リレー小説2
<Rel2.101便・ロバーブラザーズ2>

 

  101便・下キャビンルーム

 

勢い付いて下キャビンルームへと突入したユーキン。
一行の前には、拘束された人々と驚くジャッカー達…
そして首謀者BIN☆らでぃんの姿があった。
「見つけたぞ貴様ァ!!メイさんは何処だァ!!?」
「はっはっはー!余の芸術作品が……へ?」
1人、モニターを見て喜んでいた様子のBIN☆らでぃんが
やっとユーキン達の侵入に気付く。
「うぬぐわああぁぁああ!!」
計画も何も無い突進だが、其の迫力に恐れを為すジャッカー達。
ビクビクした彼等の放った銃弾等、ユーキンに当たる筈もなし。
「ヒッ…ヒィ!!何だオメーは!?」
「貴様に名乗る名など無いッ!」
迫るユーキン。慄くジャッカー。
「ひ!く…来るなでごわす!
 来るとコイツをくるさりんどー(殺すぞ)!」
隣に伏せていた銀髪の少年を抱えて銃を突き付けるBIN☆らでぃん。
「こ…コイツって…僕ぅ!?オロオロオロオロ」
愚かなリBIN☆らでぃん。鬼神ユーキンにそんな手が通じる筈も無し。
うっせーハゲーーー!!
一向に足を止めぬ鬼神に、悲鳴を上げる2人。
「「神様ァーーーーー!!!」」

 

    ブチッ

 

突然何かが切れる音がした。
どうも・・・BIN☆らでぃんに捕まった少年からのようだ・・・・
「ふ・・・フフ・・・・フフフッ・・・・・」
不敵な笑みを見せる銀髪少年・・・・辺りは急に静まりかえる。
「なんじゃおのれは〜!!!」
「あがー!!なに考えとんやしおめーはー!!!」
座席に座っている青髪の男がポツリと漏らした。
「……始まったか」
「フハハハハハハハハハ!!!!!
 敵はお前等かーッ!!!!!」
突如リアル化し、オーラを発しながら叫ぶ銀髪少年。
その表情は狂気に染まっている。
「敵はお前等か!!!!ぶっ殺ス!!!!!
辺りの空気が暴走する銀髪少年に集まっていく。何が始まるのか・・・・
『おろおろメーター』がMAXか・・・いかん」
どうやらこの青髪の男…銀髪少年の連れの様だ。
直ぐに青髪の男が銀髪少年の前に飛び出し、
錯乱状態のBIN☆らでぃんとユーキンに銃口を向ける。
「BIN☆らでぃん・・・貴様の言うジハードとは所詮この程度か」
「お頭ぁッ!?」
其の時、この騒ぎで眠っていたおトメさんが目を覚ます。
執筆者…is-lies、しんかい様
!!!!う゛〜〜〜〜〜!!!ばんばんいやですっ!!
青髪の男に向けて鬼火を放つおトメさん。
「なっ!?」
不意に自分に放たれた鬼火をバク宙で躱す青髪の男。
「今だぁ!!死・・・」
ユーキンがBIN☆らでぃんに向き直り、そこまで言いかけた時・・・
「ハハハハッ!消えて無くなれぇっ!!」
拳銃という枷がなくなり、銀髪少年はその力を解放する。
「まずいっ!」
銀髪少年の魔法が発動するとほぼ同時に、
被害を抑えるためその周囲に防護壁を張り、魔法を押さえ込む青髪の男。
