リレー小説2
<Rel2.『青』6>

 

  Ω真理教本部・教祖の間

 

フカフカのソファーに座りながら、直ぐ目の前にある豪奢な器から 
切られたリンゴを一切れ取って口へと運ぶ髭だらけの男性…。 
Ω真理教の教祖『麻原』である。 
麻原のソファーへと続く絨毯の上には、 
隠してあった転送リングで『青』達より早く来た高橋が平伏している。
「……詰まり、高橋は任務に失敗したと…」 
横に立っている幹部『上祐』の報告を聞き、 
旨そうにリンゴを頬張っていた麻原が僅かに眼を細める。 
「ヒッ!?御許し下さいませ教祖様!!」 
頭を絨毯へと減り込ませる程下げる高橋。 
其れを見て麻原がニマっと笑顔を浮かべる。 
高橋がホッとしたのも束の間、今度は鬼の様な形相となる。 
「……………」 
怯える高橋。 
「………」 
優しく微笑む麻原。 
「……………」 
胸撫で下ろす高橋。 
「………」 
悲しそうな顔をする麻原。 
「……………」 
不安になる高橋。 
「………」 
元の笑顔になった麻原。 
「………………ポアしろ」 
直ぐに象のお面を着けたマッチョマン達が入って来て高橋を拘束する。 
悲鳴を上げる前に口を手で強引に塞がれた高橋は 
何かモガモガしながら、マッチョマン達に連れて行かれた。
「相変わらずなの」 
林立する柱の影からスッと現われた紅葉とみつお01。 
此方も予め隠しておいた転送リングで来た口だ。 
彼等を見ても、別段驚かずに果物を貪る麻原。 
「ああ、例の小僧の言っていた使いか…… 
 手に入ったのだろうな? 金閣寺で我等の同胞・井上を殺した『青』とかいう奴……」 
「まあ待て待て。こいつを見ろ!」 
そう言ってみつお01が柱の影から出して来たのは 
気絶状態のデルキュリオスである。 
「『青』の仲間なの。そいつを取り返す為に『青』達は来るなの」
執筆者…is-lies

  Ω真理教本部・広間の天井

 

「信者は随分と居るんだな…」 
屈みながら天井の梁の上を進む『青』一行。 
其の中にイルヴの姿は無い。連続テレポートで疲労し、外で休んでいるからだ。 
唯でさえ相当疲れるテレポートを連続で使用したのだから当然だ。
眼下の広間に群がる信者達が黒い絨毯を成し、何やら祈りの言葉らしきものを叫んでいる。 
「アズナブル〜アズナブル〜×100」
信徒全員がピッタリと声を合わせて祈る其の姿は統率が取れている。 
教えというのは心の拠り所になるのと同時に、人を頑なにする事もある。 
何かを信じるという事は、其れと対するものの否定と同義だからだ。 
……前大戦首謀者の本田宗太郎も、能力者を愛する余りに非能力者を憎んだ。 
そして自分達は今の世界の為に、能力者の世界実現を妨げた。 
「………結局…何も変わっていないのかも知れませんね……」 
梁を慎重に進みながら、呟くエース。
後、2メートル辺り先に壁があり、其処にダクト内への入り口が見える。 
入り口は真っ暗で中が見えず、工事中か何かなのか、鉄格子は填まっていない。 
取り敢えずダクトに入り、何処か別の部屋に移動しようとするゼイノ達。 
其の時…

アズナブルッ、うっ!!ウシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャーーーーーァァァアアアアッッ!!!!×100

