リレー小説2
<Rel2.101便・タカチマン5>

 

  機長室への通路途中

 

「う、酷い・・・・・・・」
ナオキングが気持ち悪そうな顔をして呟く。その先には、船員の無残な死骸があった。 
彼の表情を見た佐竹が口を開く。 
「戦いとはこういうモノだ・・・・・・ひょっとしたら更に無残なモノもあるかもしれない。
 眼を背けてはいられないぞ。」 
ナオキングは沈黙する。 
「そうそ。こんなもんじゃすまないヤツもあるかもしれないぜ。なんなら今から戻るか?」 
ジードが言う。 
「た…タカチマンさぁん…オロオロ」 
「……行くぞ。足を止めている暇は無い」 
ズンズンと先を急ぐタカチマン達。ナオキングも蹌踉として後に続く。

 

 

  101便・スクウェアブロック

 

メイがSFESのゼペートレイネと戦ったという場所であった。 
部屋中央の花壇に血痕の様なものが付着して、赤い百合を創り上げていた。 
カジノコーナーは半壊し、スロットは全滅と言っても良い。
「うわぁ…カジノ滅茶苦茶じゃん…早めに遊んどきゃ良かった…(--;」 
騒ぐカフュを無視して一行は最奥、スクウェアブロック隔壁へと到着した。 
「これが隔壁ですか…」 
ナオキングがゴツい隔壁を見上げて誰にともなく呟く。 
横の壁にあるカードキー挿入スロットの上には赤いランプが灯っていた。 
「ああ。メイさんも此処で引き返したらしい。 
 ジードさん、解除は可能ですか?」 
佐竹の声に、先ずは不言実行のジード。 
ミスリルゴム製の特注ノートパソコンを起動させ、 
隔壁には怪しげな機械を取り付け、其れとPCをコードで繋ぐ。 
「さて……始めますか」 
執筆者…鋭殻様、is-lies

