リレー小説2
<Rel2.101便・カフュ>

 

  101便・後部キャビンブロック通路【カフュ、ジード】

 

2人の男が壁に身体を預けながら、注意深く後部ブロックへの通路を見張っている。
後部のブロックから迫る敵を迎撃するのが彼等…カフュ、ジードの目的だからだ。
2人並ぶ程しか横幅の無い、この狭い通路では少人数編成が良い。
後ろのキャビンブロックには、、万が一の敵侵入に備えたメンバーが待機し、
彼等は直ぐにでも、通路班救援に駆け付けられるという防衛体制が為されていた。
航宙機内の雰囲気は、宛ら戦場の様である。
「…………駄目だ…」
ノートパソコンを暫く弄っていたジードが呟く。
「何が?」
「航宙間ネットにも接続出来ない。やはり完全に電波遮断されてる」
モニター内で幾つも開いた窓は全て情報送信不可の旨が記されている。
航宙機内の通信が完全にSFESに掌握されている証拠だ。
「併し…変な話だよな…。
 其のSFESって連中はどうやって携帯掛けて来たんだ…」
「さぁな……んっ?」
カフュの質問に少し考えようとした矢先、
ポインターを動かしていたジードの手が止まる。
画面は、リンゴ型のアイコンが1つ入ったファイルを開いた状態である。
「そういや…これ見てなかったな……」
身を屈ませ、床に置いたバッグの中に手を入れるジード。
『SFESDB』という表記ラベルのあるコンパクトディスクを取り出し、
ノートパソコンに挿入した後、件のリンゴアイコンをクリックした。
モニターには妙な画面が映し出された。
真っ黒なバックに、青白い直線によって描かれた長六角形の物体。
タイトルには『アカシックレコードコピーSFES仕様』とあった。
「…?何だコレ?」
「ちょいと前に或るハッカーと出会ってな。
 一緒にSFESのデータバンクに侵入した事があるんだ。
 そン時の戦利品さ」
言いながら表示された文章を見てゆく一同。
【予言された『結晶』は宇宙から齎された。
 これによってエーテル最高学府から
 其の存在を確認された『アカシックレコード』との接続が可能となり、
 既に、エーテル波受信能力強化型キメラを用いたDLが行われている。
 だが、其の情報量は予想通り厖大であり、
 把握は愚か、DLすら完了には程遠い。
 最終的には或る程度の見切りを付け、完了とする予定である。
 ニュータイプの人型キメラ『D-キメラ』を使用し、
 DLは20年後…把握は400年後に終わると予測される】
「…何の事言ってんだ?」
「知らん。つーか俺も全部の情報を手に入れた訳じゃない」
そう言ってから、表示された長六角形にポインタを合わせる。
すると、長六角形の4分の1程が光を増す。
「俺達が得たのは4分の1の情報だけ。しかもだ…」
クリックするジード。
次の表示文は更に意味不明である
延々と続く文字の羅列が2人の気を滅入らせる。
「見ての通り…意味が解らないんだ」
CDを抜き出して、ノートパソコンを閉じるジード。
    ウィイイィィィィン…ガシャ!
其の時、カフュが何かの駆動音を耳にした。
耳を欹てると、其れはどんどん近付いて来る。
「…何か……来るぞッ!」
執筆者…is-lies
「これは・・・・「先行者」!」
ジードは出てきたモノを見て叫ぶ。
そこに立っていたのは、いかにも夏休みの工作にありそうなロボットだった。
「!!・・・・・な、なんだこのフザケたデザインのロボは!」
先行者は二人が怯んだ隙に突っ込んできた。 
「!!!」
「うわっ!?」
先行者の突撃をとっさにかわす2人。
先行者は突撃を続ける。
