リレー小説1
<Rel1.15>

 

さて、ミサイルの危機にさらされたというのに『青』はいつもの調子を崩さずメイをdisりながら騒ぎ立てる。
「メイが捕まった…のはどうでもいい!
 そんなことより、とんでもないクレイジー野郎達の手によって
 世界はメチャクチャにされてしまうのか…あ゛ぁーーー!!!チキショーーーー!!!」
「うるさい!!…けど、その気持ち、わからないでもないな。」
「右に同じ。奴らはクレイジー過ぎ!」
「いや、どっちかと言うとマッド野郎の方が正しいかも…。」
「…少年。おまえ、前々から言いたい事があるんだろう?
 その内容が気にならないでもないでな。」
「!…そ、そう…だ。」
「でも無理はしないほうがいいよ!
 君もそんなに出血してたら、ちょっとの運動で気絶…
 いや、いくらそんな体質だからって、最悪の場合、死ぬかもしれないんだよぉっ!!」
「…そんなのは御免だ。だが…ホントにこれじゃあな。」
「絶望するなよ!いざとなったら俺らも覚悟を決める…
 さっさと気合だけでも入れとけ…」
ボシュボシュボシュボシュボシュボシュ…!!
「き、来たぁ!!」
何発ものミサイルが発射される…
ダルメシア=ヌマ=ブフリヌス、そして吠黒天 猫丸は
己の持てる力をすべて出し切って、防護壁を作った。
その上からはヘリから発射されたミサイルが迫る。<Rel1.15:1>
執筆者…A夫様、Mr.Universe様

一瞬の静寂――そして、大気を揺さぶる轟音。
そして本田たちの抜け出した大穴からは煙がもうもうと立ち上がる。
「…しとめたのか?『リリィ』…」
本田が、ヘリの手すりにつかまり身を乗り出しているアンドロイドの少女に尋ねる。
「いえ、着弾の瞬間に何らかの防壁が展開された模様です。
 おそらくダメージは少ないものと判断されます。」
「…そうか、あの面子でそう言う事が出来るといえば…
 おそらくは術師イルヴ。あの男だろう、恐ろしい男だ…
 しかし、あれだけのものをはじくバリアを展開するとなると消耗も激しかろう。
 奴等が邪魔と言う所はSFES共も同じ…これで邪魔者は消える…
 ……帰るぞ、『アマノトリフネ』へ。」
「はっ。」
ヘリのパイロットがそう答え、ヘリは移動していった。<Rel1.15:2>
執筆者…Mr.Universe様

「ぐはっ、どうにか持ちこたえられたか…しかし…」
「お嬢をさらわれて…どんな顔で帰れば良いんだ…」
精神力の消耗で人間形態へともどったダルメシア=ヌマ=ブフリヌスと、吠黒天 猫丸は
ミサイルをしのいだことを喜ぶよりも、守るべき者をさらわれたことを悔しく思っていた。
「うくっ、君たちのせいではないさ…状況が悪かった」
それまでの戦闘で結構なダメージを負ったエースが言う。
そして、置いてかれたごとりん博士を締め上げて、共に出口へと進もうとした時、
後ろからすごい音が聞こえてきた。
「ん?あれは…爆音?ミサイルは全てしとめたはずなのに?」
最初に気付いたのは、エースであった。そしてその爆音の正体は、
先ほどへイルシュメルがどさくさにまぎれて仕込んだテルミット手榴弾が火事を起こし
其れが施設の動力炉を破壊した事による、エーテル暴走の爆発だ。
「くそっ、ここまで来て…」
「…俺に任せろ、何か今度は上手くいきそうだ。」
『青』が前に一歩足を踏み出す。
「おい、さっきヒボタンがつかえなくなるまで疲労してたじゃないか、それに体も…」
ダルメシア(今はハチ)が、『青』を止めようとするが、『青』は聞かない。
「いや、大丈夫だ…さっきのは疲労が原因じゃない。
 それに傷口だってもう埋まってる。今度はいける!」
そういうと、『青』はヒボタンを柄から放射状に伸びる数本の棒に変え通路の壁に打ち込む、
そして、その棒の間を埋めるように膜が広がり、傘のような物を形成した。
さらに、ヒボタンはそれを掴んだ腕から肩をへて背中から足まで『青』の体を侵食する。
しかし、それはまた骨で支えられない分の重量を受け止めるためのクッションとなった。
「よっしゃー!!こい!!」
爆音が雄たけびを上げて近づき、『青』に喰い付こうとしたが、
『青』とヒボタンは、一寸も動かずにその攻撃に耐える。
それが何秒続いただろうか、
ビタミンNが、熱風がおさまったのを肌で感じて目を開けると、
いつもと変わりない、いやむしろ本調子の『青』がそこにいた。
「…ちゃんとヒボタンが使える…」
『青』はそう呟いて、一時的とはいえヒボタンと自分の能力を奪ったのが、
ミスターユニバースによるものではないかと漠然と思いついていた。<Rel1.15:3>
執筆者…Mr.Universe様
やがてイルヴも毒から醒め、何とか動き出せるまでに回復した…。
「ハチ!タクヤ!大丈夫か!あ…メイはどうした?」
「お、お嬢は…」
「本田宗太郎に…捕まった。」
「くっ…ん!?あ、『青』、前に
 『ヒボタンは武器以外に変形できない』って言ってなかったか?」
「…ああっ!?これ、パワーアップ…しちゃったのか…」<Rel1.15:4>
執筆者…A夫様

