リレー小説2
<Rel2.101便・タカチマン3>

 

コツコツ・・・
VIPルームへと続く通路を一人の男が歩いている。
光に当たる度、ちらちらと輝く白髪が特徴的な20歳後半くらいの青年・・
先ほどユーキン達にこの事件の真相の一部を話したゼロである。
その肩にはグレイと呼ばれる、黒い小竜が載っている。
「どこ行くのさ?」
「SFESのみなさんに会おうと思いましてね。」
「SFESって・・日本に来た時にゼロを勧誘してきた組織でしょ?
 勧誘振った今、行っても大丈夫かなぁ」
VIPルームへの扉、VIPルームはその名の通り、VIPとして待遇されたものしか入ることはできない。
そのため、一般客が出入りできないよう扉はカードキーを通さないと開かないようになっている。
「・・・・」
ゼロはおもむろにカードリーダーに手を当て、なにか小声で呟く。
ピーッ
ランプが青く光り、扉が開く。
そのまま扉をくぐり、通路をしばらく歩くゼロ。
そして・・一つのドアの前で止まった。

 

  101便・VIPルームB−4

 

「入りな、そこに居るのはわかってるぜ。」
キィ・・
静かにドアが開き、白髪の男が姿を現す。
「さすがですね、『シルシュレイ』さん。
 ・・・『セイフォートの耳』の能力者、そして、SFES『最強』の男。」
「ふん、おだてたって何も出ねぇぜ、ゼロ。」
「何しに来たの〜?」
「ええ、この計画について少々聞きたいことがありましてね。」
「フッ、もう大体わかってるんだろ?さっきだって奴らに喋ってたじゃねぇか。」
「やはりバレてましたか。
 まぁ、いいじゃないですか。このほうがあなた方にとっても都合がいいでしょう?」
「・・・」
「私が思うに、あの『荷物』は商品でしょう?」
「さすがね〜。クスクス」
「・・・『レイネ』。」
シルシュレイが大女のほうを少し睨む。
「そして、BIN☆らでぃんですが、あれは要するに身代わりですね?
 彼には前科がありますから、怪しまれることはない。
 さらに、彼はΩ真理教を嫌っていた。
 ・・・あなた方にとって、既に邪魔でしかないその組織をね。」
「クスクス、もうそこまでわかってるなら聞くことないんじゃない?」
「レイネ!」
先ほどよりきつく、睨むシルシュレイ。
「はいはい、ごめんなさい」
「さて、後わからないのはこの後の収集をどうするかです。
 このままではいずれ足がついてしまう。
 航宙機を堕とすにしても、下手なところに落としては証拠が残ってしまう。
 かと言って、下手に爆発させたりしても怪しまれる。
 あなた方はこの壮大な構想をどう終わらせるつもりですか?」
「テメェにはこれ以上教えねぇよ。また奴らに教えるかもしれないしな。」
「そうですか・・・」
「知りたきゃSFESに入るんだな。」
「そうね〜。あなたが入ってくれたら、SFESはまさに最強ね。
 その頭脳、戦闘能力、どれをとっても一級品ですもの。クスクス」
「それはもう断ったはずですよ。私は組織へ属するというのは性に合わないんです。」
「それじゃ・・もぅここに居る理由はねぇはずだ。」
「・・・わかりました。それでは失礼します。」
そう言うと、ゼロは向きを変え、その部屋を後にした。
「ホーント、変わってるわね。クスクス」
執筆者…you様

  火星・アテネ「リゼルハンク本社ビル・会議室」

 

数々のモニターで映る異形や戦闘メカ達…
SFES商品のデモンストレーションである。101便内を舞台とした…
既に101便内の乗務員が数名殺されている。
併し、このスナップ映像にもゲスト達は騒がない。慣れているのだ。
「…そろそろ頼むぞ」
手にしていた携帯電話を切り、アヤコへと居住まいを正す老人。
「さて、アヤコ様。
 細川小桃様は能力を以って101便へ乗り込みますので、
 アヤコ様にも便乗願えないでしょうか?」
「…そうね。解ったわ」
「話は決まりましたな。
 其れでは小桃様……」
細川小桃はコクリと頷き、ブツブツと呪文らしきものを唱える。
一瞬、辺りが暗くなったかと思うと、小桃を中心に数条の光が床から立ち上がり、
細川小桃、アンドロイド・キララ、アヤコの姿は部屋から掻き消える。
無論、魔女フェチ大統領がカメラを構えていたのは言う迄も無い。
「もしもし?ああ、シルシュレイか。
 其方に随員する予定だった細川嬢、アヤコ嬢が転移能力で向かった。
 粗相の無い様、丁重に持て成し給え」
携帯電話を切り、ゲスト達にモニターへの注目を呼び掛ける老人。
魔女を生で見れた事に感激のあまり放心しているデリング大統領を
現実世界に引き戻すのに四苦八苦したのは又、別の御話である。
執筆者…is-lies

  同時刻
  東日本・リゼルハンク放送スタジオ

 