「…っと!なんなんだこれは!!」
先行者だ
「だから!その先行者とやらはなんなんだっての!」 
「中華人民共和国で密かに開発されていた人型兵器だ!
 大名古屋国大戦中に投入されたらしいが……くっ!」
先行者が腕に設置されたドリルを連続で突き出す。
だが2人は驚異的な早さで其れを全て回避した。
其の早さは人間を遥かに超越していた。
「なっ!?アンタも獣人か何かか!?」
「バカ言え!人間だ!」
先行者にナイフを投げつけながら、ジードが答える。
だが、先行者の装甲はナイフの刃如きではどうにもならない。
精々、センサー類への気配りをさせ、反応を遅くする程度だ。
「そっちこそバカ言うな!
 今の早さ…人間の身体能力で出来るもんじゃねぇぞ!」
「ああー!話は後だ!
 先にこのポンコツからブッ壊すぞ!」
股間のガトリングガンを連射する2体の先行者。
だが、其れすらも2人の超人は難無く回避する。既に神業であった。
其の内、股間にキャノン砲を設置したタイプの先行者が
急に脚を大きく左右に開き、其のまま激しく足踏みを始める。
「な…何の積り…うわっ!?」
隙を突いたガトリングタイプ先行者のブレードすら避けるカフュ。
そして、キャノン砲タイプ先行者が、今度は高速でコマネチを連発した。
なめとんのかと思う2人。だが、其の時ッ!
ズビィィィィムッ!!
「ひえっ!?」
「うわっと。」
股間のキャノン砲からビームを放たれた。
二人はなんとか身を仰け反らせてかわすが、体勢を崩してしまった。
「セットデオトクデス」
体勢を立て直せていないカフュにガトリングを装備した先行者のうち一体が再び突撃する。
「ちぃっ!」
体勢を立て直しから避けては間に合わないと判断し、
そのまま後ろに重心を傾け、バク転で突撃をかわし、背中を向けた先行者に蹴りを放つ。
先行者はふっとばされ、地面に叩きつけられる。
「う・・りゃあ!」
ジードはもう一体のガトリング装備の先行者の顔部分を
地面に叩きつけるようにして跳び蹴りをお見舞いする。
「いってぇ・・・」
「お、おい!」
その声にジードが残った先行者を見ると、
再び先ほどと同じようにコマネチをしていた・・!!
「・・・・!こんのヤロー!ふざけんじゃねえぞ!
 そんな技、二度も出させるかああああ!」
カフュは懐から何か黒い石を取り出した。と、
「ぬおおおおおお!」
石とカフュが光り、カフュの姿が黒い狼へと変わっていく!
「な、なんだなんだ!?」
「ジンミンマンセー」
其の声にハッとするジード。
見ると、先行者は既にチャージを済ませて、
今、正に最終兵器『中華キャノン』を放とうとしていた。
「ガアァァア!!」
だが、疾風と化した黒狼が先行者の頭部に体当たりをする。
仰け反った先行者のキャノンから放たれたビームが天井を舐め、
其の熱量で天井表面を僅かに熔解させる。
狼の突進に耐え切れなかった頸部支柱が折れ、
数本のコードが引き千切れる。
「コイツ……唯の獣人じゃない…!」
先程倒れた先行者のコードを切断しながら、
ジードは黒狼を眺める。どうやら向こうも片付いた様だ。
黒狼・・・・カフュが光り、元の人の姿へと戻る。
「ふ〜。終わった終わったっと。」
カフュは先程の黒い石をしまおうとする。
「その石・・・・・一体何だ?」
「ああ、これ?獣化石だ。これを使って俺は獣人の力を引き出してるんだ。」
「へえ・・・・・一体どんな構造してんだ?」
「いや、それは俺にもちょっと・・・・・」
と、二人はそこで会話を止める。
なぜなら、また何かの駆動音がしてきたからだ。
執筆者…鋭殻様、ごんぎつね様、you様、is-lies

