リレー小説2
<Rel2.101便・ロバーブラザーズ5>

 

  同時刻・101便の一室

 

「生憎、そいつは全部こっちで聞かせて貰いましたぜ。 
 俺が言いたいのは……ちょいとばかし違うんですよ。 
 小桃嬢、アンタ何で口封じに動かなかったんですかい? 
 相手がペチャクチャお喋りに興じてたってのに」 
シルシュレイの言葉に小桃は「プランに入っていない」と軽く返す。 
「ちっ!まあ、起こっちまった事はしゃあねぇ……
 小桃嬢は此処で侵入阻止用防壁の展開を頼みますぜ」
舌打ちしながら其れだけ言うと、彼はコートを翻し、
暗い部屋の壁を触り始める。
細川小桃はリリィに、アヤコ・シマダは九尾の狐に、 
どちらも己の目的をやや優先してしまい、少々扱い難い。 
戦力調査…勧誘の意味も含めた共同作戦だが、 
此処迄クセの強い人材であったとは予想外だ。 
保険の為に連れて来たゼロも、情報を漏らすだけ。 
結局のところ、信用出来るのは自分達だけだ。
其れにしても意外だったのはルウ・ベイルスの介入だ。 
非常に有名な運び屋でもある彼の介入は予想はしていた。 
だが其れも、BIN☆らでぃんがテロ宣言をしていた時の事だ。 
其れ以後は各国で起こした同時多発テロ関連の依頼が殺到し、 
どうせ身動きがとれないだろうと高を括っていた。 
現実は地球崩壊…更に多くの宇宙ステーションへの避難依頼が入ると思っていたが、 
まさか、この時期に地球の人間達を無視し、 
101便内の30人にも満たぬ連中を優先するとは思わなかった。
「………だが、情報漏らしたのは失敗だったな。ルウさんよ」 
直ぐに携帯電話でリゼルハンク本社へと連絡を入れる。 
「航宙機内の雑魚を逃がした。
 ルウ・ベイルス…名前は知ってるだろ? 
 おお、そりゃな。この事件の全貌を聞かされてた。 
 あ?知るかよ。解かった解かった小言は後。 
 奴が救出した雑魚はモーニンゴ娘とつんく♂♀。 
 そーだよ、あの小娘集団とオカマだ。 
 依頼主はテレビネオスだ。混乱に乗じて巧くやってくれよ。 
 後は千里眼……解かってる。そっちは小桃嬢に任せてある。 
 おうよ。んじゃな」 
携帯電話を切ったシルシュレイの目には一種の怒りが浮かんでいた。 
「自戒とは随分と余裕あるじゃねぇか…… 
 だが力が滅ぼすんじゃねぇぜ。人間が自分で滅ぶんだ。 
 ……そう…走って転ぶ奴が阿呆なんだよ」 
シルシュレイは歯噛みしながらスパナを扱う。 
どうやら何かを解体している様だ。
執筆者…is-lies

  101便・VIPルーム

 