大きめのスタジオの中央…
黒いソファーの上に3人の男女が座っていた。
1番左端に居るのは蝶ネクタイをした男性…司会者の様だ。
真ん中で踏ん反り返っているのは化粧のケバイ中年女…
毒舌と態度の悪さに定評のある『ノームラ・サッチー』。
右端で資料らしきものを見ているのが女科学者『フランソワーズ茜』
「さて、本日起こった航宙機ジャックの続報ですが…
 どうも首謀者BIN☆らでぃんと東日本とはスピード決裂という……」
「大体、航宙機の警備が甘いのよ。
 解る?武器を持ち込んだ奴はプロでも何でも罰すれば良いのよ。
 愛の鞭が無いと人間、更生出来ないわ。 
 これは私がインビテーションスチューデントとして留学した時の経験ね」
「…でも確かに
 航宙機保安体制が機能していないのは変な話ですわね」
其の時、楽屋裏からスタジオ内に血塗れの警備員が投げ込まれる。
司会者達が悲鳴を上げるよりも早く、十数人の人物が乱入して来た。
全員が中東系の服と、オタフク面を着用していた。
内、リーダー格と思われる2人が司会者達に近付いて来る。
彼等のオタフク面は、額に『世直し』『葬世』と書かれた。
「俺達はBIN☆らでぃん一派!
 このスタジオは乗っ取った!」
「リーダー曰く、「航宙機落としは決行する!」
 全世界の同志よ立ち上がれ!ジハードの始まりだ!」
『世直し』と『葬世』の大声がスタジオ内に響く。
「な…何訳解んない事言ってんのよ、このオタフク仮面!?」
混乱した様子で立ち上がり、侵入者達を指差しながら
強気に対応したのはサッチーであった。でも汗をダラダラ垂らしている。
「大体、中東の服に日本のオタフクなんてセンス無いにも程が……」
ヒュッ(BGM、燃える闘魂)
『世直し』がサッチーの目の前で跳び、1回転。
サッチーの顔面に後ろ回し蹴りを叩き込む。ローリングソバットである。
だが、攻撃は其れで終わらない。吹っ飛んだサッチーを起こし、ヘッドバット。
其の後、投げ飛ばされたサッチーを待っていたのは『葬世』のラリアットだ。
頭から床へと落ちるサッチー。手足をピクピクと痙攣させている。
そんなサッチーに片足を乗せ、人差し指を天に向けるテロリスト達。
「アッラーの他に神は無し!」
こうしてスタジオはBIN☆らでぃん一派に占拠されてしまった。
執筆者…is-lies

  101便・キャビンブロック前部通路【タカチマン・ナオキング・ジョニー】

 

全てのキャビンブロック前部の通路が直結するこの場で
相変わらずオロオロしたナオキングがタカチマンに、心細そうに話し掛ける。
「タカチマンさん…ホントにSFESなんですか?オロオロ」
「……あのゼロという男は虚偽を騙る程度には見えん…
 これがSFESの作戦なのだとしたら、
 BIN☆らでぃん如きが航宙機をジャック出来たのも頷ける」
既にBIN☆らでぃん一味が取り押さえられたにも関わらず
航宙機保安機構は機能停止状態…其れどころか通信機能迄ダウンさせられている。
少なくともBIN☆らでぃん程度の団体では、こんなに手際良く出来ないだろう。
「さっき、機長室に向かって行ったメイさん…大丈夫なんでしょうか…
 …相手は一筋縄じゃいかないのに……」
「精霊神を2体も連れていれば、大抵の異形じゃ敵わんだろうな。
 唯…SFESのトップメンバーが出て来るとマズイか…」
彼等の身体能力の高さは知っている。A+級プロ並の力に加え、
セイフォートという謎の力があるので尚更、警戒が必要だ。
「せやけど、こんな所で警備なんてしとらんで、
 皆でパッパと脱出ポッドに行けば良いんとちゃうか?」
「…ゼロの言うコンテナという奴が気になるし、そう易々と逃がしてくれる相手でもないだろう。
 何よりSFESの目的が見えない。
 下手に動くよりは、まず相手の出方を窺う方が良い。
 目的さえ把握出来れば、安全な対策や折衝が可能だ。
 ……………いや、どうやらゼロの言った方で正解らしい」
「……へ?」

 

ウィイイィィィィン…ガシャン!

 

