リレー小説2
<Rel2.101便・タカチマン10>

 

 

「あら?もう来ちゃったの? 
 アシュラとは戦わないで来たってトコかしら。 
 でも其れだと今度はアシュラ2体の挟み撃ち。 
 どうする積り〜?」
確かにゼペートレイネ達が殿として置いたアシュラと、 
今現在、タカチマン達を追って来ようとしているアシュラとで挟撃される形になるだろう。 
スクウェアブロックの方へ退けばアシュラに挟み撃ちされる心配は無くなるだろう。 
併し、ゼペートレイネがスクウェアブロックにも戦力を割いていた場合は意味が無い。 
だが、タカチマンは不敵に言い放つ。
「其れがどうした?」 
其の一言にヘラヘラした口元を引き締める大女。 
少年の方は一歩だけタカチマンへと近付く。 
エネミー達も様子を窺おうとした其の時……
どりゃああああああああああああぁぁぁぁあああっ!!!!!!
叫び声と共にゼペートレイネの横にあった扉が吹き飛び、 
VIPルーム警備に当たっていた獣人少年のカフュ・トライが 
拳を突き出して飛び出て来た。 
そして、其の拳はゼペートレイネの横顔を捉えていた。 
大女は咄嗟に身構えようとするが遅かった。 
思いっきり殴り飛ばされて壁に叩き付けられる。 
ゼペートレイネ達が妙にタカチマンの言葉に集中していた為か、 
あっさりとカフュの奇襲は成功した。 
だが、次の攻撃は許さなかった。 
『尾』の剣をカフュに向けて彼を直ぐに牽制する。 
「ちっ!」 
カフュは深入り出来ないと瞬時に悟り、 
其の場は退いてVIPルームの入り口を塞ぐ様になる。 
チャンスと見て攻撃しようとするタカチマン達やキムラ達も、 
アシュラや先行者等のエネミーに阻まれてしまった。
「レイネ!大丈夫?」 
「…ふふふ……気に入ったわアンタ」
殴られた衝撃で飛んだサングラスを掛け直し、 
口の周りに付いた血を舐め取るゼペートレイネ。 
目の錯覚か…カフュは大女の舌がまるで蛇の舌の様に見えた。
「気に入ったぁ? 
 ふざけるなッ!!」 
叫ぶカフュの表情がみるみる迫力を増していく。 
カフュは黒い狼に姿を変えた。 
「殺し合いを楽しむようになったら、人間終わりだぜ! 化物!」 
「あら、そんな姿で言われても、説得力ないわねぇ、狼ちゃん」 
「ほざけ!!」 
牙を剥いて突撃するカフュを嘲笑うように、レイネとクリルは後ろの扉まで後退した。 
それを追って一人突出するカフュに、後ろで構えていたエネミー達が一斉に襲いかかった。 
しかし、スピードで勝るカフュに、エネミー達の攻撃は悉く空を切る。 
黒い風の如く、群がる敵を翻弄するカフュ。 
その隙を突き、タカチマン達がVIPルーム前のナオキング達と合流した。
「タカチマン博士! 
 無事だったんですね」 
信頼するタカチマンの無事を知り、ナオキング達も落ち着きを取り戻す。 
しかし、状況は今まで以上に不利な方向に傾いていることに変わりはない。 
「でも、セートさん達が…」 
「分かっている」
機関室に向かったメンバーはSFESの手に落ちたと見ていいだろう。 
ならば恐らく、セート達を人質に、もう一度交渉を持ちかけて来るはずだ。 
再びチャンスがあるならその時だろう。 
タカチマンの描いた勝算は未だ失われてはいない。 
しかしまた、仮にタカチマンがSFESの要求を受け入れ、何かを得たとしても、
タカチマン達にはそれを保障するものが何もないのも事実である。 
何にせよ。チャンスが訪れるまでは、少しでもSFESと対等な状況に持ち込むしかない。
「…よし。 
 敵は狭い通路に集中している。 
 ナオキ、まだいけるな?」
「…はい!」
タカチマンにはもう一つの秘策があった。 
そのヒントは「機長室の扉を破壊したゼロの魔法」である。 
気付いた者がどれほどいたかは分からないが、
ゼロの魔法には「上手さ」があった。 
勿論、魔力ならば、レシルという女もかなりのものであるし、
ここにいるナオキングやメイ、そしてタカチマン自身も決して引けはとらない。 
しかし、実際アダマンチウム製の扉を破壊するほどの魔法を放った場合、
この船もろとも破壊してしまいかねないのだ。
それを防ぐため、ゼロは強力な光波を放つ一方で、
その破壊力を一定空間にのみ集中させるというニ種類の魔法を同時に使っていたのである。
ここで空間操作が使えるのはタカチマンのみ。 
魔術師としてはプリセットタイプであるメイ。 
属性限定ではあるがヴァリアブルタイプのナオキング。 
全員組織戦には不慣れで、エーテルの相性が合うかどうかも分からない。 
リリィやキムラの銃撃を加えても条件は厳しい。
一か八かの合体魔法――
「メイ、ナオキ、 
 私が合図したら、全力で魔法を撃て」 
「え? でもそれじゃあ…」 
「構わん、全力だ。狙いは前方」
意図は分からないながらも、タカチマンの言葉を信じ、メイとナオキが頷く。
「カフュ!下がれ! 
 キムラ!リリィ!一斉射撃!」
タカチマンの声に、カフュは
すり抜けざまにアシュラに後ろ蹴りを食らわせ、そのままVIPルームの方に後退する。
それを援護しつつ、キムラとリリィが一斉射撃。
「今だ!!」
ナオキングの氷の魔法に、メイのサラマンデル・リヴォルバー。 
反属性のエーテルが激しく反発し、宇宙機の内壁を引き裂いていく。 
さらに、二人の魔法を抑え込むように、タカチマンが重力魔法を放つ。 
三人の魔法は球状のエネルギー収束体となり、
敵もろとも前方の空間を飲み込んだ。
執筆者…is-lies、Gawie様

