リレー小説2
<Rel2.101便・タカチマン7>

 

しばしの間、通信機からは特殊部隊長の呻き声のみが聞こえ続けていた。 
この間は数十秒だったのだろうが、ミナにはとても長い時間に感じられた。
《わかったで御座る・・・・》
彼がこう呟くのが通信機から聞こえた瞬間、
機長室を満たしていた重い空気が晴れ、何人かは安堵のため息をついた。 
《しかし!》
ビクリと反応する一同。
《今から・・約50時間後、明後日の夜7時。
 それまでに軌道修正がされていないようなら、
 ミサイルと言わずレーザーで瞬時に消えてもらうで御座る。》
「50時間・・・」 
そう呟いたのは誰だったのだろうか。 
ミナはその言葉に一瞬たじろぐが、これを断ればすぐにミサイルが発射されるだろう。
そもそも、軌道修正ができなければどちらにせよ死ぬことになる。
それはこの場にいる全員がわかっていることだ。 
ミナはみんなのほうを少し不安げに、確認するように振り返り、全員の目を見てマイクのほうへ向き直る。 
そしてしっかりとした口調で「わかりました。」と答えた。 
《幸運を祈るで御座るよ・・・》
その声は「失敗しろ」と言わんばかりだったが、
ミナにとっても、他の誰にとっても、それはどうでもいいことだった。

 

「(50時間・・ですか。思ったより長い時間になりましたね。)」 
機長室のすぐ傍の部屋で、先ほどまで機長室に居たゼロとグレイが
機長室から聞こえる声を魔法で大きくして耳を傾けていた。 
「(そうかな?着くのは4日目の昼でしょ? 
  だったらもうちょっと遅くてもいいと思うけどなぁ。)」 
「(まぁ、普通ならそう考えるでしょうね。 
  ですが、あの人の性格を考えれば、50時間も待ってくれるほうが奇跡に近いですよ 
  本当なら今すぐにでも木端微塵にしたいでしょうからね。)」 
「(んー・・・ 
  まぁ、そんなことより。なんで『あんなこと』言ったの?)」 
彼らの会話は二人以外には聞こえない。 
ゼロが魔力を使って相手の伝えたいことを読み取り、
さらに同じようにして逆に相手にこちらの伝えたいことを送っている。 
「(アレくらいの妨害をしても交渉にはなんの影響もないことはわかっていましたからね。 
  あそこにはシルシュレイさんの『小耳』が仕掛けられているでしょうから、
  敢えて聞こえるように・・・まぁ極端に言えば『恩を売った』んですよ。 
  もちろん、あれくらいじゃ大したことはないでしょうが、
  こちらに敵意がないことを証明することはできます。)」 
「(よくもまぁ、あの一瞬でそこまで頭回るね・・・・)」 
「(クス、どうも。)」
執筆者…you様

