リレー小説2
<Rel2.101便・タカチマン8>

 

「時間がありませんね。 
 機関室へ向かうメンバーはそろそろ行動を開始したほうがいい」
機長室待機班、交渉班のメンバーが絞られていく中、 
機関室へ向かうメンバーはまだ誰も決まっていなかった。 
敵の裏をかくため、隠密、且つ戦闘力の高いメンバーを選出しなければならない。 
当然、SFESとの直接戦闘も予想される最も危険な班である。 
しかし、今のメンバーの中に適任者などそうはいない…。 
「セートは、どうすんのさ?」 
「私ですか? 
 もちろん機関室です。言い出したのは私ですからね」 
「じゃあ、決まりだ。僕も機関室に行くよ。 
 セートってさぁ、冷静な割には結構感情に流されやすくて、 
 見てて危なっかしいんだよね。 
 それに、あの扉は僕じゃなきゃ開けられないでしょ?」 
「ミレン…、助かります」
まず最初にセートが機関室強襲メンバーに名乗りを上げる。 
尤も、作戦立案者としては最初からそのつもりであったのだろう。 
そんな彼を見て、ミレンも機関室メンバーに加わる。
「他には…」
残りのメンバーを見回すと、 
レオンがライハに肩車をさせ、通気ダクトのフタを開けようとしている。 
どうやら、レオンも機関室に向かおうとしているようだ。
「俺もいくぜ」 
さらにリュージが名乗りを上げる。 
確かに、機関室を占拠し、動力源を取り戻したとしても、 
それを正常な状態に戻すためには、機械に詳しい人間が必要になってくる。
「ボクもいく!」 
何故か負傷者ユーキンまで強襲メンバーに加わろうとする。 
「メイさん、君を傍で守りたいのは山々だが、ボクは行かなければならない」 
「何言ってンすか? 
 御頭、怪我人なんだから大人しくしてて下さいよ」 
「心配御無用だバンガス! 
 そこのおねーさん、回復魔法使えるんでしょ? 
 この腕、直しちゃってもらえる?」 
ユーキンの腕を心配するバンガスを余所に、ユーキンはレシルを呼び止め、
石化した右腕を差し出し、回復を頼む。 
しかし、レシルは黙って首を横に振った。
「エーテル能力によって擬似的に石化したものなら解呪も可能でしょう。 
 しかし、あなたの右腕は物質的に石化してしまっています。
 石から肉体を作り出すことが出来ると思いますか?」
「へ? …て事は…」
「はい…あなたの右腕は、もう元には戻りません…。 
 …ただ、私達の敵、SFESの有するナノテクノロジーならあるいは…」
「お、御頭…」
石化した右腕はもう元には戻らないというレシルの宣告。 
さすがのユーキンもこれには動揺したかに思えたが…。 
どりゃぁぁぁぁッ!!!
突然、ユーキンが奇声を発し、石化した右腕で壁を殴りつけた。 
ユーキンの右腕は粉々に砕け散った
「ふう、これで少しは軽くなったぜ。 
 よく分かんないけど、とにかくそのSFESって奴を倒すしかないってことだろ」 
「カッコつけんじゃねぇよ、ユーキン。 
 お前が行っても足手まといになるだけだ。オレが行く」 
ユーキンの言葉に触発されてか、VIPルームに運ばれようとしていたハチが立ち上がった。 
「お前だって怪我人だろ!」 
「オレは精霊神だ。お前とは体のデキが違う」 
「二人ともやめてよ!」 
張り合うユーキンとハチだったが、ルキがドクターストップをかける。 
