リレー小説1
<Rel1.23>

 

 始め神はその姿に似せてこの地を治めるものとして人の一つがいを作った。
自らと同じ姿と知恵を与えるあたり、神は人に特別に目をかけていたのであろう。
 だが、人は蛇の誘惑に乗り禁じられた果実を口にした。
それによって神は人を楽園たるエデンの園より追放し、苦しみの多い土地へと追い立てた。
 されど人間は追放された先で代を重ね増えていった。そしてそれとともに罪深くなっていった。
神はそのことを憂い、一度この汚れた世界を全て水で流してしまおうと決意した。
ただし、その時代の人間の中で唯一敬虔な心をもったノアとその一族には助かる方法として、
箱舟を作り次の世界のために動物をそれに乗せて後世に残すように命じた。
ノアは水による滅びが来ることを人々に訴え、
箱舟を作ることに協力してくれる人を求めたが、皆笑うだけであった。
果たして洪水は起こり、
ノアの家族と箱舟に詰まれた動物たちをのぞいては地上の生き物は全て滅んでしまった。
洪水が引いた後、ノアは神がこの後洪水は起こさないという印に虹を出したのを見たという。
 昔バベルという場所で世界中の人々が協力して巨大な塔。
まさに天に届くような塔を建設していた。
しかし神は人間風情が神の領域である天を侵すのを怒り
塔を打ち倒し、人々が別の言葉を喋るようにしたという。
 神は一体、人を愛しているのか、それとも憎悪しているのか。
神は人を栄えさせておきながら悪が栄えたからといって滅ぼそうとする、
そのくせに見込みのある少数だけは残そうとする。では、滅ぼされたものは?<Rel1.23:1>
執筆者…Mr.Universe様

本田は、剣を杖にして回廊を歩いていた。
自分の考えはどこから間違っていったのだろうか、それだけが悔しかった。
とにかくミナたちを救わなければいけない。
ミナ&リリィをポッドに乗せたものの、射出機構がロックされていた。
宗太郎は其れを解除しようという思いだけで身体を動かしていた。
司令室の端末なら射出機構ロックも解除出来るだろう。
その頃、連盟艦隊特殊部隊からの電信がアマノトリフネに向けて発せられた。
電信の文面は……
《我々は、これより砲撃を開始する。貴艦は30分後には空の藻屑と消えているだろう!》
……とだけであった。
はたして電信がついてから3分後、最初のミサイルがアマノトリフネへと着弾した!!!
シールドのないところにまともに攻撃を喰らい身もだえするアマノトリフネ。
空の星と、自ずから発光しているアマノトリフネを除いて、光一つ見えない闇の中
着弾による火柱がぎらぎらと輝いて見えた。<Rel1.23:2>
執筆者…Mr.Universe様

「とうとう始まったか・・・・・」
先程、宗太郎の逃走を見逃してしまった『青』一向。
ミナとリリィの入ったポッドは動かす事も壊す事も出来ず、
彼等も何とかする為に司令室へと向かっていた。
「早く司令室にいって奴等を倒して・・・」
「この船の軌道を変えないと・・・・」
「よし、みんな、覚悟はいいな。」
皆は頷く。
「よし、行くぞ!」<Rel1.23:3>
執筆者…鋭殻様

「………幕引きの頃合か……」
天窓を全開にした司令室内で紅茶を啜っていた車椅子の老人が
自分の右腕にある腕時計を覗いて言う。
「ヒヒヒ、暇だったね〜」
トッパナの前にあるモニター郡は、
エリア51迄の航行設定変更が完了した旨のメッセージを記したままフリーズしている。
更に言うなら、入力装置の類がバラバラにされていた。
「ワイズマン・エメラルド…しかと頂いて行くぞ!」
巨大な結晶には、相変わらず其の奧に少女の姿が確認できる。
其れを眺めつつ老人が静かに呟く。
「……八姉妹…玲佳…様…いや、その遺シ羽根に過ぎぬというに、
 やはり心理的に抗い難い。
 ふん、ワシもまだ未練があるらしい」<Rel1.23:4>
執筆者…is-lies、Mr.Universe様
連盟艦隊特殊部隊の砲撃によって破壊された外壁を
真っ暗な海上にバラバラと落とされながら
エリア51へと向かうアマノトリフネ。
特殊部隊の面々は落ちた外壁等に興味は無かった。人間、ロボット、
これ等の残骸…併し、其れ等に紛れて海面へと落ちて行くモノ…
其れに特殊部隊の者達は気付く事が出来なかった。
其れは海面ギリギリで落下速度を緩め、ホバリングする。
ワイズマン・エメラルドそのものである。
奇妙にも全体に異形の翼を無数に生やして、超結晶自体が空を飛んでいるのである。
そして其の上で腰掛けているのはSFESの面々。
其の中の1人…SFESの中性的な少年。彼の背中には巨大な異形の翼が生えている。
翼に描かれている幾つもの紋章がワイズマン・エメラルドの動きにあわせて点滅していた。
彼こそがワイズマン・エメラルドに翼を付けた能力者なのだろう。
「ねぇ幾ら沢山付けてるからって、
 こんな重たくちゃ碌に動けないよ」
「安心しろ。連中はアマノトリフネを追っている…。ほれ、戦線離脱完了」
翡翠は後続の破片等を防ぎながら、
アマノトリフネを追って行く連盟艦隊特殊部隊を指して言う。
「御苦労だったな。アマノトリフネがエリア51に落ち、
 大破壊を齎す事でミッションコンプリートだ。
 後はアメリカのテロリストが勝手に騒ぎ立ててアメリカを弱体化させてくれるだろう」<Rel1.23:5>
執筆者…is-lies