ヘリ内

 

 

「あの分では…奴等をまだ倒せぬか……うーむ。」
「(珍しく悩んどる!一体どうしたんや!)」
「……ミスター・ユニバース。」
本田は口を開くと同時にユニバースにつかつかと近づく。そして、
「何や、本田(ドスゥ!!)…さ…はがっ…。」
…無慈悲な刀剣の一突きがユニバースの胸を貫く。
「貴様に、別れを告げに来たまでだ」
刺してきた本田はユニバースに沈黙も無く、冷酷に告げたのだった。
「な、何や…貴様、騙したんかい…はぐっ、」
「おい、リリィ!しばらくヘリを止めておけ。」
「了解。」
「ところで、騙した……だと?
 ……ほう。あの『付けば幹部クラスとしての処遇も考えてもいい』という、陳腐な約束事か?
 残念だが貴様のような道化頭は我が造る新次元には必要がない。
 まぁ、貴様の細胞や戦闘能力データは兵器のパーツとして、かなり優れたものだがな。
 イルヴと、『青』とやらもな。」
「あんさん…も、随分考え変わりましたなぁ。
 ところで、新次元ってのは初み…ごほっ、こほ…初耳な。」
胸から血を流しつつもユニバースが話す。
「さて。貴様に問おう。お前は本気で
 『そう言いなはるな、新世界はそう悪い物じゃおません。
  能力者と、非能力者の壁は無くなるし、戦争もなくなる、
  いいことじゃないですか』などと発言したのかね?」
またもや本田のヘリの中で寝かされていたメイは、
かすかな意識の中でそんな会話を耳にした。
「なんとか、脱け出さないと…危ない」<Rel1.15:5>
執筆者…A夫様
冷酷な言葉がユニバースの耳に伝わる。
本田は、刀にさらに力を掛け、叫ぶ。
「貴様も、どうせ裏切るつもりだったのだろうが?人間というのはそういうものだ」
「くはっ、えぇ確かにマジメじゃなかったかもしれませんわな。
 いやしかし、そないに怒らなんでも!!…がっ…オーケー、言いますよ。
 たしかに、あんさんに付いたのは、思想的理由ではおません。
 かといって、勝ちそうなやつにつくというのでも…
 ただ、旧人類の滅亡とかいう大きいことに参加したいと言うそれだけですわ」
「ふん、見え透いた嘘を…」
本田は、刀をミスターユニバースから抜き、切り落とそうと振り上げる。
だが……
グガッ!!?
本田は、派手に血を吹き、後ずさり、背後のシートに倒れこむようにして座った。
「本田はん…!?もしかして体が…それに、その血のはき方は…『OX-96』?」
本田の吐いた血には、血が固まって褐色になった物が浮いていた。それは、
前大戦時に使われた最悪の寄生ウィルス系毒素OX-96の症状に極めて近いものであった。
そして、OX-96は長期間体に存在しつづけ、宿主の体が弱るのをじっと待つという。
「うるさい、それ以上言うな…」
本田は立ち上がりそこまで言うと、リリィに止められる。
「本田様、それ以上興奮されてはお体に障ります…なにとぞお静め下さい…」
その間に、メイはどうにか気が付いていた、
ヘリが大名古屋国へ向かっていること、この高さからでは逃げられないことを。<Rel1.15:6>
執筆者…Mr.Universe様
「…やはり飛び降りるべきか…。」
メイの頭にそんな思考がよぎったのだった。
「なぁ、本田さん…げほっ!
 あんたも長くは持たないようでっせ(ジャクッ!!)ぐえぇーーーっ!!」
本田は血を口から流しつつも、再びユニバースに切りつける!
「残念だが…我はこのような病では死なんぞ。覚えておけ。
 ……それと、これを冥土の土産にくれてやる。」
そして本田は懐から「AD計画全貌書」と書かれた分厚い本を渡す。
「な、なんでそんなもの渡す必要があるん…」
ドジュバシュアアアアアアァァァァァァ!!!
ミスターユニバースはそれを持ったまま本田の刃に切られ、ヘリから落下する…。
「もう一度自分の存在と、やり方の正しさを改めて考えるがよい。」
本田は落ちていくユニバースにそう言い放つ。
しかし、脇からメイも飛び降りて逃げ出してしまう。
「本田様!」
「別に構わん!奴からは細胞の採取だけで十分だ。」
そしてヘリはふたたびドアとハッチを閉ざしたのだった。<Rel1.15:7>
執筆者…A夫様