機関室強襲といっても、あくまで隠密行動である。
ただでさえ怪我が完治していないというのに、あまり熱血されても、むしろ迷惑なのである。 
しかし…
「メイさんを放って寝ているわけにはいかない!」 
「御嬢を放って寝ているわけにはいかない!」
同じようなセリフを吐いてハモるユーキンとハチ。 
もはやこの二人は止めても無駄なようである。 
少々呆れ顔のレシルも、それ以上言うことはなく、再び佐竹の治療に努める。 
一方、レシルと同じく負傷者の護衛に回ったシストライテだったが、
思いつめたような表情で、治療に専念できていない様子である。
「(SFESの交渉メンバーは4人… 
  アイツは…交渉ってガラじゃないわね…)」
ユーキンとハチの治療からは解放されたものの、佐竹は未だ重体。乗客の中にも負傷者は多い。 
やはりSFESの動向が気になるシストライテとレシルだが、ここで私情で動くわけにもいかない。 
シストライテがレシルに視線を送るが、レシルは小さく首を振る。
そんな二人の様子をルキは見逃さなかった。 
「さ〜て、手のかかる二人がいなくなったことだし、こっちは僕一人でいいよ。 
 おねーさん達はセートの方を手伝ってもらえるかな。 
 あっちにもサポート役が必要でしょ?」
「ルキさん…、すいません」
「礼なんて言われる筋合いはないよ。 
 頼んでいるのは僕の方だし、 
 それに、危険であることに変わりはないからね」
執筆者…Gawie様
機関室強襲メンバーが通気ダクトの下に集結した。 
セート、ミレン、レオン、リュージ、ユーキン、ハチ、シストライテ、レシル。 
メンバーの決め方にはやや問題があったが、一応にバランスの取れたメンバーではある。
機長室にはジードが待機。 
キムラが護衛に付き、ケイム、バクヤもここに加わる。
交渉にはタカチマン、ミナ、メイが臨み、 
リリィがミナの護衛に付く。 
さらに、話術には自信があるというライハも加わる。
VIPルームでは、 
カフュとルキが中心となって、乗客と負傷者の護衛にあたり、 
リエとジョニーがサポートに付く。 
また、作戦が失敗し、防戦になった場合、ここが最初の砦になることが予想される。 
そのため、バンガスとおトメさんもここで待機することにする。 
さらに、敵は壁抜けやテレポート能力を有するため、どこから現れるか分からない。 
アンディ、リッキー、ナオキングがVIPルームと機長室の間で警戒にあたる。
交渉開始まで、あと約30分… 
一同は武器、弾薬の補給を終え、まずは強襲班が作戦を開始する。 
「確認しておく、機関室の状況は分からないが、 
 恐らくは動力パイプに何か細工がされているだろう。 
 一分間…、アポジモーターの一基でも復旧出来ればいい。 
 後は俺に任せろ」 
「目標はあくまで動力源だ。 
 SFESと戦闘になっても無理に倒そうなどとは思うな。 
 不可能だと判断したら直に引き返すんだ。 
 強襲班のリーダーは…、セート君、頼めるな?」
「…分かりました」
「皆、異存はないな?」
タカチマンが最後に問う。 
勿論、全員が異存はない言えば、嘘になるだろう。 
しかし、ここまで来て異を唱える者なく、皆が黙って肯く。 
強襲班のメンバーは一度全員の顔を見渡した後、 
レオンを先頭にして、一人ずつ通気ダクトの中へ消えていった。
執筆者…Gawie様