  101便・左キャビンルーム【???、???】

 

通路から聞こえて来る爆音に怯える乗客を宥め、
疲れきった表情で座席に腰掛けるミナ。
其れを横目で眺める者達が向かいの座席に居た。
「SFES……あんな子供をも巻き込む気…!?
 私達から情報を入手する為だけにしては規模が大き過ぎるわね」
「他の作戦と絡めているのでしょう。
 何とかして『ユニバース』さんと連絡を取らなければ……」
標準時間、0:42
東日本にてSFESの情報を集めていた謎の組織が動き始めた。
執筆者…is-lies

  101便・後部キャビンブロック通路【ジード・カフュ】

 

カフュ達の前に続いて現われたのは、
1体の蜻蛉型エネミー、猿型エネミーと10体の蜂型エネミーだ。
「ハン…数はいる様だが…所詮雑魚………」
彼の科白が終わるよりも早く、蜻蛉型エネミーが球体を発射した。
眼にも止まらぬ速さで其れを回避するジード。だが……
カキィーーーン! 
ジードやカフュのナイフが全て球体に引っ付いてしまった。
どうやら強力な磁石の様だ。
「……をい…」
武器の無くなったジード達に押し寄せる異形の雪崩。
猿型エネミーがガトリングガンを、蜂型エネミーが大量の毒針を一斉に放つ。
獣化石を使っている時間は無い。避ける余地も無い。
「この!」
ジードが手にしたノートパソコンで毒針を弾く。
彼が内部のデータを守る為に特注した、ミスリルゴム製のノートパソコンならではの芸当だ。
だが、流石に全てを防ぐ事は叶わず、右足と両腕に毒針が刺さる。
毒針と銃弾の雨はカフュにも向かって来た。
「フッフッフッフ・・・・」
なぜかカフュは笑っている。
「お、おい!避けろ!」
と、カフュが、
「うおらああああ!」
突然カフュがマントの中から何かを出す。
「な、なんだ!?」
マントから出てきたのは…マントである。ただし銀色をしている。
「な、あんなマントで何を・・・・・」
カフュはマントで全身を包む。すると、飛んできた弾や針が鈍い音をたて弾かれる。
「この特殊コーティングされた「ミスリルマント」にそんな物、効かねえぜ!」
そしてカフュは更に石ころをポケットから取り出す。
取り出した其れを指で弾くカフュ。所謂「指弾」である。
小さな蜂型エネミーの一体がモロに一撃を喰らい墜落する。
だが其の瞬間を突かれ、カフュも毒針を喰らう。
そもそも数が違い過ぎるのだ。
「だぁ!ウザってぇ!」
叫んだ後、攻撃も気にせずに、何か念じるカフュ。
同時に周囲のエーテルがカフュに収束されていく。
「コイツは……エーテル能力か」
「どりゃぁ!」
解き放たれた念が空間を満たし、エネミー達が炎に包まれた。
ボトボトと焼け焦げて落下する蜂型エネミーと蜻蛉型エネミー。
「凄い威力…だな…」
「ん…ああ……ちょいと攻撃喰らい過ぎたけど
 まあ、無事……そうだ今の内に解毒……」
其の時、炎の壁の中から火達磨になった猿型エネミーが飛び出し、
大きく振り被った己の巨腕をジード目掛けて振り下ろす。
「舐めるな!」
一喝と共に転げ回ってエネミーの拳を回避。
磁力球から強引にナイフを剥がし、エネミーの喉に突き刺す。
命令系統配線が切断され、其の場に頽れる猿型エネミー。
「ふう…危なかったな……」
「ああ。雑魚と侮り過ぎた…。
 ……で、早く解毒してくれると助かるが…」
壁に背を預けながらジードがカフュを急かすものの…
「あ〜、其れなんだけど…
 どうも解毒セット、佐竹さんの部屋に置いて来ちまったらしいんだ…」
「オイオイ…どうするんだ?俺達が取りに行く訳にもいかんだろ?」
尤もだ。彼等がキャビンルームに戻ってしまっては
其の間にエネミーの侵攻を許してしまう。そうなっては不利だろう。
「んぐ…そうだ!先の方に乗務員の控え室があったと思う。
 其処なら乗客の為に医療薬品の一つや二つはあるだろ?」
「……そうだな。行ってみるか」
当たって砕けろといった表情でジード達は中部後クルーブロックへと進む。
執筆者…is-lies、鋭殻様

  101便・中部後クルーブロック【????、????】

 

