リレー小説2
<Rel2.101便・佐竹1>

 

  101便・下キャビンルーム【リュージ、リエ、佐竹】

 

「やはり通じないか……」
乗客から借りたノートパソコンを操作するが、
航宙間ネットにも全く繋がらない。航宙機内は完全に電波遮断されてしまった。
「……にしても、其のSFESって連中…何が目的なんだ?
 態々、BIN☆らでぃんなんか使ってテロ起こさせて…」
「えーっとぉ………どうしてでしょうか?えへ」
「何かから眼を逸らさせる為の煙幕……
 もしくは世論操作…単純にBIN☆らでぃんが邪魔だったからかも知れんな」
リエのペースにも乗らず、冷静に分析する佐竹。
流石は元旧日本皇国エージェントである。
「何にしても良い迷惑デス!」
「お…おめぇ、居たのかよ?」
両腕を後ろに回された状態でグルグルに縛られたBIN☆らでぃんだ。
周囲には同じ様に転がされている彼の部下も居た。
「…にしても、何か通路の方が騒がしいな…まさか」
通路の方向から伝わって来る、僅かな声や震動を感じ取り、
リュージが其のオヤジ臭い顔を顰める。
「ゼロの言う様に……始まったのか…」

 

「あれ?」
気の抜けた様なリエの声…。彼女は見ていた。
天井の僅かな隙間からキャビンルーム内へと侵入した小さな蜂型エネミー達を……
入って来た蜂型エネミーは5体。
椅子の陰を利用し、人目に付かない様に行動している。
「……えっと、こういう場合は……
 らでぃんさ〜ん
床のBIN☆らでぃんに話し掛けるリエ。それは相手が違うぞ。
「うぃ?何で御座るか?」
「あそこにエネミーが居ますけどどうします?」
ブッと吹くBIN☆らでぃん。
其の唾が掛からない様、リエはらでぃんの部下でガードする
「アンタね!そゆ事は早く言うヨロシ!
 ってか仲間に言うべきじゃありませんこと!?」
「どうしたんですか?」
騒ぎに気付いて歩み寄る佐竹。
だが其の時BIN☆らでぃんの脳細胞が或る想定を始めた。
約1秒で想定は完了し、彼はオホンと咳きを吐く。
「いえ、なんでもにゃーいのダ。
 ぽっくんの気の所為ナリー」
適当に佐竹を誤魔化し、リエに耳打ちを試みるらでぃん。
このロープを解いてくれんかのぅ?
 そうすればエネミーなんぞはオリが一発で成敗してくれるわい
「あ、解りました〜」
(………コイツ、アホか?)
恐らくBIN☆らでぃんの考えで合っているのだろう。
もっともらでぃん自身、人の事は言えないが…
執筆者…is-lies
ロープを解いて貰った瞬間、BIN☆らでぃんは隠し持っていた眠り薬をリエの口に押し付ける。
あっと言う間に眠ってしまい、BIN☆らでぃんの手に落ちたリエ。
「おらぁ!こっち見ろコルァぁ!ええゴルァ!
 シャラポワぁ!トマベチっシークワーサー!」
突然の出来事に驚き、BIN☆らでぃん注目する乗客達と佐竹達。
「り…リエ!?あのバカ…」
「にょほほほほ!こんな所で人生終わらせて堪るかってんだですよ!
 人質の命が惜しくば、お前等全員、麿に跪くっち!」
其の時、座席の影から5体の蜂型エネミーが現われ、乗客に毒針を放ち始める。
どうやら奇襲の隙を窺っていた様だ。悲鳴を上げ、バタバタと毒に倒れていく乗客。
キャビンルームの中は騒然となった。
「ひぃ!?やっぱこんな、でーじ(超)物騒なトコからは
 さっさとトンズラぶっこくに限りますわ!」
異形に恐れを為したBIN☆らでぃんは部下の戒めを解き、
彼等と、眠ったリエを連れて下キャビンルームから出て行った。
向かう先は下内周部通路。其処の脱出ポッドで逃げ切る積りである。
「こんにゃろ!待てっ!」
「待ち給え!此処には未だエネミーが…!」
銃を構えたリュージ、佐竹の前に群がる蜂型エネミー達。
「畜生!退きやがれっ!!」
リュージの銃に付けられたスコープが敵を捕捉し、早速一体撃退する。
毒針の掃射には為す術も無く逃げ回るが、どうやら蜂型エネミーは毒針を連射出来ないらしく、
佐竹と共にヒットアンドウェイで何とか全部撃退した。
但し、リュージが毒針を数本受けてしまったが……
「大丈夫か?」
「ああ…まだ軽い。早くBIN☆らでぃんを追い掛けようぜ」
先程BIN☆らでぃんが出て行ったキャビンルーム右側のドアに入り、通路を走る2人。
執筆者…is-lies