ふごぁあ゛あ゛あ゛〜〜〜〜!!!
無論、銀髪少年を掴んでいたBIN☆らでぃんは防護壁内に居たため、その攻撃をモロに受けた。
「こら死んだな・・・」
青髪の男の連れと思しき、十字架型の大剣を持った男が呟く。
ユーキンはと言うと、一瞬なにが起こっているのかわからないようで、呆然としている。
無理も無い。BIN☆らでぃんが人質に取った少年が突然暴走し、らでぃんを倒してしまったのだから。
更に彼の連れであろう青髪の男…身体能力や魔力を見るに、能力者だったのだろう。
「これでナオキも元に戻ったろう。ついでに、ゴミ掃除もできた。」
魔法の光がやみ、二人の影が見えてきたとき、少年のほうがその場に倒れた。
どうやら気絶してしまったようだ。そして、BIN☆らでぃんは・・・
「ふ、ふははは!!」
「なに・・?」
「こんなこともありんすかと!実は服の馬鹿(中)に、
 たゃあ(対)エーテル防護服を着込んでゃー!!!」
衝撃で混乱しているらしく、ただでさえ下手な日本語がさらに悪化している・・・
執筆者…you様
「ほう…だが状況は変わらないぞ……ここまでだ。BIN☆らでぃん。」
自慢気なBIN☆らでぃんに銃口を向ける青髪の男。
「そ、そうだ!覚悟しろっ!!」
ユーキンも、銃を向けた。
「・・・・なははは!!この防護服は防弾チョッキも兼ねちょるばい!!」
「だが、頭は丸出しだろう?」
その言葉を聞き、BIN☆らでぃんは固まった。
「リーダー!どうしたんだっちゅーの!?」
その時、ジャッカー達が3人ほど、扉から入ってきた。
「フハハハ!まだテンは彼に味方せんとーす!」
ジャッカーの銃口が青髪の男、ユーキン、そして乗客のほうへ向けられる。
「ケイタイバクテン(形成逆転)だな!」
「ちっ・・」
ユーキンと、青髪の男が銃を床に投げた時・・・
「はぁっ!」
ぐえっ!?
突然、扉から躍り出た緑髪の青年がジャッカーを一人気絶させた。
其の背後には銀髪の男とメイド服の少女、小柄な少女が居る。
「なんだっ!?」
「ちっ!」
もう一人のジャッカーがその青年に銃口を向けるも、メイド服の少女に銃を払い落とされた。
「動くなぁ!!」
残ったジャッカーが近くに居た乗客を人質に取り、二人から離れながら壁のほうへ寄った。
「くっ・・・」
どうやら彼等も隙を見てキャビンルームを開放しに来た者達みたいだ。
この機…ユーキン達が思っていたよりも多くの実力者が乗っていた。
「そこの緑髪の男。伏せなっ!」
「?」
どこの誰かはわからなかったが、その場に伏せる緑髪の青年。
ズキューンッ・・!!
ぐわぁっ!
どこからか飛んできた銃弾が、ジャッカーの肩を正確に射抜く。
ジャッカーが銃を取り落とした瞬間、メイド服の少女が気絶させた。
そして、次の瞬間、青髪の男が銃を拾い、再びBIN☆らでぃんに向けた。
銃弾の飛来元を探ると、銃を持った少年が居たのだった。
ユーキンにも見覚えがある。大名古屋国大戦で共に活躍した勇者の一人…『キムラ』

