リレー小説1
<Rel1.1>

 

 未来の地球…謎の物質『結晶』によって、
一部の人間は魔法のような能力や、科学的には解明不可能な体質の変化を得る。
しかし、その力により前世代の秩序は崩壊、各地で戦争が起こる。
その戦争も非能力者側の勝利に終わり、新たな秩序が作られ始める。
しかし、それは非能力者至上主義とでもいうべき、旧時代的なものであった。
さらに、能力を悪用する犯罪者の存在も依然として残っている。
 一方技術的な面には、『結晶』の研究により画期的技術がいくつも作られ、
ついに火星・木星にまで人類が進出するようになる。<Rel1.1:1>
執筆者…Mr.Universe様
 神明13年 夏のはじめ―日本皇国(俗に西日本)の某山地にて

 

物語は、地中の密度の薄い「結晶」を精製している工場から始まる。
事の発端はその「結晶」精製施設を能力者テロリストが占拠した事による。
過去、戦争のために人体改造を施された「超人兵器」の生き残りからなるテロリストたちの要求は、
国が行った事の責任を認めることと、それに伴う法的措置だった。
しかし、そんな要求を、やっと戦争の傷を忘れようとしていたこの時代の人間がのめるはずもない。
政府は隠語で『プロ』と呼ばれる、戦いを生業とする能力者たちを召集し、
テロリスト鎮圧に送ることにした………<Rel1.1:2>
執筆者…Mr.Universe様

「う、わぁれ、わぁれ、わぁああ!人間の尊厳に基づきィ〜、
 非人間的なぁ、国家をぉう、糾弾するためにぃ、断固立ち上がるのであるぅうう!」
くたびれた犬のような顔のテロリストが
工場の張出しから、メガホンと顔を出してアジっている。
「やっこさん頑張るね、もう4日だよ。」
職場を占拠されて仕事の出来ない鉱夫たちが愚痴る。
「まったく、プロってのはいつ来るんだ…」
その時、鉱夫の後ろの工場の囲いのとびらを開いた者がいた。
うら若き女性と、その両側を守るように中学生ほどの少年が2人。
場に不釣合いな闖入者に何事かと身構える鉱夫たちに、少女が口を開いた。
主の布でくるんだ長い包みを抱えながらなので、どうしてもバランスが良くない。
「あの、ここですね?テロリストがいるのは。
 私、政府の依頼で来ましたメイといいます。すぐ終わるので待っててください。」
「ハァ?じゃぁ、お嬢さんが、『プロ』って訳ですかい?」
鉱夫の一人が胡散臭いといいたそうに尋ねる。
「あ、いえ、私一人じゃありません。
 …というかどっちかというと実際に戦うのは、この二人のほうです。」
メイは振り返り、後ろでニヤニヤしている少年二人のほうに目をやった。
「ウッス、おれハチ!」
「おいらはタクヤ」
なんともあてにならなさそうな面子に見えた。
「え、ちょっと待ってください、確か報告書にはメイさんだけと書いてたはずですが…」
労働者団体書記もしている男が質問する。
「まぁ見ててなさいっての」「行こう、お嬢。すぐ終わらせて帰ろう」
答えたのは、メイではなく、二人の少年であった。<Rel1.1:3>
執筆者…Mr.Universe様
三人はあっけにとられている(というかどうしていいのか分からない)鉱夫を尻目に、
テロリストたちの方に向かって真っ直ぐに進んでいく。
テロリストはアジるのに一生懸命でこちらには少しも気付かない。
「あの―、テロリストさん…」
メイが説得しようとするが…
「オイ!そこの犬みたいなオッサン!」
「無駄なテーコーはよして、降りてきなさい!」
それよりも先に二人が挑発してしまった。
それまでいい気分で演説していた犬顔のテロリストは、3人の存在にやっと気付くと、
メガホンを投げ捨て、「結晶」封入のブレードを持って応戦体制を取った。
勿論、「政府の犬共め!正義はこれ位では滅ばんのだ」とか叫びながらの事である。
そして駆け出すと、メイにめがけて刀を力一杯に振り下ろした!!!
ガッッ!!という衝撃音があたりにこだまする!
しかし刀が切り裂いたのはメイの体ではなく、メイの抱える包みであった。
それも正確には、その包みの上半分だけで、刃は途中で止まってしまっていたのだ。
「何だ!!これは、普通の刃物ではないな!!」
本来ならば何ものも引き裂くはずの空気の刃を発生させる能力がたかが小娘に止められたのである。
犬顔の男はひどく混乱し、さっきの事は悪い冗談だというように刀を振り上げて再び切りかかった。
「もう知りませんよ!」
今度はメイも守るだけではない、包みの紐を引っ張ると中身を引き出したのである。
それは…文字のように見えなくもない文様のびっしりと描かれた
巨大な剣(むしろ薙刀と言うほうが近い物体)であった。
薙刀にぶつかる結晶封入ブレード、そして凶器と化した空気層……
 しかし勝ったのは、メイの方であった。犬顔の男の刀はぼっきりと折れてしまったのだ。
そのために犬顔の男は戦意を失って奥のほうに逃げていってしまった。
「あ、行っちまったね。もうちょっと粘ればいいものが見れたのに。」
「どう追う?」
「えぇもちろん、行きましょう。
 …アレはもう少し置いておきましょう。消費が激しすぎるから。」<Rel1.1:4>
執筆者…Mr.Universe様