広間の信徒達が一斉に絶叫し始め、身体を激しく痙攣させる。 
「ぬおわっ!?」
其の大声で驚いた『青』がバランスを崩して前へとこけた。 
だが、何とか落下は免れた様で、ダクトの入り口下に頭をぶつける。
「いてて……ったく電波系が驚かしやがって」 
『青』が言い切るが早いか否か…。 
突然、ダクトの入り口の闇から腕が出て来て、持っていたクナイを『青』の首筋に宛がった。 
「動かないで。アンタ達…Ω真理教の人間?」 
闇に浮かび上がったのは2人の男女。 
1人は赤い花柄の装束を身に纏った小柄な少女。 
いま1人は雷柄の黒装束に身を包む少年。
 「ち、違う・・・ていうか変な姿勢続けさせるなよ・・・。」 
無駄にややっこしい姿勢のまま、『青』が参った面しながら弁明する。そして 
小柄な少女は敵意が無いと見るや、クナイを引っ込めたのである。 
「そう。済まなかったわね。」 
(やっぱ、現実で見るならおっさんか同年代に限るな。)
「其の服装……忍者か…… 
 もしかしてアンタ等、空竜の仲間か?」 
「あら?空竜を知ってるの?」 
ゼイノの口から出た言葉に意外そうな表情を浮かべる少女。 
其れから暫し、情報交換が行われた。 
「…成程。プロ仲間やった訳か。 
 俺は『雷光』、そっちが『花憐』。 
 御察しの通り空竜の仲間の忍や。 
 プロの忍で構成された『六色仙花』は知っとるよな? 
 俺達は其処の所属で、麻原暗殺の仕事で来たんや」 
「アンタ達は仲間を取り戻しに来たのよね? 
 どう?共同戦線張ってみるっていうの」 
六色仙花といえばプロ中のプロ忍集団。 
そんな彼女等からの提案を蹴る理由は何処にも無い。 
『青』は兎も角、ゼイノ達は喜んで共に行動する事にした。
執筆者…is-lies、A夫様

  Ω真理教本部・教祖の間

 

扉を蹴破り部屋へと侵入する『青』一行。 
柱が無数に並ぶ広間の奥に、ソファーに座った髭面の男… 
Ω真理教祖の麻原がニヤニヤしながら待ち構えていた。 
「君達が『エーネッヤカ・ダーヴァナ・パンニャッター・菊池』や、 
 『ポーシャ・平田』『アーナンダ・井上』をポアしてくれた連中か…」 
ホーリーネームを添えた部下の名前を言いながら、 
細めた眼で『青』達を凝視する麻原。 
「さて、デルキュノを返して貰いましょうか?」
「うん、良いよ。出て来なさい、 
 『カーリガート・デルキュリオス』
其の言葉で顔に驚愕の色を浮かべるよりも早く、 
麻原のソファーの後ろからデルキュノが姿を現す。 
真っ白な法衣に身を包み、虚ろな目をした彼は、
一目で正常な状態で無いと判断出来た。
「さぁ、コイツ等を捕まえなさい」
「畏まりました。麻原尊師」 
麻原のマインドコントロールを受けたデルキュノが剣を構える。
「だが、これだけではちょっと不安だね」 
そういうと麻原は呪文の様なものを唱え始めた。 
同時に絶大な魔力により空間が歪み、1人の細身な青年が出て来る。 
青白い体、三つ目、獅子の様な爪と鬣、翼、 
遊行聖の飾りを付け、手には三叉戟が握られている。 
「Ω真理教主宰神『シヴァ大神』。 
 君達ムシケラがどう足掻こうが勝てっこないよ」 
召喚を終えた麻原が座禅を組んで… 
其のポーズのまんまピョンピョン跳ね始め… 
……いや、見ると高度が徐々に上がっている。 
そして5メートル程に達した辺りで滞空した。空中浮遊である。 
説明しよう! 尊師・麻原は通常の人間では肛門に相当する穴より、
クンダリーニチャクラ線を放出する事で
其の体に掛かる重力を反転し、空を飛ぶ事が出来るのだ!
尚、クンダリー(略は、硫黄の臭いがするという…
「くくく…私は高みの見物とさせて貰うよ」
相手は2人だけしかいないが、不思議と大きな威圧感が漂っていた。 
何も考えずに戦うのはマズイと判断したのか、
ゼイノが恐る恐る『青』に対して相談を持ちかける。
「クッ・・・どうする?デルキュノがまともじゃないのが痛いな。」 
しかしこの男、プレッシャーを感じないのか軽く応答する。 
「マァマァ、楽勝だと思うぜ。」 
そして彼は懐から大きめの拳銃を取り出す。勿論ヒボタニウム製だ。 
それをシヴァの後ろに控えるあの男に対して・・・
連射した。
しかし、拳銃とは思えないほどの連射であった。 
一発一発が直撃していく度に体を痙攣させてボロボロになっていく麻原。 
最後の一撃で脳天を粉々に打ち砕かれた。
「・・・ウッ。」 
麻原の人生にケリがついた後、デルキュノはあっさりと意識を取り戻す。
尊師、弱ッ!!!
「やりますね。」
「まぁ、2年間はこんな経験積んでるからな。」 
エースの褒める言葉もありがたく受け取り、『青』はデルキュノに接近した。
と、静かだった部屋の床が、突如縦に振動しはじめる。 
それは最初から物凄い揺れであった。同時に、青年のような姿をした者・・・
シヴァからさっきとは大きく異なる殺気が発されていた。ゆっくりとシヴァが口を開く。
「ふん…召喚者が居なくては願いを叶える事も出来んな。
 ならば破壊神としての私が為すのは……やはり破壊か」
召喚獣の暴走である。
「あぁっ・・・ま、まさか失敗したのか?」 
早とちりして、召喚した者である麻原を殺してしまったコトを後悔した『青』。 
「あー、なんか暴走モードに入ったんやな。でも悩んでも仕方ないやろ。 
 今はこのアカン状況を突破するのが、最善の筈や。 
 もし建物が崩れてお陀仏になってしもたら、それこそ後悔モンやで?」 
今の状況を自分なりに捉えて、雷光は助言を行った。 
真っ先に答えるエース。 
「そうしよう!」
逃げ出す『青』達。しかし、シヴァは唸りながら追撃を始めた。 
周囲の者に危害を加えつつ・・・
執筆者…is-lies、A夫様