メイの向かっていった通路の方から、何と言うか…
子供が造った様なシンプルなデザインのロボットが3体現われた。
股間にキャノン砲らしきものを装備した其れ等は、
タカチマン達の目の前で一列に並び、マシンヴォイスで威嚇して来た。
キューー」
「ティーー」
「ハニーーーー!
SFESが中華人民共和国から鹵獲し改良した戦闘兵器『先行者』と
タカチマン達の戦いの火蓋が切られた…
「こいつは・・・・『先行者』!?」
「先行者?・・・ある意味凄いデザイン・・・・・」
「なんか・・・ウチの研究所のPCのデータの中に知らん間に入ってたんやが・・・
 なんでも大名古屋国での戦闘の時に中国が使ったとかなんとか・・・」
「もっと詳しくわからないんですか?」
忙しなくノートPCを弄くるジョニー。
「あかん・・・データは研究所のPC中や・・・・」
「なら破壊するだけだ」
テクマクマヤコン」
「テクマクマヤコン
怪しげな機械音を響かせながら迫る先行者・・・
「こいつ等やる気あるんかいな!?」
「・・・消えろ」
タカチマンが右手を前に突き出すと、青いオーラが右手を包んでいく。
その刹那、凄まじいスピードでタカチマンが先行者に突撃する。
   ズグオッ
先行者の腹部を貫通するタカチマンの右手。
サ・・・イバ・・・バ・・・・
奇妙な機械音を発したと思うと、先行者Cはその場に崩れ落ちた。
素手で機械を貫くこの男、只者では無い。タカチマンは残る2機に目をやる。
ゴホウシシマス」
「ラーメンオイシイアルヨ
「そのつまらんギャグボイス、なんとかせえ!!」
「こっ・・・こんなブリキのおもちゃに負けたくはないですけどね!」
ジョニーとナオキングに迫る2機の先行者・・・・
すると、2機の先行者が立ち止まり、いかがわしいポーズをとり始めた。
「な・・・なんやアレは!!」
執筆者…is-lies、しんかい様
先行者が蟹股になって激しい足踏みを開始した。
「………何なんやコイツ?」
「…と、兎も角、今の内に倒しましょう!」
言いながら自作の杖から氷の魔法を放つナオキング。
先行者Aの胸辺りが凍り付き、連結している腕を動かせなくする。
「よぉっし!」
身体を捻じり、勢いを付けてから十字架型の大剣を水平に投げ飛ばすジョニー。
腕の凍った先行者Aが、頭部に直撃を食らうが…一向に足踏みを止めない。
「な…何なんですかぁ?コイツ等!」
少年の声をスイッチにした様に、先行者達が足踏みを止め、コマネチを始めた。
だが、腕が凍った方の先行者Aはコマネチに移行出来ず、上半身をガタガタと揺する。
「……2体目…」
直ぐにタカチマンが先行者Aに向かって重力魔法を放った。
メキメキを不快な音を放ちながら、スクラップとなる冷凍先行者。
同時に残った先行者Bが一連の奇妙な動作を終了し、
いきなり腰を突き出し、上半身を天井へと逸らす。
股間に装備されたキャノン砲が一瞬、光る。
「チッ!」
跳躍し、接近。先行者の両脚を手刀で切断したものの…
       ズビイイィィィィイイイイイム!!!
先行者の股間から発射された極太ビームがジョニー達に迫る。
これこそが先行者の最終兵器『中華キャノン』である。
「(殺られる!)」
少年達が死を覚悟した其の時…
 ビームが止まった。
消えたのではない。空中で見えない何かと衝突した様に
火花を散らしながら止まっているのだ。
「……えっ?」
更に今度は先行者Bの頭上…虚空からビームが放たれ、鹵獲兵器が全滅した。
ビーム停止…虚空からのビーム…
これ等の不可解な現象を起こした者は…タカチマンの直ぐ隣に居た。
「タカチマン博士。初めまして」
少女の様な顔をした金髪の小柄な少年であった。白い法衣の様な服に身を包み、
菫色のクリクリした瞳がタカチマンを上目遣いにジッと見詰めている。
「………SFESだな?」
タカチマンすら直前まで、この少年の接近に気付けなかった。
恐らく瞬間移動か何かの能力を用いて来たのだろう。
「はい。SFESの『クリルテース・リディナーツ』と言います」
深々と御辞儀する少年。だが、油断は禁物だ。
「……で、何の用だ?」
「……タカチマンさん、SFESに入りませんか?」
率直な質問に、タカチマンも率直に答えた。
「……答えは解っているだろう?」
「確かにそうですね。でも一応聞かなきゃいけないんです。
 …でも…」
少年が続きを言う前に、彼の携帯電話が鳴る。
失礼しますと断ってから、クリルテースは電話に出る。
「もしもし?……え?『アヤコ』さんに『小桃』さん?
 予定通りにやるんだ………解った。直ぐに戻るね」
少年の言葉にタカチマンが僅かに反応した。
携帯電話を切った少年は申し訳なさそうな顔を浮かべ…
「御免なさい。新しい仕事入っちゃいましたので
 今回は引かせて貰いますね。でもこれは覚えて下さい。
 …貴方の返答で航宙機内200人の運命も左右されます。
 今度会う時は良い返事を期待してますね」
そう言うとクリルテースは一瞬で姿を消した。何処にも見当たらない。
だが……最後の言葉とは裏腹に、少年の表情は暗かった。
通路の隅で固まっていたナオキングとジョニーを無視し、
タカチマンは考えを纏めようとする。
執筆者…is-lies
無言のまま立ち止まる一行に緊張した空気が流れる。
と、ジョニーが口を開いた。
「・・・・どうするん?」
タカチマンはジョニーの問いかけを聞いているのかいないのか、無言である。
「・・・・タカチマンさんがSFES入ったら・・・
 僕はどうなります?」
ナオキングが不安そうに話す。と、タカチマンが口を開いた。
「SFESを倒す」
「!?」
「そんな・・・無理ですよ!大体どうやって探すんですか!?
 勝てる見こみはあるんですか!?」
ナオキングは怒ったような表情で感情をぶつける。
「勝てる見こみ・・・やってみないと分からんな」
今まで見せた事の無い不敵な表情を見せるタカチマン・・・・
「勝てはしなくとも・・・撤退させる事なら不可能では無い」
「・・・俺は・・・・どうすれば?」
「自分の身は自分で守れ」
そう言い放つと、タカチマンは二人に背を向け歩き出した。
「あの人・・・何を考えとるんや・・・・」
「・・・・他の方に相談してみましょうか」
取り合えずタカチマンに付いて歩き出す2人だった・・・・
歩きながらもタカチマンは頭の中で考えを進めて行った。
『小桃』と『アヤコ』…
『細川小桃』…火星でも有力な企業『細川財団』の令嬢…そしてタカチ魔導研究所のスポンサー。
『アヤコ・シマダ』…此方は最近、地球で勢力を強めた『ヤマモト帝国』の幹部の名だ。
どちらも間違いなくVIPだ。しかも相当の使い手でもある。
(……SFESめ…そんな連中を使って何を企む?)
「ところでジョニーさん。其れ…どうする積りですか?」
歩きながらナオキングがジョニーに質問した。