ところ変わって犬顔の男の逃げ込んだ先を見てみよう。数人の男たちがいる。
どれもその顔つきが人間離れしている。どうやらメイの事を報告しているらしい。
どうやら中でもリーダー格のハゲ頭の男が、
一番奥の、陰に隠れて顔の見えない人物に向かって話しかける。
「だんな、来たようですぜ、『プロ』の連中のようですわ。お仕事たのんますぜ。」
だんなといわれた男は暗がりから顔を出して安請け合いをした。
「大丈夫大丈夫、このミスターユニバース様に任せればどんなやつも敵じゃないってばよ」
その姿は全身を覆うポンチョに、目を隠すゴーグル、
それから深めのソンブレロという胡散臭い格好であった。
「それじゃ、リハーサルどうりにわなを頼むゼイ」
ポンチョをたなびかせて颯爽と進んでいくミスターユニバース
…胡散臭いなりではあるが、腕は確かな雇われものである。<Rel1.1:5>
執筆者…Mr.Universe様

そして、メイたちとの対面。
「やぁ、やぁ、諸君。そんな怖い顔をしなさんな。平和的に話し合いをしようじゃありませんか」
胡散臭い格好で胡散臭いことを言う男である。
「こいつ胡散臭いよ、絶対信用できない」
「もういっそ、一気に行こうよ」
「大丈夫、さっきので多分あっちは戦う気がなくなったのよ…」
小声で話し合うメイたち3人。
「まさか『プロ』を連れてくるとは思わなかった。こっちの全面的敗北だ、降参する。
 そこで、提案がある。能力者同士、まだ人死には出ちゃいないんだよ。
 こんなことのためにつかまるわけにはいかないんだよ。見逃してくれないか?」
丸腰、両挙手のままでメイに近寄るミスターユニバース。
「そこまでいうのなら…」
人の良いメイが武器を下ろしたその時!!
ミスターユニバースの目配せにあわせて、上からカメレオン獣人の舌が伸びてメイの武器をさらう!
強引に持っていかれたために、飾り紐が千切れてしまった。
それと同時にミスターユニバースは一気にメイとの間合いを詰める。
あらかじめ袖に仕込んでいたのだろう両手にはナイフが握られていた。
「お嬢さん、甘いね。『プロ』失格だよ。」
メイの首を狙ってナイフを突き出すミスターユニバース!!!!
しかし!!!<Rel1.1:6>
執筆者…Mr.Universe様
不意に雷音が響き突風が起こり、ナイフを取り落としてしまった。
かがんで落ちたナイフを拾うミスターユニバース。立ち上がると目の前には、
なんと言うか2足歩行する黒豹と、白地にクロブチの肌をしたスラッとした犬獣人がいた。
「なっ!何ものだぁああ!!」
絶叫するテロリスト+ミスターユニバース。
黒豹は腕に雷球を作り出して言った。
「俺は、吠黒天 猫丸。メイ殿の右の従者だ」
同じく白地に黒渕がしゃべる。
「私は、ダルメシア=ヌマ=ブフリヌス、メイ殿の左の従者だ」
「やれやれ、ひどいことをしてくれましたね。
 あのなぎなたの紐、アレは私の従者の封印だったのですよ。」
メイがさっきとはうって変わって毅然とした調子で話す。<Rel1.1:7>
執筆者…Mr.Universe様
メイのセリフは続く。
「そして、従者の封印であるとともに、アレは私の力も封印していたのです。
 自分でも制御できないぐらいの力をね…」
「すると…この化け物2体は、さっきのガキ?」
犬顔の男がふ抜けた声で言う。
「そういうわけ。ただし、ガキじゃなくて、精霊なんだけどね。おいらを怒らせると怖いよ〜」
タクヤこと吠黒天 猫丸が悪魔的快活さで答える。体の周りを雷球が回っている。