司令室へと踏み込んだ宗太郎…彼の目の前には……
「にゃんと!?本田宗太郎!?」
鞄から様々な実験器具を取り出して『何か』を準備している
ごとりん博士の助手、フルーツレイドの姿があった。
「……ごとりん研究所のフルーツレイドか……いや、そんな事より…
 ワイズマンエメラルドや……此処にいた連中は……何処に……行った……?」
「あーあー、此処には影も形もございましぇーん」
おどけた様に両腕を広げ、一回転キメるフルーツレイド。
「………一足…遅かったか………」
失意の宗太郎は、床にガクリと膝を付く。
(…まあ良い…SFESの計画は数百年も後の事…
  そんな事よりも……今はポッドの射出機構を解除せんとな…)
フルーツレイドを無視してコンソールに向かう宗太郎。
「…よし……此処は何とか使えそうだ……」
既に大半の入力装置は破壊されていたものの、見落としがあった様だ。
「あ、オッサン後ろぉ!」
「!!?」
振り向いた宗太郎に繰り出された剛爪の閃き。
間一髪で身を躱した宗太郎の後ろにあった
フリーズしたままのモニターがスパークと共に砕け散る。
宗太郎を襲った巨大な異形…甲殻質体に10本の腕…
長く突き出た頭にある顔は唇が無く、剥き出しの歯が何とも不気味だ。
横並びになった左右非対称の9つ目は宗太郎を油断無く凝視している。
SFESがアマノトリフネへの置き土産にした魔物…
以前のノトシスの体の一部を用いて改良した『セイフォートの殻』である。
「……ふん…ロック解除の前に…屠ってやらねばな……」
血に塗れた胸を押さえながら、宗太郎は『殻』へと刀を向ける。
(…犬死にだけは避けられたか…………
  出来れば……最後に…もう一度会いたかった………)
 ……玲佳様………」 
持ち去られたワイズマン・エメラルドに思いを馳せ…異形へと向き直る。
宗太郎は刺し違えてでもリリィ達のポッドを放つ積もりだ。
そんな宗太郎の意志を嘲笑うかの様な顔の異形。
「…ふん…ッ!」
宗太郎が拳から放った衝撃波は『殻』へと一直線に………
「…!」
……宗太郎とて弱った今の一撃で敵を倒せるとは思っていなかった。
戦闘開始の狼煙を上げただけの積もりだった。併し…
宗太郎の衝撃波は…異形の直前で靄の様に消えてしまった。
「……能力無効化か…ッ!」
「キシャシャシャシャシャシャッ!!」
歯噛みする宗太郎に六本の脚を動かし迫る『殻』。
「こりゃー、援護した方が良いかも…」
化け物の目的が乗員の抹殺と看破したフルーツレイドが針を投げるものの
『殻』は腕の一本を天井に引っ掛け巨体を持ち上げ針を回避。
鋏の付いた尾を以って、針の糸を断ち切る。(命中したとしても、甲殻で弾かれるだろうが…)
隙を突いて端末に向かう宗太郎に右肩を向ける異形。
訝しむ暇も無く、『殻』の右肩が高速で回転…
肩から垂直に伸ばした5本の右腕は即席のミキサーと化す。
「チィ!」
残る左肩も回転させ…此方は移動用に使用し、
壁、天井、床に爪を掛け、目紛しく宗太郎の周囲を周り、段々と距離を縮めて来る。
エース達が司令室に入ったのは、丁度其の時だった。<Rel1.23:6>
執筆者…is-lies
「な、なんだコレは!?」
『殻』は『青』達に気づくと『青』達を攻撃対象に変え、近づいてくる。
「とりあえず、戦うぞ!」
『青』達は『殻』に向かっていった。
『殻』は『青』達を迎え打つため先ほどの腕の回転をさらに高速にする。
『殻』の五爪がエースに突き出される直前、
『青』の銃弾が異形の脇腹に命中、衝撃で五爪は狙いを外す。
異形が驚くより早くメイの放った氷刃が、
『殻』目掛けて飛来するものの、甲殻直前で霧散する。
「!!今のは…!」
「どうした、メイ!?」
立ち直った『殻』の爪を、皆と共に防ぎながらエースがメイに訊ねる。
「以前、戦った事があります!エーテル無効化能力者!」
「ノトシスか…其の時はどうやって倒した?」
以前、ノトシスを雇っていたごとりん博士が聞く。
「屋根の上から落としたんです…中身は非常に脆かったらしく……」
以前メイがノトシスを屠った時は、グレーターデーモンを召喚、
彼の物理攻撃で異形を屋根から突き落とした訳だが…
「…でも…こいつに通用するかなぁ…」
ノトシス等比較にならない身軽さ、同程度の防御力
一撃の重さこそ劣ったものの、10本の腕が手数でカバーする攻撃力…
其の腕の猛攻を掻い潜り、懐に潜り込めるか…
あの素早い異形に、其の巨体を吹き飛ばす程の一撃を、当てられるか…
当たったとしても、数多くある『殻』の長い腕は
易々と壁や床、窓枠等に爪を掛け、落下を免れる……
SFESの擁するバケモノが持つ力は、どうも結晶能力とは別系統らしく、
ユニバースの能力でも『殻』のエーテル無効化を破れるか不安なところだ。
いや、其れ以前に戦闘員でもないユニバースが
奴の懐に入るというのは、彼の命を危険に晒すだろう。
「……決まりましたな…先ずは腕をもいでやりましょう!」
「魔法戦闘員は下がって!壊されていない端末を探して下さい!」
「ごとりん博士見っけ〜!私も準備しなきゃね〜」
エース達の背後に移動、何かの組み立てを急ぐフルーツレイド。
「……私等、何時でも殺せる…か……甘く見おって…
 まあ良い…今の内に……ミナ達の……ポッドを………」
『殻』を無視し、先程の端末を操作し始める宗太郎…<Rel1.23:7>
執筆者…鋭殻様、is-lies
「よし!皆、行くぞ!」
「皆さん、なるべく分散して戦ってください!」
そして皆は『殻』の腕の方へ走りだす。
それを見た『殻』は左肩付近の甲殻にある穴から、真珠の様に綺麗な水晶球を覗かせる。
「キシャシャシャ!」
「避けろッ!」
『殻』の水晶球にエーテルが集まって行った事を感知したダルメシアが叫ぶと同時、
耳を劈く様な音と共に水晶球から光が照射され、更に右腕で天井にぶら下がる。
其の肩を回転したり、水晶球内部の照射角度を変化させる事で
全方位に攻撃可能な濃縮エーテルレーザー……
司令室内の壁やモニターが破壊され、破片を撒き散らす音に混じって放たれる悲鳴。
運の悪い数名が負傷し、更に運の悪い数名が動かなくなる。
「いい加減にしろォ!!」
伏せた状態から起き上がり、まるで一昔前のディスコの様な
光と騒音の領域に変貌した司令室内を駆け抜けるビタミンN。
濃縮エーテルレーザーを踊る様に掻い潜り、跳躍…『殻』に肉薄する。
「キシャアアァァッ!!!」
「うおおおぉぉぉぉぉッ!!!」
取り急ぎ回転を止め、『殻』の繰り出した9本腕の攻撃は