念には念を入れ、ミサイルのセキュリティーや、 
レーザー砲の設置管理は信頼出来る直属の部下に任せる様に伝え、 
タカチマン一行は特殊部隊長との通信を終了する。 
同時に、連戦で疲れ切った体から力が抜ける。
軌道修正と猫丸の救出。 
そして無事に救出されるか火星に着く迄に乗客を守り抜く。 
これで事件は解決出来るだろう。
疲れ切った仲間を休ませ、油断しない様に周囲を見張るタカチマンやリュージ。 
上下左右何処から敵が来てもおかしくはないのだ。
やがて通路に人影を発見するが、 
其れはキムラやメイ、アンディ達がであった。 
そして見慣れない人間が何人か…だが敵では無さそうだ。 
どうも後部から敵は来なかったらしく、貨物区画を調べていたらしい。 
尤も、収穫は何も無かったそうだが… 
「で、そいつ等は何なんだ?」 
メイ達と同行していた見慣れぬ5人の素性を聞くリュージ。
「初めまして、私はセートといいます。 
 そして、こっちの4人は私の仲間で、左からミレン、ケイム、ライハ、そしてレオンです。それから・・・」 
そこまで言うと、乗客のほうへ顔を向け、 
ルキバクヤ
と声をかけた。すると、乗客の中から二人の男が出てくる。 
うち一人は先ほど佐竹の怪我の治療をした医師だった。
「彼らも私の仲間で、白衣を着ているほうがルキ、・・・・欠伸をしているほうがバクヤです。」 
バクヤと呼ばれた青年はその言葉に反応して口を閉じる。 
「・・・それから、あと二人。 
 この二人は現在もVIPルーム内を調べているはずです。」
そこまで言うと、リュージが口を開く。 
「仲間は多いにこしたことはない。よろしくな。俺は・・」 
「あ、お名前はもう知っているので結構です。」 
「は?」 
そして、セートはキムラ達と会った時と同じやりとりを繰り返し、
ふと横を見ると、タカチマンが少し疑いの混じった目を向けているのに気付く。
「どうかしましたか?」 
「・・・・君達は何者だ?」 
「『何者か』とはどういう意味ででしょうか?」 
「君達の手際のよさはただの一般人には見えない。疑うわけではないのだが・・・」 
「・・・それはお話できません。
 ただ言えることは、私達もあなた達と同じただ巻き込まれただけの一般客です。」
『ただ巻き込まれただけ』の言葉にタカチマンが一瞬反応するが、気付いた者は居ない。
「そう・・か。いや、疑ってすまなかったな・・」 
「いえ、状況が状況ですから。 
 ・・・・それより、こちらの状況をお聞かせ願えますか?」 
その言葉に、タカチマンとリュージが落ちついた様子で語り始める。

 

「……成程。軌道変更ですか……で、可能なのですか?」 
「…正直に言えば難しい。 
 ……まあ、見て貰えれば解かるだろうが…」 
モニターが破壊された機長室を見渡し得心するセート。 
更に言うなら仲間達も疲れ切っている…休憩させないといけないだろう。
「……私とリュージ、リリィそしてジードは 
 まだ調査をしておく。疲れているのなら今の内に休んでおけ」 
「そうだ、見張り位は必要だろ? 
 俺達は軌道修正の方法、何とか探してみるが、 
 敵ゃ何処から来るか解からないからな…」
言いながらリュージがまだ動けそうな者を探し始めると、 
アンディとリッキーの姿が眼についた。 
全く疲れていないどころか、寧ろ今迄よりも溌剌としている。 
其れも其の筈。この2人は完全な夜行性であり、 
今の今迄、寝惚け状態で動いていたようなものなのだ。 
丁度良いと、この2人に機長室前警護を任すジード。 
既に体力の限界に来ていたジョニー達は、 
ルキやメイから簡単な手当てを受け、泥の様に眠りへと落ちた。 
乗客達と雑魚寝となってしまうが、やっと訪れた休息の機会を逃す手は無い。
執筆者…is-lies、you様

  101便・機長室前【アンディ、リッキー】

 