  101便・機関室

 

船の動力源を取り戻すべく機関室を強襲しようとしたセート達であったが、 
作戦はなぜか敵に読まれており、一時的に動力源を取り戻したものの、 
その後、敗北し、機関室に拘束されていた。 
不思議なことに、何故負けたのか誰も覚えてはいなかった。 
サリシェラという少女の不意打ちを受けた後、
シルシュレイの体が変化したかと思った瞬間、気付いたら機関室に拘束されていたのだ。 
他のメンバーも同じく、シルシュレイとサリシェラの姿を見た後の記憶はなかった。 
相手の能力を見切る暇もなく敗北してしまったのだ。
「さぁて、なかなか楽しかったが、お遊びはここまでだ。 
 まずはお前等、セレクタのシストライテとレシルだっけ? 
 原初の能力者二人に、なんとかって女、 
 ひょっとしてユニバースとかいうのも一緒か? 
 他に仲間はいるのか? 
 本拠地はどこだ?アレクサンドリアじゃないよな? 
 目的は何だ? とりあえず知ってる事を全部吐きな」
シルシュレイが問うが、シストライテは俯いたまま何も答えない。 
サリシェラが首を掴んで締め上げるが、
シストライテは声一つ上げることなく、半ば放心状態である。 
隣に座らされているレシルは自爆を試みていたが、何故か魔法が発動しない。 
どうやら後ろにいる小桃という少女に魔力を中和されているようだ。
「しょうがねぇな。 
 じゃあ、そっちのチョンマゲ。 
 オメェら何者だ?」 
女に甘いのか、シルシュレイはシストライテとレシルをそれ以上追求する事はなく、
今度はセートに問う。 
「答えられませんね。 
 それと、私達に人質としての価値はありません」
「ケケケ、言いたくなきゃ言わなくてもいいんだぜ。 
 シルス、こいつ等の喰うぜ?」
「な、脳を喰う? 
 どういう事ですか? 
 …いえ、何となく解りました。 
 想像したくはありませんが、 
 貴方はその方法で相手の記憶を奪えるということですね?」
「無駄口を叩くな。質問してるのはこっちだ」
「俺としては、よく戦ったオメェらに敬意を表して聞いてやってんだがな?」
「…無駄ですね」
SFESの脅迫にも、セートの決意は固い。 
彼としては、自分達の命より、首領エーガとその組織の存続の方が重要なのだ。
(しかし…、 
  記憶を奪う能力者とはマズい… 
  せめて、イオリとカイトだけでも無事に逃がさねば… 
  エーガ様を一人にする訳にはいかない…!)
執筆者…Gawie様

  101便・VIPルーム前

 