やがて広間へと出た『青』達… 
だが、其処では………

しょーこー!しょーこ!しょこしょこしょーこー!あーさーはーらーしょーこー!!×100

「し…しまったッ!」 
何時の間にか例の「しょこの歌」の合唱となっていた。 
直ぐに耳を塞ごうとするが、追って来たシヴァが放った指向性雷が一行を襲う。 
「こんの!」
何を思ったか両腕を、迫る雷に突き出す雷光。 
だが、雷が雷光に触れても、彼は吹っ飛ぶだけで済んだ。 
「ぐ…流石に神の雷って奴は一味も二味もちゃうな… 
 其処等の魔物が放つ雷程度なら喰らっても平気なんやけど…」 
耳栓をして、負傷した雷光を背負おうとするゼイノ。 
だが、そうこうしている内にシヴァも広場に現れた。 
破壊神が額の眼を開く。すると其処に莫大なエーテルが集束していく。 
「ちっ!殺らせはしねぇぞ!」 
両腕を盾をにして、シヴァが放つであろう攻撃に備える。 
「いけない!避けて!」

 

 

柱の影で其の戦闘を窺う紅葉とみつお01。 
「…シヴァ……Ωがそんな高等神と契約していたなんて初耳なの。 
 ………紅葉のヴィシュヌが騒ぐなの…・」
「まあ、シヴァなら良いんじゃねぇの?」 
何やら嬉しそうにニヤニヤしているみつお01。 
「何?妙にハイなの」 
「ほら、この歌。ノリ良いだろ?」 
みつお君、そりゃΩ心理教の洗脳歌だよ。 
「…馬鹿みたいなの…其れより早く脱出するなの。 
 もう直ぐ、航宙機のレーザーが来るなの」

 

 

シヴァの額から強烈か光線が放たれ、一直線に地面を貫く。
そして高いエネルギーにより、爆発が発生した。 
あの男、『青』も受け止めようとしたがさすがに回避を行う。 
「ね?避けたのが正解でしょ?」 
「(後で、気兼ねなくシバけるな・・・)
・・・誰にも、聞こえていなかったのが幸いだった。
すでに崇拝する人物を抹殺された信者達は、今なお狂気の歌をフルコーラスで歌っている。 
だが、シヴァのビームに巻き込まれて多少倒れたらしい。
執筆者…is-lies、A夫様
「ちょろちょろ逃げ回りおって…」 
言いながら己の槍を床へと突き立てる破壊神。 
同時に爆ぜた床の下を始点に、地の隆起が『青』達に迫る。 
「くそっ!これでも喰らえッ!」
叫びながら『青』が放った銃弾だが、 
全てシヴァに当たる直前で魔力防壁によって防がれた。 
「畜生!防戦一方かよ!」
急いで踵を返し、地の隆起から逃げる『青』。