機長室前の警護を任されたアンディとリッキー。
夜行性の彼等は、 疲れ果てて眠る他のメンバーとは目のギラ付きがまるで違っていた。 
都会の片隅の吹き溜まりで夢を見続けていた二匹のドブネズミ。 
あと1歩。あと1歩で、自由と信じる地、火星へ行ける。 
だが・・・・
「・・・にしてもえらい事に巻き込まれちまいましたね・・・・」 
リッキーが壁に背を凭れて呟く。 
「まあ、アレだ、不幸の星の元に生まれたってやつだよ。 
 仕方無ェよ、ネズミはお星様にゃ勝てねェさ。」 
ポケットに手を突っ込み、ふにゃふにゃした口調でアンディが返す。
「・・・・静かっスね・・・」 
「・・・・・・・・ああああクソォッ!ムラムラしてきやがる・・・ 
 俺は静かな夜ってのは大嫌ェなんだよ!おい!歌うぞ!」 
「ちょっ・・・何考えてるんスか!?」 
この後に及んで、歌を歌おうと言うのだ。 
・・・・他のメンバーの事はお構い無しで・・・ 
「あーっああ〜・・・ふぅぅぁっ行くぜッ!!」 
「ダメっスよ!他の皆さんお休み中っス! 
 それに俺達は警備を任されたんじゃなかったんスか!?」 
アンディが大きく息を吸いこみ、今吐き出そうと言う所で、 
リッキーが辛うじて其れを止める。
「うるせェ、他人の事なんて関係無ェ!歌うぞ! 
 ウォオ〜アァイアィムァ〜アンチクラィスト!!!「ダメだ・・・手が付けられない・・・・」 
大声を張り上げて歌い出すアンディ。 
シャウトを繰り返し、アナーキーな台詞を吐き出していく。
「うるせぇぞお前!!!静かにしやがれ!!!」 
・・・・当然、苦情が来た。
執筆者…しんかい様

  101便・機長室

 

アンディとリッキーに見張りを任せ、他のメンバーには休息を取らせる一方、 
航路修正のためジード、タカチマン、リュージの三人は黙々と作業にあたっていた。 
そこへ、メイとミナがサンドイッチとコーヒーを差入する。
「お疲れ様です」 
「サンキュ、そう言えば、地球を出てから何も食ってなかったな」 
「実は、さっきセートさん達がVIPルームから食材を見つけて来てくれたんです。 
 それで、私達でなんとか…、あの、お口に合うか分かりませんが…」
VIPルームから調達してきただけあって、食材はいずれも一級品であった。 
ただ、それで作ったのがサンドイッチであるというのがまた可愛らしくもあり、 
流石は女の子といったところである。 
中には、何故か生ウニを挟み込んだモノが含まれているのが気にはなったが、 
一同にとっては何にもまして元気付けられるものであった。
暫しの休憩の後、ジードが思い出した様に口を開く。 
「あのセートって連中……信用出来ると思うか?」 
「……さぁな…だが…」 
言ってタカチマンが寝静まった乗客達の方へと視線を向けた。
其の先にはセート達の姿も見え、眠っている事が確認出来る。
とはいえ手練であるならば、眠った彼等にも隙が無い事は解かるだろうが。 
但し、バクヤと呼ばれたメンバーの一人は隙だらけで熟睡してる。
「…ああも無防備になられると……な」
「だが、相手…SFES連中の能力ってのも良く解かってねぇんだろ? 
 例えば…そうだな、人間を操る能力とか…そんなのがあれば……」 
確かに敵の能力が未知数である以上、用心するに越した事はない。 
況してや相手の正確な人数すら解かっていないのだ。 
「…現在、話を纏めてみると…敵の力はこうなるな…」

 

細川小桃…空間移動・魔法弾・炎魔法・再襲来の可能性は低。 
キララ…隠された能力があるらしい。詳細不明。 
ゼペートレイネ…融合・分離・武器に能力吸収効果。 
アヤコ…氷魔法・魔法弾・触手の召喚。 
アズィム…衝撃波・氷魔法・雷魔法。 
寝惚け眼の娘…剛力? 
クリルテース…金縛り?・空間移動ないし姿消し? 
????…声真似?

 

「…随分と情報少ねぇんだな……」
タカチマンの走り書きがジードの気を滅入らせる。 
「まあ、今は猫の手でも借りたい程なんだ。 
 それに敵意があるならとっくに襲い掛かって来ているさ」 
どうやらリュージはセート達を歓迎している様だが、 
ジードやタカチマンはそうでもない感じだ。
「後ろからグサリは御免だぞ?」 
「…だからこそ、こうやって私達が起きているのだろう…」 
監視も仕事の内というタカチマンに、ジードも「違いない」と苦笑で返す。
執筆者…Gawie様、is-lies

初めは一通の手紙だった。
全く子離れ出来ない親を、何度も鬱陶しく思ったものだ。
過保護が過ぎる親に、碌に外出すらさせて貰えなかった彼にとっては、
美容師の見習いとして出稼ぎをしている兄からの手紙は、
当時、彼の好奇心を掻き立てるには十分であった。
外の世界はどんなものなのだろう?
色んな国の色んな人々が集っているのだろう。
どんな生き物が生息しているのだろう?
幼い少年の好奇心は日に日に大きくなり、
遂には住み慣れた家を後にしてしまった。
後悔を…してはいないだろうか?