「(早まっちゃったかな…?)」
朦朧とした意識の中、夜空に身を投げたメイは考えていた。
眼下に広がる無数の光…文明の明かりだ。
メイは其の光の群に吸い込まれる様にな錯覚を覚えた。
直前で魔力を一気に放出すれば着地も出来たかも知れないが、
今の彼女は研究所内での連戦等で身体共にズタボロで、魔力も底が尽きている。
風に体を打たれながら民家へとメイは真っ逆様に落ちて行く。
刹那、其の屋根から1つの影が跳躍し、落下するメイを抱え込む。
以前、彼女が助けた暗殺者『ポーザ』であった<Rel1.15:8>
執筆者…is-lies
「ポ、ポーザさん!良かった…生きてたんですね!」
「ああ。道中、大名古屋政府のやつらに狙われてたがな…。
 何でも『悪魔の兵器達』を作る為という名目で。」
「…あっ!?」
良く見るとなんとミスターユニバースがAD計画の本を持って落下してくる!
(ひゅうううううううぅぅぅぅ…!!)
「お、おーい!何(ゴスッ)ぐわっ!」
「!?」
「イテテ…って、なんだこの怪我は!
 おい、お前…あっ、いきなり何を…。」
ユニバースを運びこもうとしたキムラの横から『青』が単身手を出す。
「…大丈夫だ!俺達が居る限り!」
「…あの『青』さんまでいるって事は…みんなも?」
「ああ。なんでも本人達はマロールやったら座標が狂って、ここにテレポートしたらしい。」
その後、メイとポーザも建物に屋根から入って行く。<Rel1.15:9>
執筆者…A夫様

「やはり慣れない事は無闇にやるもんじゃないな。
 無難にテレポートしとけば良かった気がする。
 落ちてくるメイとユニバースの両方を
 マロールの応用で引き寄せようとしたら…。」
「運が悪けりゃ石の中…ふぅ。」
「でも結果的にはメイ達も助けられたし、キムラ達にも
 会えたから良かったんじゃ?」
「そうですよねユーキンさん、イルヴさん?」
「ところで…アイツはどうした?」
「今、オレの後ろでユニバースを介抱してるが…
 なんか、凄く気合入ってるみたいだぞ!?」
この建物内は意外に広い。その上、
はるばる京都から東京までやってきた店員君やイリュブ達が
ある程度補修して、東京での拠点として利用されていた様であった…。
「あぁ、ウズウズウズウズ…。」
「二度ほどやられた相手の介抱に精を出すとは、
 結構アレなんやなぁ。ところで、何ウズウズしとんのや…。」
「こ、こんだけ人物が揃ってると会話意欲が…それに、この本もあるしなぁ。
(AD計画全貌書――著:本田――を取り出す)」 <Rel1.15:10>
執筆者…A夫様