「そして、猫丸は雷の精で、オレは、風の精だ。そしてここには精霊使いのメイさんがおられる。
 さぁどうなるかは分かるよな?」
ハチこと、ダルメシア=ヌマ=ブフリヌスは腕を鳴らしながらテロリストたちに近づいていった。
(ヤバイな…この際、例の特殊な結晶だけでもパクって逃げる方法はないかな)」
テロリストともども窮地に追いやられた雇われ能力者ミスターユニバースは、
とりあえず自分の身の安全を考えるのに躍起になっていた。<Rel1.1:8>
執筆者…Mr.Universe様
「くそっ、精霊が何だ! 我々は断固戦うぞ!!」
リーダー格のはげ頭がそう叫ぶとその体が見る見る白くなり、
作業服の肩から背中にかけてが異常な膨らみ方をし…
そして、ついには服を破ってうねうねと動く触手が現れた。
ハゲ頭の男はタコの力を与えられた人工能力者だったのだ!
そしてリーダーの変身とともにテロリストたちもその戦うために作られた姿へと変貌していったのだった。
気が付くと、メイとミスターユニバース以外は人間の姿を失っていた。
「行くぞ!!!!!!」
「うぉおおおう!!!!!」
タコ男の号令の下、超人兵器たちはメイたちに向かって突進した。<Rel1.1:9>
執筆者…Mr.Universe様
「やれやれ、頭悪いやつらだな」
「いいじゃないの、久しぶりに暴れられるんだから。」
あくまで余裕の猫丸・ダルメシア組。言い終わると、空中からそれぞれの得物を取り出し構える。
ダルメシアは槍、猫丸は小刀だ。どちらもメイの武器と同じく怪しげな文様が刻まれている。
「どぉっせい!!!!」
「うわりゃ!!!」
「ぐぅるぅうおおぉう!!!」
獣の咆哮を響かせながら精霊へと迫る超人兵器たち、
その攻撃はかわされ、もしくはいなされてどれも敵には届かなかった。
さらに武器に何らかの仕掛けがあるのか、能力で出した炎も稲妻さえも刃に当たれば消滅してしまった。
「いくぞ!」
テロリストの攻撃が緩んだその隙を逃さず、ダルメシアは槍を大ぶりに振るった!
突風が吹き荒れ、獣人たちの体に無数の切り傷をつける。カマイタチ現象である。
「とうりゃ!」
吠黒天 猫丸は、ダルメシアの攻撃をもろに受けて吹っ飛んだ犬顔の男に向かって大きく跳躍し、
雷を帯びた拳を叩き込む、あまりの衝撃に相手は気絶してしまった。<Rel1.1:10>
執筆者…Mr.Universe様
あきらかに3人組の優勢である。
メイに至っては後ろで腕を組んでみているだけという余裕のポーズである。
しかし、それは戦闘に集中しているという事でもあり、
いつのまにか戦線を離脱したミスターユニバースにまでは気が回らなかったということにもなる。
ぼろを被った胡散臭い男は、ジリジリと後退して
ここまでくれば安全というところまで行くと脱兎のごとく駆け出した。
洞窟深部に行けば作業用パワードスーツがある。あいつらに勝つのは無理でも、
例の巨大結晶を持ち出して逃げ出すくらいならばできるだろうという打算的な考えが浮かんでいた。
しかし、メイだって馬鹿ではない、逃げるミスターユニバースを見て何か感づいたのだろう、
猫丸を呼んでミスターユニバースを追わせることにした。
周りに組み付いている獣人を雷の一閃で蹴散らすと、すべるようなダッシュで標的を追う。
いくら最初のアドバンテージがあるとはいえ、相手は精霊。
素早さではかなうはずがない、必死に逃げるも距離は詰められていく。<Rel1.1:11>
執筆者…Mr.Universe様