数分後、隔壁は呆気無くジードによって開けられた。 
一行の前に現れたのは三又の通路。 
左右には上の階への階段へと通じる通路。 
前には両側に扉が多数あり、奥に機長室への扉のある通路。 
飾りが豪奢であり、床には赤い絨毯も敷いてある。 
VIPルームブロックであった。
何処からともなく小音量で流れるクラシックの曲。 
血の臭いも争った形跡も無いのが逆に不気味であった。 
「……各部屋に熱源反応を確認しました。生身の人間であると思われます」 
アンドロイド・リリィがサーモグラフィーを使って情報を収集する。 
「………例の……SFES…と見た方が良いでしょうか…… 
 皆さん、此処から先は前後左右に気を付けて下さい。 
 何処から敵が襲い掛かって来てもおかしくありません」 
佐竹の言に気を引き締める一同。 
ナオキングやジョニー、佐竹を庇う様にして円陣を組む。
「おろおろおろ…」 
戸惑うナオキングを抑える佐竹。 
その場には、それぞれの呼吸の音だけが聞こえていた。 
皆は武器を手に、集中する。 
タカチマンだけは、周りの気配を察知するかのように 
じっと動かず、目を閉じていた。 
「あの…」 
そんなタカチマンに佐竹が声をかけようとする。が、 
すぐにジードが手を出し、佐竹を止めた。 
「………」 
緊迫した状況は続く。
…と其の時、リリィが何かを捉えた様で皆に向って叫ぶ。 
「皆様、左から何者かが近付いて来ます!」 
言い終えたと同時に向って左、一番手前のドアが勢い良く開かれ、 
顔中に出来物のあるオーガが2匹飛び出して来た。 
「ガアアァァァアアアアア×2」 
オーガ達は花瓶を振り被って攻撃しようとするが…… 
そらっ!
リュージのラリアットがオーガ達を捉えたのが早かった。 
先のリリィの言葉が彼等の反応力を高めてくれる。 
ゲボハァァアアアァァ!?×2
顔の出来物からブシュゥゥゥゥと一斉に汁を噴出しながらどっと倒れる2匹のオーガ。
「見掛け倒しだったな……って……!?」 
良く見ると、オーガは人間の女であった。 
突如襲い掛かって来た事と、其の醜悪さで間違えてしまったのだ(間違えるなよ)。 
しかも、彼女達はTVでも見た事がある。 
ゴージャスで露出度の高いファッションを用いて人々を吐かせまくった挙句、 
ヌード写真集やビデオ迄出して世界を混乱させ、 
アメリカには「モンスター!」「日本の恥!」として報道された 
あの『化膿姉妹』である。
芸能人という訳ではないのだが、他の有名人にダニの如く取り付き、 
巧みに自分達を話題にさせる事で名を売った姉妹であった。 
因みに、この顔でも整形した筈なのだが…どうやら素地が悪過ぎた様だ。 
タカチマン達をテロリストと勘違いして攻撃して来たのだろう。
「あ〜…これ、どうする?」 
完全にノび、白目を剥いてヨダレを垂らす醜い姉妹を指してリュージが問う。 
「放っておけ」 
冷たいタカチマンの言葉、だが其れに異を唱える者は誰も居ない。 
何故なら…… 
「だよな。出来モンうつされたら敵わんし…
リュージはラリアットかました腕をはたいて同意を示す。 
一同は化膿姉妹を床に転がしたまま先へと進んだ。
お前等、結構薄情だナ…
だが、勘違い野郎は化膿姉妹だけではなかった!
執筆者…is-lies、ごんぎつね様
さきほどの化膿姉妹との遭遇で、
微妙に緊張感の薄れていたタカチマン一同が鉄壁に囲まれた回廊をすすむと、
いつのまにやら横からドタドタいう音が響いてくる。 
「む・・・あの足音だと、おそらく人間が二人…後、自律型兵器の類だな」 
佐竹が低い声でそう言う。その目は周りにどうするかの意見を求めている。しばし緊迫。 
