リレー小説2
<Rel2.101便・ミナ1>

 

 

数日後、ネオス日本共和国。

 

「…着きましたね。『日本宙港』」
「ああ。既に偽造IDでチャーターしてある。
 ええと…7番線だな…行こう」
先行する佐竹の後を付いて宙港の通路を歩く一同。
「なあ…」
カフュがミナへと小声で言う。
「はい?」
「…やっぱ…財布はお前が盗んだんじゃないんだよな?」
どうやら漸く勘違いに気付いた様だ。
ちょっと怒った様な表情で返すミナ。
「勿論です」
「いや、悪ィって。ホント…お前に似てたんだよ盗っ人の奴…」
《標準時間10時発、
 火星アテネ宙港行き101便は7番線を御利用下さい》 
「お、そろそろだな。じゃ、行くとしますか。」
出発用のゲートへと歩いていく一同。
そしてゲートに入ろうとした時、
「ちょっと待ってくれ!」
佐竹が一同を後退させる。
「い、一体どうしたんです?」
「さっきゲートに皇国の兵が居た。おそらく私を捜しているのだろう・・・
 この格好ではバレる。」
「確かに・・・・・どうします?もう時間もありませんが?」
一同は沈黙する。
そして、
「!」
佐竹が何かに気付いた様だ。
「どうしたんですか?」
ミナの言葉に、佐竹は天井に設置されたモニターを指差す。
どうも臨時ニュースをやっているらしく、其の内容は…
…京都…炎上……
西日本の金閣寺内で大規模な反乱が起き、
数時間後に、巨大なバケモノが敷往路家に現われた。
どうやら京都を焼き払ったのは、其のバケモノの様だ。
バケモノとやらが気になったが、如何せん情報が少な過ぎる。
だが、其れでも佐竹の表情は満足気だ。
「『青』君…やってくれたか…!」
「『青』……大名古屋国大戦に於ける勇者の1人ですね。
 佐竹様は彼と御面識が?」
佐竹の呟きをリリィは見逃さなかった。
「ああ。別件で腐敗し切った西日本を止める依頼をしておいた。
 こうも早いとは思っていなかったが…」
「何にしろ、コレで問題は解決だな」
皇国兵達に視線を向けるカフュ。
見ると、兵達は金閣寺の方向に向かって土下座していた。
己の無力さが天皇を死なせたと思っているのだろう。
其の純粋な気持ちは良いが、狂信は勘弁して欲しいものだ。
佐竹達は無事、ゲートを通る事が出来た。
執筆者…is-lies、鋭殻様

  日本宇宙ステーション

 

窓から見える宇宙空間に見入るカフュ。
獣人という事で、公に人権が認められていない彼にとって
興味の対象は尽きぬ様だ。
流石に航宙機となると、獣人でなくとも
相当な金持ちでなければ乗れない物ではあるが。
「さて…発進は10時…。到着は9:30といった所か…
 警戒し過ぎて少々、早く来過ぎたな…
 到着迄、駅内でも見て来るかね?」
長椅子に座って雑誌を読みながら、一同に問う佐竹。
「そうですね。じゃあ私達はちょっと駅の中を見てきます。
 行こっ、リリィ。」
ミナ達は駅構内へと歩いていく。
続いて、
「俺もここん中ちょっと見てくるわ。」
言動はそれ程ではないが、カフュの目は好奇心に満ちていた。
そしてカフュも構内へと走っていった。
執筆者…is-lies、鋭殻様

「へぇ〜っ!凄いなこれは」
カフュは構内の色々なものに目をやっている。
その目は好奇心から喜びへと変わっていた。
「あれに乗るんだな…」
航宙機を見つけ、それにも目をやる。
「ヘヘッ!これは面白そうだ!」
一方、ミナとリリィは…

 

「……火星…獣人達が強制労働させられている星…
 ………御父さんが…解放しようとした星」
駅構内のベンチに座った2人は
目の前のモニターに映される火星の映像を眺めていた。
火星の技術発展や発掘された鉱物等を紹介している内容だ。
この映像が火星の光ならば、
獣人の強制労働や過労死等は影の部分に相当するのだろう。
「………御嬢様」
「…何?」
「…火星の獣人達の扱いは
 御嬢様が見るには早過ぎると思われますが…」
彼女なりの気遣いなのだろう。
道具として死ぬ迄使われ、死んだら碌な供養もされず…
酷い場合は纏めて焼かれるか谷へと捨てられるか…
其の様な残酷な光景をミナに見せたくないのだろう。
「大丈夫…。わたし…もう子供じゃないもん」
「………覚悟して…おいでなのですね…」
「………」
父の正しさ…父が豹変した訳…
其の真実を知りたい一心で火星迄行こうとしている。
其の為なら、どんな事でも耐えて見せる積りだ。
何時か、優しかった父の汚名を払拭出切る様に……
そして、9時半…航宙機の到着である。
執筆者…ごんぎつね様、is-lies