見るとジョニーは先程の先行者の残骸を抱えている。
「見りゃ解るやろ?使えそうなパーツや」
何処迄も呑気な男だ。
「こーゆー新種の技術は……
 ありゃ?パーツが中国製とちゃうでコレ」
「相手がSFESでしたからね…鹵獲して改良したんじゃ?」
タカチマンは閃いた。
各国VIPと接触・招待…新兵器……
恐らくSFESはこの航宙機を使って商品のデモンストレーションをしているのだろう。
「ナオキ!ジョニー!
 私は暫くキャビンルームには戻らない。」
 先のクリルテース、私の返答で乗客の命がどうなるかと言っていた…
 詰まりは返答さえ出来なければ、直ぐに乗客をどうこうはしない筈だ。
 …返答しない…ではなく、返答出来ない…だ。向こうも何も言えん。
 とは言え、これは時間稼ぎに過ぎない。
 ………SFES連中の脱出ポッドを此方で抑える。
 其の上で通信を何とか回復させ、火星に事の次第と救援を要請する。
 SFESが払う口止め料は…乗客の命だ」
執筆者…しんかい様、is-lies
タカチマンが踵を返す。
と、その時、部屋のドアの所に、謎の男が立っているのに気付いた。
否、謎、とだけなら珍しいものでもないご時世だ。ただ、その男の格好は、
なんとなく脳味噌の芯の部分から悲鳴が上がりそうな、異様な風体だった。
パンダ柄の原色の真っ赤なチャイナ服に、丸顔にはサングラスをかけてナマズのようなヒゲ、ではなく鼻毛。
頭部には、これも中国にありがちな多角形型の帽子を被っているが、その頂点には風見鶏が立っている。
ナオキングは一層おたつき、ジョニーも言葉を失って立ちすくんだ。タカチマンだけが、冷静に言った。
「何者だ」
「あいやぁー、何者とはコチのセリフアルよ。
 クリ坊ったら、ミーのチューンナップした先行者カスタム(ドイツ製)を壊してくれちゃたりして!
 その挙句に、ユーごときにSFESに入れときたアル!
 このSFESに、ミー以上に優れた科学者はいらないアル!ここでおっちぬでアル!」
奇矯な喋り方で返す謎の痛ましい男。語尾がアルなのに、一人称がミーである。
サンフランシスコのチャイナタウン出身だろうか。
とにかく、さっきの先行者はこの男がけしかけたものらしい。
(ただ、パーツがドイツ製らしいのがさらにこの男の素性に疑問を投げかけたが)
となれば…敵だ。
敵対心むき出しの視線−−サングラス線が、ひた、とタカチマンを見据えている。
彼は、「自分より優秀な科学者などいらない」と言った。
冷静に考えると、ハナから負けを認めているようなものだが…
時間はかせぎたいところだが、そのためにタカチマン自身が足止めを食うのでは意味がない。
早々に片付けようと、タカチマンは身構えた。
「面白い(顔の形が)。相手になってやろう。
 …せめて、名だけは聞いてやろうか。墓標に刻むためにな」
さらりと放たれた見え透いた挑発に、謎の男はロコツに青筋を立てた。
「なんだとアル!? 墓に入るのはお前アルよー!!
 …冥土の土産に教えてやるアル!
 ミーの名前は…謎の天才科学者にして、謎の中国人『K』よぉー!!」
教えるとか言って、イニシャルだし。
しかも、SFES所属であると先ほど自ら明かしたにも関わらず、謎の科学者ときた。
おまけに天才などとのたまわれている。
…金、だな」
「…金、ですよね」
「金、やな
しかし、口々に言うタカチマン、ナオキング、ジョニー。
「謎バラしたらダメよぉー!!
 もう、怒った! 本気になてしまうアルよ!!」
予測が当たったらしく、さらに怒りをかき立てられた体で、本気宣言をするK。もとい、。
本気もなにも、まだ戦いは始まってすらいなかったのだが。
金が、懐からリモコンを取り出す。
「ウフフフフ…。ミーが持ち出した中華兵器は、先行者だけじゃないアルよ。
 あの程度で苦戦していたお前たちごときには少々もたいないアルが、
 地獄での語り草に見せてやるアル!」
リモコンのスイッチを押す金。
うぃ、がー、と廊下の壁の一部が観音開きに開いた。
そして、その中から、鋼鉄でできた異様な影が姿を現した!
息を呑む三人、さしものタカチマンでさえが言葉を失った…。
その影は、なんと!金属製の細長いフォルムを持ち、
しかしながら実に柔らかにうねるような動きを見せる、
まさに鋼の大蛇とでも言うべき姿をしていた。
だが、三人が驚いたのはその姿にではない。
そう。
その動きだ。
否。
もっと言えば…。
「…動いてないよ」
それは活発にうねるような動きを見せているのにも関わらず、ナオキングがつぶやいた。
だが、誰も否定しない。
そう、現に動いていなかったのだ。
否、動いてはいる、稼動してはいるのだが…
前に進んでいなかった。
執筆者…トッパナ様
「で…そんなポンコツのフラダンスを見せて、どうしようというのだ?」
タカチマンがあきれきった顔で問う。
「なんのー! ここからが真髄アル!」
その蛇メカにあわてて駆け寄る金。すると、どうだ!
今まで無意味にのたくっていた蛇メカが、すっくと立ち上がったではないか!
そして、タカチマン達の方目掛けて、突撃してくる!
「なにっ!?」
あわてて、身をかわす三人。
横を怒涛の勢いで駆け抜けていく蛇メカ。その尾部に、続いて走っている金。
「くそっ…フェイントとはやるな!?」
タカチマンが舌をうつ。
「まだまだこんなもんじゃないアルよ! いけい、虫メカ!」
金が叫ぶと、今度は床や天井に小穴があき、
そこからやはり金属製の、ゴキブリのようなものがわさわさと這い出てきた。
そして、タカチマン達の体にぞわぞわとよじ登ってくる。
「うわわわわぁ〜! き、気持ち悪い!」
ナオキングが恐慌状態に陥る。
ジョニーとタカチマンも、自身の体から虫を払うが、すぐに次が飛びついてくる。
そうして動きの止まった三人に、再び蛇メカが突撃してくる。
 ずどどどどどど
辛くも身をよじってかわす三人。横を抜けていく蛇メカ。その後ろについている金。
「密着されてたら、魔法も使えない!」
ナオキングが悲鳴を上げる。
しかし、対照的にタカチマンは冷静に蛇メカの方を注視していた。(虫を払いつつ)
「それそれ、どしたアルか〜!? このまま、なぶり殺しアルよ〜!」
にんまり、いやらしい笑みを満面に浮かべて、金が蛇メカと共にまた突撃してくる。
そう、そこだ。
タカチマンの脳裏に閃いた、一抹の疑問。
蛇メカが突撃してくる。
なぜか、金も一緒に突撃してくる。
すぐ後ろから。
なぜだ?
メカだけを突撃させれば、司令塔である金は安全なはずだ。
「うわ、来よったぁ〜!」
ジョニーが悲鳴を上げる。三人は、三度、身をかわす。
横を抜けていく蛇メカ。
その後ろに、尻尾のところについた金。
その時、やっと、タカチマンは気付いた。
一緒に突撃してくることの必然性。
そのアルゴリズムに。
つーか。
         持ってます。金。