 

まだ重たい瞼をゆっくりと開く。
窓から差し込んでくる陽光は…無論、無い。 
真っ白な天井と、幾つものライトが視界に飛び込んで来た。 
そう。今、彼は航宙機に乗っていたのだ。4日間の航宙の途中である。 
そして…非合法組織SFESと交戦中なのだった。 
其処まで思い出し、彼…ナオキング・アマルテアはガバっと上体を起こす。 
「え…ええっと…今……」 
機長室内の時計に眼をやると……

 

  101便・機長室
  AM10:08

 

「やっと起きたみたいだな」 
銃の手入れをしている暗殺者の少年キムラが視線も向けずに呟く。 
其の眼には疲弊しきった昨日には見られない焔が宿っていた。
周囲を見回すと焦燥し切った乗客達が眼に入るが、 
其の数は眠りに入った時の半数にも満たない。そして其の中にタカチマンも含まれていた。 
「た…タカチマンさん達は!?」 
信頼を寄せる魔導科学者の不在に豪く慌てるナオキング。 
「安心しろよ。VIPルームに乗客を連れに行っただけだ。 
 機長室だけじゃ狭苦しいからな。其れに………」 
「其れに?」 
愛銃シューティングスターに、リュージの弾丸を装填するキムラに、 
少年は不安を隠し切れず、何があるのかと聞いてみる。
どうやら昨日の襲撃からSFESに動きが全く見られない様なのだ。 
航宙機内を闊歩していたエネミーや先行者も其の姿を消し、 
不気味な程、機内が静まり返っているのだという。
「SFESが何か企んでいるんだろうな… 
 早めに連中と接触して、交渉しないといけないんだ。
 小泉にやったSFESの情報公開をネタにな」 
時間が経過するにつれて危険は増していく。 
この場合、切り札は早い内に出しておいた方が良いだろう。 
更にキムラが言うには、SFESには最低でも2つ… 
最悪3つの要求をしなくてはいけなくなったらしい。
現段階で軌道修正は不可。
専門的な知識が必要になるという以前の問題で、 
SFESが航路データを破棄していたらしい。 
「猫丸、俺等の身の安全、軌道変更… 
 相手が脱出手段を持っているなら其れと猫丸だ」
執筆者…is-lies
「ジードさん、でしたか。 
 あなたも少し休んだらいかがです?」 
一晩中操作パネルと格闘を続けていたジードにセートが声をかける。 
しかし、ジードが手を休めることはなかった。
「軌道修正はやはり不可能ですか?」 
「さっきからやっている」 
配線を繋ぎ直しながらジードが答えるが、
その声は、疲れと苛立ちが隠せないという様子である。
「操舵システムは、間違いなく俺達の手にある…」
「どういう事です?」 
「小泉の話ではこの船はアテネ市街地に墜落するコースにあると言ったな。 
 それを口実に、この船を攻撃するという自作自演が奴等の目的だろう。 
 それに、航路プログラムを書換えたところで、 
 最終的にはスペースダストや火星の天候による誤差を修正する必要がある。 
 つまり、操舵システム自体は間違いなく生きているということだ。 
 航路プログラムの修正は不可能でも、要は少しでも軌道をずらせば問題ないはずだ」
説明しながらジードは、破壊された操縦桿の配線を繋ぎ、操作パネルに何か入力する。 
しかし、僅かに計器が反応するものの、直にエラーを表す赤いランプが点灯する。 
