リレー小説2
<Rel2.『青』3>

 

  京都郊外の医療施設

 

「先生、いかがなさいましょうか?」 
「まず彼に全身麻酔を行いなさい。このままでは治療が出来ないですし。
 (・・・しかし、最初見たときは驚いたわい・・・)
『青』は獣人達の手によって、医療施設に担ぎ込まれていた。 
その彼の容態は移動中にもひどくなっている。
特に異常なのは、赤い結晶が体内から皮膚を突き破って飛び出している点だろう・・・。 
どうやらこれが彼の上半身の痛みの原因と考えたほうが良さそうだ。
では、頭の痛みは?・・・それはこれから、明かされるであろう。
「・・・むにゃ、むにゃ。」 
そんな『青』の意識は、どこかへ飛んでいたようだ。
自身が引き裂かれる様な感覚。 
自身が沈みゆく様な感覚。 
其れは眠りであった。 
そして…其れは苦しみを伴っていた。 
痛み 
苦しみ 
嘆き 
『青』の意識は其れ等を乗り越え、漸く最底辺へと落ちゆく。 
まるで、今迄忘れていた記憶が再生されるかの様に… 
新たな世界でもう1人の自分を演じている錯覚の様に… 
其の中で、『青』は主観者であり…傍観者であった。 
過去の追憶。 
其れは夢。
執筆者…A夫様、is-lies

日が昇る。雲ひとつない、晴天の空に。 
そしてこれは、彼の忘れていた・・・もとい、抑えていた記憶であった。
「ん〜む、空気のうまい場所じゃねぇか!」 
深呼吸した後に1人の青年が体を伸ばしながら気持ちよさそうに呟く。 
それは『青』本人の姿である。そして側にあるテントの中から何者かが出てくる。 
「やっと起きたのか。何べん起こしても駄目だったから体悪いのかと思ったよ。」 
「ハッハッハ、そりゃーないぜ!」 
テントの中から出てきた男は『青』と会話した後、彼の肩をポンと叩く。
「・・・なぁ、バジー。朝一の準備体操に付き合ってもいいか?」 
「おう!じゃ早速始めようじゃないか。」 
バジーと呼ばれた男は喜びながら『青』と共に体操を始めた。 
と、その時。緑色の装甲車両が前の方から走っていき、停止する。 
停止した車の中からグレーのマントを羽織った、1人の男性が近づいてきた。
そして体操をしていた2人の男は同時に声を出す。 
「あっ!ジェントさんじゃないですか!」 
2人はジェントと呼んでいた、グレーのマントを羽織った男の方へ走っていた。
「おやおや、2人とも元気なようですね。で、エネミーの勢力は?」 
「ここら一帯は片付けられたよ。あ、弾丸切れかけだったから危なかったかな・・・。」 
「へへっ!おれ達がテント張って寝られたのも頑張った甲斐があったからな。」 
「ご苦労さまです。で、司令部の方へお二人方への要請があるんですよ。 
 それで、迎えにやってきました。なにせ事前情報が必須かと思われるので。」 
「そうか・・・分かった。おい!『青』も勿論行くよな?」 
「あったり前じゃねーか!!」
2人はテントを片付け、装甲車両に乗り込んだ。 
そして車両が発車し、荒野の野道を走り始める。

 

ここらで、『青』がおかれていた状況を説明しておく。
能力者と非能力者の大戦中、便乗して世界中の国家までもが争っていた。 
理由は恐らく、宇宙のどこかから飛来してきた「結晶」の力の大きさが関係しているのだろう。 
戦時の各国の中には大戦による被害に怒りを覚えていた者達もいる。 
彼らはいつしか統率のとれたレジスタンス組織「反乱軍」の結成に踏み切った。 
構成員の大半は母国の混乱や暴走を止めたい者達であった。 
さて、『青』だが・・・彼は昔の仲間「バジー」という男と共に、無料で傭兵として働いていた。
現在、反乱軍の航宙母船はベルトン国に停泊していた。 
『青』達が乗り込んだ装甲車両は、母船へと向かっていく。
執筆者…A夫様