「ひ…ヒィ!」
目前の先行者に銃弾を放つが効果が無い。
人型兵器のドリルに頭部を抉られ、倒れる乗務員。
其れをデスク下から窺う2人の男。
「あ…アニキ……あれ何ッスかね?」
「……知るかよ」
何を間違えたかこの2人、火星は自由がある星だと勘違いし、
密航していたスラムのゴロツキであった。
赤髪の男が『アンディ』、金髪は『リッキー』という。
隠れていたものの、突如4体のロボットが乱入してしまったのだ。
辺りを見まわす4体の先行者・・・敵を探しているのだろう。
「アニキ・・・アレ、どうするんスか?
 あんなんに見つかっちゃマズイっスよ?」
「ケッ、なんでぇあんなクソロボに
 ビクビクしてられっかよ」
「じゃあ・・・どうするんで?」
「あたんめぇだろ。ブッ潰す。お前も手伝え」
どうやらアンディは無謀にも先行者に殴り込みをかけるらしい。
「行くぜっ!!」
「ちょっ・・・オレはしりませんぜ!!」
勢い良くデスクから飛び出るアンディ。
 ウィィィィ・・・・
4機の先行者が一斉にアンディの方に首をむける。
バーックィンザサドルゲッ−ッ!!!
 クタバレ××××野郎!!!
 おらおらおらぁ!!
ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン・・・・
凄まじいスピードで連続パンチを繰り出すアンディ。
1機の先行者のボディがアルミのようにへコんでいく。
ガクリと膝をつき崩れ落ちる先行者。
下手なパンチも数打ちゃへコむ・・・そんな感じだ。
「おいリッキー!こいつ固えぞ!?」
「そりゃあロボットですから固いでしょ」
「っつーかお前も戦え!来い!」
やれやれと言った表情でデスクから這い出る大男。
その背中にはギターがぶら下がっている。
「さあ来やがれ・・・おねんねさせてやるぜ!!」
アンディとリッキーが残る3体の先行者と向き合う。
  ガチャッ
すると、いきなり部屋のドアが開いた。
「な・・・なんだ!?」
「先行者・・・こんな所にもいやがった!」
カフュとジードであった。
共同戦線を張るべき手合いなのだが、密航者であるアンディとリッキーの反応は異なる。
「!?」
「・・・やべえ、人に見つかっちまった・・・・」
「ど…どうするっスか!?」
「…こうなりゃ当て身でもかまして……!」
そんな2人に背を向け、突然の来訪者達に突撃する先行者3体。
「「うっせぇ、ボケ」」
だが、神速のナイフ捌きで先行者に挑むカフュ達。
危険を察知した先行者の2体が咄嗟に身を屈めて回避するが、
残った1機が頸部の配線を切断され沈黙する。
「あれ?」
相手の強さを把握した先行者が股間のガトリングガンを連射する。
クルーのテーブル上にあったペットボトルやらが吹き飛ぶものの、
ジード達は眼にも止まらぬ速さで其れを回避、
一瞬で接近戦へと持ち込み、2体目の先行者も撃破する。
素早さの点ではジード、カフュ達が上だ。
弱点、手の内さえ知っていれば、先行者如きは敵ではない。
不死者のヴァンパイアやらも
十字架や大蒜等の弱点を知っていると脆く感じるのと同じだろう。
「の…能力者か、コイツ等」
先行者がリッキー達に向かって来た。人質にする積りなのだろう。
「こんなロボット如き!」
リッキーが先行者に向かってギターを振るう。
能力の風が巻き起こり、先行者が吹き飛ばされ、動かなくなった。
「ふう…あんた等…乗務員か?よく生き延びたな…」
「「へ?」」
「…俺達、毒にやられてる……解毒して欲しいんだが…」
どうやらカフュとジードは、密航者の二人を乗務員だと勘違いしているようだ。
執筆者…is-lies、しんかい様
「ンなコト…言われたってよォ…」
「そうっスよ、解毒薬なんて持ってないっス」
「探せばある…頼む」
「…」
アンディは考え込んでいる。
「どうするっスか…?」
数秒間の沈黙の後、アンディが口を開いた。
「え〜とだな、お前ら…敵…じゃないんだよな?!
 …そうであれば、持ってきてやる」
「ああ…。…ってか、あんた等は乗務員じゃないのか?」
「乗務員じゃないのか?」その言葉に、アンディは反応した。
「えっとだな、え〜、あ〜、まあ…そうだ、乗務員だ。
 …いや、乗務員であります」
「そうか…。最近の乗務員は変わった格好をしてるんだな」
アンディとリッキーは、とても乗務員とは思えない、微妙に派手な外見だった。
「アニキ…どうするっスか…?」
リッキーが小声でアンディに話しかける。
「きゅ…休憩中だったものでつい……は…はは」
言いながら棚の中身をガサガサと掻き混ぜる。
幾つかアンプルらしき物も見付けたが
そもそもアンディ達にはどう使用すれば良いのか解らない。
「いやぁ…済みませんね〜。ちょっと切らしてるみたいなんです。
 他のクルーブロックを見て来ますんで、じっとしていて下さい」
引き攣った愛想笑いを浮かべ部屋を出て行こうとするアンディ&リッキー。
「(見捨てるんですかい?)」