「くそッ…」 
「やはり、動力源を抑えられているようですね」 
「ああ、その様だな」
さすがにジードも諦めて、その場にしゃがみ込み、操縦桿を床に放り投げた。 
すると次の瞬間、コンソールから警告音が鳴り響き、 
先程まで僅かにしか反応しなかった計器類が狂ったように動き始めた。 
「な、何をやったんですか!?」 
「何もやってねぇ!」 
ジードが飛び起きて計器を確認する。 
パネルを操作しても、やはり何の反応もない。 
しかし、全ての計器の値はみるみる上昇し、最大値を示す。
「…これは…馬鹿な…この船は加速しているぞ!」
ダメモトでコンソールを操作するジードの後ろで 
セートは最悪の展開を予想する。 
「そんな!………それでは…まさか……」 
「そのまさかしか考えられねぇ! 
 SFES連中……予定を繰り上げる積りだ!」
こうなっては各国も静観出来ないだろう。
何時レーザーが発射されてもおかしくはない。
必死で手を尽くすものの、一向に警告音は止まない。
「何があったんですか!?」 
ナオキングとキムラ、メイやミナが 
残った乗客達と共にジード達の方へと詰め掛ける。 
ジード達の慌て様に只事ではなく…更に、 
自分達にとって決して好ましい状況ではなくなっていると感じたのだろう。
其の時、部屋中にイヤらしい含み笑いが響く。 
「くくくくく…くぺ…くぺっぺっぺっぺっぺ……」 
「誰だ?こんな時に変な笑い声してる奴……!!?」 
乗客の一人が、妙な笑い声の出所を探ろうとして… 
………視線を壁へ釘付けにする。 
壁から目付きの悪いペンギンが入って来ていた。 
空間移動ではない。壁を透過しているのである。 
このペンギンにジードは見覚えがあった。 
カフュと共に乗務員室に隠れた際に遭遇した敵。 
又、メイも見た事があるらしく、震えた事を喉から搾り出す。 
「あ…貴方は!!」 
「まぁた会ったペンね、敷往路メイ。 
 SFESエージェント『ペンギン太郎』様だペン!」 
展開にオロオロするナオキング達を見、メイが説明する。 
「敵です。以前、戦った事があったのですが… 
 SFESだとは思いませんでした…」
「くぺぺ…SFESだとは思わなかったって… 
 敷往路メイ、君、変な事言うペンねぇ…くぺぺぺぺ」 
「何がおかしいんです?」 
表面は平静を装い…だがメイの内面では 
ゼペートレイネに…SFESに対する怒りが渦巻いていた。
「君達、予想以上にやるペン! 
 特にジード君の能力は過小評価し過ぎたみたいだペン」 
メイの質問には答えず、嬉しそうにジードへとペタペタと拍手を送る。
「だから、ボク達もちょっと反省したペン。さっさと詰めに入るペン。 
 ボク達、SFESは君達と話し合いの場を設ける用意があるペン。 
 そろそろ皆で出した結論を聞かせて欲しいんだペン。 
 君達は何人で来てくれても結構。ボク達の方は4人で行かせて貰うペン。 
 場所はスクウェアブロックの洋風食堂。 
 12時ピッタシ……ランチタイムといくペン」 
其れだけを言うとペンギンは穴に落ちる様にして、 
床を透過し、姿を消す。気配はもう感じられない。 
機長室内は再び警告音が響くのみとなった。
執筆者…Gawie様、is-lies