ビタミンNの両肩、右脚、脇腹を抉り、
ビタミンNが裂帛の気合と共に放った大剣の一閃は
天井に掴まっていた『殻』の腕を見事に切断し…共に床へと落ちる。
「大丈夫ですか!?今直ぐ回復を…」
「併し、これで解ったな…。奴の甲殻…細い所は切り裂ける」
すぐさまビタミンNに回復魔法を試みるメイ。
だが、『殻』も戦いながら、具え持った代謝機能で腕の復元を始める。
「奴に回復する暇を与えるな!行くぞッ!!」
そして……
「…………ミナ…リリィ……………さよならだ…」
宗太郎が端末のキーを一押し…其れと共に僅かな振動がアマノトリフネを疾る。
ミナ達の脱出ポッドが…射出されたのだ……<Rel1.23:8>
執筆者…鋭殻様、is-lies
距離をとっての武器を高速の壁走りで回避して、間を詰める『殻』。
攻撃をいなし防ぐことはできるのだが、有効な打撃を与えることは難しい。
一進一退(しかしどっちかというと退の方が多いかもしれない)の戦いが続く。
「ち、手詰まりか?」
槍を手にしてエースが呟く。
「お前たち、何をてこずっている?こういうやつはだな、動きを止めてしまえば一発だ。」
エースの隣にずいっとあらわれたるは魔王たる本田宗一郎その人であった。
「なんだと!それが出来ないから困ってるんじゃないか・・・」
「エースとか行ったな、お前はそこの大剣のやつ(ビタミンN)と組んで正面からやつを止めろ!
 お前たちはおとりだ、攻撃よりも隙を作らせることを優先しろ!
 そこの精霊2体、お前たちは何とかしてあのレーザーを無効化しろ。
 ・・・そうだな射出時に相殺するように技をぶつけるなりしろ。
 いくらなんでも体の外まで能力無効化の領域には含まれないだろうからそれでどうにかなる。
 それからポーザと獣人の素早い物達で足を釘付けに出来ないかどうかやってみろ。」
エースの反論を途中でおしとどめ宗太郎はてきぱきと割り振りを決める。
憎い敵の筈なのにいつのまにか、その作戦に引き込まれてしまうあたり、
さすがに帝王の資質を持つ男である。
「そして、私がとどめを刺す。我々は今あいつが邪魔という点で一致しているのだから、
 共同戦線を張ってもそう悪くはないだろう?私のやり方に従う者はわれにつづけっ!!!」
剣をひっ掴んで『殻』へと走る宗太郎。強引なやり方で振り下ろされた剣は、
『殻』の腕を一本持って行くが、その衝撃で刃がいかれてしまった。
しかしタン!と着地した宗太郎はそんなことを気にもせず、
そのまま其の鉄の塊を異形の鎧へと叩きつける。
「ちっ、くそ。納得いかねぇけど、言ってることはまちがいない。俺は乗るぞ!」
エースは宗太郎の加勢に加わる。
セイフォートの殻の鋭い爪が本田の首を狙って振り下ろされるというその時・・・
ビタミンNの大剣と、エースの槍が繰り出されはじかれる。
「援護に回るぞ!」
ビタミンNが不服そうな顔でそういう。宗太郎は軽くうなずくと少し下がる。
いつのまにか統合された動きを見せるようになった相手に不利な状況を感じた『殻』は
撹乱の意味合いも込めてエーテルレーザーを撃つべく集中する。
「!!来るぞ!迎撃の準備を」
「おぅ、やったろうじゃないか!!!」
ダルメシア・猫丸ともに得物に精霊力をためる。
そして、エーテルレーザーの放射されるその時に、同時に電撃と風刃を水晶球に叩き込む!!!
さすがにすべて相殺してしまうのは無理だったが、威力は相当軽減され
『殻』の思っていたとおりには攻撃が広がらなかった。
「よっし・・・・成功・・・か?」
矛を下ろしてダルメシアが呟く。
ガウィ―、エースが頑張ってからの攻撃をしのいでいる間に
『殻』の動きを止めるべく獣人やポーザが囲みを狭めていっていた。
その手には絡めとって動きを封じるための鉤や、網がしっかと握られている。<Rel1.23:9>
執筆者…Mr.Universe様
四方から網や鉤が飛び、『殻』の自由を奪う。
『殻』は抗議の声を上げツメを振り回す。
さすがにこりゃヤバイ!ガウィ―とエースは一端爪の届かない所に下がる。
その間も網班は放してはなるものかと力いっぱい網を抑えている。
「よし、頃合だな・・・後は私に任せろ」
宗太郎がずいと前面に出る。
「・・・大丈夫なのか?」
ダルメシアが槍を片手に宗太郎に尋ねる。
「なに、相手が神だろうがなんだろうが、邪魔する物は排除するだけだ。
 お前たちもそうするだろう?
 ・・・次にレーザーが来る、そしたら攻撃をかける。その時は相殺・援護を頼むぞ」
「ちっ、人使いの荒い・・・」
ダルメシアは舌打ちしながらも術方の準備をしていた。
果たして宗太郎の予想通り、
『殻』は動きも自由に取れない状況を打破しようと、高エーテルレーザーを放とうとしていた。
そしてその光で網とそれを支えている邪魔者たちを焼ききろうとしたのだが、
再びの魔法による介入で殆どが天井方向へとそらされてしまった。
今から加速器の冷却とエーテルのチャージをしている時間はない。
そのため次の攻撃をしのぐまではその体しか武器はないのである。
「エースは右を、ビタミンNは左を!
 ポーザ上下からの攻撃を止めてくれ。私がやつに引導をくれてやる。」
その隙を逃がさず宗太郎が『殻』へと迫る。
怒りの声を上げて殻は立ち上がろうとするが、網や鉤が邪魔で起き上がることが出来ない。
必死に繰り出す爪もことごとくエースたちによって止められる。
そして、ついに宗太郎の剣が『殻』の頭にぶち当てられる。
「おっさん!刃物じゃあいつは切れないぜ!」
エースが無駄なことをという風に文句を言うが
「誰が切るといった?切るんじゃない!潰すんだ!!!」
宗太郎は全く介さず、そのまま剣に力をかける。さらに能力である所の衝撃波を発生させる。
「やはりな。多少距離がある所からの技は無効化出来ても、
 零距離からの攻撃では無効化が間に合わない。」
目や口から緑色の汁を吐きながらもんどりうつ『殻』を見ながら宗太郎が呟く。
そしてそのまま二の太刀で『殻』の装甲のつなぎ目の
柔らかな所を狙って体重を掛けた突きを入れる!返り血によって染まる軍服。 
「ギヒャアアァァァッ!!」
異形の口が大きく開かれる。絶叫……いや
『殻』の口の中にあったのは…レーザー照射用の水晶球。
そして『殻』の九つ目が爛々と灯り、急速にエーテルが凝縮される。
「宗太郎ぉぉッ!!」
『殻』が宗太郎に最期の自爆技を仕掛けたのと
宗太郎が『殻』の頭部をかち割るのは……同時だった。<Rel1.23:10>
執筆者…Mr.Universe様、is-lies