  101便・左キャビンルーム
  【ミナ、リリィ、カフュ、佐竹】

 

ミナ一行は航宙機に搭乗し、また自由行動をしていた。
カフュは遊戯場へ、佐竹は席で雑誌を読んでいた。
ミナ達は佐竹やカフェ達と離れた場所でモニターから宇宙を見ていた
此れから火星に行くと思うと、ちょっと複雑な気持ちだった
真実。確かに知りたいものだった。そして父の汚名をはらしたかった。
けど、リリィには言えない。
何か不安をミナは感じていた。何かが・・・ 
「…」
「…お嬢様、そろそろ、席のほうに…」
「…ええ」
カフュや佐竹とも合流したミナ、リリィ。
自分達の席へと座った。航宙機発射時は機体が大きく揺れるので、席に座る決まりだ。
「火星…」
佐竹の目からは、複雑な思い、そして決意が感じられた。
カフュのほうは腕組みをし、退屈そうにしている。
そして、出発の時間がやってきた。
「………皆様、少々お耳を…」
黙っていたリリィが唐突に小声で話し掛ける。
「どうしたのかね?」
「この航宙機……ジャックされようとしています」
突然の事に、飲んでいたジュースを吹き出しそうになるカフュ。
他のメンバーも驚きを隠せないでいた。
「ターゲットはA〜E。
 コート内に小型銃器を隠し持っています」
リリィが素早く視線を走らせた男達…
ロングコートにマスク、サングラス、帽子と怪しさ満点の集団だ。
幾らコートで隠そうとしても、アンドロイド・リリィの眼は御見通しであった。
「ふん!其の程度蹴散らして…」
「他の乗客を巻き込んでしまいます。
 今の内に何処かへ隠れ、機を窺う方が宜しいかと」
小声で話し続ける皆。
「…そうだな。俺がやってやるよ」
「大丈夫なのですか?」
「ふん、テロリストの拳銃を見抜けて、
 俺の力を見抜けないのか?」
カフュの目は自信に満ちていた。
「…」
「大丈夫なのかね?」
「任せてくれ」
「…気をつけて…」
出発時刻がせまる。
機内アナウンスでは、座席に着く様にと言っている。
「じゃあ。皆はここにいるんだ。俺に任せてくれ。
 何かあったら、頼むぜ」
そう言ってカフュは立ち上がる。
そして、今迄の会話時の声の何十倍もの声をあげた。
「さーて!トイレに行こうっと!」
「お客様、お静かにお願いします」
「ああ、すまねえな」
「もうすぐ出発です。機内が揺れますので、
 今しばらく席にお着きください」
「いや、もれそうなんだ。
 客の言う事が聞けないはず無いよな?」
「お、お客様…」
カフュはそう言い、トイレへと向かった。
もちろん、機を窺い、隠れる為だ。
そして…AM10:00。
執筆者…鋭殻様、エデンの戦士様、ごんぎつね様
遂に航宙機が発進した。
機体が軽く震え、僅かな浮遊感を感じたと思ったら、
発進完了というアナウンスが船内に響き渡る。
結晶を使用した重力制御は快適な航宙を約束してくれる。
ロングコートを着た男達の内、1人がトイレへと向かう。
先程のカフュの大声を聞いて、押さえに行ったのだろう。
自分が誘き寄せられた事にも気付かぬままに…
「(カフュさん…頼みましたよ!)」
そして……
「いよぉっし!己等、動かないで下さい!
 ちょっとでも変なマネすっとブチ殺しちゃうぞ!」
発進を見計らった男達が一斉に立ち上がり、
乗客に銃口を向ける。騒然となるキャビンルーム。
…其れにしてもコイツ等、無茶苦茶な日本語喋ってやがる。
暑くなったのか、ロングコートを脱ぎ捨てる一行。
其の下からは中東イスラム共栄圏系の服が現われた。
「…………『BIN☆らでぃん』か…」
BIN☆らでぃん…アメリカ合衆国に対してテロ行為を行い、
イスラム対アメリカの構図を作り上げた張本人である。
アメリカに虐げられたイスラムの解放を動機としており、動機は筋が通っている。
何故、話し合いをせず、いきなりテロという行為に出たのかと問われ…
「僕達、英語解りません」
と答えて、各方面から非難された人物でもある。
執筆者…is-lies(ネタ提供・トッパナ様)