『青』等がポーザ達と合流出来たのは幸運であった。
運と相当の技術、迅速な行動力が重なってのものだからだ。
だが、彼等は急ぎの余り『3つの大いなる種』を残していた。

 

 

ごとりん研究所跡――

 

既に廃墟と化した施設の瓦礫から、何者かが身を捩って這い出て来る。
「くぺぺぺぺ!あいつ等、ヒュグノアとの戦いの中で
 僕が逃げ出している事に全然気付かなかったペン!
 今回の御礼は…まあ、其の内させて貰うペン!」
大きな箱を背中に担ぎ、甲高い笑い声を残して彼は施設から立ち去った。

 

 

ごとりん研究所跡(地下研究室)――

 

「…くっ………」
当て身を喰らって倒れた床に、ロッカーから投げ出されたガスマスクがあった事と、
結晶防護服を着用していた事。そして本田の攻撃で
天井にあったスプリンクラーが壊れ、彼女の周りに水のバリアーを張っていた事が
テルミット手榴弾の猛火の中でフルーツレイドが生き延びられた理由である。
「……ごとりん博士が…
 ………私も…行かなくては…ッ!」
何を思ったのか、フルーツレイドは重い足取りでごとりん博士のデスクに向かう。
「ふふ…この最終兵器さえあれば………」
彼女の手には、以前、ヒュグノアと翡翠が
病院に攻めて来た時に持って来た鞄が、しっかりと握られていた。
「これと私達が時間を稼いでいた間に
 ごとりん博士が完成させたアレを併用すれば…ふふふ」
にやけたフルーツレイドの視線は、壁にある地図の大名古屋国に向けられていた…

 

 

ごとりん研究所跡(地下通路)――

 

度重なる外部からの衝撃で脆くなった瓦礫を吹き飛ばし、
無傷のヒュグノアが其の下から現れたのだ。
「ふははははははははっ!不死身のヒュグノア、
 只今、ふっかあああああ(落盤)あああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」
崩れて来た壁や天井に、彼はまたしても埋もれてしまった。大声なんか出すから…
「……………………………………ぐすん…どうせ私なんか脇役ですよ」

 

…………………訂正。
彼等は急ぎの余り『2つの大いなる種』を残していた。<Rel1.15:11>
執筆者…is-lies

みんなは傷もすっかり治して、建物内で集合していたのでした。
「えらく意味深そうやなぁ、そのAD計画全貌書ってのは。」
「…まずは、俺から語らせてもらおう」
そして、ガウィー達の手によってAD計画の全貌が明かされはじめる。

 