「『殻』の生体反応が消失しました」
「あーりゃりゃ…こっちも失敗か」
SFESの中型航空戦艦内…だが何やら慌しい。
「…これはワシの失態だ。エーテル安定を見抜けなかった…」
「仕方ないんじゃないかな?あんな厖大なエーテル…」
トッパナが目を移した格納庫内のワイズマン・エメラルド…
「……此処迄来て…暴走とはな……」
「折角、持ち出したってのに廃棄かい…やってらんね」
「まあ、全く無駄ではないな。
 既にワイズマン・エメラルドの調査は多少なりとも済ませた。
 八姉妹の結晶を手放すのは惜しいが、もう仕様が無い」
「総裁が何て言うかは解んないけどね」
「………無視……」
「ワイズマン・エメラルドはミサイルにでも付けて
 アマノトリフネに撃ち込んでくれ。念の為だ」
「奪われた宝がオマケ付きで帰って来る…宗太郎も喜ぶな。ケケ」
「連盟艦隊特殊部隊に見付からない様にな。」
「解った」<Rel1.23:11>
執筆者…is-lies

宗太郎は無事だった、なんと素手の左手でもって水晶球の根元をねじりきることで、
エーテルの供給を止め、攻撃力を最低限に下げたのだった。
そのため熱線はその左手を焦がしただけにとどまっていた。
まぁ左手が焦げてるってりっぱに大怪我なんだけど。
もっともこれはその前に肩部・水晶球の無駄うちをさせて
エネルギー不足状態にしていたからでもあるのだが・・・
なんにせよセイフォートの殻は撃破された。
そしてそれと同時に宗太郎とユーキン達の一時的な共同戦線も解除されるのであった・・・
「・・・同胞の仇・・・」
「今こそ本田をしとめる絶好のチャンス・・・」
獣人が得物を持って宗太郎のぐるり360度を取り囲む。
その目はまさに爛々とした怒りに輝く獣の瞳・・・
ながきに及んだ戦闘でむさくるしくなったその姿からはすえた臭いも立ち上る。
「ははは、雑兵ごときがこれだけやってもムダなのが分からんか?」
現世の魔王たる本田宗太郎。
消し炭になった左の腕をかばいながら、剣をついと持ち上げ徹底抗戦の構え。
とそこへ、今ひとたびの爆音。
こんな大惨事の中、必死で舵取りを試みる操舵手の努力空しく、
左舷の下部にジャベリンミサイルが正面衝突したのである。
メラメラと赤い炎を上げながら崩れていくアマノトリフネの装甲。
それはまさに地獄絵図さながらであったという。<Rel1.23:12>
執筆者…Mr.Universe様

