オバハンから何か情報が漏れても、、 
 精々警備が強化される程度だろ?気にする事ぁねーって」 
楽観的な意見のみつお01、だが翡翠の考えは違う。 
「併し、虫ケラにうろちょろされると面倒だな……」
執筆者…is-lies

  日本宇宙ステーション・人気の無い通路

 

「ふぅ、やぁっと外に出れたぁぁ・・・」
大きく伸びをしながら言うエーガ。 
本当ならもっと早く出れていたはずだが、
さすがにダクトから、こんなトド・・いや、睨まないでってば・・このオバサンと出てくると
色々な意味で怪しまれるだろう。 
故に人の居ない場所を選んで出たために時間がかかったのだ。
「ちょっとぉ!降りられないじゃないのよっ!」 
「・・・・・ああ?」
後ろであがった声に不機嫌そうに答える。
無論声の主はトド・・はいはい、わかりましたってば・・サッチーである。
「ンなもん、飛び降りればいいだろーが。」 
「嫌よっ!怪我でもしたらどーすんのよっ!」
そんなこと心配せんでも既にボロボロな気がするのだが。
「はー、しゃーねーなー。ほれ、受け止めてやっから飛び降りろ」 
「えっ・・・」 
エーガの台詞に頬を赤らめるサッチー。とても気持ち悪いいや、だから、いちいち睨ないでって・・・
「じゃ・・・行くわよダーリン」 
「おー」 
やる気なさそーな返事を合図に、サッチーの巨体が宙を舞う。

 

 

 

ヒューン・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グシャ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし」 
『よし』じゃなぁぁぁぁぁいぃぃぃぃっ!!!
「うおっ!?生きてたっ!?」 
「酷いじゃないのよダーリンッ!!」 
「いいじゃん、降りれたし。」 
「よくなぁぁぁぁぁいっ!!」 
「あー、うっせーうっせー。 
 もうここまで来たら大丈夫だろ。俺はもう行くぞ」 
「ちょ、ちょっと待ちなさいよっ」
結果。サッチーを撒くため、
エーガが無事仲間と合流できたのはこれから10分後だった。
執筆者…you様

  日本宇宙ステーション・ロビー

 