キャビンルームの左右には脱出ポッドのある通路へ繋がる道がある。
恐らくBIN☆らでぃん達は其れで逃げ出そうと考えているのだろう。
通路の奥にある下部右内周部通路へと辿り着く佐竹一行。
併し、其の目の前にある通路の脱出ポッドは全て射出済みとなっていた。
「オイオイ、遅かったのか!?」
直ぐに通路脇の端末を調査する佐竹。
流石に元日本皇国エージェントだけあり、あっと言う間に情報を引き出す。
「いや、記録を見ると射出されたのは11時57分…
 ……丁度、BIN☆らでぃんを捕らえたのと同時刻……
 あの時の衝撃はこれだったのか……」
兎も角、此処にBIN☆らでぃんは居ない。
恐らく片方…詰まりは左側の脱出ポッド通路に向かったのだろう。
急いで踵を返し、下キャビンルーム迄戻ってから左側の扉を開ける。
居た。
眠ったリエを抱えたままのBIN☆らでぃんが半ベソで。
「……アンタ、こんなトコで何やってんだ?」
左側の脱出ポッド通路は今居る通路の奥のドアを開ければ直ぐだ。
にも関わらずBIN☆らでぃんはこの通路でへたり込んでいる。
「ここここ…この先、とんでもないバケモン居るですよ!!」
バケモノぉ?」
訝しんで脱出ポッド通路直通のドアにリュージか近付く。
オートで金属製の扉が左右に開いた。脱出ポッド通路が眼に入る…
…と、同時に黄色い一つ目のバケモノも見付けた…というか見付けられた。
2メートル離れているかどうかも怪しい場所でバケモノとリュージが見詰め合う。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
暫し時が凍る。
リュージなんかは目前の異形の瞳に映った自分自身の顔を見て、
「俺って相変わらずオッサン臭いなぁ」とか現実逃避に突っ奔っていた。
「………」
バケモノが青い甲殻の付いた腕をリュージの方へと向ける。
其れは上下に割れ、中からガトリングガンが姿を現す。
「おおわあああぁぁぁぁぁぁぁあああああああっッ!!??」
我に返って悲鳴と共に後ろの通路へと逃げるリュージ。対人センサーが働き自動ドアが閉まる。
閉まり切ったと同時、ガトリングガンの重低音とドアが弾丸を喰らう甲高い音が響き、
ドアに無数の膨らみが生じる。だが2秒程度で掃射は止まったので何とかドアを破られずに済んだ。
航宙機のドアは万が一の事態も想定した頑丈なものであったのが救いだ。
「ほら。バケモノ居るんや。アタシの部下も皆殺られちまったい」
「目の前じゃねぇかよ!!」
どうやら先程のバケモノが脱出ポッド通路に陣取っていて進めないらしい。
「…併し厄介だな。脱出ポッドの確認が出来ないとは……」
「そうだな・・・奴を倒さない限り、脱出ポッドには近づけねぇ。」
「倒すなんて無茶ですたい!扉開けた瞬間に蜂の巣でありんす。」
「いや・・・そうとも言い切れませんよ。」
「倒す方法があるってのか?」
「そうではありません。我々の目的はあくまで脱出ポッドの『確認』だということです。」
「というと?」
「ちらっと見ましたがが、あの異形は完全に通路を塞いでいるわけではないようです。
 小柄な者なら横を十分通り抜けられたと思います。」
「・・・・・なにがいいたい?」
リュージが少々顔を青くしながら聞き返す。
「もう二つある扉を使って奴を陽動し、奴の横を通りすぎて、ポッドを確認するのです。」
「・・・・」
リュージは口をパクパクさせている。
「そのためにはリエさんの協力が必要ですが・・」
佐竹がBIN☆らでぃんに抱えられたままのリエのほうを見る。まだ眠ったままだ。
「どうやったら起きるのですか?」
視線をBIN☆らでぃんに移し、問う。
「眠ってるだけでやんすから、ひっぱたけば起きると思うでゲス」
「・・・・他に方法は?」
「まぁ、自然に起きるのを待つくらいしか無いだっちゅねー」
「そうですか・・・」
こうして、リエが起きるまでしばしの間待つこととなった。
執筆者…is-lies、you様
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