リレー小説2
<Rel2.101便・ジード2>

 

  101便・機長室

 

「ちょっと待て! 
 どうなってんだ!?」 
「もう一回だ、もう一回みせてくれ」 
「ダメ〜」 
「ふ、俺は解ったぜ」 
「あ、簡単にネタばらしたらダメだかんね〜」
先程までは重い空気が流れていた機長室だったが、
いつの間にかバクヤのペースに乗せられ、一同はバクヤのカードマジックに興じていた。 
今まで、様々な異能力を見てきたキムラ達だったが、
目の前でカードが掏り替わる不思議な現象は、手品と分かっていてもやはり惹かれるものがある。
ふと、ジードがコンソールを確認するが、 
定期的に送信されているテストコードが
数秒おきに赤いランプを点滅させているだけで、まだ変化はない。
「変化なしか… 
 設定間違ってないよな…?」 
ジードがそう思った瞬間。 
「来た!」 
赤いランプの点滅が、突然緑の点灯に変わった。
「各部アポジモーター…OK。 
 スラスターユニット…OK。 
 メインブースター…は…ダメか。 
 だが、これならいける! 
 リミットオフ、最大出力」 
直にジードが操縦桿を握り、コンソールを操作する。 
ジード達の体が僅かに振られ、船の方向が変わっていくことを体感する。
「ところでジード、軌道を変更したとして… 
 この船はどこに向かうんだ?」
「そこまでは知らない。 
 今は出来るだけ軌道をズラすだけだ」
「オイオイ、大丈夫か? 
 ミサイルの発射を防いでも、火星に墜落したんじゃ意味ねぇぞ」
キムラ達が次の心配をし始めた、その時。 
コンソールの緑のランプが再び、エラーの赤に変わった。
「ちィ、完全復旧は無理だったか… 
 だが、軌道はかなり変更できたはずだ」
「ン? ちょっと待てよ…?」
不意にキムラ達に不安が過る。 
そうである。 
復旧したはずの機関部が再び操作不能になったということは、
セート達が動力源を取り戻した後、またセート達の身に何かあったということである。 
とりあえず、軌道の変更には成功した。
「自分達も直に機関室に向かうべきか?」キムラ達がそう考え、VIPルームの方を振り返えると、
スクウェアブロックの方から何かがやってくるのが見えた。
執筆者…Gawie様
其れは20体を越えるエネミー達であった。 
「ひっ…!?」 
VIPルームと機長室の間で待機していたナオキングの目が、 
魔物達の中で彼等を率いている2人に向けられた。 
1人はナオキングも出会ったクリルテースという子供。 
そしてもう1人は…長髪の大女…… 
メイの話していたゼペートレイネと見て良いだろう。 
メイ達を退け、猫丸を人質にしたSFESの一員… 
よりにもよって一番関り合いになりたくないと思っていた相手が、 
堂々と真正面から攻め込んで来た。しかもエネミー達を連れて。
「はろはろ〜。皆、元気ぃ〜? 
 タカっちの希望を打ち砕く為に 
 取り敢えず死んでくれる?」 
其の場に殿としてアシュラを残し、機長室に進むゼペートレイネ達。
とはいえ、通路自体が狭いので、一度に戦える相手には限度がある。 
案の定、蜻蛉型エネミーが5体程来た所で通路は塞がってしまった。
これなら十分に戦える。
ッしょあああぁぁぁああああっ!!!
やっと暴れられるとばかりに、 
奇声を上げながら蜻蛉型エネミーに駆け寄るアンディ。 
目にも止まらぬ速さで燃える拳を叩き込む。 
1体は文字通り瞬殺されたものの、 
残る4体が至近距離で磁力球を放とうと、アンディの頭部に尾を向ける。 
だが、リッキーの巻き起こした風で大半がバランスを崩され、攻撃に移れない。 
隙を突いたナオキングの氷魔法で各個撃破されていく蜻蛉型エネミー達。 
不利と感じたのか、一斉に後退し始める。 
ハァ? 逃がすかよォオオ!!
 このまま全員ブチのめして……」 
「ちょ、アニキぃ!?」 
アンディが逃がすまいと深入りした其の時。
アンディの真横にある開いたドアから、 
少年、クリルテースが顔を覗かせていた。 
「………あ?」 
「………おやすみ」 
少年の背に生えて来た黒い翼が、 
アンディの目の前で羽ばたいたと思ったら、 
あれ程、元気に動き回っていたアンディが 
あっさりと床に崩れ落ちてしまった。 
「あ…アニキっ!!?」 
慌てて駆け出そうとするリッキーに、 