「ス、スゲェな… 
 これならいくら奴等でも…」
衝撃に備え、床に伏せていた一同が顔を上げると、 
ゼペートレイネやエネミー達がいた場所、通路の入口付近が根こそぎ消し飛んでいた。
「猫丸……」
メイは猫丸を取り込んだゼペートレイネごと消滅させてしまったのではないかと心配するが、 
一方のタカチマンは消滅した前方の空間を見据えたまま動かない。 
徐々に爆煙が薄れていく中、崩れた瓦礫の下から何かが這い出して来るのが見えた。
「痛っ…た… 
 い…今のは効いたわ… 
 でも…そんな芸当は…そうそう上手くいくもんじゃないわよ。 
 タカっちも…フロック狙いだなんて…随分焼が回ったんじゃないの」
「馬鹿な… 
 あの攻撃をくらって無事でいられるってのか?」
「…いや、『翼』がなければ、多分やられてたよ…」
覆い被さる瓦礫を押しのけながら、黒い翼に包まれた少年も姿を現した。 
タカチマンの秘策、起死回生の合体魔法を持ってしてもSFESを倒すことは出来なかった。 
しかし、けして効果がなかった訳ではない。 
ゼペートレイネという大女は致命傷ではないものの、全身に傷を負っている。 
クリルテースという少年もかなり息があがっている。 
恐らく、今の攻撃を防いだのも、この少年の能力によるものだろう。 
もう一度同じ攻撃を与えれば、次は倒せるかもしれない。
「くそッ、もう一度だ!」 
再び銃を構えるキムラ達であったが、タカチマンの表情は冴えない。 
フロック狙いであるというゼペートレーネの指摘は正にその通りだったのだ。 
タカチマンの予想でも合体魔法の成功率はせいぜい6割。 
失敗した場合は、互いのエーテルが打ち消しあい、何の効果もなく不発に終わるか、
最悪の場合はエーテルが暴走し、船もろとも破壊してしまいかねない。
「どうしたの? 
 もう打ち止め?」
満身創痍のタカチマン達をゼペートレイネの邪悪なオーラが包む。 
通路を埋め尽くしていたエネミー達が消えたことで、 
逆にそのオーラが凶悪さを増したように感じられる。 
ゼペートレイネとクリルテースがゆっくりと歩を進めようとした、その時、 
再び船内放送の先程の男の声が響いた。
《レイネ〜、まだか? 
 コイツ等なかなか口を割らねェ。 
 もう殺しちまうぜ?》
ジード達が船内放送による通信手段を得た事を知ったためか、 
SFESの方も此見よがしに船内放送を使ってくる。 
その放送に対し、ゼペートレイネは取り出した携帯端末で応答する。
「今いいとこなのよ〜 
 ちょっと待ってて〜」
端末を持ったまま、今度はタカチマン達に笑い掛ける大女。 
「ん〜…今の聞いてくれた? 
 お仲間さん、殺されちゃうんだって。 
 可哀想に……タカっちがダダ捏ねるから……」 
言い終わらない内にゼペートレイネが床に沈む。 
合成能力で又、隠れたのだ。 
但し、クリルテースは残ったままだ。 
新しく鎌の様な硬質の翼を背に生やし、タカチマン達を凝視している。 
だが、この少年にばかり気を取られてもいられない。 
何処からゼペートレイネが現われても良い様、 
少年への警戒を怠らずに周囲の気配を探る。
其れを邪魔するかの如く、クリルテースが 
宙に浮いたまま突進… 
自分ごと前転する様にして、鎌状の翼をライハの両肩へと振り下ろす。 
一体、何時間合いを詰められたのかが解からない。 
回避する暇が無いと見たライハは咄嗟に愛銃シャインリボルバーで少年の翼を防ぐ。 
だがクリルテースも其れは予想の範囲だった様だ。 
硬質の翼の表面から金色の槍が何本も突き出して来たからだ。 
反射的に体を逸らせたものの、敵の槍はライハの右肩を貫く。 
白いジャケットに赤い血の染みが広がるよりも早く、 
少年が後退しようとするが、リリィの弾丸で体勢を崩され、 
更に銃を構え直したライハによって、肩を撃ち抜かれる。
やはり先の一撃が効いているのだろう。 
其れに人数が違う。 
だがそんな状況で何故、少年は戦闘を続けるのか… 
やはり、ゼペートレイネの為の隙作り… 
もしくは何かの時間稼ぎだろう。
カフュが不安に駆られ、護っていたVIPルームに戻る。 
キムラも機長室へと注意を向かわせた。 
「………何処だ…」 
「此処」
ゼペートレイネの気配が遠退いたと感じたのと同時に、 
タカチマンの耳に入って来た大女の声。 
間を置かず声のした方向を見てみると、 
VIPルームの中、壁から出て来た『尾の剣』が、 
乗客を襲おうとしている正に其の時であった。
ガッ!
逃げ遅れた女性に襲い掛かる『尾の刃』を、 
噛み付いて止めたのは、黒狼と化したカフュである。 
「これ以上、殺させるかよっ!!」 
渾身の力を込めてカフュが、 
剣に噛み付いたまま首を横に振る。
グシャッ!!
ゼペートレイネの『尾』が壁から引っこ抜かれた。 
本体から切り離された『尾』は、 
其のまま腐った様に泥状の物体へと変じて動かなくなる。
これで『尾』の力は封じられた。 
壁からしくじったといった表情のゼペートレイネが出て来る。
「あらら…油断が過ぎたかしら?」 
両手を頭の後ろに回し、背を向けて降参の意を示す大女。 
「そうみたいだな。」 
勝った。 
そう思ってカフュがゼペートレイネを捕らえようと彼女に近付くが、 
通路側でクリルテースと戦っていた途中のメイが 
ふと、其の光景を見ていた。そして疑問を持っていた。 
ゼペートレイネは何故、出て来た? 
『尾』を斬られたら能力の合成は解けるのだろうか? 
では何故、猫丸は戻って来ない? 
「カフュさん!『尾』は死んでません!!」 
メイがカフュに叫んだと同時に、ゼペートレイネから新たな『尾』が飛び出しカフュに迫る。
油断させられた。 
気付いたカフュが避けようとするが間に合いそうも無い。 
『尾の剣』がカフュの体に触れようとした其の時、 
狐色の颶風が『尾』に体当たりして其の照準を狂わせる。 
バンガスに指示されたおトメさんであった。 
『尾の剣』はカフュを掠める様にして床に突き刺さった。 
同時にジョニーの十字架大剣が大女自身に叩き付けられ、 
ゼペートレイネは地面に倒れる。 
好機とばかりにメイ、カフュが攻撃を加えようとするが…
「御免なさい。外れたっても突き刺さってるの」 
床に自身を合成させる事で回避する大女。 
融合能力…思った以上にやり難い。
「ま、多勢に無勢ってトコかしら? 
 クリルちゃんの旗色も悪いみたいだし、此処は退かせて貰うわ。 
 でもね、アンタ達の立場…確実に悪くなってるのよ〜 
 知ってる?もうね… 
 ミサイルは発射されたし、SOLの準備もされてるわ。 
 もう大分条件悪くなってるけど…今からでも考え直さない?」 
其の科白に乗客やメイ達が蒼白になるより早く、ゼペートレイネの気配は完全に消えていた。 
又、通路でタカチマン達と戦っていたクリルテースも
瞬間移動らしき能力で既に撤退していたのだった。
執筆者…Gawie様、is-lies