 そしてついに黒猫の精霊のタックルを喰らいミスターユニバースは倒れてしまった。
ただし場所が悪かった。長い作業用階段の上だったのだ。もつれて転げまわる二人。
起き上がると周りには、露天掘りの大きな岩壁と――そこに半分埋まるようにして
うっすらと青く輝いている直径5mはくだらない巨大な結晶が鎮座ましましていた。
そしてその傍らにそれを守るように無骨なパワードスーツがかしこまっていた。
「でけぇ…」
感嘆の声をあげる猫丸。その拍子にミスターユニバースを押さえ付けていた腕が緩んだ。
ミスターユニバースは、この時とばかりに懐から強烈な臭いガスの玉を投げつける。
もうもうと立ち込める煙の中、パワードスーツに向かって必死で走るポンチョの男。
精霊とはいえ猫、強烈な臭いの中では感覚が効かない。その隙にどうにかしなければ死である。
なんとか鉄の巨人の下へたどり着いたミスターユニバース、ところが…
ズガキュウウウ―――ン!!!!!
足元で銃弾が撥ねる、誰かがこの部屋にいる!<Rel1.1:12>
執筆者…Mr.Universe様
突然の銃声にたじろぐミスターユニバース
(とあまりの臭さにのた打ち回っている猫丸)の前方の暗がりから、ライフルを構えた長身の男が現われた。
「お取り込み中失礼する、その結晶を頂く。
 それは進歩を知らない政府の人間の手には余る。もちろん出来そこないの獣人どもにもね。
 これはその意味が分かり、そして人類の進化のために使える者のもとにあってこそ価値がある。」
ライフルの男は、銃を持たないほうの手で青い髪を掻き揚げながら、冷酷にそう言い放った。
「何だ…? わけのわからんことをごちゃごちゃと…」
どうにか感覚が戻ってきた吠黒天 猫丸はそう言うと、小刀を逆手に持って青い髪の男に向かって跳躍した。
しかし、衝突する瞬間、横合いから何かの力が働き雷の精霊は派手に弾き飛ばされて行った。<Rel1.1:13>
執筆者…Mr.Universe様
何が起こったのかわからないまま吹き飛ばされた猫丸の視界に入ったのは、
何か現実離れした獣と、それを従えた白衣の老人であった。そして、一時彼の意識は途絶える。
先ほどの衝撃と、高熱によって気を失ってしまったからである。
目の前で力と意識を失い元の少年の姿に戻る猫丸を見て肝をつぶすミスターユニバースを無視し、
白衣の老人はライフルの男、そして巨大な結晶の方にゆっくりと歩を進めた。
その後ろに続く獣、その姿は、基本的には牛ほどの大きさの山羊であるが、
その普通の首の下にはライオンの首が目を光らせており、
尻尾はほかとは違い黒くコーティングされていて目のような器官が形成されていた。
つまり、ギリシャ神話のキメラそのものであった。
「いかんな、調整が甘い…もう少し、リスタコス結晶液を増やすか。
 ほう、これはすごいな。実に良い出来だ、これこそ自然の芸術という物だ、そうは思わんか、ライズ君?」
白衣の老人は前半をキメラに、
後半を巨大結晶(と、青い髪の男)にむけて言うと、嬉しそうな顔で結晶を見つめた。<Rel1.1:14>
執筆者…Mr.Universe様
「…そうですね、これだけ大きければ上手くいくでしょう。」
ライズが少し険のある声で言った。
老人は、結晶をいとおしそうにさすりながら、背後のライズに聞こえるように独り言を言う。
「いや、いや、これがすばらしいのは、ただ大きいだけではない。
 これは『八姉妹』に連なるものだからこそ価値がある。
 これを調べることで結晶がなんたるかを知る手立てが得られるやも知れん。」
ライズは『八姉妹』と聞いて興味を持つとともに、
この老いぼれはそんな大切な事を僕には隠して居やがったのかと、苦い思いを感じた。
『八姉妹』…それは、結晶発見からしばらくして自然発生した
旧人類対新人類たる能力者との戦争の末に起こった大破壊によって
相当な危機状態にあった地球の自然を回復するために
まさにその身を犠牲にして地球、そして人類を復活させた8人の女性たちの事である。
現在のナノマシン技術、生体アンドロイド、星間連絡船といった技術のもとになった物は、
彼女たちの体から取られた物を培養変質させて作った物である。<Rel1.1:15>
執筆者…Mr.Universe様
「それじゃ、始めましょうか。」
ライズは主導権を握るためにも、先に本題にかかった。
彼ら二人は、この結晶を奪いに来たのだった。