「そうか……SFESが痺れを切らしたか…」 
VIPルームに大半の乗客を移していたタカチマン達は、 
機長室に戻って来た矢先に、事の次第を告げられた。 
航宙機の動力源をSFESに抑えられている… 
十中八九、SFES本営は最後部の機関室だろう。
「あれ?タカチマンさん、其れ何ですか?」 
タカチマンが持っているのは何枚かの紙切れや本であった。 
更にケースに収められたCDも幾つかある。 
「VIPルームで見付けた物だ。 
 どうやらSFESは最初、VIPルームに潜んでたらしくてな。 
 仕掛けられていたトラップを解除して入ったら、 
 これが残されてただけだった。一応持って来た」
空いた椅子の上に下ろされる荷物。
『フレンチ料理入門』 
『タカチ魔導研究資料』 
『良い子の絵本・はちしまい』 
『ルカ・シニョレッリ』 
『世界の美術品・宝石編』 
『最小単位と最大単位』 
『PLASMODIUM』 
『創世記』 
『俺の武器(えもの)神明14年度版・フランス特集』 
『サンサーラ』 
「?何じゃこりゃ?」 
リュージが気の抜けた様な声で質問するが、答えられる人間は居ない。 
子供の絵本やミリタリー雑誌、料理本に何の共通点も見付けられない。 
「連中の趣味なんじゃないんスかね?」 
「まあ、今はそんなもの、どうでも良いでしょう。 
 大事なのは……これからどうするか…です」 
メイが皆の意見を伺う。 
彼女自身の意見は決まっているのだろう。 
力強い口調と凛とした目付きが其れを物語っている。
「そうですね…」 
セートが拾ってきた雑誌をめくりながら話す。 
「これらは一般向けに出版されたもの… 
 連中の目的を知る手がかりになるとは到底思えませんね。 
 …これ以外は…」 
セートはその中の一冊『タカチ魔導研究資料』を拾い上げた。 
しかし、タカチマンは直にそれをセートの手から取上げると、黙って懐にしまい込んだ。
何か言いたそうな顔のセートだったが、
それ以上追求することはなく、更に話を続ける。 
「彼等…SFESの出方をここで考えたところで、後手に回るだけです。 
 そこで、ジードさん。 
 動力源を取り戻せさえすれば、軌道の変更は可能なのですね?」 
「ああ、間違いない」 
「ならば、こうしましょう。 
 ジードさんはここで操縦桿を握り軌道変更の準備にあたる。 
 ケイム、ライハ、レオン、ルキ、バクヤはジードさんの護衛。 
 そして残りのメンバーで一気に機関室を抑える。 
 作戦開始は12時ジャスト、
 交渉に臨むフリをして、先手に出ます」
今まで一方的に攻められていた相手に対して、
初めて攻勢に出ようというセートの意見に一同が目を向ける。 
しかし、それは決して皆の賛同を示すものではなかった。
「ちょっと待て、何でオメェが仕切ってんだよ?」
「そうだな、大体、勝算はあるのか? 
 それに、俺の護衛がなんでコイツ等なんだ?」 
不意にカフュが反論し、ジードもそれに続く。 
「信用出来ませんか? 
 いや、信用しろと言う方が無理かもしれませんが…」 
「悪いが当然だな。 
 それに、お前等、俺たちの名前を知っていたな?」
「あ、そう言えば、アタシの名前も知ってわよね? 
 なんか聞いてるとアンタ等が本当にエーガの部下だってのも怪しくなってきたわね」 
「お前だって十分怪しいんだよ! つぅかエーガって誰だよ?」 
「あ…、それは…」 
「要するにだ、俺達が戦っている最中、お前等はコソコソ隠れて見てたって訳だ」 
「おいおい、そりゃないんじゃねぇか? 
 俺達の助けがなけりゃ、アンタ等やられてたかもしれねぇんだぜ?」
セートが弁明する間もなく、問い詰めるカフュ。 
同じく正体不明のシストライテも吊られて話に加わり、思わずボロを出し。 
何時の間にか輪に加わっているレシルも何食わぬ顔で状況を見つめる。 
更にキムラも異を唱え、それにライハが反論する。 