1・AD計画の概略
 今回、この計画を開始するにあたって強靭な精神力と生命力を持つ我自身、
そして、全宇宙の古き生命体の粛正の先兵となす「悪魔の兵器」達、
さらに、無敵の力を生み出す潜在能力と超エナジーの媒体「八姉妹の結晶」。
これらその他などが集まり、時が満ちた時に「AD計画」は始まるのだ。
 現在宇宙には雑多すぎる量の意識が氾濫しており、
これらは我の作る新次元で生きられる要素は皆無である。
「AD計画」は、まずそのような下等すぎる意識をすべて粛正せねばならない。
 我と悪魔の兵器が合わされば全宇宙の回帰、いや消去を行う事などたやすい。
そして全てが無に帰った時、新たなる次元世界の創造が始まる。
新次元世界の支配が完全に固まれば、「AD計画」は完璧なる終わりを迎える。
しかしその時は旧次元の意識など何一つない。
もしこれらが残るようであれば、それらは完全なる削除の洗礼を受けるべきである。
「…おかしな感じの文体ね。」
「オレにギリギリ似てる…のか?」
「まだ続きはあるぞ。」<Rel1.15:12>
執筆者…A夫様
2・サブプロジェクト「セイフォート」
 AD計画は何も我一人で出来ないこともない。
が、やはり筋道立てて行わねば我とて失敗は避けられぬだろう。
その為にさまざまなサブプロジェクトを設立して
不慮の事態の対処、AD計画の完璧化を測る。
「セイフォート」は後者の方に属し、「悪魔の兵器」に関連している。
 このプロジェクトを進行するにあたって、
SFESのヴァンフレム・ミクス・セージムとゼペートレイネ・フィヴリーザ、
そして、その他のメンバーが大きく貢献している。
しかし、彼らは私に取って変わる事は永遠にできない。
何故なら意識の配列が新次元や我に対応できないからである…。
「意識の配列とはまたヘンテコな…。」
「ちょ、ちょっと待っておくんなまし。ひょっとしたらまさか
 坑道超結晶の奪い合いってのは…自作自演?」
「おそらく、な…。どうやら組織の連中も9割方、本田に忠誠を誓い、
 意識改造を施されたやつらばかりだ…。」<Rel1.15:13>
執筆者…A夫様
 ライズが説明したSSとやらの情報を聞いた時は
正直、馬鹿馬鹿しいと思ったが、実際に見せられた時には一考の余地ありと判断した。
戦力は多いに越した事は無い。新次元世界の完全な支配の為に利用させて貰う。
「ふぅーん…大した役割は持っていないんだね…」
「つーか、文体が変わってるな。もしかして最初からあったプロジェクトとは違うのか?」
「ああ。セイフォート自体は近年のプロジェクトだ。いや…だった。
「何?」
「問題が起きたんだ。この生物兵器の売り込みをしていた『SFES』という組織だが…
 こいつ等…大名古屋国が自分達の本格的な研究をする前に、本田を裏切った。
 いや、本田の方が違約したらしいから裏切り返したってトコか…
 当時、自分達が属していた研究施設の全情報を抹消したんだ…
 無論、物理的にも……研究所は消滅。研究員も全員が行方不明」
「ちょっと待って下さい!意識改造云々はどうしたんですか?」
「私達が戦ったヒュグノアさんも、
 何か『セイフォートの心臓』だかを所有していた事は知っていますけど
 彼は完璧に洗脳されていましたよ」
「其れに関しては此処を読んでみろ。
 SS連中の洗脳は上手い具合にいっていたが、
3体ほど洗脳を施したところでSFESが逃亡したとの情報が入った。
だが、洗脳した者達も連れてというのがマヌケな事だ。
洗脳に成功した3体は、SFESへの伏兵として捨て置く。
一度洗脳してしまえば、何時でも精神干渉は可能なのだから。
「ごとりん組織で置いてかれたのが、この洗脳された3体…
 SFESは敵の伏兵と化した仲間も、利用した挙句捨てたという事だ」
「まあ、セイフォートの事はもう良いだろ?
 何にせよAD計画とやらには大した関係が無さそうだしな」
「だな」
「…んじゃ、次に……何で連中は結晶奪取に態々自作自演を?」
「潜入班ではない、本物の政府・テロ双方のシンパシー取得の為らしいな。
 ごとりん博士等第三組織の隠密行動の為に
 政府とテロをド派手に暴れさせた…こんなトコだ」
「其の騒動が、結果的に私達を呼び寄せたという事ですか…」
「話は大体解ったな。早速、大名古屋国に向かって
 本田のヤツのAD計画をブッ潰してやろうぜ!」
「早速って…何の用意も無しにか?
 相手は大名古屋国だぞ!幾らアンタ等が強くても
 少しは慎重に…」<Rel1.15:14>
執筆者…is-lies
 AD計画の全貌を把握した一行は、
本田を止めるべくその本拠地に踏み込む算段をしていた。
「本拠って、大名古屋国の地下街か?」
ガウィーが周囲に問う。
「まあ、そうだけど……以前ボク達は見に行ったことがあったけど、迷路って感じだったな、うん」
ユーキンとバンガスがうなずく。
「本田がいるのは、その地下街の中心、『新生名古屋城』と見て間違いないな」
ハチが言う。
新生名古屋城とは、今は戦火で跡形もなくなった名古屋城のレプリカを、
地下街の中心に作り上げたというものである。
もっとも、その古風な外観にそぐわず、内装はハイテクで警備も万端、
難攻不落の城塞にして、要人の集まる大名古屋国の政治の中心のはずだ。
「それに、そこまでの道のりはお頭が言ったとおり、入り組んだ迷路で、
 そこの地形を知り尽くした警備兵は一筋縄じゃいかないっすよ」
バンガスが言うのに対し、『青』は
「え?俺は迷わず行けたぞ?兵士もザコかったし………」
「運がよかっただけっしょ。敵も新米兵だったとか……」
「なんだとぅ!?」
あっさりキレてバンガスに殴りかかる『青』。
「やめろやめろ!そんなことしてる場合か!」
それをツヨシンが取り押さえにかかる。
「こら、やめろ!!」
その恫喝と共に、全員が静まりかえる。
見れば、そこにいたのは………
「イルヴさん!?」
急激に顔が喜色ばむ『青』。<Rel1.15:15>
執筆者…トッパナ様
「さて、私も作戦会議に加わらせてもらうぞ。」
イルヴが側の椅子を引き寄せ、腰をかけながら言った。
「心配をかけたな。
 さて……これからお前達が攻め落とそうという大名古屋国には、
 その地形と兵士の錬度以上の障害がある。『TAKE』という生体兵器だ」
イルヴが周囲を見回しながら言う。
それに対し、ビタミンN。
「聞いたことあるな………領土にすればちっぽけな大名古屋国が
 今まで他所からの侵犯を許さずにこれたのは、究極の守護者がいるからだ、とか………」
「そうだ。それがTAKE………」
沈んだ声でごちるイルヴ。
「そんなに強いんですか?」
メイが聞く。
「いや……ここにいるメンバー全員でかかれば、決して倒せない相手ではない。
 なにしろ超人的な『能力者』が揃っているからな……
 ただ、かなりの手間をとることは間違いないじゃろう。
 その間に、本田が計画を成功させれば無意味だ。」
「作戦を立てないとダメかなぁ?」
タクヤが言ったのに対し、イルヴ、
「いいところに気付いた。まさにそのとおり。私なりに考えてみた」
一同、心持ちイルヴに詰め寄る。
「まず、最初の難関は地下街に至るまでの迷路地帯だ。
 これに対しては、目の利くものが斥候に出て、
 警備の薄い、そして最も短いルートを探り出す必要があると思う。」
「警備?全員殺せばいいじゃん」
だが、何のことはない、というように『青』が口を挟む。
「そんな時間は無い。この作戦は効率的に行わなければ、全てが手遅れになる。
 ………次に、TAKEへの対応。これも、いちいち相手にする時間は無い。
 だから、本田を倒すまでの間、足を止める者が必要じゃ。
 ……具体的に言えば、陽動だな。これには、特に戦闘能力と持久力のある者が適任だ。」
「俺とかかな。」
エースが呟く。
「そして、最後が新生名古屋城に突入して本田を倒す役。
 何より、これが速やかになされないといかん。
 手順をまとめると、斥候班が偵察、ルートの確保。
 それが済み次第総員突入、陽動班が市街部にてTAKEを始めとする警備と戦闘。
 その後、突入班で本田を止める………私の立てた作戦は以上だ」
イルヴが言葉を締めくくった。
「じゃあ、まずはメンバー決めだ。
 最初にルート確保だけど………ボクなら盗賊だから得意だなー」
ユーキンが口火を切った。
そして、みんなで額を突き合わせ相談を始める。
「そうだ、ユニバースなら名古屋国の地形に詳しいはずだ。
 ユニバースを斥候に………あれ?」
ビタミンNが言いながら周りを見回したが、ユニバースの姿は忽然と消えていた。<Rel1.15:16>
執筆者…トッパナ様