  101便・手洗い
  【カフュ】

 

「はっ!!」
カフュがコートの男の銃身を破壊する。
「ひ、ひいっ!!」
「さて・・・もう武器は無いよなあ?」
「ぉ、お助、ブッ!
カフュが男の口を塞ぎ、どこからか出したテープで口を塞ぐ。
「さて・・・・まずはコイツの服を・・・・」
どうやら敵に変装する気らしい。
「ンガーーーーーーー!」
男は抵抗する。
「おっと・・・死にたくないなら・・・分かってるよな?」
それを聞き、男は抵抗を止める。
男はこの時思っただろう。
この男、悪魔だ、と。
<ロングコートの男の心境>
「さらにはこの悪魔、ロープまで出しよった。
 なんちゅー奴ですたい。
 そしてボクは、縛られ、動けないまま、
 べんべん便所に放置されちゃったわ、こりゃ」
「さて…と。行くか…!」
カフュは手をパンパンと払い、
男が動けないか確認すると、トイレを出た。
「うぃ〜す。異常なしでやんすよ」
「おう」
カフュは男から奪ったロングコートを着ている。
相手は気がつかない。
バカな奴らだとカフュは思った。
「おうおう、そのコート、
 もう脱いでいいんとちゃうん?」
「そうだな…っと!!」
ばぎゃあっ?!
カフュはテロリストの男とすれ違いざまに
テロリストの懐に拳を入れる。
テロリストは倒れ、気絶した。
「ふう、2人始末終了…と」
カフュは周りに他のテロリストがいないことを確かめ、
コートを脱ぎ捨てた。
「さて…と。先ずはいっちゃん警備の薄い所を狙うべきだな…」
カフュの隠密行動はまだまだこれからだ。
執筆者…鋭殻様、ごんぎつね様

後部の各キャビンルーム連結通路へと向かったカフュ。
其々のキャビンルームを用心深く覗いていくが…
「うーん……どれも似た様なもんだな…5〜6人…。
 佐竹さんの居る場所は、さっき始末した分だけ人数少ない3人…
 ん…?あれは…」
カフュが下キャビンルームに着いた時だった。
部屋の中で、長い顎鬚を蓄えた老人が
通信機に向かって何やら指示している…。
同時に機内アナウンスが流れた。
《あーあー、マイクテストテストテスト。
 うぉっほん!俺様がBIN☆らでぃんなり。
 この航宙機はアタクシ共が乗っ取った。
 ぼっくんの要求『Ω心理教追放』が叶えば、諸君等は解放しても良いッス。
 んだが、もし叶わない場合は、この航宙機に持ち込んだレーザー砲で地表を攻撃。
 最終的には航宙機自体を日本へ落とす!
 解ったか野郎共ぉぉ!!?》
其の声は、目の前の老人のものであった。
「コイツがリーダーか…日本語滅茶苦茶だな。
 さて…どうする……いきなりリーダーを潰すか…
 各キャビンルームを先にコッソリ解放するか…」
 最初にボスをやっちまうのもいいが…
 最後にやってもいいな。
 …どんな慌てた表情を見せるか…な」
カフュはそう言い、引き返そうとした。
…が、何かを思いつき、その場にしゃがむ。
「そうだ。これをセットしておくか」
カフュは、老人がいる部屋のドアにあるものを仕掛けた。
先程のテロリストの男から奪った、睡眠ガス噴射機だった。
「これをちょちょっといじって…と、よし!」
そして、カフュは引き返した。
(あのドアを開けると作動するようにいじくっておいた。どうなるかな…?)
カフュは、心の中で、そう笑っていた。
「そんじゃ、戻りますか」
ミナ達の捕らわれた左キャビンルームへと戻るカフュ。
執筆者…is-lies、ごんぎつね様