そして偶然「超人兵器」のテロに遭遇したおかげでらくにここまで来られた訳である。
そして、今から転送リングをはって結晶を岩肌ごと持っていこうとしているのである。
「ん、そうだな。はやくしあげようて」
ライズといっしょに転送リングを設置する白衣の男。
「ぐるぅ?」
気配に気付いたのかキメラが階段の方を見る、
そこにはテロリストをあらかたしばりあげて猫丸の助けのために降りてきたメイとダルメシアがいた。
獣としての感覚でメイたちを敵と認識したキメラは、ライオンの口から火球を吐き出す!
吠黒天 猫丸を一撃でしとめたあの技だ!!<Rel1.1:16>
執筆者…Mr.Universe様
ダルメシアはとっさにメイと自分の身を守るために風の障壁をはった。
その甲斐あって攻撃は届かなかった。しかし、周りは土煙がもうもうと立ち上り視界はほぼゼロに。
「お嬢、しばらく待ってください。猫丸のやつを回収してきます。」
敵の強さを知って正面から戦っても勝ち目がないと悟ったダルメシアは、
煙が消えた瞬間を狙って攻撃する振りをして、気絶している猫丸だけでも取り戻そうと考えていた。
その台詞に神妙にうなずくメイ。この状況を良く理解している。
煙が消えていく。
「だぁああああ!!!!!」
全身に風をまとい斑(まだら)の弾丸となって突進するダルメシア。キメラの方向へと進む!
とっさに火球を吐くライオンの首。しかし、急にターンしたダルメシアには当たらない。
猫丸を抱え上げて、作戦の成功を確信したダルメシアだったが、
急に右肩に激痛が走り、視界に血しぶきが映った。<Rel1.1:17>
執筆者…Mr.Universe様
その痛みで倒れたダルメシアが振り向いたさきには、ヘビのような尻尾を逆立てたキメラがいた。
先ほどの衝撃は、キメラが尻尾の先のレンズ体から
貫通力のあるレーザー光線を放ち、それがダルメシアの肩を貫通したことによって起こったものである。
「やめぃ、それぐらいにしとけ。」
白衣の老人が戦闘態勢を解かない超獣に言って、メイの方に向き直る。
「お嬢さん悪いが邪魔をせんでくれ、私たちはこの結晶をもっていったらすぐ消える、
 その邪魔をせんでくれたら、その2人の命までは取らん、しかしまだ戦うというのなら…」
ライズの方に指で、指図する。それを不承不承受けてダルメシアンの頭に銃口を突きつけるライズ。
「お嬢、私たちなど気になさらずに…」
激痛に耐えながらダルメシアが呟く。そして猫丸はいまだ気を失っている。<Rel1.1:18>
執筆者…Mr.Universe様
「くっ、分かったわ。見逃しましょう。」
「ひゃっひゃ。物分りのいい譲ちゃんでよかった。ところでもう一つ頼みがあるんだが、いいか?」
「…何?」
「簡単な事さ、我々の犯行声明文を届けて欲しいんじゃよ。」
妙に張り詰めた雰囲気の中でメイと老科学者の取引が行われる。
そして、白衣の男は、その犯行声明文のデータの入ったディスクをメイに渡すと、結晶の方へ行き
リモコンスイッチを押した。一瞬にして消える結晶。
とはいえ、実際は消えたのではなく、転送されただけなのだが
(しかし、転送にはそれ相応の能力者とメンドウな設備が必要なので簡単にできるものではない)。
そして次にキメラを転送し、
「ライズ君、お先に失礼するぞ。」
本人も消える。
「ふん、このまま殺してもいいんだぞ、しかしそんなことをしてもおもしろくないからほっといてやる。」
ダルメシアンの顔に一発けりを入れてから、
思ったよりもきつい色の目で見つめられたライズはなおさらむかついてそう言うと、
リモコンの操作によって転送されていった。<Rel1.1:19>
執筆者…Mr.Universe様

 こうして、メイたちは謎の敵に実質敗北したとともに
メッセンジャーとしての役目をおおせつかるという屈辱的なことになってしまった。
しかも、ミスターユニバースはどこを探しても見つからず、どさくさにまぎれて逃げたものと思われる。
仲間たちは、最初の仕事のテロリスト排除は上手くいったんだから、いいじゃないかとメイをなぐさめたが
やっぱり負けたのは悔しいのである。
そして、犯行声明文であるが、それは何故か政府高官のもとに渡ったまま世間には発表されなかった。<Rel1.1:20>
執筆者…Mr.Universe様
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