クリルテースは悲しそうな表情のまま返す。 
「安心してよ。眠ってるだけ。 
 其れより、自分の心配したら?」
「う・・・うああぁぁ!」 
突如現れアンディを一瞬で倒した少年・・・・ 
リッキーは何が起きたのかわからないまま、仰け反り尻餅をついた。 
1歩、2歩と静かに、リッキーに歩み寄る少年。 
その光景を目の前に、ナオキングは絶望感を覚える。 
「(僕はこんな時何ができる・・・? 
  何が・・・何をどうすればいい・・・・僕はもう駄目だ・・・)」
絶望感に打ちひしがれ、ふと天井を見上げる・・・・ 
「(・・・スプリンクラー!これで・・・)」
「・・・・おやす・・」 
クリルテースがリッキーにそう言い放つより速く、 
咄嗟にスプリンクラーに向かって苦手な炎系魔法を放つナオキング。 
火球は小さいが、 
それでもスプリンクラーを作動させるには十分の熱量を持っていた。
シュウウゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・
作動するスプリンクラー。放射された消化剤の量は少ないが、 
ちょっとした目くらましにはなる。 
「今だ!」 
腰を抜かした大男の手を右に、眠っている大男の手を左手に持ち、 
火事場の馬鹿力とでも言おうか、普段のナオキングとは思えない力で 
2人の大男を後ろに引っ張った。 
「(こうなったらいちかばちか、やってみるしかない・・・)」
「・・・・うあぁっ!!」 
気力を振り絞り、自分とクリルテース間に巨大な氷の壁を作り上げた。 
通路は狭い・・・氷魔法で通路を固めてしまう事は出来る。 
体力と気力、そして魔力を1度に大量に消費したナオキングは 
膝をつきその場に崩れ落ちた。 
辛うじて今だけは敵から逃れられた。そう、「今だけ」は。
「・・・・・無駄だよ・・・・」 
「クスクス・・・そう言うの「悪足掻き」って言うのよ。 
 それくらいの事、坊ちゃんくらいの歳のコなら・・・・ 
 わかってるよね?」 
氷の壁はあっさりと崩れ去る。
「悪くないと思うよ。 
 でも、何で防壁じゃなく、直接冷気で攻撃してこないの? 
 あの御行儀の悪いおねーちゃんもそうだったけど」
少年の黒い翼から発する幽かな光が砕け散る氷の破片に反射する。 
光の粒子を纏いながら、ゆっくりとナオキング達に迫る少年。
リッキーが手に持ったギターを振りかぶる。 
しかし、少年はそれに動揺する様子もなく、少年の黒い翼がリッキーを包み込んでいく。 
振りかぶったギターを少年の顔面目がけて振り下ろせば事は済む。 
しかし… 
「は…反則ッスよ…」 
リッキーの腕は動かない。 
それが躊躇いなのか、恐怖のためなのかもリッキーには分からない。
そこへ、機長室からキムラ達が駆けつけた。 
「どけェ!!」 
キムラが少年に向かって愛銃シューティングスターを放つ。 
しかし、銃弾は少年の翼に阻まれ、蒸発するように消えていった。
「ちッ、化物め」
《セート! リュージ! タカチマン博士! 
 軌道の変更には成功した! 
 だが、今度はこっちがヤバイ! 
 全員VIPルームまで戻ってくれ!》
手製の通信機に叫ぶジードの声が船内に響く。
これには少年と大女も少し驚いた表情を見せるが…
「ふ〜ん、やっぱ思ったよりやるわねェ〜。 
 でも、結局は同じことよ、多分…」 
大女がそう言うと同時に、別の声が船内放送から聞こえた。
《よぉ、クリル、レイネ、俺だ。 
 今の放送聞いたよな? 
 いや、悪ィ悪ィ、しくじっちまった。 
 でも、こっちは片付いたぜ。 
 賭けには負けちまったが、まぁ予定通りってとこだな》
「ほらね」
驚愕するジード達を追い詰めるよう大女が迫る。
「あとはアンタ達ね。 
 …タカっち、プレゼントをたくさん用意してあげるわ」 
大女がそう言いながら、ジード達に異形を嗾けようと手を上げた、その時。
「残念だが、それは遠慮しておく」
不意に通路の脇から火柱が走り、
ジード達に襲い掛かろうとしていた数体の異形をなぎ払った。
振り向いたゼペートレイネ達の視線を真っ向から受け止めるのは、 
上へ回ってから来たタカチマン達であった。
執筆者…is-lies、しんかい様、Gawie様
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