中野のしょーこー!杉並のしょーこー!消費税廃止だぁ!!!×95

信徒達の合唱は終わらない。どうやら『青』達も道連れにする積りの様だ。 
流石の大音量に耳栓も効果を失いつつある。 
「ぐ…早く出なきゃいけないってのに……!」 
「よくも尊師の『日本支配・国民総Ω化計画』を邪魔してくれたな! 
 尊師が総理になった暁には、『しょーこーしょーこー』でも『そんしーそんしー』でもなく、 
 『そーりーそーりー』になっていたというのに、よくもォ!!」 
「知るか!ンなモン!!」 
「ヒバゴンもコイツ等も……日本は電波だらけか?」
そうこう言っている間にシヴァが地の隆起と共に迫って来た。 
「おわわわわわわわわぁっ!!」 
地の隆起に飛ばされる『青』。そして彼は信者の真ん中に頭から激突、転落した。 
すぐさま信者達の口撃がスタートする。 

しょーーーこーーーー!!しょーーーっ!こーーーーっ!!!

だが、彼は素直に洗脳される性格の人間ではないらしく、猛烈な行動に出た。 
「・・・う、う、うっさいんじゃ罪人連中がああああぁぁぁ!!!」 
聞きたくも無い騒音地獄に、彼の中で何かが切れた。
信者の真ん中で何が起きたか、数名が吹き飛び、
さらには体を蜂の巣にされるもの、体を切り裂かれたもの、醜く体が歪んだ者・・・ 
はっきりいって、地獄絵図が展開されていた。 
このおっかない状況に対面したエースは、すぐさま身の危険を感じたのだ。 
「うわぁ、逆上してるし!!・・・い、今の内に逃げないと・・・」 
その際、デルキュノはこんなことを呟いていたという。 
「・・・結構単純な奴・・・」
激怒した冒険者の前に、信者達は30秒で壊滅した・・・。 
「・・・うぉーい、待ってくれぇ。」 
存在が騒音公害だった信者達をスッキリするまで撃破した『青』は、
さっきよりも若干穏やかなツラして数名の後を追う。

 