 

 

其れを影から眺めるのは…先程、ユーキン達の見た銀髪の男と、小さなドラゴンである。
「これでBIN☆らでぃんも終わりですね。」
「たいしたことなかったね。」
「まだですよ。」
「え?」
「『SFES』のみなさんの真の計画はこれからですよ。」
「なんでわかるのさ?」
「さっき、積荷の中にそれらしいものを見つけたからですよ。それに、SFESのみなさんの気配もしてますしね。」
「それらしいもの?」
「後のお楽しみですよ。・・・さぁ、SFESのみなさん、どう行動を起こしますか?」
さも楽しそうな微笑みを浮かべ、呟いた。
執筆者…you様
「ふぅ…間に合った様だな」
「皆さん、大丈夫で………えっ?」
部屋に入って来た4人の少年少女。
内、3人は…敷往路メイ…と、彼女の護衛である少年2人、ハチとタクヤである。
同時にユーキンが顔を綻ばせるものの、
彼が喜びの声を上げる前に、小柄な少女が…
「め…メイさん!?」
「メイさぁん!無事だったんですね!…って、何で君がメイさんの名前を!?」
「あ、ユーキンさんも来てましたか。
 其れより『ミナ』ちゃん…何で此処に?」
どうやら知り合いの様だ。茶髪の男達も他の人物も混乱している。
※そう、ユーキンは大名古屋国大戦の際、ミナと出くわさずに終戦を迎えていた。
そんな混乱に乗じてBIN☆らでぃんは逃げる機会を窺うが、
目の前の青髪の男…そして座席から立ち上がったノートパソコンを持った男は
BIN☆らでぃんを油断無く監視して隙を見せない。
其の時。
  ゴオオォォォォオオン!
航宙機全体を大きな衝撃が襲う。転びそうになり慌てて座席へ掴まる一同。
「な…何なんですか!?」
「貴様…何かしたのか?」
逃げ出そうとしたBIN☆らでぃんに素早く銃口を向ける。
だが、腰を抜かしたBIN☆らでぃんの口から出て来たのは意外な言葉だった。
「し…知りましぇーん!
 あっしの計画はとっくに失敗してますたい!」
其れを聞いて銀髪の男が前に出て来た。
ブルーのスーツに身を包んだエリートっぽい中年男だ。
「失礼。先程から思っていた事ですが、
 監視システムの隙を縫ったテロ行為のタイミングの良さ
 しかも20人以上もの団体での行動は、
 ニュースで見た貴方の強引で大雑把な行動とは掛け離れている様に見えました。
 更には初期の行動に比べ、ツメが甘過ぎます。
 そもそも幾多もの紛争で貴方々の銃火器や活動資金は底を尽き、
 イスラム共栄圏からも見放され始めている様子であるとも聞きます。
 ……貴方々は、どうやって、こんなテロを起こせたのですか?」
「こここ答えるかんら殺さんといて!
 情報提供者が居るんや!名前は知らへん!
 連絡は携帯電話でとって………??」
ピララ〜ララ…ピラリラリラ〜
BIN☆らでぃんの取り出した携帯電話が『チャルメラ』の着信音を鳴らす。
直ぐに其れを取って通話ボタンを押す銀髪の男。
「…もしもし」
《くぺぺ…BIN☆らでぃんは失敗したペンね》
「………何者だ?」
《答えるバカぁ居ないペン。精々、楽しませてくれペン。くぺぺぺぺぺぺ!》
ツー…ツー…ツー…
「貸せ!」
電話を引っ手繰る様に奪い、先程の相手の番号に掛けるが…
「電波が届かない…だと!?ふざけろ!」
先程、相手から掛かって来たというのに、此方から掛けられない。
故障かと思い、自分の携帯で電話を掛けようとするが…
「……どういう事だ?」
やはり電波が届かないと表示される。其れどころかどの電話番号も通じない。
慌てて周囲の一同も自分の携帯電話を掛けようとするが結果は同じ。
どうやら機内の電波が遮蔽されている様だ。
ならばエーテル通信かと思い、タカチマンがBIN☆らでぃんの携帯電話を調べるが、
エーテル通信に必要な結晶が何処にも無い。
「誰から…だったんですか?」
「……黒幕だ…。正体は解らないが……まだ何かあるらしい…」
………嫌な予感がした…
取り敢えず乗客達を各キャビンルームへと戻らせ、
メイは機長室へと航路確認に行くと言って来た。
機内の通信機がどれも使用出来ないので、直に歩いて行くそうだ。
勝手に侵入すれば射殺される事もあるが、この非常時では仕方が無いだろう。
「まあ、ちょっと待てよ。何か、知り合いやらが多いみたいだし
 此処等で一旦、情報交換といかねぇか?どうも嫌な予感がするんだ…。
 情報は多いに越した事は無い。違うか?」
其れには賛成の声が多くあった。勘の良い者は既に感じていたのだ…
………この事件は巧く動かないと命に関わると……
執筆者…is-lies
こうして彼等は自己紹介を始めた。
「ボクはユーキン!前大戦でも有名な正義盗賊だ!」
「えーっと、おかし…じゃなくってユーキンさんの弟子のバンガスです」
「……人間嫌いで…」
直ぐにおトメさんの口を塞ぐバンガス。
「この子が、おトメさん。まあ、此方もボクの弟子かな」
「敷往路メイです。そしてこの2人がハチとタクヤ。2人共精霊神です」
「精霊としての名はダルメシア・ヌマ・ブフリヌスだ」
「同じく吠黒天・猫丸」
「私達は西日本の依頼で火星へと向かっていました。
 まぁ、其の西日本が崩壊した今、依頼も何もあったものじゃないですけど」
「キムラ…暗殺者だ。其処のメイに護衛として雇われている」

 

銀髪の男…
『佐竹』だ。各地で起きている『破滅現象』を調べている」
「『ミナ』…です。佐竹さんと一緒に行動しています。
 そして、こっちの子が『リリィ』。アンドロイドです」
ミナに紹介されて、メイド服の少女ことリリィが会釈する。
「宜しく御願いします」

 

緑髪の青年…
『カフュ・トライ』。佐竹さんの護衛だ」

 