「ユニバース殿。やはり行くのか」
彼らが本拠としている建物の外、歩いていたユニバースの前にポーザが立っていた。
「あー、わしの本来の目的だった正しいAD計画をね、
 ま、ちょいとやっとこ思いまして。能力者の壁をなくすっちゅーアレですわ。
 本田はんも、最初はそっちの計画に乗っとったんですけどなぁ……
 病気でイカれてもたらしいわな。だから、わしだけでもやったろ思いまして。
 ………もし邪魔立てしはるんなら…」
ユニバースが目を細め、声に剣呑な響きが宿る。
だが、ポーザは
「いや、ここで貴殿と戦う必要はない。
 その計画に必要なものを、貴殿より先に本田を倒し潰せば済む話だ。」
両手を軽く挙げ、言い放った。
だが、ユニバースはさらに問う。
「あんさんも能力者ですやろ。わしの計画に乗る気おまへん?」
ポーザは、軽く頭を振り、
「確かに、私は能力者であるが故に疎まれ、そして殺しの道に入った………
 だが、東日本の刺客から私を助けてくれた者達は、能力者でないものもいる。
 ただ、能力の有無だけで他者を量りにかけていいものか………」
しかし、ユニバースは悲しげに微笑すると、
「そう言われはっても……能力者と非能力者の軋轢は現にあるんでっせ?
 ここは荒療治がいるかと………交渉決裂ですな。」
そして、ユニバースとポーザは背を向け合い、歩き出した。
かたや自分の信じた道へ。
かたや自分の信じる仲間のもとへ。<Rel1.15:17>
執筆者…トッパナ様