「よろしい。私もこれを呼ぼう。ハー・・・
後を追うために、シヴァは何かを念じた。すると牛のシルエットが現れ始めたのだ。
執筆者…is-lies、A夫様

「よし……もう直ぐ出口だ……!」 
『青』が活路を開いた為、出口迄は後10メートル程度。 
其の時、疾風と化して『青』達の前に回り込むシヴァ。 
見ると、破壊神は牛の様な生き物に跨っていた。
「この野郎……逃がさねェってか!?」 
両腕からヒボタンブレードを突き出して斬り掛かる『青』。 
だが、一瞬の内に背後へと回り込まれる。 
振り下ろされるシヴァの神槍。
だが『青』も長年の経験で其の危険を察知し、腕を交差させて防御しようとする。 
併し、神槍は厖大な魔力でプラズマジェットを纏い 
一瞬で『青』の右肩から胸の中頃に掛けてを切断する。 
ぐッ!?
咄嗟の判断で身体を捩じらせていなければ上半身が飛んでいた。 
「コイツ……早過ぎる………!」 
「終わりか…ではそろそろトドメをくれてやろう」
シヴァが槍を振り上げる。その周りに先程とは比べ物にならない程の「気」が渦巻いてくる。 
そしてシヴァが槍を振り下ろそうとした、その時! 
「後ろがガラ空きだぜ!牛野郎!!」 
いつの間にか後ろに回り込んだ『青』がシヴァに向かってブレードを振り下ろす。 
「ぬっ!!」 
間一髪で避けるシヴァ。 
「貴様・・・・・いつの間に後ろに・・・・それにさっきの傷は・・・・・」
シヴァ第三の眼が力を込めずに見開かれ、『青』を凝視する。 
「……成程…貴様はヒボタニウムと融合しているのか… 
 まあ、私の敵でない事には何ら変わりが無いが…」 
「ほざけ!!」 
素早さで何とか撹乱しようと試みる『青』だが、 
反射神経、素早さ共にシヴァの方が数段上。 
呆気無く全ての攻撃を回避され、プラズマジェットに両脚を切断される。 
痛みに絶叫する『青』を無視し、転がった彼の両脚を掴む破壊神。 
「結合が出来るとすれば…これならどうだ?」 
シヴァはポイっと入り口側に『青』の両脚を放り投げる。 
床に着いたと同時に滑る様にしてΩ本部の外へと行ってしまう両脚。 
「こうなっては直ぐに回復という訳にもゆくまい」 
『青』をエース達側へと投げ付け、槍を構え直すシヴァ。 
エース達は飛んで来た『青』にぶつかって吹き飛ばされた。 
「…ッ!……こりゃ戦うのは無謀っぽいわね……」 
「……どうする?」
此方は怪我人が2人。雷光と『青』。 
相手は全能力が自分達を超越した破壊神。 
しかも逃げ道は其の背後だ。
「・・・・・そうだ!」 
エースが何か思いついた顔をし、花憐、デルキュノに耳打ちする。 
二人はそれを聞いて、 
「そんなのでホントに大丈夫?まあ・・・・一かバチかやるしかないけど・・・」 
花憐はそういうとシヴァの方を向いた。 
と、次の瞬間! 
「たあっ!!」 
花憐が何かを床にぶつける。すると、白い煙に部屋が包まれる。 
「ぬ・・・・・・何処だ・・・・・」 
シヴァは槍を構えたまま辺りを見回す。
「…ふむ…成程。私の眼でも透視能力は無いからな… 
 中々、良い判断だ」 
白煙に包まれながらも感心といった風に言うシヴァ。 
其の両側を疾風の勢いで通り過ぎようとする花憐達。
「だが、其れは相手が人間ならばの話だ」 
素早くシヴァは両腕を胸の前でクロスさせる。 
同時に両脇を走り去ろうとしたエース達が吹き飛ばされ、元の位置へ戻される。 
傍から見れば魔法としか思えない現象だが、 
良く見ると、シヴァの槍が2本に増えていた。 
どうやら懐に隠し持っていたものを素早く抜き出した様だ。 
「ちっ…!」 
闘志を失わずに槍を構えシヴァへと突進するエース。 
『迅魔衝』ッ!!」 
「む?」 
其の気迫に興味を持ったのか、避けようとせずに右手を突き出すシヴァ。 
そして……
執筆者…is-lies、鋭殻様
       ズガアァァァア!!
「!?」 
エースの迅魔衝が受け止められた。 
過去に戦艦数隻を一度に沈める程のサイコキネシスを上乗せされた 
巨大ロボットの大剣の一撃ですら、防ぐどころか跳ね返した絶技が…である。 
「貴様………何者だ?」 
真剣な表情でシヴァが呟くと同時に、彼の右腕が砕け散る。 
「…本気でなかったとはいえ…… 
 其の力……私の肉体をも超えた……」 
言いながら肩を少し傾けると、新たな腕が生えて来た。流石は神である。 
「…何者だ?純粋な人ではあるまい」 
「・・・・・?人以外の何に見えるんだよ・・・・・能力者を侮りすぎなだけだ」 
「・・・・・まあ良い。
 いずれにせよ、お前達は死ぬのだから・・・・・」 
シヴァは三度槍を構える。
「…どういう…事だ…?
 いてて」 
デルキュノに担がれた上半身のみの『青』が顔を顰めながらエースとシヴァのやりとりに疑問符を浮かべた。 
「……今は眼の前に集中した方が良い…」 
彼の言う通り、立ちはだかったシヴァの槍からプラズマジェットが放たれる。 
エース達は攻撃を察知し、後ろへ跳んで避けるものの 
プラズマジェットに触れた床は一瞬で蒸発して辺りを煙で包む。 
其れが晴れた時…一行の目前には大きな谷が形成されていた。 
「ふっ、これでお前達は出口に行けもしまい…」
優に10メートルはあるであろう大穴を、ひょいと飛び越える牛型生物。 
其れに跨るシヴァは、額に汗流すエース達を嘲笑って双槍を振るう。 
「………万事…休す……ね…」 
己の細腕から腕輪を外す花憐。 
輪っかに付いた6つの飾りが互いに触れ合いチャラチャラと音を鳴らす。 
人差し指を輪の中央に差し込み、急回転させる花憐。 
6つの飾りが全て重力を裏切り展開し、輪を大きく見せる。 
急に輪の外周部の色が変わった。花憐の左手には小さな鞘らしき物が6つ。 
右手には六刃チャクラムの本性を現した輪っかを構えている。 
ゼイノも両脚を大きく開き、背負っていた三日月剣をしっかりと構えた。 
「…くく……そうでなくてはな……行くぞ!!」
其の時、『青』達の眼の前…シヴァに背を向ける形で1人の男が姿を現した。 
「イルヴさん!!」 
テレポート能力を持つ極悪魔術師イルヴが戦線復帰したのだ。
「む?何者だ?・・・・・・・まあ良い。共に葬ってくれる!」 
イルヴが後ろを向いた瞬間シヴァの双槍が振り下ろされる。 
「・・・・・」 
「危ないっ!!」 
デルキュノが叫ぶ。が、イルヴは双槍が当たる直前に消える。 
「ヌッ!?」 
シヴァが辺りを見渡す。すると、イルヴは今の攻撃で後退した『青』達の前に立っていた。 
そして『青』達の腕を掴み、共に消えて行った。
「………テレポート能力か……」 
既に影も形も無いエース達を見て呟くシヴァ。 
流石に何処へ逃げたかも解らない相手を追うのは無理だ。 
麻原が死んだ事で、早くも具現化の限界が近い。
「役立たずなの」 
広間の方から煙を掻き分けて歩み寄って来た者達。 
先導者の紅葉とみつお01である。 
「神って言っても所詮この程度か。笑っちまうぜ」 
「…貴様……愚弄するか…?」 
眉間に皺を寄せるシヴァにも動じず、口端を歪める紅葉。 
「作戦は失敗…手土産の1つは持って行った方が良いなの」
執筆者…is-lies、鋭殻様