若い兵が笛を鳴らした後、大声で報告する。 
「ナンバー63、到着〜!!」 
反乱軍の装甲車両は船内の格納庫へ向かい、そこで停車した。
装甲車から出る一同。 
暗い格納庫内には無数の車両が納められており、 
天井から吊るされたライトが其の姿を浮き彫りにしている。 
結晶タンクや様々な工具が散らばっており、 
御世辞にも片付いているとは言えない。
そんな格納庫の中、『青』達は張り紙の付いたドアを開ける。 
白い光沢を放つ壁と天井、タイルを模した鉄床が広がっていた。 
其れ等に別段、注目する訳でもなく、 
目の前のエレベーターに乗り込んだ『青』一行は母船・司令室へ到着する。
エレベーターから降りた『青』達は、数人の兵士達から歓迎も受けた。 
「どうぞお通り下さい。司令がお待ちしております。」 
兵士達が親切に道を開け、『青』達を司令室のドアまで導く。 
そして静かに門番の兵士が、ドアを開いた。
『青』・バジー・ジェントの3人は司令室へ静かに入室した。 
既に周囲には、傭兵や正規の構成員が数十人待っていたようであった。 
「ジェント・ドバン、只今到着しました。」 
物静かなジェントの言葉に反応して、司令も応答する。そして『青』達へ質問を行った。 
「ジェントよ、ご苦労。ところでその2人・・・『青』とバジーと言ってたな。」 
「はい、そうですが。」 
割と丁寧な態度で応答する『青』。そして司令は話を続ける。 
「西部にのさばっていたエネミーの勢力を掃討するのに成功したようだな。」 
「おぅ、その通りです。多少手こずったけれど、全滅を確認しましたぜ。」 
今度はバジーが司令に応答した。 
「ご苦労。では君達が揃ったところで話を始めることにする。」 
そして司令の話が始まった。同時に司令の背後のスクリーンが、 
何か地図のようなものを映してゆく。 
「諸君、まずはこれを見ていただきたい。」 
司令が後ろの巨大スクリーンを指差して、皆に話しかけた。 
「地図のようですが・・・」 
集合していた傭兵の1人が、スクリーンに映された画像を見て質問する。 
「うむ。確かにこれは周辺の状況を表したものだ。 
 今回、集合してくれた君達はここへ向かっていただきたい。」 
司令がスクリーンの地図に映された、赤い円の部分を指差す。 
そして、画面に街の風景が現れた。また司令が話を続ける。 
「さて、ここベルトンに停泊した我々の母船から10キロ離れた南東部に位置する街、イプト。
 ちなみに人口の規模は・・・2万人と広めだ。 
 現在、ここの周囲は何らかの襲撃を受けており、既に避難者の中にはここへたどり着いた者もいる。 
 そこで君達に、イプトに侵略してきた勢力の討伐を行ってもらいたい。 
 また、襲撃によって危機が発生した場合、現地の市民の救出も忘れずに。 
 出撃時刻は10時頃からとなる。それまで、念入りに準備をして頂きたい。 
 ・・・これにて今回の命令は終了となる。では、皆の健闘を祈らせてもらおう。」
司令の話が終わった後、集合した正規構成員や傭兵達が各次準備を開始した。 
その中に、『青』達も含まれているのだった。
一行は格納庫内に戻る。 
そこはすでに、機械や武具の整備を行う様子が多く見られた。
『青』一行が向かったのはナンバー63車両の隣。 
そこで座り込んでマシンガンの整備を行っていた『青』が話し始める。 
「見たところ、結構規模のデカい場所だったな・・・。」 
せっせとジェントが車の点検を丁度終えた後、『青』の会話に答えた。 
「はい。現時点であの場所は交通の要所でしたから。 
 ちなみに進行してくる勢力の規模は、そう多くないだろうとのことです。 
 ただ、それらによって集落が数箇所壊滅したとのことで・・・。」
ジェントの側で、鼻歌を歌いながらストレッチをしていたバジーが動きを止めた。 
「おっかねぇ話だな・・・なぁ、無事に帰れるんだろうな俺たち。」 
心配するバジーに『青』が答える。 
「大丈夫だと思えば、自然とそうなる筈だと思うぜ。」 
・・・その言葉に安心したバジーは、安らいだ表情でストレッチを再開した。
整備が終了し、既に出撃していく車両や戦闘機、航空車両などが進んでいく。 
南東のほうへ、全速力で。
反乱軍の兵士達がメガホンを使い、車両や戦闘機などの出撃を伝えていく。 
「ナンバー25、出撃確認〜!!」 
「ナンバー63、出撃準備完了ー!!」
車両内にて。すでに数人、胸の鼓動が大きく、早くなっている。 
もちろん、それを自覚するものもいた・・・。 
(次が俺たちの出番・・・よしっ、必ず生きて変えるぞっ!!)」 
「(・・・おれは大丈夫だと思えば大丈夫・・・よ、よしっ!)
ドキドキしている数人の乗員に、1人の兵士が車内で伝令を行う。 