 

 

        手で。

 

 

     尻尾を。

 

しかも、この虫メカ達、気持ち悪いだけで攻撃をしてこない。
「…………………えい
横から軽く蹴られたメカ蛇『先行蛇』は、
安定性の悪さからか、あっさり軽やかに倒れた。

 

ジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタジタバタ

 

 

 

 

 

 

 

「あいやー!?何故なのだ!?
 この天才科学者のKが…Kがァァ!!」
この期に及んでKと名乗る金。
というよりコイツ自身は先行蛇の尾を持って走ってただけだ。
ズイと歩み寄るタカチマン。ビビル金。
「こ……こここ…この金様が
 これで終わったと思ったら大間違いアルよ!
 こんのイエローモンキー共がァ!!」
「………私達は、火星の出だが?」
「…というか、やっぱりだったんですね…」
ミスを指摘され頭の血管から血を噴き出す金。
所謂、逆ギレであろう。
「ゆ…ユー達、ブッ殺すアル!
 耳ン穴に指突っ込んで奥歯ガタガタ言わせたるアル!
もう何処の人間か解らない金が怪しげな構えを取る。
アイヤー!中国4万年の歴史ィィゲフッ!?
構えて喋っている間に近付いたタカチマンが
目の前で何かポーズとってホザいているバカの額に
銃口を突き付け、引き金を引いたのだ。
ポーズをとったまま倒れる金。
こうして世にも滑稽な仏が完成したのであった。
「私は脱出ポッドを調べて回るが…お前達はどうする?」
ポーズを取ったまま転がっている死体を背に、一同へと問うタカチマン。
「そりゃ決まっとるやろ?強い奴と一緒に行動した方が安全や」
「僕もタカチマンさんと一緒の方が安心出来ます」
其の答えにフッと鼻を鳴らし、タカチマンは仲間と共に脱出ポッドを探しに行った。
執筆者…トッパナ様、is-lies