  101便・機長室

 

ゼペートレイネとクリルテースを退けた一行は機長室に集結していた。 
機長室とVIPルームは辛くも守りきったものの、状況は悪くなる一方であった。 
宇宙ステーションとの交渉により、
ミサイル発射を延期させ、101便の軌道変更に成功したにも関わらず、 
それを嘲笑うように、ゼペートレイネは
ミサイルは既に発射され、更にSOLの準備もされていること告げた。 
タカチマン達の交渉も単なる時間稼ぎに終わり、その間にセート達が捕えられてしまった。 
この結果は十分に予想していた事だけに、誰もそれを口にすることは出来ない。 
一同は黙ったまま武器弾薬を補給し、次の戦いに備える。 
そんな中、ジードが再びコンソールに向かった。
「どうだ?」
「悪い…、宇宙航法は専門外だ。 
 モニターがなけりゃ、この船がどこを飛んでいるのかも分からない。 
 ただ、惑星間ミサイルってのは、最初から目標を追尾することは出来ない。 
 恐らく、プログラム通りなら今の軌道でやり過ごせるはずだ。 
 尤も、直前で追尾モードに切り替えられるか、 
 火星の軌道に入る前にSOLに狙い撃ちされれば終わりだがな」
「やはり、SFESを倒して、もう一度機関室を取り戻すしかないか?」
「いや、どうやらそれも無理だな。 
 さっきの戦闘でどこかが断線したみたいだ。 
 操舵系はもう使い物にならない。 
 まぁ、一つ言える事は……」
ジードがそう言いながら、機長室前方にある小さな窓を指差す。 
窓の外には、巨大な赤い球体――火星が目前まで迫っていた。
「…火星に一直線…、 
 予想以上に加速してたらしいな」
「時間がないな。 
 我々にとっても、奴等にとっても。 
 恐らく、次が最後だ」