青髪の男…
「…『タカチマン』…今は名前だけで十分だろう?」
銀髪少年…
「えっと…『ナオキング・アマルテア』です。
 タカチマンさんは魔導科学者で、其の助手をさせて貰ってます。
 僕達は依頼の調べものに必要なタカチマンさんの御友達を
 地球から連れて来た所で…何か……巻き込まれちゃって…オロオロ」
オヤジ臭い男…
「俺が其の御友人とやらな。『リュージ』ってんだ。
 一応、銃火器店やってっから、銃で困った事があったら言ってくれや」
店員っぽい少女…
「はいは〜い!私は『リエ』です〜!店長の店でバイトしてます〜」
「店長じゃ解んねェだろうが!
 ああ…俺の店のバイトだよ、コイツ」
茶髪の男…
「俺が『ジョニー』。タカチマンさんの依頼主や」
ノートパソコンを持った男…
『ジード』だ。そいつ等(と言ってリュージとキムラを指差す)とは
 知り合いでな…面白がって付いて来たら…こうなった。
 これで全員終わりだな。で、機長室にはメイ達が行くとして…
 俺達はどうする?」
執筆者…is-lies
「それぞれ、キャビンルームに行ったほうがいいと思いますよ。」
「あ!あなたは・・!」
「君は・・確か『ゼロ』といったな。」
どうやらこの白い髪の男…ゼロと面識がある様だ。
「ええ。」
「やはり、この便に乗ってたのか。」
「はい、あの時はどうも。」
「君たち、知り合いか?」
「知り合いというほどではないさ。」
「宙港まで一緒に乗せてやっただけだ。」
「佐竹さんこそ、お知り合いなんですか?」
「さっき、この機内で会っただけだ。」
「それより、キャビンルームに行ったほうがいいというのはどういうことだ?」
「あなた方の仰る、『黒幕』がこの航宙機内に居るからですよ。」
「この中に!?」
「ええ、さらに、まだ何か企んでいるようです。」
「・・・なに?」
「まだ詳しくは私にもわかりませんが、これからが『黒幕』の真の計画でしょう。」
「君はその『黒幕』について知っているようだな。」
「はい。『SFES』という組織です。知っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?」
「SFES・・・だと?」
「・・・なるほど。」
「ど、どうしましょう、タカチマンさん!・・・オロオロオロオロ・・・」
ジード、タカチマン、ナオキングの反応を見てくすりと笑うゼロ。
「そこの三人の方はご存知のようですね。」
「ああ。少しだがな。確か、『セイフォート』とかいうものを研究している
 能力者たちのかなり大きい組織だとか。」
「それだけご存知なら十分ですよ。」
「その能力者集団が、何を企んでるんだ?」
「先ほど言ったように、まだ完璧にはわかりません。
 ですが、乗客に危険が及ぶのは間違いないでしょう。ですから、乗客を守りたいのなら
 このキャビンルームだけに固まっているのはやめたほうがいいでしょう。」
「なにを根拠にだ?」
「先ほど航宙機内を少し調べましてね。積荷に『あるもの』が載っていたんですよ。」
「あるもの?」
「おっと、少し喋りすぎましたか。
 あまりベラベラ喋るとSFESのみなさんから嫌われてしまいますね。」
「お前・・SFESと面識があるのか?」
「・・さぁ、どうでしょうね。」
「あ〜、あぶらあげたべたいです。」
「おトメさん・・」
「それでは私はこの辺りで失礼させていただきます。まだ見たい所があるので。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。君は一体どこまで知っているんだ?」
「秘密です。これ以上語る必要はないですから。それでは」
そう言うと、ゼロは扉を出て行った。
「一体、なんなんだ?あいつ。俺たちに情報提供してくれたと思ったら、
 SFESとの面識もある、さらに詳しいことは知っていても語らない。」
「一体・・・何者なのだ?」
「とにかく、このままじゃ乗客が危険だということは間違いなさそうだな。」
執筆者…you様
「・・・・とりあえず、手遅れになる前にSFESを叩くなりすべきか…」
「そうだな・・・・じゃ、いくとするか。」
リュージ達はキャビンを出て行った。
それに続いて、メイ一行、ユーキン一行と次々と彼等はキャビンを出て行く。

 

佐竹達の決めた班分けはこうだ。
上キャビンルーム…キムラ、ユーキン
下キャビンルーム…リュージ、リエ、佐竹
左キャビンルーム…リリィ、ミナ
右キャビンルーム…おトメさん、バンガス
前部キャビンブロック通路…タカチマン、ナオキング、ジョニー
後部キャビンブロック通路…カフュ、ジード
探索班…メイ、ハチ(ダルメシア)、タクヤ(猫丸)
各キャビンルーム内の守りは其れ程ではない。
部屋に直結している通路にこそ戦力を置いていた。
乗客達が混乱を起こしてしまってはいけない。
何が現われようとも、通路で片付ける積りだ。
同時にメイ、ハチ、ハクヤは、やはり機長室へと向かう。
先のゼロの言葉が真であれど、防戦一方では話にならない。
せめて航路確認だけは取りたかった。
先のテロの一件から解る様、この航宙機の保安機構は機能していない。
恐らくはゼロの言うSFESが手を加えたのだろう…
SFES…ジードの説明によると神明10年に創立されたとされるエーテル研究集団兼雇われ能力者集団。
活動内容は殆どが非合法でありながら、尻尾は見せない。
火星の大企業『リゼルハンク』を隠れ蓑にしているからだ。
絶大な国家間影響力を持ち、今も尚成長を続けている。
『前支配者』という異界の魔物達と『セイフォート』と呼ばれる謎の力の研究をしているという。
其の様な得体の知れない敵と戦うのだから、
用心に越した事は無い。
執筆者…is-lies