「行くしかないな。しかも、あの音の感じだと尋常じゃないだろうし・・・」 
 ジョニーが口火を切り、剣帯から十字剣を抜く。
そのままジョニーが、大またでドアに近づきキーを操作する。
鍵は掛かっていなかったらしくドアが電子音を立てて開いていく。
タカチマンたちは武器の用意をしながら、何が現われるのかとしばし待つのであった。
ドアが半分ほど開いたところであんまり思い出したくない声がナオキングの耳に聞こえてきた。
無意識的にため息をつくナオキング。
またあれですか・・・。 
「チキューノ」 
「ミライニー」 
「ゴホーシ」 
「スルニャーン」 
・・・またあの不細工なロボットであるところの先行者だった。
しかし、先行者達はタカチマンを待っていたのではなく、
ヒゲメガネのオッサンものすごいデブを追いかけていたのであった。
ヒゲメガネのオッサンは、微妙にデコが後退してわりと腹に肉が溜まっている感じだ。
なんというか全身から似非文化人オーラが沸いているような気がするのは偏見だろうか。
一方デブのほうは、近くに一分でもいたら窒息しそうな暑苦しさで 
関西人なら100人が100人ブタ!といいそうなガタイをしている。
特に鼻がひしゃげているのがいただけない。
二人とも何をしたのか知らないが、ハァハァヒィヒィ言いながら先行者4体に追い回されていた。
どちらもデブなわりに機敏である。が、デブが激しい動きをすると暑苦しい物である。
ドアの先にはそんな実に美しくない景色が広がっていた。
一番最初に動いたのはリリィであった。
「非戦闘員を確認。救出のために突撃します。皆さんは援護をお願いします」
ドレス状の装甲の襞からブーストをふかし、最寄の先行者に接近、
相手がドリルを構える前にショットガンの銃口をどてっ腹に叩き込む。
壁に叩きつけられ、ずり落ちた先行者の胴や四肢は大きくひしゃげている。
先行者達は僚機にダメージを与える存在の出現に、
それまでの優先順位の低いターゲットを捨てリリィたちを狙う。
急に先行者が向きを変えたことに気が付くヒゲとデブ。
船員かレスキューと思ったのだろうか、いきなり横柄な口を利く。
「ハヒィハヒィ・・・おい、どうなってるんだこの船は!
 火星に着いたらお前らのことを訴えてやる!私はエンプティブレインの浜村だぞ!」
「そうですよ!お前ら訴えてやる!って、これはダチョウか。
 エンプティブレインのコネを使ってお前らを社会的に抹殺してやる!!」
タカチマンたちとしては、これから戦闘と言う時に
こんなことをわめかれても迷惑である。しかも人違いである。
おまけに流れ弾がこいつらに当たらないように
セーブして戦わなければいけないので、先行者に微妙に苦戦していた。
「あー、うるせぇ!すっこんでろ!そこのデブとヒゲ」
リュージがドリルを避けながら叫ぶ。 しかしデブとヒゲメガネは余計うるさく叫ぶ。
「何をぉ!お前等、エンプティブレインの怖さを知らないんだろ!? 
 見てろよ、この伊集隠 光がTV、ラジオ、ネット、書籍… 
 あらゆるメディアで、お前等を糾弾してやる!俺をナメんなよ!」 
デブがハンカチで汗を拭き、中指を立てながら偉そうにのたまう。
執筆者…Mr.Universe様、is-lies
先行者達との戦いに加え、庇っている筈の連中から飛ぶヤジ。 
遂にジョニーがキレて、デブこと伊集隠に喰って掛かる。 
「さっきから聞いてりゃ何勝手な事言うとんのやブタ!
其の一言に、両手を肩の辺りで広げ、口と眼を広げる伊集隠。 
何処からともなくガーンという効果音が響いて来た気がする。 
「ぶ…ぶ…ぶ…ブタだとぉ〜!?」 