「ちょっと宜しいですか皆さん?」
暫くダクト内を進んだ辺りでセートが小声で一同に話し掛ける。 
小声とはいえ狭いダクト内では反響して何とか皆にも聞こえていた。
「相手の行動の早さを見るに、盗撮ないし盗聴されている恐れがあります。 
 多分…此処は大丈夫でしょうが…盗撮機の類が無いか注意し、 
 なるべく物音を立てず、慎重に進んでいきましょう」 
聞いて了解の意を頷いて示す一同。 
石橋を叩いても渡っても損は無い。まだ時間はあるのだ。 
又、同時にシストライテとレシルは別の事も考えていた。
「(あのペンギン…そういえばセレクタの名を知っていたわね…… 
  組織の事は機内じゃ口に出してない筈だけど…)」

 

  101便・VIPルーム

 

怪我人で一杯の室内を忙しなく動き回るバンガス達。 
流石に戦闘の巻き添えで大小の差はあれ大半の乗客が負傷していた。 
だがルキという優秀な医者が居てくれた御蔭で、何とか順調に治療は進んでいた。
「あれ?」 
薬品の箱を持ってルキの所へ行こうとするリエが、 
床に座って、機能停止したジョイフルを調べるジョニーを見付ける。 
破壊した先行者のパーツと、ジョイフルの部品を見比べている様だ。 
「何してるんですか〜?」 
「ああ、このジョイフルってロボット、 
 大名古屋国大戦の勇者だったって言うから… 
 直したら使えるかな?なんて思ったんやけど… 
 こりゃ駄目や。流石はネオス日本共和国結晶兵器。 
 先行者のパーツで使えそうなはもあるものの、 
 肝心の動力結晶が完全に力を使い果たしてるんや」 
先行者の腕の間接パーツを置いて溜息を吐き、 
そんな事より自分の仕事があるだろうと顎でルキを指すジョニー。 
「はぁ〜い」 
リエは不貞腐れた様に箱をルキへと渡す。
「御苦労さん。次は…えーっと…… 
 向こうの棚に青いラベルのアスピリンがあると思うから、 
 其れ、取って来てくれる?」 
どうやら仕事は直ぐに終わりそうに無い様だ。

 

  101便・機長室前通路

 

心許無さそうに自作の杖を握り締め、 
緊張して辺りをキョロキョロと見回すナオキング。 
アンディが景気付けと称して歌い騒ぎ立てているのも 
鼓膜や頭を痛ませるが、其れ以上に……
 怖い
もう何人も乗客が殺されている。 
次は自分かも知れない。何処から来るのかも解からない。 
(…何でアンディさんはそんなに元気なのかなぁ……)
自分が乗った船がジャックされたというのに、 
このアンディは全く後悔や恐怖の色を見せない。 
其の底抜けに前向きな彼が、ナオキングには理解出来なかった。 
(無事に…終われば良いけど………)
執筆者…is-lies

  101便・スクウェアブロック

 

