リレー小説2
<Rel2.クライム・フォン・カーリュオン2>

 

地球宙域フランス軍所属高速戦艦の前方は、
スペースダスト群に覆われていた。
「う〜ん、困ったなぁ迂回している暇など無いし…。」 
髪をかき上げながらフランス軍の若き艦長クライム・フォン・カーリュオンが呟いた。
「この大規模の物を迂回なされますと恐らく、 
 ヨーロッパ宇宙コロニー宙域への到着は2時間ほど遅れそうです。」 
副艦長ヴァサロ大尉がクライムに告げる。 
「わかった。突破するぞ。」
その時もう一隻の戦艦の艦長から通信が入る。 
「グランハルトか…。」 
赤毛の艦長クライムがモニター越しに言った。 
「突破するか。とっととアトラスに行かなければな」
「アトラスか…何がヨーロッパ連合宇宙中継巨大衛星だ。 
 あんな主砲を装備して駐留艦隊が砲艦中心に200隻だぞ〜。」 
クライムがため息混じりに言ったが彼は決して平和主義者という訳ではなく、 
彼は自分の給料になるべき税金の大半を持っていかれたことに腹を立てていた。
「何とか突破いたしました…。」 
とヴァサロ大尉の報告。 
「被害状況は?相当揺れたからな…怪我人も居るだろう…。」 
と、彼の上官。深刻そうな表情である。 
その時、タイミングよく後部防衛副砲司令官から通信が入った 
《報告いたします。後部防衛副砲団が10%大破。25%が中破しました》
更に、軍医からも通信が入る。 
《艦長!!10名ほどの死者がでました。怪我人は50人を越えた模様!!》
軍医は蒼白な顔で伝える。
「か…艦長……何故、こんな… 
 たった2時間じゃないですか……」
下級士官の科白は尤もだった。 
10人の死と50人以上の怪我人は決して軽くない。 
況してや彼等の死や怪我は、 
2時間という僅かな時間の為だというのだから。
だが、このクライム、若くして艦を任されるだけの人物ではあった。
「あれを見てみなよ。ほら、其処」
クライムが士官に指し示したモニターに映っているのは、 
艦の最後部…既に抜けたスペースダスト群の一部。 
何も無いじゃないかと思った其の時、 
先程まで自分達が居た空間を、 
突如現われたアステロイドが薙ぎ払っていった。
「…い……今のは?」
艦のレーダーですら捉えられなかった。 
いや、そもそもアステロイド群は虚空から出現していた。
「万が一の時の為の用意があって正解だったね」
クライムの隣に佇むのは、 
普段、居るのか居ないのかも解らない様な 
陰気なローブを纏った中年男… 
其れを見て下級士官は気付いた。 
突如の隕石出現を、この男が感知してクライムに知らせたのだと。
フランスはドイツと同じく、他国よりも結晶科学が遅れていた。 
いや、そもそも結晶能力に対してかなり無関心であった。 
艦長のクライムやグランハルトも非能力者であるし、 
フランスの機動兵器ヴァリアントと呼称されるロボットも、 
結晶兵器は一切、搭載していない。この戦艦も然り。 
唯一の結晶対策が、クライムの発案により試験的に搭乗した『危険感知能力を持つ能力者』であった。
流石は艦長と喜ぶ乗組員達を他所に、 
クライムは「何故、あんなアステロイドが突如出現したのか」と考えていた。
執筆者…is-lies、タク様
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