一方アメリカ領海上を飛ぶSFFS中型航空戦艦の中では予想外のことが発生していた。
ワイズマンエメラルドの本格的な暴走である。
想定していた以上のエーテル発振量によって
艦内の電算機が狂い全く指令を受け付けなくなったのである。
ことの始まりは巨大結晶をミサイルに取り付けて飛ばす。その計画を実行しようとしたときであった。
不用意に結晶体に触れたメカニックの体が一種の触媒になり、
それまで高エネルギー状態ながら安定していたワイズマンエメラルドのエネルギーが
もうだだ洩れになってしまったのだ。
「ちっ、どうせ仕組みは結晶能力と同じ!
 だったらユニバースとかいうやつの封印能力で静めるだけだゼ!」
まず先に飛び出したのはアズィムだった。
巨大結晶に飛び掛り、コピーした能力で持って封印をかけるそのつもりだった。
「よっし・・・いけるか?」
たしかに始めの一瞬光はおさまったかに見えた、
しかし無限の力を約束する八姉妹の結晶。
封印する先から先からそれ以上のエネルギーが放射され
アズィムはエーテル流に押し流されそうになる。
さすがに危ないと判断したライズのアイコンタクトにより
中性的な少年が翼を広げ、急いでアズィムを引き剥がす。
「ちくしょ・・・欠陥品じゃねぇか、この能力!!(怒)」
それまでの状況から考えて何か間違えた所で頭に来ているアズィムだった。
まぁ危機感がないからこそこういうことがやってられるのだが。
「それにしても。どうするよ・・・これ?」
エーテル流の柱でもって近づく者を片っ端からなぎ払い
焼き払っているワイズマンエメラルドを前にしてピアスの男が誰に言うともなしにポツリと呟く。
「アタシは帰る。こんな無茶な仕事やってらんないわ」
長髪の大女が早くもジェットパックを装着しながら答える。
「このままいくと、これは何処に落ちるんだ?」
ライズはこの場を収めるべくまず必要な情報を得ようとする。
「エリア51・・・アメリカ空軍秘密基地」
「…ライズ……総裁から…」
相変わらずの寝惚け眼娘が、一体のチューンドキメラ遣す。
生体使用通信でSFESの総裁が報告を求めて来たのだ。
「……ええ…いえ…多少アクシデントが……はい……
 …中型航空戦艦ナグルファー、ワイズマン・エメラルド…………
 ……そうです…其れ以外は御心配無く……はい」
通信を止めて、脱出の準備に取り掛かるライズ。
「…総裁、何だって?」
「あんまフザケた結果しか出せなけりゃ、お前等マジ殺す…
 ……だそうだ。其れより早く脱出するぞ」<Rel1.23:13>
執筆者…Mr.Universe様、is-lies

  アマノトリフネ内

 