 

  101便・VIPルーム

 

一行は機長室を後にし、場所をVIPルームへ移した。 
機長室側から順にドアを開け、乗客全員の無事を確認しながら、 
最後の、ルキのいる部屋に入った。
「ここに残るのは…」 
「言っとくがタカチマン博士、 
 お留守番はもう御免だぜ?」 
タカチマンが言うより先にキムラが乗客の護衛に付くことを拒否した。 
同じく、ジード、アンディ、カフュ等も肯いて同意を示す。 
ただ一人、ちゃっかりVIPルーム内に寝場所を確保しているバクヤを除き、 
全員がSFESと戦う決意を示した。
「ここは僕一人でいいよ。一応バクヤもいるし。 
 それに……いや、何かあった時は、僕達も覚悟は出来てるから」 
「しかし…」 
護衛は自分達だけでいいと言うルキ。 
しかし、先程のような敵の襲撃を受けるとそれこそ一溜りもない。 
あと3,4人は護衛にほしいところだ。 
顔を見合わせる一同に対し、ふと乗客の中の一人が口を開いた。
「さっきから聞いてりゃグダグダうっせェなぁ。 
 他人の心配してる暇があったらさっさと行って来いよ。 
 本当なら俺が…」 
目つきの悪い男がそう吐き捨てながら詰寄るが、 
直にその隣にいたもう一人の男が制止に入った。 
「すいません、コイツ僕の友達なんです。 
 ちょっと口と目つきと手癖が悪いだけなんで気にしないで下さい。 
 あ、でも、コイツの言う通り、僕達の護衛なんていりません。 
 貴方達に命を預けますから頑張って下さい、ハイ」
どことなく胡散臭い二人組みである。 
特に、目つきの悪い方の男から一瞬感じられた殺気… 
ただのチンピラではなさそうだ。 
この状況においては、良く言えば「心強い」 
本音を言えば「守ってやる気も失せた」
何にせよ、構っている暇はない。
「では、ルキ君、頼む。 
 他に残りたい者はいるか?」 
タカチマンが全員を見渡しながら問うが、名乗り出る者はいない。
「…分かった。全員でいこう」

 

部屋から出ていくタカチマン博士達を見送り、
気配が離れたのを確認したルキは、顔だけ先ほどの二人組に向け、一瞬視線を送り、
すぐに向き直って扉へ歩き出す。 
チラとバクヤを見、部屋を出ていく。

 

  101便・スクウェアブロックへの通路

 

一行は敵が待ち構えていると思われる機関室に向かって歩を進める。 
先程の戦闘で、通路には瓦礫が散乱し、足場が悪くなっている。 
勿論照明も全て消え、VIPルームからの明かりだけが頼りである。 
タカチマンやキムラ達にとってはそれ程の障害にはならなかったが、 
ただ一人、ミナだけが瓦礫に足を取られながら苦戦していた。
「…ちょっと待った。 
 全員って、ミナちゃんもついて来るのか?」 
見かねたキムラが口を切った。 
それに対してミナは… 
「はい、そのつもりです。 
 私はまだ、あの人達に話したいことがあります」 
「これ以上何を話すってんだ? 
 アイツ等はミナちゃんの交渉も無視して、 
 ミサイルを発射したそうじゃねェか」 
「それは、私の交渉の仕方が悪かったから…」 
「違う! 
 最初から交渉の余地はなかったんだ!」 
「でも…」 
「いいか? 
 俺達はお前の親父を殺した。 
 実の所、記憶が曖昧なんだが、これは間違いはない。 
 俺と、そこにいるメイ、猫丸、ダルメシア、ユーキン、バンガス、 
 ジョイフル、『青』、エース、ミスターユニバース、ガウィー、 
 ごとりん博士、ビタミンN、フルーツレイド、ポーザ、ツヨシン、 
 寄って集ってお前の親父を殺して、お前の国を滅ぼした! 
 交渉の余地はなかったし、謝るつもりもない。敵だったからな」 
「…父を止めてくれた貴方達には感謝してます…」 
「ウソだ! 
 俺は、今までたくさん殺した。 
 仇討ちといって命を狙われることもあった。 
 だが、そんな奴等も返り討ちにした。 
 親を殺した俺に呑気について来るお前はそいつ等以下だ。 
 ハッキリ言ってやる。足手まといだ」 
「おいキムラ、 
 いきなり何を言い出すんだ? その話は今は関係ないだろ?」 
「いえ、ジードさん、キムラさんの言う通りかもしれません。 
 でも、私達は何で戦うんでしょうか…? 
 まずは、あの人達の要求を受け入れてからでも……」 
「敵を信用しろって言うのか!?」 
「キムラ、よせ。 
 もういい。少しおかしいぞ」
暗殺者として、今まで多くの命を奪ってきたキムラ。 
父親を失い、国を失いながらも、未だ戦う意義を見出せないミナ。 
ミナは一度仲間になった者を疑うということを知らなかったが、 
キムラの方は、自分達が殺した男の娘が自分の後ろを歩いているのを許すこと自体、 
ありえないことであった。 
今の状況では、キムラの考えの方が現実的であり、 
ミナの考えは理想論に過ぎない。
黙ったままスクウェアブロックを進みながら、 
タカチマンはふと思った。
(確かに…、私がSFESの要求を受け入れれば、 
  他の者は無事に解放されるかもしれないが、 
  その保障もないものを受け入れるのは危険過ぎる… 
  しかし、それだけか…? 
  ゼペートレイネが私に拘る理由が解らない… 
  彼女が…、いや、私がSFESに与することで、 
  恐らく、私は失った過去の記憶に近付くことになるだろう… 
  私は、それが怖いのか……? 
  どうやら研究所暮しが長過ぎたようだ。 
  恐怖に対してここまで鈍感になっているとは…)
執筆者…Gawie様、you様