成行きで仲間になったとはいえ、謎の協力者達を信じたいという気持ちはあった。 
しかし、焦りと緊張も手伝い、
「素性は話せない」と言う彼等に徐々に募らせていた不信感がついに爆発した。 
気まずい雰囲気の中、穏健派のミナやナオキングもオロオロするばかり。 
そんな中、タカチマンが重い口を開く。
「…やめるんだ」
執筆者…is-lies、Gawie様
「は? 何をです?  
 大体、博士…アンタだって…」
「いい加減にしろ。 
 確かに彼等を完全に信用することは出来ない。 
 しかし、
 彼等は「素性は話せない」と言ったな。 
 ならばそれでいいだろう? 
 本当に我々を欺くつもりなら、偽名の一つでも考えるものだ」
「そりゃ…、そうだが…」
「それに、私もセート君の意見には賛成だ。ただし…」
タカチマンの作戦はこうだった。 
セートの言う通り、ジードが軌道変更ために機長室に待機。 
数人がジードの護衛に付く。 
そして、残りのメンバーで機関室に向かい。 
SFESとの交渉には、タカチマンが一人で臨むというものであった。
「待って下さい。 
 私も…あの人達に話したいことがあります」 
「…いいだろう」
ミナもSFESとの交渉に参加することを希望する。 
こうなると、ミナの護衛のために交渉メンバーは増やした方がいいだろう。
「問題は、どうやって奴等に見つからずに機関室まで行くかだが…」 
「それなら私に考えがあります」 
セートがそう言いながら天井を指す。 
「なるほど、ダクトか…」 
「上手くいけば、カーゴブロックまでは行けるはずです」
SFESに対して先手を撃つ最初で最後の作戦になるかもれない。 
一同は慎重に各班のメンバーを話し合う。 
そんな中、ふと、ナオキングがタカチマンに問う。
「あの、タカチマンさん。 
 勝算は、あるんですか?」
「…勿論だ」
メンバーを割り当てとなったのだが、 
キムラは機長室でジードを守りたいと言って来た。 
彼としては寝惚け目の少女から受けた屈辱を晴らす為、 
機関室を強襲したい所だろうが、やはり友が心配なのだろう。 
何だかんだいっても暗殺者キムラは優しいのだ。
問題はキムラの雇い主たる敷往路メイだが、彼女は交渉の場に赴くらしい。 
SFESの方から交渉を持ち掛けて来たという事は、 
まず間違いなく猫丸も交渉材料にして来る筈だ。 
そして其の席にゼペートレイネ自身が着く可能性は低くない。
何とかして機関室占拠の時間稼ぎだけでもしなくてはならない。 
交渉の場に4人しか来ないという事は、 
残りの敵は機関室に揃っていると見ても良さそうだ。 
易々と落とせはしないだろう。
ダルメシア、佐竹やユーキンは負傷が激しく、 
ルキ、シストライテとレシルがVIPルームで治療に付き、 
寝てばかりで足手纏いになりそうなバクヤや 
機能停止したジョイフルも此処に入る。
「怪我人の護衛は俺に任せてくれないか?」 
獣人少年のカフュだ。 
彼の高い戦闘能力は是非とも機関室占拠に持って行きたいが、 
万が一の事態を想定し皆が了承する。
タカチマンと擦れ違った時、小声でカフュが呟く。 
「もし相手がこれ以上の暴挙に出たら… 
 アンタも移籍を考えた方が良いかもな」

 

部屋を出、VIPルームに向かうカフュ達。
先頭はルキ、シストライテが歩き、後方はカフュ、レシルの二名が歩いている。
負傷した佐竹達は乗客が背負っている。 
カフュがふいに呟く。
「・・・・言っとくが、俺は完全にお前等を信用した訳じゃない。
 もし何か変な動きをしたら・・・・・容赦しないぜ・・・・」 
レシルは何も言わない。 
それに対して前方の方からルキの声がする。 
「今はそんな事言ってる場合じゃないだろ?今は怪我人の事を考えてようよ。」 
カフュはその言葉を了解したのか判らないが、無言で頷いた。
執筆者…Gawie様、is-lies、鋭殻様
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