  アゼラルのアジト

 

「とうとう始まりましたか・・・・・・」 
「予想より早いな・・・・・・」 
前支配者アゼラルとアウェルヌスの二人が水晶の前で話している。 
そこにストグラが現れる。 
「アゼラル様っ!!」 
「分かっています。ストグラ、ベリオムを呼び戻しなさい。」 
「御意!!」
ストグラは消えた後、水晶が光り、男の姿が映る。 
『バルハトロス』か・・・・・・」
バルハトロスと呼ばれた男は二人に頭を下げる。 
「アゼラル様、コロニーの準備が出来ました。」
「分かりました。こちらの準備が出来次第、其方へ向かいます。」 
「・・・・・ところでアゼラル様、例の『青』やその仲間はどうなりましたか?」 
「ああ、あの者達ですか・・・・残念ながら見つかりませんでした。ですが、おそらく生きている事でしょう。
 そうでなければ私にとっても殺しがいがないし、あなたのサンプルにも不適格でしょう?」 
「その通りです。では、私はこれで。後でコロニーで。」 
「ええ。後で。」 
交信が終了する。
執筆者…鋭殻様

  Ω真理教本部前

 

「た、助かったぜ・・・・・」 
「ああ・・・・マジヤバかった・・・・・・」 
皆、息も荒く、座り込んでいた。と、その時! 
「!」 
花憐が何かに気付き、体をびくっと震わせる。 
!!、まずい!皆伏せろ!
猛烈な轟音があたりに響き、空気を裂いて極太のレーザーが
富士山のふもとを勢い良く貫き、地面を揺るがした。
「うわぁ!!・・・ほ、本気かぁ!!」 
「少しでも近づいたら・・・あかん!下手したら怪我するで!」 
「いや、ちょっと・・・!!」 
驚きを隠せず、なにかの衝動に駆り立てられつつある『青』は、雷光になだめられている。
で、デルキュノが・・・ 
「・・・む?なんだ、この熱さは・・・」 
轟音の鳴り響く中だが、地獄耳で『青』が科白を聞き取り、ある事態を予測する! 
「(は、破滅現象このままだと全員死ぬ!!)」 
「…掴まれ!!」 
手を差し出して叫ぶイルヴに対し、半ば反射的に其の手に触れる一同。 
再びテレポートするイルヴ。 
間一髪で『青』達の居なくなった地が消滅した。
執筆者…鋭殻様、A夫様、is-lies