「(アホ言え。其れにさっきアイツ等…
  『こんなトコロにも』って言ってたろ?
  どうやら、この航宙機…きな臭い事になってそうだ…)」
執筆者…ごんぎつね様、is-lies
リッキーが扉を開け通路へ出ようとした其の時…
通路側から1人の少女が逃げる様に部屋内へと転がり込んで来、
素早く扉の取っ手をリッキーの手ごと握り、勢い良くドアを閉めてしまった。
「おわぁ!?何だアンタ!?」
「アンタ達は乗務員?…には見えないわね…逸れた乗客ってトコかしら?
 いいから良く聞いて。大声を出さないで。動かないで。理解した?」
赤いボールの髪飾りをした青髪の少女がリッキー達に静止を呼びかけたのと同時に、
通路の方から甲高い声が壁を越えて響いて来た。
「くぺーーぺっぺっぺ!!
 『セレクタ』『シストライテ』ともあろう者が敵前逃亡かペン?
 其れとも僕の『セイフォートの口』の力に手も足も出ないペン?」
「な…何だこの声!?」
いや、問題なのは科白の内容だとカフュは口を噤み思考を奔らせる。
察するに『セレクタのシストライテ』というのは
恐らく、この青髪少女の事であろう。
セレクタというのが何なのかは今は考えないでおくとしよう。
次に…『セイフォートの口』
先にゼロが述べた今回の事件の黒幕…『SFES』。
其れが研究している『セイフォート』とやらと関連する事は間違い無い。
外から聞こえて来た甲高い声の持主こそが…黒幕なのだろう。
「……大丈夫……静かにして……」
「くぺぺ、何処に居るペ〜〜ン?」
ペタペタとした足音らしき音が近付いて来る。
少女は静かに物陰に身を隠し、
息を殺して相手が通り過ぎるのを待とうとする。
「(ちっ・・・・・・これじゃヘタに動けねえな・・・)」
「(早く行ってくれると助かるが・・・・)」
毒のせいか、ジード達の顔色は少し悪い。
「(一体この航宙機、どうなってんだ?)」
「(知りませんよ・・・・俺に聞かないで下さいよ)」
足音は更に近づいてくる。 
「(静かにして。廊下の奴は、
  …一言で言えばこの便をジャックした張本人よ。
  さっき、レシ…じゃなくって『仲間』と連絡取ったから
  数分もしない内に来てくれると思うわ)」
壁に耳を当てながら、額に一筋の汗を浮かべる少女。
どうやら廊下側の相手は余程恐ろしい敵なのであろう。
「(まあ良いぜ。挨拶位はしとかねぇとなぁ!)」
両手をポキポキ鳴らしながらドアへと向かうアンディの肩を、
慌てたリッキーが急いで掴む。
「(やめて下さいッスよ!挨拶って
  いきなり殴り飛ばす事っしょ!?)」
(俺のスラムじゃあれが挨拶だろーが!?)
「(静かにしてって!早く隠れて!)」
問答は後だと2人の密航者を掃除用ロッカーの中へと押し込む少女。
「(あ、アンタ達…毒?)」
何時迄経っても壁に寄り掛かったままのカフュ達を見、
キョトンとした感じで彼等に話し掛けるシストライテ。
「(……そうだ……)」
「(なら、そう言ってくれれば良いのに…
  ……ちょっと、じっとしてて…)」
言いながら足音を殺してジード達に歩み寄り、彼等の傷口に両手を添える。
するとみるみる気分が良くなり、傷も塞がっていく。
能力だ。
「(解毒に回復…アンタ達も早く隠れて)」
そう言うと彼女は台所下の棚に入り込み、内側から扉を閉める。
「(俺達は……どうする?)」
「(一先ず、あの女の言う通りにしようぜ)」
彼等も感じていたのだ。
壁の向こうから近付いて来る気は、先行者等の比ではない。
壁一枚を隔てて尚、カフュ達を戦慄させる強大な殺気。
カフュ達も場数を踏んでいる。
勇気と無謀とを履き違えたり等しない。
大人しく隠れた方が良さそうだ。
こうして彼等も、不安だがテーブルの下に隠れる。
執筆者…is-lies、鋭殻様
「くぺぺぺ……此処ペンか?」
ドアが勢い良く蹴り破られた。
入って来たのは……ペンギンであった……目付きの悪い…
「(!?!?)」
咄嗟に喉迄出掛かった「何だこりゃ!?」の科白を飲み込むカフュ。
外見はあんなペンギンでも、放っている気は上級の魔物…
……いや、其れをも超えている。
見付からない様、一切の動きを止めるカフュ一行。
「………先行者が壊れているペンね…」
ジード達に破壊された先行者を足で小突き、
嘴の端っこを軽く上へと吊り上げる謎のペンギン。
ペタペタと足音を響かせながら、部屋を歩き始める…
「…死体は……乗務員……
 相討ちペンね…」
ロッカー等も碌に調べずに、謎のペンギンは壁へと向かい合う。
「(何を…?)」
思ってから、彼は眼を見開いた。
ペンギンが壁を透過する様に消えて行ったのだ。
「(……能力者……か…?)」
其の場の全員が、部屋を包み込んでいたプレッシャーから解放される。
SFES…甘く見ない方が良さそうだ…
執筆者…is-lies
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