ブルブルと体を振るわせる伊集隠を見、流石に言い過ぎたかとジョニーも表情を崩す。 
だが休む暇は無く、ブレードを構えて突撃して来る先行者を回避。 
一方、伊集隠はいきなり片足の爪先だけで回転を始め、 
尻を突き出す形で体を気色悪く撓らせ、 
肘を脇腹に付けたまま両手の人差し指を立て、ビシッと右へ向ける。 
「俺様決定。死刑ッ!!」 
憤怒の形相でジョニーを睨み付ける激デブ。
「う…うわぁ……」 
人間のものとは思えぬ其の顔に、ジョニーは迂闊にも怯んでしまった。 
其の隙を突いてジョニーに迫り来る先行者…そして伊集隠光。
「そうだ、あのルークフェイド先生からアドバイスを貰おう! 
 30000ガバスも出せば問題無かろう!勝訴の暁にはガミ通でも大きく取り上げてやるぞ!!」 
まだ何かホザいてる浜村は無視し、戦いを続けるタカチマン達。
「死ねやオルァ!!」 
伊集隠が背中から取り出した野球バットを振り回す。 
だが所詮はデブ。 
死角である腹の下に素早く潜り込んだジョニーに、バットの一撃が当たる筈も無く、 
逆に十字架大剣の一撃をモロに喰らって倒れる。 
伊集隠を黙らせた勢いのまま、先行者との戦いに加わるジョニー。
だが併し、外野はもう一人居た。 
「き…貴様、暴力だッ!! 
 こんな事が許されて良いのか!?」 
ヒゲメガネの浜村であった。 
「何言ってるんですか!先に襲い掛かって来たのは…」 
「あれはパワプロの練習なんだよォ!!」 
ナオキングの言へ強引に返し、浜村は自分の鞄を漁り始める。 
「何とか…写真を撮って……勝訴に漕ぎ着けねばッ!!」 
そんな間にもタカチマン達は先行者を2体に減らしていた。
執筆者…is-lies
敵が減り、邪魔なブタが気絶した事で漸く勢いを取り戻すタカチマン達。
「よし!見付けたぞ!」
鞄からカメラを取り出し、倒れた伊集隠や、戦闘中のジョニーの写真を撮る浜村。
無論、思いっきり邪魔なのは言う迄もない。先行者達の反撃が始まる。
せっせと写真を撮る浜村に佐竹のしらーっとした視線が向けられた。
やがて2体の先行者が蟹股で地団駄し、コマネチを始めたではないか。
そう、先行者の必殺技『中華キャノン』が放たれようとしているのだ。
「す…直ぐに止めなきゃ…うわっ!?
魔力を杖に集中したナオキングが、撮影に夢中になっている浜村に押し退けられ、バランスを崩す。 
先行者2体が其の絶好の好機を見逃す筈が無かった。
先に大地のエネルギーを充填し終えた先行者が、 
ナオキング…そして浜村に中華キャノンをブッ放す! 
「ナオキッ!」 
寸での所でタカチマンがナオキを抱えて中華キャノンから逃れる。 
ついでに、傍に居た浜村も蹴飛ばして中華キャノンの効果範囲から出す。 
へぶっ!?何をするんだ貴様っ! 
 この暴力男・・いや、暴力集団めがっ!!」 
助けられたことに全く気付いていない浜村。 
このヒゲメガネへの、この場に居る者の殺気が頂点に達した丁度この時、
一人冷静なリリィが先行者を全て片付けていた。 
全員の冷たい眼差しが浜村に突き刺さる。
「や…やっと終わったのか?何だったんだ、アレは!? 
 あれが放送にあったシャトルジャック一味なのか!? 
 お前等も、客をこんな目に遭わせて唯で済むと……… 
 いや、だから何なんだ!其の目はっ!!」 
どうやら浜村は、BIN☆らでぃんの放送以後の事態を、全く飲み込めていない様だ。
弁解も説明も面倒なので、佐竹がBIN☆らでぃんから没収した眠り薬を、 
ぎゃーぎゃー言ってる浜村に素早く嗅がせる。 
為す術も無く伊集隠の上に崩れ落ちるヒゲメガネを背に、 
タカチマン一行は機長室へと向かった。
執筆者…is-lies、you様