次に『青』達の現われた場所は、小さな部屋の中だ。
蛍光灯の青白い光が、リノリウム製の床や壁に反射している。
PCのあるデスクや、テーブル上の飲み掛けコーラ。 
床には雑誌や菓子のビニール袋が散らばっていた。生活の臭いある部屋である。
「…ッ……こ…此処は?」 
膝を突き、焦燥し切った顔でイルヴに問うエース。
老練の術士は悠然と佇みながら、静かに呟く。
「……対エーテル素材でコーティングされた建物だ。
 この中なら破滅現象も起こりっこない」
「ちょ…誰か来るわよ!」
彼女の言う通り、部屋に1つの扉が開く。
直ぐに隠れようとする『青』達だが遅過ぎた。
っつぷああぁぁぁああ! 
 やっぱ自分の部屋がいっちゃん楽になれ……」
入って来たのは、白みがかった長い金髪男…… 
其の眼前には両腕を組み、巌の如く構えるイルヴ。 
「…イルヴさん?アンタ何時この部屋に? 
 ……って、もしかしてセレクタに入る気にでもなったか?」 
「今来たばかりだ。直ぐに逃げねばならない状況になったのでな… 
 以前、勧誘された時にマークさせて貰っていた。 
 其れと、セレクタに入る気はまだ無い。 
 前支配者はワシ自らの手で屠るのだからな」 
どうやら知り合いの様だが、話が見えて来ない。 
「イルヴ…其の男は?」 
対『SFES』、対『前支配者』組織『セレクタ』…の一員、『エーガ』という男だ。
 前支配者の話は以前『青』にしたが 
 この世界の破滅を目的とした異界の魔物だ。 
 後、SFESというのは世界規模の闇組織。 
 其れ等への恨みを持つ者が結成した組織が、この『セレクタ』だ。 
 前支配者繋がりでワシもよくスカウトされてな… 
 まあ、入る気なんぞ微塵も無いが……」
「ちょっとちょっとイルヴさん、 
 機密をンなベラベラ…第一、そいつ等誰っすか?」
執筆者…is-lies
イルヴの説明に何かを思い出そうとする『青』だが、 
先ずは目前のエーガという男を納得させる方が先だろう。 
「…イルヴさんの仲間…ってトコだな…いてて」 
「大名古屋国大戦の英雄『青』だ。 
 こっちが同じくエース。 
 其方の4人は出会ったばかりだが…まあ仲間だな」 
「ま、御邪魔させて貰うぜ」 
抱えていた雷光と『青』をドカッと降ろしてソファーに座るゼイノ。 
花憐は丸薬らしきものを怪我人2人に飲ませていた。 
「…って、勝手に寛いでんじゃ……!」 
「おい…TVを見ろ…」 
一同が部屋のTVに眼を向けると特番が組まれていた。 

 

    『地球全域で破滅現象』
みるみる顔が青褪める一同にも構わず、番組は進む。 
どうも富士山へのレーザー攻撃は、 
通常では有り得ない事に、地球の核まで浸透…… 
其の衝撃か何かなのか…全国各地で破滅現象が始まっていた。 
このまま事態が推移すれば… 
地球は後2日で危険域に突入……最悪、破滅する。
破滅現象を抑えようにも、何から何迄も謎の現象。 
抑制手段どころか正体すら解らないモノを、2日で抑える等不可能だ。 
これに対し、各国は共同して簡易航宙機を解放 
国民を一時的に宇宙へと脱出させるプロジェクトを始動。 
其の内、宇宙ステーションや火星へでも移動させるのだろう。 
「馬鹿な!破滅現象が何故…っゲホゲホ! 
 あれは国の箝口令が敷かれて………」 
「既に事態が隠蔽出来る域を越えておるからじゃろ? 
 まあ、各国も裏で脱出計画を練ってはいた筈だ。 
 併し何故……あまりにも急過ぎるぞ」 
イルヴの話に聞き入る一同を他所に、 
花憐はエーガのPCを「ちょっと借りるわよ」と言って立ち上げ、何やらメールを作製していた。
無論、エース達には見えない様に… 
『六色仙花各員指令』 
送信した後、痕跡をデリートしPCから離れる。 
其の眼は六色仙花リーダーとして相応しい気迫を顕わにしていた。 
「其れが本当の話なら、私達も早く航宙機に乗り込まないと!」 
「エーガさん!大変です!」 
1人の少年が、扉を開けて部屋へと入って来た。 
赤いケープと帽子、術士然とした風貌である。 
『ライーダ』か…大変なのは解ってる。 
 俺も直ぐに出掛ける支度をする!」 
どうやらセレクタの面々も、各国の航宙機に乗る様だ。
一方、『青』の頭の中では、ピースが揃っていた。 
前支配者…異界の魔物…実体が無く…人に寄生する。 
日本皇国摂政藤原……其の背後の…赤い翼のオーラ……
執筆者…is-lies