  101便・右側内周部通路

 

前部キャビンブロック通路の右キャビンルーム入り口を入らずに通り過ぎると
やがて後部への曲がり角が見えて来る。其処を曲がれば右側内周部通路であった。
後部キャビンブロック通路迄一直線の其処は、約40メートル程の中間地点に、
向かって左の曲がり角の奥には脱出ポッドの並べて用意されており、
通路の右側には右キャビンルーム中部への通路が4つあった。
「うわぁ…長い通路ですね……」
「脱出ポッドは、あの左側に見える曲がり角の奥やな」
言いながらどんどんと曲がり角へと進む一行。
「…?」
30メートル地点で何らかの気配を感じ、足を止めるタカチマン。
「?タカチマンさん、どうし………」
其の時、脱出ポッドのある曲がり角から中型の異形が躍り出た。
全体的に黄色いフォルムで、大きな一つ目、巨大な爪、光背、
天使の翼と悪魔の翼……彼等が今迄見た事すらない異形である。
『セイフォートラーバ』
SFESにそう呼称されるこの異形は、
青い甲殻の付いた無骨な右手をナオキング達の方へと向ける。
キシャアアァァァアア!!
咆哮と共に手の甲殻が上下に割れ、中から現われたガトリングガンが回転を始めた。
「ジョニー!ナオキ!」
突然の事に棒立ちとなった2人を両腕で抱える様にして掻っ攫う。
異形の腕から十分に収斂された無数のエーテル弾が一気に放たれ、壁となって迫って来たのも同時だ。
2人を連れ、直ぐ側にあった右キャビンルーム通路への扉に滑り込む。
「あたたた……脇腹撃たれてもうた……」
「……SFESの異形か……厄介な所に陣取ってくれている……」
オートで閉まった鉄製の扉に背を預け、異形が移動している音が無い事を確認する。
飽く迄、あの場所を動かない積りだ。
確かにこの長い通路では異形のガトリングガンは有利だろう。
近くの扉から近付こうにも、自動ドアの開閉音で気付かれる。
何より相手が全く未知の異形である事が、一同に思い切った行動を留まらせる。
其処へ…
「どうやら、此方の脱出ポッドは既にSFESに押さえられた様ですね」
ハッとして声のした方を見るナオキング。
右キャビンルームの扉の方に、白いローブを着た少女が立っていた。
「申し遅れました。私は『レシル』と言います。
 せ……いえ、皇国反乱軍の一員です…あ、元ですね。既に皇国は滅びてしまいましたし」
「ほう……聞いた事はあるな……反日本皇国組織……
 で、其の元反乱軍が此処で何をしている…?」
少女の所属を知っても気を緩めないタカチマン。
「貴方々と同じです。脱出ポッドを探しに来たのです。
 …敵の規模はどの位でしょうか?」
「ポッドのある曲がり角に身長2m程度の異形が一体…
 右手にエーテルガトリングガン装備しとるわ」
「……成程……セイフォートラーバですね。
 あれには手を焼きます…。オマケに場所が悪いですね…」
其の言葉にタカチマン達が反応した。
「セイフォートラーバ?…SFESを知っているのか?」
当然の疑問だ。
セイフォートはSFES内での最重要機密。
異形関連であり、人間に何らかの力を与えるというが、
詳しい事はSFESと交渉したタカチマン自身、知ってはいなかった。
其れをこの少女は知っている様なのだ。
「さあ…どうでしょう?
 其れより異形を倒すのに協力して頂けませんか?
 あの異形は遠距離近距離共に手強く、地形が厄介なら尚更です。
 共同戦線……という事です」
執筆者…is-lies
「ふむ・・・いいだろう。」
「決まりですね。それでは作戦内容を説明します。と、その前に・・」
レシルがジョニーのほうへ近づき、脇腹・・・先ほど撃たれた所に手のひらを近づける。
「な、なんや?」
「じっとしていてください。」
言うと、手のひらから淡い光が溢れ、それが傷口へ移り、傷口を囲った。
「治癒魔法・・ですよね?」
「はい。・・・これで大丈夫です。」
見ると、もうすっかり塞がっている。
「ほぉー。便利なもんやな。」
「それでは作戦を説明しますね。といっても、大したことではありません。
 あのセイフォートラーバは、真正面から戦おうとすれば強敵ですが、
 不意をつけば、それほどでもありません。知能が低いですから。」
「具体的には?」
「セイフォートラーバの上に、天井裏へ入る穴があります。
 そこから傍に近づけば、あとは簡単でしょう。」
「だが、傍に降りる前に気がつかれたらどうするんだ?
 避けるのは難しいと思うが?」
「それについては、あなた方のうち二人が通路の扉を使って陽動すればいいと思います。
 残りの一人は、私と一緒にセイフォートラーバを倒すために天井裏へ。」
「そんな単純な作戦で大丈夫かいな?」
「問題ないと思います。先ほど言ったように、知能が低いですから。」
「よし、それでいこう。私が一緒に行く。お前達は陽動を頼む。」
「え!?よ、陽動するんですか?・・・オロオロオロ・・・」
「んな殺生な〜」
なら、奴を倒す役がいいか?
「・・・・・」
結局、ナオキとジョニーが陽動をすることに決まった。
執筆者…you様