  101便・VIPルームブロック

 

「ここがいいかな。」 
ルキが立っているのは、とあるVIPブロックの部屋の真中。 
他の部屋と違ってこの部屋に人がいないのは、
やはり元々SFESが使っていた部屋だからだろう。
床にはまだ雑誌などが無造作に置かれている。
「さて、説明してもらうよ。『イオリ』『カイト』
言いながら振りかえる先には、いつの間に入ってきたのか、先程の二人組が立っている。 
「説明って言われてもねぇ・・・」 
答えたのは、『カイト』と呼ばれたほうの、金に近い茶髪に、青い瞳をした青年。
『イオリ』・・先程タカチマンにくってかかった目つきの悪い赤茶色の髪をした青年・・に視線を向ける。 
イオリは部屋に入ってから・・いや、
それよりもっと前から不機嫌そうにどこともいえないどこかを睨んでいる。 
「はぁ。」 
嘆息し、ルキに向き直りながら続けるカイト。 
「昨日、僕等―というか、イオリがVIPルームでヘンテコロボットといちいち遊んでるうちに、
 誰か・・多分、SFESって連中だろうね。・・に見つかって、監禁されてたんだよ。
 つい数時間前までね。」 
途中何度かイオリに睨まれるが、慣れたことなのか平然と続けた。 
「SFESに?というか、よく脱出できたね。」 
さすがのルキも驚きを隠せない。もっとも、隠す必要も無いのだが。
『ゼロ』っていう白髪の人が助けてくれたんだよ。 
 それで、思念波で色々といわれた後、気付いたらあの部屋に居たんだ。
 多分、転移能力か何かだろうね。」
『ゼロ』の単語を聞いた途端、イオリがさらに不機嫌そうになったのに、ルキは気付かなかった。
既にその『ゼロ』について考えをめぐらせていたからである。
「(またゼロか・・・一体何者だ・・?)」
しばらく考えるも、答えなど出るはずもなく、キョトンとしているカイト・・・
ついでに、心なしかさっきよりさらに機嫌が悪そうなイオリに、現在の101便の状況を説明し始める。 

 

「…ってところかな…」 
101便の状況…絶望的とも言える状況。 
だが、イオリとカイトはそこまで落胆してはいなかった。 
「…ちゃんと聞いてた?あんまり影響受けてないみたいだけど…」
「影響受けてどうするんだよ! 
 こんな状況…冗談じゃねぇぜ」 
イオリが吐き捨てるように言葉を出す。 
視線はどこかを睨んだまま。誰に言う事もなく、独り言のように。 
カイトがイオリを横目で見ながら言った。 
「まぁ…こんなトコロで死ぬなんて考えてないからね。 
 死にたくもないし、死ぬつもりもないし、 
 それに…死なない、いや、死ねないんじゃないかな」
カイトの言葉には力が込められているように思えた。 
(死『ね』ない…か)
その言葉に元気付けられたような気がした。
執筆者…you様、ごんぎつね様
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