「なんで俺がこんなことを・・・」 
資材を肩に載せて運びながら『青』が呟く。 
「ほら、文句言ってねぇで働け。」 
ここはセレクタの工場。
『青』やエーガが運んでいる資材は、ここで作られている宇宙船のものだ。 
「イルヴさんの仲間だって言うから
 司令にお願いして特別に乗せてやるんだからな。」 
「それはありがたいが・・なんで雑用なんか・・・」 
「まさかこんな早く地球が危険域に入るとは思ってなかったからまだ未完成なんだよ。
 『働かざる者食うべからず』っていうだろ。」 
「じゃ、なんでイルヴさんや花隣はなにもしてないんだっ!?」 
「うるさいなぁ。イルヴさんは大事なお客様だからだよ。」 
何十キロもあるであろう資材を軽々持って、行ったり来たりしながら答えるエーガ。 
「じゃ、花隣は?」 
女の子に力仕事させるわけにはいかねぇ。
「・・・」 
「ほら、ボーッと突っ立てないでさっさと運べ。
 さっさと完成させないと地球と一緒にオダブツかも知れないぜ?」 
資料を肩に担ぎ、時に妄想しながら自分を励ましつつ、 
作業にまでこぎつけていった『青』・・・ 
この際、彼の金属コントロールの潜在能力(エーガ談)が役立ったのである。
しかし、彼の頭の中にはさまざまなピースが存在していた。 
・・・そして限りなく成功確率の低い夢が、少しずつ形になっているのに、誰も気づかなった。 
言葉で公開されるのは、まだ時期が早い上にほんのわずかしか骨組みが出来上がっていないが。 
「・・・・・重い・・・・・」 
エースは資材を持ちながら言う。 
「お前・・・・・戦闘の時とはまるで別人だな・・・・・色々な意味で・・・・」 
細い体格をしながらデルキュノはかなり重そうな資材を運んでいる。
人は外見によらないという一例である。 
「・・・・・単に頭に血が登ってただけなんじゃ?
 さあ、そんな事より仕事仕事!」 
エースとデルキュノは資材を再び運び始める。 
運搬されて来た資材が、予め或る程度組み立てられていた事から、 
簡易航宙機の建造は思っていたよりもスムーズに行われた。
執筆者…you様、A夫様、鋭殻様

  

 

このセレクタ日本支部は鬱蒼とした森の中…小さな湖の畔にあった。 
既に『青』達は航宙機建造で疲れ果て、寝所に入り込んでいる。 
今、この施設内で起きているのは、一部の見張りセレクタ兵のみ……の筈だった。 
セレクタ日本支部の屋上にあるフェンスに腰掛けている小柄な影は 
六色仙花の一員、花憐であった。
「……やっと来た」 
…ほんの数秒前迄、彼女しか居なかった屋上に、 
新たな5つの影が現われていた。 
夜天に輝く月明かりの下、彼等は集合した…六色仙花が… 
「…全員、任務は終わらせて来たの?」 
「無論だ。というよりも、 
 俺達の中に、そんなトロい奴は居ないだろ?」 
その空竜の言葉に「いんや」と否定の言葉を放ったのは 
炎柄の黒装束を纏った鉢巻男……六色仙花の『轟炎』
「俺の方は面倒事っぽかったんでエスケープ」 
詰まりは依頼放ったらかしなのだ。 
だが周囲のメンバーは其れを咎める様な視線を向けない。 
轟炎のエスケープ癖は今に始まった事ではない。 
「どんな仕事だったのですか?」 
薄っすらと青い黒装束に身を包んだ、 
これ又、青い長髪の女性が轟炎に問う。 
彼と恋人同士である『美氷』であった。 
「『SFES』とかいう組織の内偵さ… 
 ちょっと、警備がやばそうなんでな……」 
「お前程の者が面倒がる警備……だと?」 
闇に紛れた黒装束の男…『流影』が意外そうに言った。 
六色仙花の一角が攻略を難儀に思う程の警備… 
「獣人みてぇな奴等さ。だが隙が全くねぇ… 
 ま、別に良いだろ?地球崩壊ってんなら雇い主もターゲットも、とっくに逃げてるだろうし」 
何より、自分達も逃げないと危険だ。 
「ええ、次は私達の安全を確保すべきね」
執筆者…is-lies
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