「キシャアアアアアッ!!」
何度目かもわからぬ咆哮をあげ、ガトリングからエーテル弾を放つ。
その向く先はナオキかジョニーか。
それはわからないが、唯言えるのは、
どちらにせよ、その弾が二人の体を貫くことはない。ということだった。
「はぁ、はぁ・・も、もう嫌だ・・・タカチマンさん、早く・・・」
扉に背をつけ、肩で息をしているのはナオキ。
扉を開け、顔を出してすぐに扉へ戻り、暫くしてから顔を出す。
これの繰り返しなのだが、ナオキングは精神的にかなり疲れていた。
一歩間違えば蜂の巣になるのだから、当然と言えば当然である。
「タカチマンさん・・大丈夫かな・・?」

 

 天井裏
「ナオキ達は大丈夫なのか・・?」
「よっぽど鈍くなければ、まず大丈夫だと思います。」
「・・で、奴の上まではあとどれくらいだ?」
「もうすぐですよ。・・・あの光がそうです。」
「よし・・・開けるぞ。」
隙間から漏れている光を頼りに、フタに手をかけ、言った。
「はい。」
ギィ・・・
小さな音を立て、それが開いた。
そして・・・真下には、エーテルガトリングを放ちつづけている異形の姿があった。
「・・こいつ、動く気はないのか?」
半ば呆れるような声で、タカチマンが呟いた。
「多分、『ここで、やってくる敵を残らず倒せ』という類の命令をされたんでしょう。
 ですから、ここで動かず警備をしてるのでしょう。」
「・・・動いたほうが効率がいいと思うが?」
「ですから、そう判断する知能すらないんです。
 それより、早く行動を起こしたほうが、お友達のためだと思いますけど。」
「そうだな。行くか。」
言って、飛び降りる。
そして・・・目の前には、天使と悪魔の翼を一つずつ持った、異形の『モノ』が居た。
「ギ?」
セイフォートラーバが、降りてきた者に気がついた時、
既にその者・・・タカチマンは魔法を発動する体勢に入っていた。
  ズグンッ!
音にすれば、そのような。空間が圧迫され、それがセイフォートラーバに重圧としてのしかかる。
グ・・ギァ・・・
なんとか腕を動かし、銃口をタカチマンのほうへ向けようとする。
「無駄だ・・」
全く動揺の色を見せず、冷静に言い放つタカチマン。
その言葉とほぼ同時。閃光がはしり、セイフォートラーバが叫びをあげ、その場に崩れ落ちる。
その閃光は、レシルが放った雷であった。
「終わったか・・・?」
しかし、そう思った瞬間、再びセイフォートラーバが起きあがり、至近距離でタカチマンにガトリングを放つ。
「ッ!?」
ほとんど本能・・・というよりも、反射的に横に跳び、それを避けた。
レシルが再び魔法を放とうとした瞬間に、それがわかっていたかのように腕をレシルのほうへ振る。
「キャアッ!?」
華奢な少女の体ではひとたまりもなかっただろう。
幸い、レシルの目の前の空気を薙いだだけで、直撃はしなかった。
しかし、風圧により体勢を崩し、その場にこけた。
キシャァァァアアッ!!!
そして、その彼女に向かって、再び腕を振り上げるセイフォートラーバ。
「ちぃっ!」
再び大気が圧迫され、先ほどよりさらに大きい重圧がセイフォートラーバにのしかかる。
グガァァァッ!!!
最後の抵抗とばかりに、エーテル弾を無茶苦茶に乱射する。
しかし、レシルの放った先ほどより強力な雷が、その動きを完全に止めた。
・・・・そして、セイフォートラーバは二度と動かなくなった。
執筆者…you様
「・・・・ふう・・・・」
レシルは大きく息を吸い、立ち上がった。
「ありがとうございました。あの時助けてもらってなければ死んでいました。」
レシルが頭を下げる。
「それでは私はこれで・・・・・」
「一緒に来ないんか?」
「ええ。仲間の皆さんが待っていますので。」
そう言うとレシルはどこかへと去っていった。

 