「でぇっっきたぁ〜☆」
宗太郎と睨み合う獣人達を他所に、フルーツレイドが声を上げる。
今迄、黙々と作業を進めていた彼女の前にあるモノ……
セイフォートの殻の残骸を貪り、エーテルを吸収して
其れなりの大きさと成った…生体兵器……
4の翼と手足…2の角…体をビッシリと覆う鱗……多少異型ではあるが…其れは正しく…
「ど……ドラゴンッ!!?」
正確にはワイバーンだろう。一同が驚くのも無理は無い。
ドラゴンといえば現在の地球では最強の生命体…
其の強化バージョンなのだから…以前ヒュグノア達が頼ったのも頷ける。
「正確には幼体なんだけどね〜。
 博士の研究成果で機動力も1.7倍!(当社比)
 ごとりん博士、これで脱出しましょ!」
「…いや、其れより前にフルーツレイド、アマノトリフネ軌道変更を頼む。
 SFES連中の狙い通りになるのも癪だ。
 入力装置が破壊されているとはいえ、
 お前の糸なら装置内部の配線に直に命令を与える事が出来る…」 
「オッケ〜、任せて〜☆」
そういうとフルーツレイドは糸を破壊された端末の中に伸ばす。
「なるべく早くやってくれよ。」
「わかってるって〜」
その時宗太郎達は・・・・<Rel1.23:14>
執筆者…is-lies、鋭殻様
「…脱出よりも……決着を望むか……
 ふふ……良かろう……獣人達よ………
 お前達の長きに渡る苦痛と悲嘆………私の体一つで受け止めてやろう………」
既にエース達、SFES等の攻撃により傷だらけの宗太郎……
…だが其の眼は虚ろではない…いや…寧ろ、獣人達を捉えて放さない……
目的と…命の終着を見た魔王が為すのは…過去の清算か…或いは…
「うおおぉぉ!!」
怒号と共に数名のテロ兵が宗太郎に切り掛かるも、あっさりと躱される。
「………司令……私達は…正しいでしょうか………?」
そんな中、獣人解放戦線の新司令である少女は迷っていた。
(第1世代は戦場で本田グループの兵器に同胞を殺されたという
 どうしても消せない怒りがある。奴等を倒せるなら文句は言わんさ)
(そういうものですか?
 まぁ、そういう事は私達、戦後世代には解りませんけど…)
ふと…前司令との会話が蘇っていた…
そうなのだ。以前、自分は宗太郎との決着等、どうでも良かった…
だが…目の前で司令が流れ弾によって命を落とした時……
其の時から彼女に『どうしても消せない怒り』が生まれたのだ。
機を窺い、裏切り者をも受け入れ、そして今…宗太郎を殺そうと……
其れで…良いのだろうか?
確かに今は…宗太郎を始末する絶好機…
力も動きも格段と落ちている…放って置いても死ぬだろう…
だが、彼を殺して何がある?
この怒りは払拭出来るかも知れない…
併し、其れでいてだ…この怒りは……無くなるのではなく…
他の何処かに移動するだけでは無いのか?…とも思う。
これはまさしく、リーダーから怒りを受け継いだ彼女ならではの考えだ。
そんな彼女の思考を乱す様に司令室内に鳴り響くのは…剣戟の音…<Rel1.23:15>
執筆者…is-lies
「……どうした?お前達の怒りとは…所詮、其の程度か…?」
「くっ…このォ!!」
宗太郎の挑発に駆られたテロ兵が、憎き同胞の仇に魔法弾を連射する。
其の攻撃に対し宗太郎は、軽い衝撃波で相殺しようとしたが…
数発が衝撃波を免れ、宗太郎に手傷を負わす。
「……」
本当に僅かな傷…
併し、今の宗太郎には其れでもキツいものがあるだろう。
「…………」

 

「軌道変更完了ぉ〜」
端末に糸を伸ばしていたフルーツレイドがニヤけながら言う。
「やったか!?」
表情の明るくなる一同…併し……
「…手遅れだ……確かにエリア51に落ちる事は無くなった…
 だが其れでも、外の阿呆共の攻撃で…既に墜落中…
 どちらにせよ…アマノトリフネは墜落する……」
「そんな…それじゃあ、早く脱出しないと…!」 
「ちょっと待て。ここの下に何があるか確認しないと・・・・・」
「確かに・・・・街があったらとんでもない事になるな・・・・」
「だけど、外を見ようったって外の部隊の砲撃に当たる可能性もあるんじゃ・・・・」
「・・・・・」
一同は沈黙する。<Rel1.23:16>
執筆者…is-lies、鋭殻様

    連盟艦隊旗艦司令室

 

艦の舵を執っている操舵手が…
アマノトリフネにミサイルの照準を合わせている砲撃手が…
各艦と情報の遣り取りをしている通信手が…
皆、一様にゲンナリと…そして黙々と作業を続けていた…
耳栓したいという欲求を押さえ込む彼等の
涙ぐましい努力を嘲笑う様に室内に響き渡るのはワルキューレの騎行。
其の司令室内で唯一人、満足そうな男…連盟艦隊特殊部隊長だ。
ワイン片手に踏ん反り返り、恍惚…
…というかイッちゃってる表情で墜落するアマノトリフネを眺めていた。
「カンラカラカラ!この大戦の英雄として拙者の名は歴史に刻まれる!
 本田宗太郎!拙者の偉大な歴史の礎となれ!
 …つー訳で……ちねぇぇええ!!」
合図と共に発射された無数のミサイルがアマノトリフネに直撃する。<Rel1.23:17>
執筆者…is-lies

         アマノトリフネ内

 