「……よう、長いトイレだったな…」 
少し引いた感じに言う『青』を無視し、辺りを見回すエーガ。 
既にエースや『青』
何となく人数が少ない気がしたのだ。
「あれ?花憐ちゃんと…あの…何てったか… 
 …そう、雷光だ!雷光とかいう奴は?」 
「あの忍者みたいな人達なら、 
 世話になった…って言って行っちゃいましたよ」
携帯電話を操作しているライーダが、 
液晶モニタを見詰めながらエーガに説明した。
「あっちゃぁ…間に合わなかったか…… 
 花憐ちゃん、又会えないか…って… 
 …ライーダ、お前何やってんの?」
「駄目モトで101便のレシルさん達と連絡を取ろうとしてるんですけど… 
 ………やっぱり無理ですね……」
溜息をして携帯を切るライーダの言葉に、 
エーガも何かを思い出した様な表情を一瞬、浮かべた。
「何?お前等の仲間、101便の中にも居たのか?」 
疑問に思った『青』が尋ねるが、 
無論、エーガ達の方に答える義理は無い。 
そもそも『青』達はセレクタにとっては完全な部外者なのだ。 
これには術士イルヴも無関心で、『青』もあっさりと引き下がる。
「問題は我々が無事に地球に帰れるのか…… 
 そして最悪の場合、火星へ何時になったら行けるのか…という事だろう?」 
老練の術師イルヴが杖を弄くりながら物騒な事を言う。
「ちょっとオッサン!其れって地球が無くなるかもって事か!?」 
「其れ以外にあるまい? 
 火星は獣人達が強制労働させられている星でもある… 
 能力者も、親政府態度を取らねばそうなりかねん。気を付けろよ? 
 火星政府が王であり神…獣人は消耗品…… 
 あそこはそういう星だ」
「…そんな横暴が……許せません…」
『理想郷』を望む少年プロ、エースが拳を震わせる。
だが術士イルヴは其れこそが現実であるとだけ返す。
差別の根絶は土台無理な話だ。
現にエースの使っている敬語も其の類だと見做され得るのだから。
「エーガさん…地球……大丈夫ですよね?」
エーガに付き従う術士の少年ライーダだ。
「…さぁてな……今の俺達に出来る事ってったら… 
 地球がどうなるか……見守るだけだ。
 …っと、忘れるトコだった。 
 良いか皆、良く聞いてくれ? 
 さっき、偶然聞いた話だが… 
 この航宙機内にBIN☆らでぃんの仲間が居るらしいんだ。 
 かなりヤバイ予感がするし…早々に火星に向かった方が良いと思う」
流石に驚く一同。 
航宙機をジャックし、地球を崩壊させた張本人であるBIN☆らでぃんの一味が、 
この宇宙ステーション内に居る… 
「ジハード」とか訳の解らない事を言って、 
此処を攻撃する可能性もあるのではないだろうか。
執筆者…is-lies
「BIN☆らでぃんか…出来る事なら、俺の手で処刑……」 
『青』が危険思想を口にしようとした其の時…
「アンタ、ちょっと良いかい?」 
緑色の髪をした美形男が『青』の肩をぽんと叩く。 
道を聞きたい…という訳では無さそうだ。 
男の胸にあるネームプレートの、 
警備主任という肩書きを見ても其れは明らかだ。 
名は『ミツヲ』というらしい。 
だが、エーガとライーダは直ぐに気付けた。 
彼こそが闇組織SFESの一員『みつお01』である事に…
懐から取り出した写真を『青』に突き付けるみつお。 
写真にはサッチー、そしてエーガの後姿が写っていた。
「コイツ等、見掛けなかったかい? 
 この後ろ向きに移ってる奴、BIN☆らでぃん一味の仲間なんだけど…」
写されていた。
心の中で舌打ちし、さり気無くみつお01の視界から外れようとするエーガ。 
だが、『青』の無思慮さで、あっという間に頓挫する。
みつお01の顔が、獲物を捉えた鷹…等ではなく、 
いじめっ子特有の、ドス黒い感情を溜めたいやらしい笑顔に変貌した。 
其の視線は、こそこそと隠れようとするエーガの後頭部に突き刺さっていた。 
冷や汗をかいて首だけ動かし、みつお01の方を見るエーガ。 
白い歯と槍を光らせる、みつお01の眩しい笑顔が其処にある。
やはりSFESとの戦闘は避けられないか。 
そう考えて、エーガは急いでみつお01へと向き直る。 
…と、其の時…
「ダァアアアアアアリィィィイィイィィイイイン!!!!!!」
そう。エーガがさっさと忘れたいと思っていた凶獣の声であった。 
ドスンドスンという足音が徐々にエーガの方へと近付き… 
濃い化粧をし、悪趣味なサングラスを掛けたトド女が其の巨体を現す。
「げっ…さ…サッチー!?」 
流石のみつお01も、いきなり突っ込んで来たトドの、 
グロテスクな顔面にビビって一瞬、立ち尽くす。 
其れは『青』やライーダ達も同じだが、 
先程まで一緒に居たエーガは、彼等に先んじて事を起こせた。
エーガが、みつお01の居る場所に意識を集中し、 
己の持つ能力を其処へ一気に解き放った。
「な!?」
いきなり、みつお01が床に崩れ落ちた。 
何が起こったか解らずにうろたえているエース達。
「彼は敵です!逃げますよ!」 
「え…おい!?」
益々混乱する『青』達を半ば引き摺る様にして 
其の場から立ち去るライーダ達セレクタ。 
みつお01も直ぐに起き上がって追い掛けようとするが、 
体が錘の様になって、立ち上がる事すら出来ない。
重力操作エーガの持つ特レア能力である。
「何だヨ、こりゃ!?って……」
床に寝そべった格好で動けなくなったみつお01に迫るのは、 
エーガを追い掛けているサッチーである。
「く…来るなあああああぁぁぁぁぁぁあああべしっ!?
みつお01を轢いて尚、エーガを追跡するサッチー。
「エーガさん、航宙機の燃料は補給済みです。 
 もう火星へと直行しましょう… 
 此処でSFESを相手にする余裕はありません」
「だな。………けどアレ……どうしよっかなぁ……」 
エーガは額を押さえながら、 
後ろから一同を追って来るトドを見遣る。
「ダァアアアアアアリィィイイイイイィン!!!!!!」 
悪魔の叫び声が徐々に近づいて来る。 
愛の力という奴だろうか?その脚力は彼女(?)の平常時の2倍強。いや3倍弱。 
彼女の視界にはもうエーガしか映ってない…。 
そして遂にジャンプ!!其れはまるで大型の巡航ミサイルの如くエーガを襲った。
「うぁあ!!!」
紙一重でエーガが避ける。 
ズゴ〜〜〜〜ン!!と言う爆発音(?)と共にサッチーが頭から宇宙ステーションの床に激突した。
ブ〜〜〜〜〜!!ブ〜〜〜〜〜!!ブ〜〜〜〜〜!!
宇宙ステーションの床に穴を開けてしまった事が原因でブザーが鳴り出す。 
101便ハイジャックなどの事もあり。宇宙ステーション内は警戒状態となっていた。
ダッダダダダダダダダダダダダ 
十数名の足音。 
そう、宇宙ステーション内の警備兵隊が出動したのだ…。
警備兵の麻酔銃を受け、其の場に倒れる猛獣サッチー。
幸い、エーガの存在を知られた訳ではない様で、
追っ手は1人も来なかった。
エーガ、『青』、エース、デルキュノ、イルヴ、ライーダ、ゼイノ…
彼等は無事に日本宇宙ステーションを離脱し、火星へと向かう。
執筆者…is-lies、タク様
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