「行っちゃいましたね・・・・・」
彼等は沈黙する。
「もう敵はおらんよな?」
「・・・・・おそらく、もういないだろう。「殺気」が感じられん。」
「あれ?あの…タカチマンさん……
 レシルさん、ポッド確認しましたっけ?」
「……どうやら既にした様だな……見ろ」
セイフォートラーバが陣取っていた通路の壁には、脱出ポッドの入り口がずらりと並んでいた。
だが、入り口脇のランプは全て『射出済み』となっている。
「んなアホな!誰も解放なんてされとらん筈やで!」
「……BIN☆らでぃんを押さえた時の震動はこれだったのか…
 既に脱出ポッドは無人のまま射出されている…
 ………他の区画に脱出ポッドが残っているかも知れないな…」
SFESメンバーが搭乗している上に、自分の勧誘もして来たと言う事は、
必ず何処かに脱出用のポッドが用意されている筈だ。
其れさえ此方で押さえてしまえれば事件は一気に解決する。
一向は上内周部通路の脱出ポッドを見に向かう。
執筆者…鋭殻様、is-lies

  101便・VIPルームB−4

 

コンコン・・
「どうぞー。」
「失礼します。」
「いらっしゃーい。ポリポリ・・」
だらけた様子のゼペートレイネを前に、ゼロが苦笑いを浮かべる。
「・・・・テレビを見ながらお煎餅。ですか・・・のん気ですね。」
「今なにもすることがないんですものー。ポリポリ」
テレビに目を向けると、なにやら化粧のハデなオバサンがリンチに遭っている所だった。
「まあそんなことはどうでもいいでしょう。・・・私がここに来た目的はおわかりでしょう?」
「いいのー?シルスにバレたら怒るわよー。クスクス」
「彼は今この船の最後尾に居るののでしょう?さすがにここまでは『耳』の効果は無いでしょう。
 それと、このVIPルームに『小耳』を仕掛ける理由はありませんし。」
「クスクス・・頭のキレは流石ねー。ポリポリ・・あ、御一ついかが?」
言って、煎餅を差し出すレイネ。
「結構です。それより、早く話してくれませんか?」
「まあまあ、そんなに焦らない、焦らない。この計画の締めくくり方だったわよね。
 あ、座れば〜?ポリポリ」
そういいながら、ゼロの傍にある椅子を指差す。促されるまま、椅子に腰掛けるゼロ。
「そうね〜。まず―――」

 

暫し経って―

 

「こんな所ね。」
「成る程・・・さすがSFESですね。完璧な計画です。」
「クスクス・・で?あなたは何を企んでるのかしら?」
「企むだなんて・・」
「誤魔化さなくてもいいわ〜。シルスにバラしたりしないから」
「正直、まだ何も考えてませんよ。
 ・・・まぁ、何らかの形であなた方の邪魔をすることになるでしょうけど。」
これは小声で言った。
「楽しみにしてるわ〜。せいぜいがんばってね〜。クスクス・・」
「それでは、ありがとうございました。」
言って、部屋を後にした。

 

  101便・VIPルームブロック通路
「本当にできっ・・!?」
ゼロに口を押さえられた。
(これからの会話は声に出してはいけません。
  シルシュレイさんにバレては面倒ですからね。
  心に言葉を思い浮かべるだけでいいですよ。)」
「(そんなことできるの・・・?)」
「(あなたは私の使い魔ですからね。これくらいはできますよ。
  まぁ、使い魔でなくても、こちらの意思を魔力で直接頭に飛ばすことはできますが。)」
「(へぇ・・・。それより、あんなこと言って、ホントにいいの?)」
「(レイネさんがバラすことを心配しているのなら大丈夫ですよ。)」
「(そうじゃなくって、あんな完璧な計画につけいる隙なんてあるの?)」
「(ええ、完璧なパズルほど、数ピース抜けただけでも崩れるものですよ。
  崩れさえすれば、あとは自分に都合のいいピースを加えて、
  自分の好きなように組み立てるだけです)」
「何言ってるのかサッパリわかんないよ・・・」
最後だけは、声に出していった。

執筆者…you様


  リゼルハンク本社・会議室

 

無数のモニターに映るのは未だに活動を続ける先行者やエネミー。
併し其の一部では残骸と化したエネミー達も転がっていた。
だが其れでもゲスト達は満足といった表情をしている。
「ローコストで高い戦果を出せる兵器ですな。
 反応力、火力共に申し分無い」
そう。彼等が欲しているのは万能の兵器等ではない。
自分達の戦いに勝利さえ出来れば…使われた技術さえ良ければ構わないのだ。
モノが確かであればデモンストレーションの結果等はどうでも良い。
そもそも最初から大破される事を前提とした御披露目なのだから。
大名古屋国大戦の勇者達相手にどれ程善戦出来るかという…
「さて…既に御存知の方も居られるでしょうが、
 先にBIN☆らでぃんの放ったレーザーを切っ掛けに、
 地球で破滅現象の嵐が巻き起こっているそうです。
 まあ、原因は其れとは別の所にある訳ですが」
「残りのプロジェクトはどうする気かね?」
「地球を危機に陥れたとなっては小難しい理由は要らぬでしょう。
 今直ぐにでも惑星間巡航ミサイルの準備を御願い致します。
 これで火星内への介入が堂々と出来る様になりましたよ」
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