  左キャビンルーム
カフュが着いたのは、
流石に仲間の帰りが遅いと不安になったジャッカー達が
通信機で連絡を取ろうとする正に其の時であった。
「させるかよッ!」
疾風の如く掛け、一瞬で
通信機を手に取ったジャッカーの後ろ首に手刀を叩き込み気絶させる。
残ったジャッカーがカフュに注意を移した瞬間、
リリィが肘で隣にいたジャッカーの顎を突き上げた。
人数が少なかった為、乗客に被害が及ぶ前に、何とか制圧する事に成功した。
其の場のジャッカーを全員、拘束し、乗客にパニックを起こさない様呼び掛ける一同。
「巧く行きましたね」
「ああ…だが、問題はこれからだ…
 直ぐに不審に思ったジャッカー達が来るだろう…
 早急に首謀者を押さえる必要がある」
「おや、もう終わってしまってましたか。」
「!!?」
突然現れた白い髪の男に、ミナ達は驚き、いつ仕掛けられてもいいよう構えた。
「そんなに警戒なさらなくても、私はなにもする気はありませんよ。」
突然現れた白い髪の男は両手を上げ、微笑みながら言った。
「どうやらジャッカーの仲間ではないようだな。」
「ええ、私は『ゼロ』といいます。」
「佐竹だ。」
「私はミナ。こっちはリリィ」
「俺はカフュだ。
 なぁ、アンタもこの船の乗客だろ?
 アンタのキャビンルームはジャックされてないのか?」
「いいえ、されてますよ。こっそり抜け出して来たんです。」
「抜け出して・・?一体どうやって?」
「それは秘密です。」
「秘密・・?」
「さて、戦闘は終わってしまったようですし、
 ここに居る意味はあまりありませんね。」
「え?」
「少々船内の様子を見てきますか。」
そう言ってキャビンルームの出口へ向かうゼロ。
「お、おい。待ちたまえ!下手に外に出ると見つかってしまうぞ!」
「大丈夫ですよ。見つからないようにしますし、
 見つかったとしても、この方達にやられるほど弱くはありませんよ。」
そう言って出て行った。
「ワケわかんねぇ奴だな。
 まぁ、ジャックされたキャビンルームから抜け出せるくらいだから
 心配はいらねぇだろうけど・・・」
カフュ達は各キャビンルームを解放しに向かう事にした。
佐竹の言う様に首謀者を押さえるのが手っ取り早いが
既にジャッカー達に無数の乗客…即ち人質が押さえられている事を考えると
不利は否めない。何より首謀者ともなると護衛の質も違うだろう。
少し時間を掛けている間に仲間を集結され、袋叩きにされる恐れもある。
此処は周囲から切り崩していった方が良いだろう。
解放した左キャビンルームの客達に、ジャッカーの服と通信機を渡し、
此処が解放された事に気付かれぬ様、定期連絡や警備を真似て続ける様指示した。
カフュ達が向かう先は右キャビンルーム
執筆者…is-lies、you様

抜き足差し足で移動し、右キャビンルームへと辿り着いた一同。
部屋を覗いて見ると、5人程の男がサブマシンガンを乗客に向けている。
「…何とか忍び込めれば……」
…と、其の時。キャビンルームの天井にあるモニターが
暫しの砂嵐を写した後、ネオス日本共和国地域都市連合代表『ケンリョ・クホシー』の顔を出す。
ジャッカー達や乗客達が其れに注目する。
「チャンスです!」
カフュ一行は低姿勢で走ってキャビンルームへと侵入。
直ぐ近くに居たジャッカー2人を、カフュとリリィが音も無く気絶させる。
佐竹やミナは周囲の乗客に対し、口の前に人差し指を立てるジェスチャーを示す。
まだ他のジャッカー達には気付かれていない。
併し、客席の中で異変が現れた。
「う゛〜〜〜〜」
「あっ!おトメさんっ!!」
乗客である狐色の髪をした少女がイキナリジャッカーのほうへ飛び掛り、
お札のような物を放つ。札から炎が生まれ、残ったジャッカーに向かって行く。
アチィッ!!
「今だっ!!」
ジャッカー達が取り乱した瞬間、カフュとリリィがジャッカーを気絶させた。
「よくもやってくだちゃいまちたね!!」
ジャッカーがカフュ達にサブマシンガンを向けた刹那・・
ッ!!?
リリィが既に背後に回っており、残ったジャッカーを気絶させた。
「つ、つえーー・・・」
先ほどの狐色の髪をした少女の傍にいた男が呟いた。
「ふう…何とかなったか」
 流石は獣人と能力者の星、火星行きの便…
 乗っている人間にも能力者が多い様だな」
先程、協力してくれた少女を見ながら、自分達の幸運に感謝する佐竹。
其の時…
「…ジハーーーーードオオォォォォオオオ!!!!
部屋に響き渡る老人の大声。
良く見ると先程のモニターには、首謀者BIN☆らでぃんの顔が映っていた。
どうやら東日本代表との会話に不満があった様で、
地表へのレーザー攻撃を開始すると言っていた。
「急がなきゃ!」
「よし!上キャビンルームに行くぜ!
 此処さえ解放すれば、らでぃんは丸裸だ!」
右キャビンルームを飛び出すカフュ達。
執筆者…is-lies、you様
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