「…ぐっ!……アマノトリフネ……耐えてくれ……!」
急激な軌道変更に伴ったミサイルの直撃によりアマノトリフネが大きく傾く。
壁が床と化し、SFESが開けっ放しにした天窓から地上の様子が探れそうだ。
「……御嬢、下に町が無いか見て来ます!」
メイを猫丸に任し、天窓に向かって駆け出すダルメシア。
「おい、まて!」
続いて『青』もダルメシアに続いて走っていく。
そして皆が体勢を立て直し始めたその時、
「くそっ、強い・・・・なんで片腕でそこまでできるんだ・・・・」
本田と対峙しているテロ兵が呟く。
「今度こそっ!」
テロ兵が切りかかろうとしたその時、テロ司令が手で彼等を制する。
「!?……司令?」
同胞からの問い掛けにも答えず、少女は口を開く。
「………本田宗太郎………死ぬ気ですね……」
「……………」
返事は…無い…
「又…………死ぬ気だったのですね」
「………だから何だ?」
動じずに聞き返す宗太郎。だが、其の眼は僅かに細められた。
血に塗れた軍服と相俟って、かなりの威圧感を放つ。
「何千、何万もの人々を苦しめて……死ぬ積りだったのですか?
 OX-96での死とはいえ…其れで清算出来る積りですか…ッ?」<Rel1.23:18>
執筆者…鋭殻様、is-lies

           連盟艦隊旗艦司令室

 

キュルキュルキュルキュル(テープを巻き戻す音)
一時の沈黙……そして……
カチッ!(スイッチを入れる音)
…隊長を除いた全員が気落ち…
中には向かい合っているモニターに顔を預けている者も居る。だが…
「……ん…?…隊長!後方艦ユナイテッドパワーから不審艦発見の連絡です!」
通信手の報告と共に、モニターには件の不審艦が映される。
無論、其れがワイズマンエメラルド(暴走)を載せた
中型戦艦ナグルファーである事は、此処の誰にも解らなかった。
「全く…面倒事が次から次に…其れも処理してしまえ」
ホントーにいい加減な命令を後方艦に下して、
再びアマノトリフネ攻撃に移る連盟艦隊特殊部隊。<Rel1.23:19>
執筆者…is-lies

「・・・確かにそうかもしれん。だがもう死ぬ他に道は無い。」
「ホントにそれが正しいのかよ・・・・・」
宗太郎の科白にガウィーが食い掛かる。
「なんだと?」
ガウィーは次の瞬間、
「ふざけるなっ!」
「なっ・・・・・!」
ガウィーがキッと宗太郎を睨みつける。
「残された娘がどうなるのか…
 お前、解っていないとは言わせないぞっ!」
「…ふん…よく喚く連中だ……
 後一歩で能力者開放の夢が実現出来たかも知れないというのに…
 愚かで無力な非能力者連中…
 思想も何も持たぬ正義気取りの貴様等…
 いざという時に計画を頓挫させたカンルーク…
 最後の最後で全てを滅茶苦茶にしたSFES…
 …全てが忌々しい!こんな連中に私の目的が潰された事が許せん!
 だが…敗者は敗者……見苦しく足掻きはせん……
 このアマノトリフネと運命を共にしよう…
 逃げたければ逃げるが良い!併し…私は最期迄、修羅でいるッ!!
 掛かって来る者に容赦はせん!!」
「…っく……上等だァァ!!」
テロ司令の制止を振り切った兵達が再び攻撃を開始する。
「博士!そろそろ脱出しないと危険です!」
ごとりん博士を急かして、幼体ドラゴンの背中に乗るフルーツレイド。
「ダルメシア!地上はどうだ!?」
「街がある!…だが、人気はまるで無い!」
天窓から落ちない様、周囲の風を操ったダルメシアが
ごとりん博士の方に向かって、強風に消されない様、大声で叫ぶ。
「此処なら大丈夫そうだ!」
『青』達の言う様に、此の侭の軌道で墜落すると思われる場所は
まるでゴーストタウンの様な街だった。
アマノトリフネが向かって来ているという情報により、住民は疾うに避難していた。<Rel1.23:20>
執筆者…鋭殻様、is-lies
「(このテロ兵達、どういっても戦うつもりか・・・)こうなったら」
ガウィーは『青』に耳打ちし、『青』が「分かった」と頷くと急にテロ兵達のみぞおちを殴った。
そしてガウィーは宗太郎に眠り薬を嗅がせた。
「ぐはっ!」
「な、何をする!?くっ・・・・・」
そういうとそれぞれテロ兵達は気絶、宗太郎は眠ってしまった。
「よし、脱出するぞ!こいつらを連れてくのを手伝ってくれ!」
そういうと『青』達は脱出の準備を始めた。 
…だが其の時。
「…!オイ!!」
叫びながらジョイフルが示した方向にある窓…其処から
アマノトリフネに向かって来る様な空中戦艦が一同の目に入った。
周囲の戦艦群から攻撃を受けているので、連盟艦隊とは違う様だ。
「……!ぶつかるッ!?」
咄嗟にフルーツレイドが部屋中に蜘蛛の巣状の糸を張り
其の場の全員が吹き飛ばされない様に固定する。
獣人達が気絶していなければ、直ぐにでも脱出する事が出来たかも知れないが…
そして……鼓膜が破れるかと思う程の大音響と、体が自らの其れとは違う様な錯覚……
間を置き、直ぐ隣の壁が吹き飛び、其処を擦過しながら高速で流れる戦艦の巨体。
そう。衝突したものの、謎の戦艦は余程強力な結晶を積んでいたのか、
衝突でも速度を僅かに落としたのみで、其の侭アマノトリフネを内を強引に進んでいるのだ。
「!!」
其の中で、ごとりん博士のみが気付けた。
謎の戦艦の外壁はズタボロの穴だらけであり、其の穴の中の特に巨大な一つから、
これまた巨大な結晶がアマノトリフネ側に落ちた。
同時に謎の戦艦のシールドは霧散し、其のままエリア51の方向へ向かっていく。
だが、ごとりん博士の興味は戦艦等に向けられていなかった。
そう…先程の巨大結晶…
「……ワイズマン・エメラルド!」<Rel1.23:21>
執筆者…鋭殻様、is-lies
「もう限界だ!早く脱出するぞ!」
幼竜の背中に次々と乗り込む一同。併し…
「…れ……れい……か…様……」
「なッ…!!」
宗太郎が、まるで巨大結晶に反応するかの様に
己の意識を叩き起こす。
と、同時に自分を背負っていた『青』を突き飛ばし、
反動で転がりながら件の巨大結晶の方へ近付く。
「お前達は今直ぐ脱出しろ!」
宗太郎を追って駆け出すごとりん博士。
「オイ!良イノカ!?」
「……博士なら大丈夫……何か策があるに決まっている…
 …アマノトリフネから脱出するわ……でも…
 5分経っても戻らなければ…又、私だけでも助けに向かう……」
何時になく真剣に答え、フルーツレイドは幼竜に命令を下す。
其れを受け、ドラゴンが翼を羽ばたかせる。
エーテル処理が為されているのか、其の巨体は軽く浮き上がり、
司令室内の天窓から外へと飛び立った。
連盟艦隊の死角に入り、ごとりん博士を待ち始めた。<Rel1.23:22>
執筆者…is-lies