「生野 忠治司令からの伝言!身の危険を感じた場合、時機を見計らって退避せよ!
  尚、これは各人の自由であるが命令の放棄は認めないものとする!・・・以上です。」 
(うむうむ、忠治司令らしい伝言だな・・・。)
心の中で『青』はそう思っていたのだった。まぁ、事実であるが。
そして『青』達の乗り込むナンバー63装甲車両が発車していった。 
決意を固め、危険地帯へ突入しようとしている反乱軍のメンバー達。 
それを見送るのは正規の兵士だけではなかった・・・。
執筆者…A夫様、is-lies

「・・・・・・」 
道を見渡せる崖の上で、何者かが車両や戦闘ヘリなどを見送る。 
それは人ではない。だがエネミーとも・・・何か違うようだ。 
何やら人の姿を保った、スカイブルー色のオーラである。
「死に急ぐ、か。」 
その「何か」は呟きながら、適当に地面に指らしきものを1本、当てる。 
2秒ほどたった後、何かは地面に当てていた指を離した。 
すると指を当てていた地面の部分がわずかに輝き、消滅していったのだ・・・。
何かはそのさまを見て思う。 
「(度重なる戦いとやらで、この地は・・・駄目なのだろうな。)」 
その直後、「何か」は消滅していった。 
いや、消滅したのではなく、瞬間移動したのだ。
執筆者…A夫様

さて、所変わって・・・しばらくした後、反乱軍の前方に街が見える。 
それがイプトだ。ただ、今は危機に見舞われているらしい。 
前方から乗り物に乗って避難していく一般市民たち。 
そして街の一部に、あがる火の手が。
反乱軍の侵攻部隊は、続々とイプトの街へと侵入していった。
そしてあちらこちらから銃声や爆音、悲鳴や叫びが聴こえはじめる。 
街の中ですでに戦闘が発生したらしい。 
ナンバー63車両が突入したのは、その時であった。
街の広場の部分で停車する装甲車両。
そして中から続々と反乱軍のメンバー達が武器を構え、車外へ出て行く。 
そして各次、救出などの活動へ向かっていった。
『青』達が街の中を進む前に、ジェントが命令の確認を行う。 
「いいですね?現地市民の救出と、侵攻勢力の討伐をお願いいたします。 
 それと危なくなったら、無理せずに別のメンバーの場所へ戻ってください。 
 どうやらこの状況を生で見ると、深追いは禁物のようですよ。」 
ジェントがいつもの物腰柔らかいペースを崩さず、『青』とバジーに命令を伝えた。 
「わかった!」 
2人とも威勢のいい声で返事をした後、街の中を進んでいく。

 

この先に待ち受ける苦難を、誰一人として知らずに。

 