「そ、そんなことよりジョイフルは!?」 
敵に操られた戦闘ロボットとはいえ、
かつて共に戦った仲間を放っておけるはずが無い。 
ルウの不意打ちにより動かなくなったジョイフルにユーキン達が駆け寄る。
しかし、ジョイフルの腕が僅かに動いたかと思った瞬間、再びマシンガンが火を吹いた。 
床に転がったまま、手足をバタつかせながら辺り構わずマシンガンを乱射するジョイフル。 
「ばんばんいやです〜」 
岩に化け固まったままのおトメさんにバンガスも堪らず身を伏せる。 
ミナを庇いながら銃弾を躱すユーキン。跳弾が肩を掠める。 
「ジョイフル…もうダメなのか…?」 
「あの方…仲間だったんですか、なんて事…」 
血が滲む肩を手で押さえ、意を決したようにユーキンが立ち上がる。
下がってな、クラリス
「き、気を付けて、泥棒のおじさま
カッコつけてボウガンを構えるユーキンに、ミナも戸惑いながらも、 
咄嗟に演技して返してしまう。 
ふと、見覚えのあるシチュエーションにジョイフルの動きが止まる。 
動揺しているのか、苦しんでいるようにも見える。 
しかし次の瞬間、ジョイフルの額のランプが点滅し始める。 
「ま、マズいッ!!」 
素早くジョイフルの懐に潜り込み、額のランプを両手で押えるユーキン。 
「バカ! 半魚人以外のその力を使ったら、お前死ぬんだろ!?
 そ、そうか、実は、ボクは半魚人だったんだ。半魚人!!
「お、御頭〜!そんな無茶苦茶なぁ〜! 
 というか、御頭はどうなるんスかぁ!!?」
叫ぶバンガス、しかしユーキンの腕は徐々に石化し始める。
「ジョイフル!!」
「ゆ……ゆー…きん……?」
ジョイフルの機体から煙が噴出す。 
駆動音が弱々しく停止し、そのまま動かなくなってしまった。 
ユーキンも上腕部まで石化が進み、その場に倒れ込む。
「御頭ぁ!だいじょ……ぶじゃないですねハイ」 
片腕が石化してしまったユーキン。 
命に別状はなさそうだが、戦闘は無理があるだろう。 
一方、ジョイフルは完全に機能を停止してしまっている。 
修理出来るかどうかも解からない。
執筆者…Gawie様、is-lies
バンガスが恐る恐る、枠だけとなった扉から顔を出し、 
機長室前を窺うと………其処にはキララのみが残されていた。 
あの小桃の姿は見当たらない。
チャンスとばかりにキララへと躍り懸かるバンガス。 
何体ものエネミーを屠ったハンドガンが激しく火を噴く。 
「は…はううぅうううっ!!?」 
情け無い悲鳴を上げて後退るキララ。
コイツ、本当にSFES側のアンドロイドか?
だが、後退ったキララが急にコケ、バンガスの銃弾は全て機長室の扉へと吸い込まれる。 
「いっつ〜〜〜」 
キララはしゃがみ込んで頭を抱える。というか涙目にもなっていた。 
バンガスはオイオイと思いつつ、銃口を向けたままキララへと近付く。 
「良いかい?抵抗しなければ何もしな……・…」 
「あ、はいィ!」 
急に立ち上がったキララに、バンガスは頭突きかまされる形となる。 
衝撃で吹っ飛び、頭の中が一瞬、真っ白になる。
バンガス散る!
「あれ?これ…私がやったんですか〜?
 やった!勝利です!ヴィクトリーです!」 
バンガスにとっては屈辱の敗北であった。

 

其の光景をVIPルームの扉から見ていたミナが、 
暫し呆気に取られていたものの、直ぐに我を取り戻す。 
ユーキンは腕の石化で戦える状態ではない。 
バンガスはたった今、キララに敗北し気絶した。 
バンガスをあのまま放っておく訳にはいかない。 
機能停止したジョイフルの手からサブマシンガンを手に取る。
「(お父さん………を貸して…・…!!)」
ばっと飛び出し、キララにサブマシンガンを向けるミナ。 
其の細腕は銃の重さ…そして恐怖でカタカタと小刻みに震えていた。 
「ば…バンガスさんに手を出さないで下さい!」 
其れを見て「はうぅ!?」とビビるキララ。 
銃で撃たれたところでどうこうなる程、キララは脆くないが、 
如何せん、気が弱過ぎるのだ。 
…今の状態のキララは……
《キララさん、集合です。直ぐに本営へお越し下さい》 
何時の間にかミナの背後に立っていたのは真紅の先行者…
ツャア専用先行者であった。 
驚いて悲鳴を上げ、先行者に眼が釘付けとなるミナ。 
何とか勇気を振り絞って銃を構えるが、其の照準は全く合っていない。
キララがチャンスとばかりに、先行者に気を取られたミナの隣を抜け、 
ツャア専用先行者と合流する。 
《ふふ…運が良かったね。
 このキララさんは小桃嬢の作成した特Aクラスの戦闘アンドロイド…
 君なんぞは一瞬で返り討ちにあっていただろうに》
震えるミナを嘲笑いながら、ツャアはキララを連れてスクウェアブロック方面へ去っていった。

 

おかしい。実際はミナにすら驚いていた様なアンドロイドが 
そんな凄そうな相手には見えなかった。 
石化した片腕を抱え、ユーキンが思考に耽る。 
あのキララとかいうアンドロイドには、何か秘密があるのだろうか?
其の場にへたり込むミナに駆け寄り、 
怪我が無いかと聞きまくるユーキン。 
一方、バンガスの方は引っ叩いて立ち直らせる始末。 
下心見え見えであるが、ミナは其れに気付かなかった。 
まあ、温室育ちの御嬢様というものは、得てしてこういうものなのかも知れないが…

 

暫くの間、ユーキン達の手当てをし、 
門番の居なくなった機長室の扉へと近付く。
執筆者…is-lies
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