  101便・右キャビンルーム

 

「う〜ん、支配者…かぁ」
「しはいしゃってなんですか」
「え…?う〜ん、う〜〜…、まあ、悪いやつだよ」
「わるいにんげんきらいです」
1人と1匹は辺りを見回している。
…1匹の方は、なにも考えていない状態だが。
「おなかすいたです。あぶらあげほしいです」
おトメさんがバンガスの服を握り、そう言った。
「ダメ。さっきも食べたばかりだろ?」
「う〜」
「(それに、もしもの時の場合を考えてでも、
  油揚げはある程度確保しておかないと…)」
バンガスは別の意味でも、緊張していた。
「(そうだ…スクウェアブロックに食堂が幾つかあった筈…!
  和風食堂を見付ければ、油揚げの1つや2つ……
  ……メイさんに頼んでおけば良かったなァ…)」
「……バンガスさん……」
バンガスの服の袖を引っ張って、俯いた彼の顔を覗き込むおトメさん。
「ん…何だい?」
声が返って来、狐女は暫く考える様な顔をしてから口を開いた。
「バンガスさんやおかしらは、
 どうしてわたしをたすけてくれたですか?」
いきなりの質問に少々たじろぐバンガス。
「うんん?…そだね〜…。放っとけなかったからだよ」
「……なんでですか?」
「う…。そ…其れが『正義』だから」
おトメさんは初めて聞いた言葉に首を傾げる。
「『せいぎ』…ってなんですか?」
「うん。良い事。
 皆が喜ぶ事。皆が楽しめる事。
 皆を……護る事」
「…………」
思案する様に黙り込む狐女。
何とか納得させられたか。そうバンガスが思った時。
ドゴーーーーン!
急に天井の一部が砕け、落ちて来た。
慌ててキャビンルームの端へと逃げる乗客達。
煙が晴れた跡に現われたのは、
2体の猿型エネミー、3体の蜂型エネミーであった。
執筆者…ごんぎつね様、is-lies
「う〜。あれなんですか」
「わ、悪いやつだよ!!」
「わるいのきらいです」
バンガスは焦っていた。5体の敵を相手にする…
もうダメだとさえ感じていた。
「ハンドガンさえ…使えれば…」
バンガスはおトメさんを横目に見ながら呟く。
そんな間にも、5体のエネミーはこちらに向かってくる。
バンガスは決意した。
「おトメさん!ばんばんやってもいいかい?!」
「いやです」
おトメさんは平然と答える。バンガスは汗を流した。
「あ…、後で油揚げあげるから!!」
「う〜、…ちょっとだけです」
おトメさんはそう言い、隅に移動すると岩に化けて固まった。
「ありがとう!!」
バンガスは叫び、ハンドガンを手に持つ。
「皆さん、伏せてください!!」
バンガスは叫ぶ。目には涙がうっすらと浮かんでいる。
半分、ヤケクソになっているようだった。
「僕だって…やるときはやるんだぁっ!!!」
バンガスは、ハンドガンを連射した…。

 

 

…………

 

 

次にバンガスが気づいた時には、
周りにいた乗客から、拍手がおこっていた。
「……へ?」
バンガスが撃ったハンドガンは、
5体全てのエネミーに直撃し、その全てを倒していたのだった。
「や、や、やったの…か………」
バンガスは涙が止まらない。
今度は、嬉しさの涙。やったという、嬉しさの涙。
「バンガスさんすごいです」
おトメさんがバンガスに近付いてきて言った。
「あ、ありがとう…」
バンガスは笑みを浮かべる。
「あぶらあげください」
「はいよ」
「うふ〜」
何と言う変な妖怪だろう。
これだけの大事だったと言うのに平然としている。
油揚げを美味しそうに頬張っている。
緊張感など全く無い。呑気なもんだ。
「(やっぱり、油揚げは多めに持っていたほうがいいな…)

 

バンガスは、ちょっとばかり成長した。
ステータス、「男らしさ」がアップした時であった。
執筆者…ごんぎつね様
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