「うーー、何処行ってたんだ? ポーザ
 そだ、ユニバースさん見なかったか?」
どうやら『青』はミスターユニバースの行方不明で少々、沈んでいる様だ。
「いや、少しね…其れより……」
作戦計画書を丸めてリュックに入れたイルヴが、
ポーザの聞きたがっているであろう質問に答える。
「メンバーはもう決まった。
 残念だがユニバースを探している時間は無い。
 ユーキン、バンガス、ツヨシン、ガウィー、ジョイフルがルート確保…」
「ふっふっふ…ボクが行くからには、もう安心!」
「甘ク見ルナ。敵ハ強大ダ。」
「そうですよ。お頭ぁ。」
「まあ、無難な役とはいえ油断は禁物だな。」
「大丈夫だって。このスペクタクルハンター・ツヨシン様も付いてんだしさ!」
「「「………(汗)」」」
嘆息を吐く三名を不憫に思いながら、イルヴは次の組み合わせを発表する。
「次にエース、『青』、ごとりん博士、ビタミンN、翡翠がTAKE足止め…」
「よーし!一丁、おちょくってやろうぜ!」
「あんまり派手にやるなよ。市民が残っているかも知れないからな。」
「其れにしても、よく翡翠も来てくれたな」
「……まあ、博士に雇われている訳だしな。」
「敵の敵は味方じゃ!本田の老い耄れに引導を渡してくれるわい
 TAKEにも興味があるし、結晶を取り戻さん事にはな!
「あんた、戦えるのか?」
「わはは、合気道初段だ!…最近は銃器ばっか使ってたが…
 まあ、戦闘はパワードスーツで出るから心配は要らん。
 …そういえば…翡翠よ。研究所を出ていたみたいだったが…
 一体、何処に行ってたんだ?」
「…気にするな。大した用事じゃない。」
しっかりしてくれと言わんばかりの視線を送る博士に翡翠は軽く頭を下げて謝る。
「そして対本田がポーザ、キムラ、メイ、タクヤ、ハチに私だ…」
「多いな…」
「本田の力は侮れん。
 連戦でズタボロだったとはいえ、私達が手も足も出せなかったのだ」
研究所で会った時の本田の力の凄まじさはポーザを除き、全員が知っている。
「そうだ、其れなりの報酬を出して貰わないとな…」
「………………」
キムラ等の話もメイは俯いたまま聞いていた。其の顔は、どう見ても不調そうだった。
「?どうしました? お嬢…」
心配したハチに声を掛けられハッとするメイ。
「! い、いえ…何でもありません」
傷はすっかり治ったというのにも関わらず不調そうなメイ。
正直なところ、ハチとタクヤはメイの参加を心配していた。
「相手側も既に警備は強化していると見た方が良いじゃろう。
 迅速且つ平静に行動する様に」
そして、彼等はAD計画阻止の為、大名古屋国へと向かって行った。<Rel1.15:18>
執筆者…is-lies
 
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