        アマノトリフネ内

 

「ワイズマンエメラルド……もう手に入らないかと思ったぞ」
博士の目的は宗太郎を止める…というより
奪われたワイズマンエメラルドを宗太郎から奪い返すというものだ。
尤も、其のワイズマンエメラルドも元々は奪ったものなのだが…
巨大結晶を前にして倒れている宗太郎…生きてはいるようだ。
…其処へ………
《おめでとさん》
「!!」 
突然、男の声が辺りに響いた。博士には聞き覚えのある声だ。
声の主は、瓦礫の中から現れた一体のチューンドキメラである。
生体使用通信が可能なSFESのモンスターだ。
「……貴様か……」
《多分当たり。博士、景品としてワイズマンエメラルドをプレゼント。
 あ、安心していいぜ。このチューンドキメラは非戦闘タイプだから》
SFESの一員であり、以前博士の許に居た男…
チューンドキメラを用いて声だけを送っているのだろう。
《……あんた、流石だよな……
 フルーツレイドを忍ばせていたなんて気付かなかったし…
 今の状況も超結晶使って何とかすんだろ?
 ………このゲーム…アンタの勝ちだ》
「…何の用だ?」
相手の言葉を無視して博士が質問をする。
《…なぁに、宗太郎の処遇について…ちょっと…な》
「………何…?」
《…あんた等、さっき宗太郎も助けようとしただろ?
 俺はちょっと勘弁して欲しいんだよな…其れ。
 今、そいつを助けても、宗太郎に待ってんのは死刑……
 どの道OX-96でおっ死んじまう…
 んな惨めな死に方させたくねぇんだ。同じ修羅としちゃな。
 ま、其れをアンタに言っておきたかっただけだぜ。んじゃ》
言い終え、其れっきり男の声は聞こえなくなった。
「……ふん…あの男に同情されるとはな……」
「宗太郎…気付いたのか……」
ごとりん博士の目の前で宗太郎がゆっくりと起き上がる。
至る所、傷だらけで血に塗れている。この男…もう持たない。<Rel1.23:23>
執筆者…is-lies

その頃、特殊部隊の戦艦ではちょっとした騒ぎが起きていた。
「隊長!先ほどの不審な戦艦、アマノトリフネの内部、司令室辺りを貫通しました!」
「カンラカラカラ!これで本田宗太郎も死んだだろう!
 拙者の偉大な歴史は確実なモノになったのだぁ!」
部隊長がイッちゃった顔で笑い始めようとしたその時、隊員が
「いえ、それが・・・・・・」
「あ?まだなんかあんのか?」
「実はその戦艦が・・・・・・・エリア51に向かって墜落しています。」
「にゃ、にゃにい!?」
その場にいた全員の顔が青ざめる。 
「……ま、いっか。トールマン大統領が苦労するだけだし…」
この男、己の栄華以外、先を見ていないようだ。
「任務完了!直ちに帰還するでござる!」<Rel1.23:24>
執筆者…is-lies、鋭殻様

「あ〜〜〜!まったくこんな所でじっとしてるのは俺の性にあわねえ〜〜!」
エースはドラゴンの上をうろつき始める。
「あー!もうちょっと静かにしろ!」
「そういえば、さっきの戦艦はいったいなんだったんだ?」
「さあな・・・・・・」
「あ〜〜〜〜〜〜!もうヒマだ〜〜〜〜!」
「お前はもう少し黙ってろ!」
バカッ!
「痛い・・・・・・」
『青』達は話を続ける。<Rel1.23:25>
執筆者…鋭殻様
 
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