リレー小説2
<Rel2.101便・ジード1>

 

101便・機長室

 

SFESとの約束の時間…12時を回ってから数分が経過していた。 
既に操作パネルの設定は終わり、テストモードで機関部に定期的に信号が送られている。 
変化があれば直に反応を示すだろう。 
耳障りな警告音を発していたスピーカーは引き抜かれ、
切断されたケーブルが垂れ下がるのみとなっている。 
後ろを振り返ると、破壊された扉の向こうにアンディとリッキー、
その向こうで挙動不審になっているナオキング、そしてVIPルームまでが見通せる。
今頃タカチマン達は交渉を始めているだろうか? 
機関室を目指し、ダクト内を進んでいるセート達は今どの辺りだろうか? 
いや、動きがあるにはまだ早過ぎるだろう。 
しかし、一時間経っても何の変化もなかった場合はどうすればいい? 
そこまでは決めていなかった。 
やはり、この作戦は完璧ではない。 
いや、これは作戦というより、賭けだ。 
賽は既に投げてしまったのだ。 
今は待つしかない。
室内には重い空気が流れていた。 
暇潰しにと、バクヤがカードゲームに誘うが、
とてもそんな気分にはなれず、仕方なくケイムのみが相手をしている。 
先程の言い争いが後を引いているのか、キムラも会話が少なく、
ただ胡座をかいて床板の繋ぎ目の線に沿って銃弾を並べている。 
彼なりの精神統一法にも見えるが、
それは単に気を紛らわせるための無意味な作業に過ぎなかった。 
一方のジードは、時折計器を確認しながら、
他の乗客から拝借したパソコンや余ったパーツを集めて、また何かを組み立てている。 
作戦開始からはまだ数十分ほどしか経っていない。 
ここで待機することになったメンバー… 
バクヤはともかく、ジード、キムラ、ケイムはどちらかと言えば行動派である。 
朗報を期待して、ただ待っているというのはあまり得意ではなかった。
と、そこへ、やはり暇を持て余しているアンディとリッキーがやって来た。
「なんだなんだ。 
 作戦は始まったばかりだってのに辛気臭ぇなぁ」 
「おい、素人、持ち場を離れるんじゃねぇよ」 
「まぁそう言うなよキムラさんよ。 
 ちょいと見回りさ」 
暗殺者であるキムラは、ちょっとした油断が死に繋がることをよく心得ている。 
そんな彼からすれば、この状況においてもお気楽なアンディ達は目障りであった。 
しかしそのアンディは、よほど肝が据わっているのか、
或いは単に認識不足なだけなのか、年下のキムラに対して宥めすかす様な態度を崩さない。
そして、リッキーもジードに話し掛ける。 
「ジードさん、何作ってんスか?それ」 
ジードの手元を見ると、在り合せのパーツにマイクとスピーカーと電池を繋ぎ、
それを粘着テープで巻いている。 床には、既に同じモノが三つ置かれている。 
ジードはその内の一つをリッキーに放り投げて言った。 
通信機だ。送信だけだがな。 
 そいつに向かって喋れば、俺のPCを経由して全船内放送に繋がるようにしてある。 
 暇潰しに作ったんだが、どうせならもっと早く作って、 
 博士やセート達にも渡しておくべきだったな… 
 まぁ非常用に役には立つだろう。お前達にも渡しておく」
「全船内放送か… 
 暴走シャトルの船内で宇宙ライブ… 
 燃えるシチュエーションじゃねぇか…! 
 おいリッキー、やるぞ!」
Wooo…
「馬鹿野郎! 
 非常用だと言ってるだろ!」
ジード手製の通信機を手にし、
突然歌い始めるアンディだったが、直にジードが止めに入った。 
「…ったく。 
 次にやったらお前には貸さないからな。 
 ほら、残りの二つはカフュ達に渡して、お前等も持ち場に戻ってくれ」 
またしても歌う事を許されなかったアンディ達はすごすごと持ち場に戻っていった。 
やれやれと溜息を吐くキムラ達だったが、室内の緊張は幾分か和らいだように感じられた。
執筆者…Gawie様
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