メイがゼペートレイネを発見したカジノは、彼女等の攻撃によってズタボロになっていた。 
床に散らばったコインを踏み締め、進んでいくと、
やや離れた辺りに大きめの洋風食堂が眼に入る。 
明かりは……付いていない……。 
だが其の扉は全開にされていた。奥には青白い蛍光灯の光が僅かに見えるのみ。
「さぁ…鬼が出るか蛇が出るか……」 
メイの言葉に息を呑むミナ。 
警戒しながら4人と1体は洋風食堂へと近付く。
ぽっかりと開いた入り口から、中の様子が少しだけ窺える。 
ファミリーレストランの様な作りになっており、 
真正面にレジがあり、横には小さな象牙のマリア像が立っている。
「……気を付けろ…」 
皆に注意を促して先頭を行くタカチマン。 
厨房の方は明かりも全く無いが、使用された痕跡はある。 
更にはミナ達の鼻にも食事の匂いが漂って来ていた。 
ペンギン太郎が「ランチタイム」と言っていた事から、 
会食でもするのかと思っていたミナが、僅かに安堵する。 
罠の可能性は少しだけ低くなった。 
だが其れでも罠でない事を証明は出来ない。 
ふと思った其の時、 
奥にあったテーブル上の蝋燭が灯された。 
「!?」
「ようこそ、皆さん」 
テーブルに座っていたのはあのゼペートレイネだ。 
不敵な笑みを浮かべ、胸の前で両腕を組んでいる。 
其の両端…メイ達から向かって右側にはクリルテース、 
そして左側には寝惚け目の少女が既に着席している。 
だが、一同の目を引いたのは、ゼペートレイネの椅子の後ろに居る魔物であった。 
醜悪な5頭を持つ巨大な四足獣…ヒートアックスとスピアを、 
筋骨隆々の両腕でがっしりと持ち、前面にクロスして置いていた。 
其れはタカチマン達を凝視しているものの、巌の如く沈黙し続けている。
「……アシュラか…」 
日本のごとりん研究所が巨額の資金を投資して開発したという魔物だ。 
だがタカチマンの知るアシュラと比べサイズが小さい。 
恐らく、有り余る力で航宙機ごと破壊しない様、能力を抑えられたアシュラなのだろう。 
「クスクス…安心なさい。話してる間は手出ししないわ。 
 其れよりも…女の子の手作り料理食べれたなんて幸運ね、タカっち。 
 でもメイちゃん、ウニのサンドイッチは頂けないわ。幾ら貴女がウニ好きだからって…」 
「御託は良いでしょう?」 
昨日の行動を細かに指摘されて驚くミナを他所に、メイがゼペートレイネの言葉を遮る。 
背後に控えさせたアシュラや、今の科白…明らかに揺さ振ろうとしている。 
此処で弱みを見せてはいけない。一気に其処を突き崩されてしまうだろう。 
「そね。其れじゃ御着きになって」 
大き目のテーブルの上には、エビと貝の乗ったスープや、 
小さな葉っぱがちょこんと添えられたグラタン等が置かれており、 
其の匂いに食欲を刺激されたライハがゴクリと唾を飲み込む。
「オードブルはエビとムール貝のブイヤベース、 
 生ウニのグラタン仕立て、フォアグラステーキのオニオンソース。 
 メインディッシュは牛フィレ肉のポワレ。デザートはフルーツシャーベット。 
 グラタンはメイさんのね。冷めない内に食べなよ」 
怒った感じのクリルテースが注釈を垂れる。どうも彼には歓迎されていない様だ。 
「そうそう、タカっちはこっちが良いんだったわね」 
言ってゼペートレイネが懐から取り出したのは御茶漬けの元であった。
「さぁて…食べながらで良いわ。 
 アタシ達、貴方達の能力を見縊り過ぎてたみたいね。 
 ミナちゃんの機転には驚かされたわ〜。ああやるとはねぇ… 
 でも、アタシ達も必死な訳。どうあってもタカっちを引き込みたいの。 
 タカっちの身柄引き渡しの代わりに乗員乗客全員を生きた状態で解放するわ。 
 方法は企業秘密。まあ、ちょっと解剖紛いの手術をさせては頂くけどね、 
 日常生活に支障が無い事は約束してあげるわ」 
「どうあっても…か? 
 お前達が本気になれば私を捕らえるくらい造作もないだろう。 
 それをしないということは、 
 やはり私が私の意志でSFESに与する必要があるということだ。 
 今の条件では、割に合わんな」
「完璧主義なのよ… 
 あッ、アタシが、じゃないわよ。 
 この作戦を考えた人ね。 
 ちなみにアタシは、この辺で妥協してもいいかなぁって思ってるわ」
タカチマン、ゼペートレイネ双方とも一歩も引かない。 
と、その時…
「お、美味ぇ〜! 
 コレ、アンタが作ったのか? 
 戦闘だけじゃなく、料理の腕もなかなかだぜ、アンタ。 
 おい! そこのゴツい奴も、そんなとこで突っ立ってねぇでこっち来いよ」
料理に最初に手を付けたのはライハであった。 
もしも、これが罠であるなら、真先に疑うのは、この料理に毒が盛られているということである 
しかし、ライハは躊躇することなく、それを口にした。 
勿論、ライハも分かっていないはずはない。 
「とりあえず、毒は入ってねぇみたいだ。 
 せっかくの料理なんだ。 
 冷めねぇうちに、まずは喰おうぜ?」
全員が料理を食べている中、ふと寝惚け目の少女が店の隅を見る。 
もっとも、誰も気付かなかったようだが。

 

店の隅― 
物陰から黒い小竜がその様子を見ている。 
「(SFESの人達には気付かれてるね、まぁいいけど。 
  というか、なんで僕がこんなこと・・・ 
  偵察なんてさせて当のゼロは何処で何してんのさ・・・・)」 
そんなことを思いながら、聞き耳を立てつづける。
執筆者…is-lies、Gawie様、you様
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