逃げ惑う市民を誘導しながら、『青』達は進撃していった。 
「クソ!敵は一体何なんだ!」 
そう『青』が叫んだ直後、建物の窓ガラスを破壊して怪獣のような生物が飛び出す。 
その生物は体温が高く、まるで紅蓮の炎のように赤い鱗にほぼ全身を包んでいた。 
エネミー・サラマンダーと呼ばれている!
「おお!上かぁっ!」 
バジーがいち早く反応して、かなり長い剣を振り上げた。 
だが、サラマンダーが空中で体の飛ぶ向きを変えたために急所を斬ることができない。 
血を流しながら、サラマンダーはボロボロの車の上に着地した。 
そして車上から火炎を吐きかける。
「うわああぁっ!?」 
炎を吐く前に予備動作があったため、幸い仲間の被害は少なめで済んだ。 
そして兵士の一人が銃で反撃を加える。 
弾丸は脇腹に直撃した。その後サラマンダーはじたばたしながら 
緑色のガスを噴出して、燃え尽きるように消滅した。
「やれやれ、ビビらせるんじゃねぇよ。」 
愚痴をこぼしながら一行は先へと進んでいく。
執筆者…A夫様
『青』達は其の後も立ち塞がるエネミーを屠りながら 
街の中央部に迄、進む事に成功した。 
其れ程強いエネミーも出現せずに、 
この侭、楽に片付くかと思われた…併し…。
中央部に突き進んだ『青』達。彼らはこれまでに多くのエネミーを倒し、 
多くの住民を誘導・救出してきた。 
しかし全てとまではいかない。そして一部の者は負傷し、命からがら離脱した者もいる。
「なぁ、最初の頃に比べたら人数随分減ったな。」 
「ええ、予想外でした・・・少しでも知っておくべきでしたね、敵を。」 
すぐ近くでバジーとジェントが会話している中、『青』は無言であった。 
「・・・(妙だろ、なんだこの気配の無さは。)。」
既に街は火の手が回り、空までもが赤く染まって見える。 
燃焼音があちこちから聞こえる中、突如轟音が中心部に響いた。 
そして物凄い砂煙と建物の崩落が発生し、視界を奪っていく・・・。
しばらくした後、砂煙の中から数人の人影が立ち上がる。 
「・・・っ!!ハァ・・・ハァ・・・化け物め・・・!」 
そして砂煙がある程度晴れた後、全員の視界に巨大な怪獣が写った。 
・・・恐竜だ!
広場全体に、大きな咆哮が鳴り響く。
恐竜は人間の気配を感じるや否や、長くて太い尻尾を激しく振り回した。 
巨大な竿を思わせるそれは、あたりの廃墟と化しつつあった建物を完全に破壊していく。 
被害は大きく、反乱軍の小隊にも及んでいった。 
「うわあああぁ!!」 
絶叫とともに勢い良く2人の兵士が吹き飛ばされていく。
「ちっ!2人もやられちまったか!」 
「バジー!まずはこいつ倒そう!」 
舌打ちするバジーへ『青』が話しかける。
数人の兵士が後方へ吹き飛ばされた2人を救出に向かう間に、 
ジェントが両腕を組んで瞑想を行っている。それは魔法の予備動作であった。 
だが、瞑想中のジェントに恐竜が大きい音を立てて突進してくる! 
「あ、危ない!?」 
急いで『青』が駆け寄っていこうとするが、間に合いそうにない。 
だが、ジェントは焦らない。奴が射程に入っているからだ。
執筆者…A夫様
ジェントが開いた右手を恐竜の前に突き出すと、突如恐竜に数本の落雷が襲い掛かる。 
落雷の連射を浴びた恐竜はかなりの被害を被った。 
しかし勢いを落とさず、ジェントを跳ね飛ばす! 
「しまった!」 
『青』が叫んだときには、もう遅かった。すでにジェントの体は放物線を描き、 
瓦礫の上にたたきつけられる。 
そして恐竜は『青』の方に視線を合わせ、視界に移った彼めがけて尻尾を振り回す。
とっさの動作で身を伏せ、回避した『青』。 
思わずうっという声が漏れる。攻撃のチャンスがなかなかつかめない。 
尻尾を回避した『青』は見上げた。すると赤い炎をあげながら、何かの物体が恐竜に命中する。 
同時に爆音が鳴り響く。恐竜はそのショックに、横倒れになった。
「何も1人で戦う訳じゃないんですよ、『青』さんよぉ!」 
声の聞こえた方に『青』が視線を向けると、そこにはバズーカ砲を携えた兵士が 
車の上に立っていた。
そして車の横から鎧の男がかなり長い剣を振りかざし、走っていく。
「だあああぁぁー!」 
ガチャガチャと音を立てながら、バジーが全速力で恐竜のもとへ走っていく。 
その両手にハイロングソードを握りながら。恐竜はすでに起き上がり終えたところだった。 
そこに彼が捨て身の攻撃をかけ・・・
わき腹から長い直刃が命中し、恐竜は2度目の横倒れの状態になった。 
同時に突進のダメージが加わり、なんとホネが折れたらしい。 
その証拠に恐竜は悲痛な声をあげまくる。 
しかし、バジー自身も体にダメージを受けたため、倒れたままだった。 
意識はあるらしく、必死に体を動かそうとはしているのだが・・・起き上がれない。
腰をあげた『青』が呆れながら彼に遠距離から話しかける。冷や汗を垂らしつつ・・・ 
「骨折、してないよな?体痛めただけだよな?傷薬は・・・」 
そう言っている間に、恐竜の爪がバジーを狙っている。 
しかし、それは阻止された。氷柱が恐竜の中枢神経を貫き、撃破したからだ。 
ジェントは傷ついた体のまま、次の魔法を繰り出す準備に入っていたのだ。 
恐竜は数本の氷柱に内部から貫かれ、ピクリとも動かなくなった。 
急いで数人の兵士達が集合し、傷の手当てなどを行う。
右肩の方に傷薬を吹きつけながら、ジェントがバジーに話しかけた。 
「まったく・・・生命力のありそうな敵や複数の敵相手に捨て身攻撃は危険なんですよ。 
 わかりますか、バジーさん?」 
「で、でもよぉ。チャンスはあの時にしか。」 
そうこうするうちに、全員の治療は完了した。 
その間自分が役立たずだった『青』は無言だったらしい・・・。 
治療を終え、準備が整ったところで小隊は再び進もうとした。 
と、その時!