途中にあった無人の最前部クルーブロックを横切り、 
遂に機長室前へと到達する一同。 
左右には前部RMS収納ブロックへ通じる下り階段。 
正面の機長室ドアはガッチリとロックされていた。
「………血の匂いがするな」 
「内部に先行者の駆動熱反応はありません。 
 又、微弱な生体熱反応を所々に捉えましたが、 
 98%の確率で死人と思われます。更に爆弾反応も皆無です」 
タカチマンの一言を聞いて、リリィが間を置かず探査結果を述べる。 
多分、機長他の乗務員は皆殺しにされているのだろう。
「ですが、油断は禁物です。 
 何が起きても対処出来る様に御願いします」 
ジードにロック解除を頼み、佐竹が皆に注意を促す。 
辺りが緊張に包まれる。
愛銃プルートを手にするタカチマン。 
彼から離れぬ様にして、十字架大剣を構えるジョニー。 
オロオロしながらも魔力を練り始めるナオキング。 
銃を取り出し、退路を確保する佐竹。 
佐竹を守る様にして辺りに視線を這わすリリィ。 
後ろの方で生唾を飲み込むリュージ。 
何が起こっているのかも解っていないであろうリエ。 
そして…黙々と作業を続けたジードによって、機長室の扉が開かれた。
カキン!
扉が開いたと同時に、金属音が響く。 
其れが何であるかを確かめる暇も無く、機長室の上から何かが落ちて来た。 
「!!!!!」 
乗務員の死体であった。片足だけをロープで縛られ、天井に吊るされている。 
体には殆ど外傷は無いのに、顔だけが原型を留めぬ迄に破壊されていた。 
眼球に刺し込まれた5本のボールペン、 
鼻を削ぎ落とされて顕わとなった穴から溢れる血、 
其れは見せ付ける為の虐殺死体であった。 
ジョニー、リュージが悲鳴を上げて飛び退き、 
ナオキング、リエは加えて涙目にすらなる。 
佐竹も体を一瞬、震わせた後、冷や汗を流してしまう。
「詰まらん事を……」 
物言わぬ躯を退けて堂々と機長室へと入るタカチマン。 
室内は更に惨憺を極める光景であった。 
天井に串刺しにされた乗務員達が、床に血の池を作り、 
椅子に座っている機長には首から上が存在しない。 
壁に血で書いたと思われる「Welcome」の文字と髑髏の絵。
「うわぁ……悪趣味なやっちゃなぁ……」
肝心の端末類は、全てが全て壊されている。 
壊されているといっても外面だけだが、内部の配線も幾つかは切断され、 
専門の知識がないと、どうしようもないといった感じだ。 
又、モニターはエラーメッセージが映ったままフリーズしている。
「派手に壊されている……だが修理はそんなに難しくなさそうだ」 
流石に今迄扱っていた機械類とは勝手が違う。 
とは言っても全く手に負えないものでもない。 
一般的な航宙機内通信設備のデータをリリィが持っていたので、 
思ったよりも通信機能の回復は簡単そうだ。 
ツール類を取り出し、修復作業に当たる面々。
一方、ナオキングは機長室の扉を閉め、辺りを見回す。 
油断は禁物だ。SFESの中に壁を通り抜ける能力者が居る。警戒して損は無い。
暫し、機長室は緊張と修理の金属音に包まれる。
「なぁ…何か悪いわな……俺が変な連中に狙われたからって言って… 
 こんな事に巻き込んじまって……」 
ジョニーが邪魔な配線を片手で退け、通信配線を修理しながら、 
タカチマンやナオキング…リュージやリエに詫びを入れる。
「……ば…馬鹿言わないで下さいよ!ジョニーさんは悪くありません!」 
「おうよ!退屈な宇宙の旅が刺激的になって丁度良いぜ」 
「だからって怖い目に合うのは御免です〜!! 
 ほんっとうに怖かったんですよぉ?ポッド確認! 
 ……其れにこの部屋にだって一秒でも早く出たいんですぅ!」 
涙目のリエに「ちったぁ我慢しろ」と返して作業再開するリュージ。
「大丈夫、任せていてくれて!ねぇ、タカチマンさん!」 
太鼓判を押すナオキング。だがタカチマンの方はというと、 
ジョニーと同じく修理に勤しんでいた。 
其の沈黙が、単に作業に沈潜しているだけなのか… 
保証出来ないという意思表示なのかは不明だ。 
不安になるナオキングを佐竹が勇気付ける。 
「そうですね…SFESが欲しているのがタカチマン博士で、 
 ツャアの言う様に、彼の意思を尊重するというのなら、 
 いきなり強硬手段に出る事も無いでしょう」 
尤も、今でも十分強硬手段に出ているのだが……
其処でふと佐竹は考える。 
何故タカチマン博士の意思をそんなに尊重するのか… 
本田宗太郎が大戦中にした様、洗脳して手っ取り早く引き込まないのか? 
其れとも…タカチマン博士には……何か理由でもあるのか?
執筆者…is-lies
「あの…博士」 
佐竹がタカチマンに声をかけた。 
タカチマンは、少し間をおいたあと、口を開いた。 
「…何だ」 
そう言うと、再び佐竹に背を向けて作業を再開するタカチマン。 
佐竹は話を続けた。 
「失礼なお話ですが… 
 タカチマン博士、貴方は 
 過去にSFESとの関係があったりしますか…?」 
また少し間を置いてタカチマンが口を開く。 