 

           ・・・グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

「うわっ!」 
「おおっ!?」 
「な・・・っ?」 
突如謎の地震が周囲で発生したのだ。そして揺れは激しくなり、 
しだいに何故か温度が上昇していくではないか!? 
このアクシデントに、混乱する小隊のメンバー。
「うわわーっ!何をしたって言うんだよー!」 
慌てて逃走していく一人の兵士。それを見てバジーが一言こぼす。 
「お、おれ達も急いで逃げよう!」 
「・・・そうですね、何かいやな予感がします。」
確認の後、全員は急いでその場から逃げようとした。 
その時、まだ残っていた建物がどんどん崩れ落ちていく・・・ 
この影響により、メンバーはバラバラになっていくのだった。
執筆者…A夫様

  イプト南外部エリア

 

「ハァ、ハァ・・・こっちは終わったぜ。」 
肩で息をする、若手の兵士。その前方には多数の生物の死骸が倒れている。 
どうやら少人数で複数のエネミーを切り伏せたらしい。 
「よし、引き上げだ。あらかた片付いたみたいだし・・・」
もう一人の兵士が言い終わろうとしたとき、突如地面が揺れ始めた。 
それと同時に、あたりの気温が変化していく。 
これは『青』達が体験したのと同じ、異常現象のようだ。 
その場に立っていた数人の兵士がパニックを引き起こす。
「う、うわあぁ!!体がっ!!」 
顔面を引きつらせ、剣を投げ捨てて、叫んでのたうつ兵士。 
「おい、奴を黙らせ・・・うヴーっ!?
小隊の隊長が命令を言おうとしたとき、突如あたりが太陽のごとく明るい光に包まれる。
・・・光が消滅した後には、怪しげなクレーターしか残っていなかった。
執筆者…A夫様

その頃、『青』は一人迫りくる高温と振動、そして光から逃げ出していた。 
「うおおおぉ・・・こ、こんな話聞いてないぞ!! 
しかも通った後の地面が破壊・・・」
「破壊」と口走った『青』の視界に、突然一つの場面が浮かび上がった。 
・・・小奇麗な部屋に、銀髪の中年の男性と自分の姿があったのだ。 
そして2人は椅子に座り、何かについて話しているようなそぶりを見せている。 
話を進めている間に、光景に映った自分が驚いている。 
いきなり映ったその光景に、『青』は無言で驚く。 
「・・・!?」
そして今度は会話の内容がダイレクトに聞こえてきた。 
「突然、急激な温度の変化や眩い光と共に、建物や、自然、生命、魔物、魂・・・ 
 この世に存在する全てのものが消滅していく・・・ 
 私をはじめとする皇国側の人間は『破滅現象』と呼んでいるがね。」
「・・・は、破滅現象?なんだ、この幻覚は。しかも幻聴まで?」 
突如自分の脳内に起きた現象に驚きつつも、『青』はひたすら走っていった。 
「破滅現象」と思われる謎の現象がすでに収まっていることも知らずに。
執筆者…A夫様
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