「少なくとも、私の記憶には無い」 
「そうですか…」 
佐竹はまた考える。 
その場には修理音だけが響いていた。
「・・・ナオキング。ジョニー。」 
タカチマンがふと作業を止め口を開く。 
「自分の身は・・・・自分で守れ。私を・・・頼るな」 
その言葉には今までにない程の重みがこもっていた。 
表情を変えずに言い放つので尚更だ。沈黙するナオキングとジョニー。
「何時までも私が生きていると思うな。私の力等、所詮・・・」 
まるで自分の死を予感しているかのようなその言い回しに、 
2人はどこか戦慄を覚えた。 
この会話を聞いていた佐竹も、何か引っかかるものを感じていた。 
「記憶が無い」と言ってはいるが・・・
やはりその失った記憶の奥底で眠る何かが、彼の意識の中に有るのではないか。 
表情は読めない。だが、その言葉の中にはその「奥底で眠る何か」が 
見え隠れしている・・・佐竹はそう感じていた。
密室。屍。血。妙な緊迫感と圧迫感の中に響く無機的な修理音。 
状況に耐え兼ねたナオキングがリュージに問う。 
「リュージさん・・・修理、 
 あとどのくらいかかるか・・・わかりませんか?」
「そうだなぁ……もう……ちょい………よしッ!」 
リュージが弄っていた配線を繋ぎ直し、がばっと顔を上げる。
「博士、ホットライン通信は大丈夫だと思うぜ。ちょいと試して見てくれよ」 
どうやら修理は終わった様だ。 
タカチマンが東日本ホットラインを繋ごうと端末を操作し始める…… 
BIN☆らでぃん達の使っていた回線を発見し、接続。
数秒の沈黙の後……繋がった。
執筆者…ごんぎつね様、しんかい様、is-lies
だが佐竹達の予想に反し、モニターに映ったのは傭兵風の男であった。 
緑色の髪に「01」と書かれた鉢巻を付けている美形男だ。 
《……そッ!こんな事が紅葉に知れたら良い笑いモンだぞ…… 
 はぁ?…おい、おい!俺が壊した訳じゃないぞ!? 
 勝手にコイツが動き出しただけで………って、アレ?》
フレームの外に居るであろう人物に向かって何かゴチャゴチャ言っていた美形男が、 
漸く通信が繋がっている事に気付いた様だ。画面一杯に顔を近付ける。 
《な…何だお前っ!?》
「………其方は東日本政府でしょうか? 
 我々はBIN☆らでぃん一味にジャックされた航宙機101便の搭乗員です。 
 BIN☆らでぃんは我々で抑えました。ですがSFESと名乗る集団… 
 恐らくBIN☆らでぃんを扇動したのも彼等でしょう。彼等が航宙機内を支配しています。 
 一応、乗客は生存しています。直ぐにでも救援部隊を派遣して頂きたい」 
《………………》
佐竹の科白をしらーっとした顔で聞きながら、 
其れに答えず何故か端末を操作し始める美形男。 
《あれぇ?『ミツヲ』さん、其れ繋がってるんじゃないんですか!?》
美形男…『ミツヲ』と呼ばれた男が、其の声に慌てて振り向き、
何故か画面を隠す様にしてフレーム外の人物にぎこちない笑いを浮かべる。 
《いやいや、何にも映っていな………》 
《あ、101便からじゃないですか!!》 
ミツヲを押し退けて画面に映る男…作業服姿のマジメそうな男だ。
「何か……あったのですか?」 
傭兵染みたミツヲや、作業員風の男……彼等の背後の景色もまるで倉庫の様に薄暗い。 
だが回線は東日本のホットライン。間違えようが無い。 
《そ…そうだ!簡潔に説明しますと……え〜…… 
 先のBIN☆らでぃんの攻撃直後………地球全体に『破滅現象』とかいうものが起きて…… 
 大規模な地球脱出計画が開始さているんです。我々も撤退する準備を………》
「な…何だとッ!?」
叫んでモニターに信じられないと言った眼差しを向けるのは佐竹である。 
「ど…どうしたんですか〜、佐竹さ〜ん?」 
「そういえば…佐竹さんが調査していたのって、 
 其の…破滅現象…ですよね?どんな現象なんですか?」 
ナオキングの問に答えたのはリリィだ。 
其の口から淡々と語られた破滅現象の仔細を聞き、 
リュージ達が顔色をみるみると変えていく。
急激な温度変化と眩い光と共に、万物が消え去ってゆくという正体不明の現象… 
政府が混乱を避ける為の箝口令を敷いていた為、 
民衆には大した情報が入っていなかった様だ。
カラーーーン!
持っていたスパナを落とし、呆然とした顔で何かを言おうと口を動かすジョニー。 
だが其のパクパクと動かす口からは途切れた息しか出て来ない。
火星移民第一世代の祖父に、小さい時から聞かされて来た地球…… 
其れが航宙機の攻撃を引き金に崩壊しようとしている……。 
扉へ踵を返し、出て行こうとするジョニー。 
「じょ…ジョニーさんっ!?何処へ!?」
慌てて引き止めようとする佐竹。
「決まってるやろ!キャビンルームや!! 
 BIN☆らでぃんのアホ、一発シバかにゃ気が済まん!!」 
佐竹の腕を払い、ドアを開こうとするジョニー… 
………だが………
「…!!!………扉が………開かない…!?」
執筆者…is-lies
inserted by FC2 system