「ねぇゼロぉ…」
小さな幼竜が呆れたような疲れたような…そんな脱力感に満ちた声で言う。
彼を肩の上に乗せたまま、夜のアテネ市街を行くのは髪も白、服も白という白尽くめの青年ゼロだ。
地球ならば奇異の視線に晒されるであろう幼竜だが、
この火星に於いては物珍しさこそあれ、そう気にする者はいない。
元々能力者には寛容だった火星は、第三次世界大戦後に獣人という奴隷を大量に仕入れ、
獣人の監視役として能力者を更に受け入れたのだ。
其れも地球の属星であった時の事であり、
第四次世界大戦で地球各国が疲弊したのを機に独立した今となってはやりたい放題。
そうして出来上がったのが能力者や獣人の星・火星であった。
「結局また火星まで来ちゃったけど…
日本じゃ殆ど何もしなかったね」
「ええ、破滅現象ももう収まりつつあるみたいですし…
やはり…前支配者が封印されたという事なのでしょう。
…火遊びの怖さを知った方が良かったですね前支配者」
ふぅむと考える素振りをするゼロ。
突如地球で起こった大災害『破滅現象』は地球各国を混沌の渦に叩き込み、
地球は一時、崩壊するとまで言われ火星への大規模な移民すら行われた。
だが結果を言えば地球は今尚存在しており、破滅現象の方は一気に沈静化していった。
其の真相は各国政府からしても謎のまま…
にも関わらずゼロには其の理由を憶測する程度の知識があった。
「そうじゃなくって…もうちょっと長く滞在…」
「うーん…日本には第四次世界大戦で興味を持っただけでしたし…
まぁ、もう十分に色々面白いものを見れたじゃありませんか」
ゼロはくすりと微笑むが、幼竜グレイは不満な様子だ。
彼等とて目的がある。打倒すべき敵の存在がある。
そして其れは決して悠長に構えて相対すべきものではなく迅速且つ確実に消さねばならないものだ。
何よりゼロが其れを望んでいる。
だからグレイにはそんなゼロが、こうも余裕をもっているのが理解出来なかった。
「…でも……『ビッグヘッド』の事は全然解んなかったじゃん。
そりゃまぁ…BNウェイレアには当たりもあったけど…」
「メイさんと…航宙機で存在を感じたベイルスの血族で2人ですね。
其の内のメイさんとは接触も出来ました。大収穫ですよ」
「エースって人は?確かあの人も…」
「BNウェイレアだと思ったのですが……どうも違うみたいです。
何か…異質です。こうはっきりと説明は出来ませんが」
「ふぅん…兎に角、メイって人に張り付いていれば……」
「…魅神が言うにはプロジェクトはまだ生きているそうです。
見落とされなければ…やがてメイさんはビッグヘッドに収穫されるでしょうね…」
「……其処を引っ張り出す……
でもゼロさぁ、きっとアイツ…チャンスを窺っているよ?」
「ええ、ですが安心して下さい。
私はベルトンに使い捨てされる積もりはこれっぽっちもありません」
「…ビッグヘッドとディノラシオールとゼロ…
この三つ巴をどうするっていうのさぁ…
ビッグヘッドを叩いたらディノラシオールの思う壺、
先にディノラシオールをどうにかしたらビッグヘッドも用心しちゃうだろうし。
かといってゼロから動かないとディノラシオールも動かない…」
ゼロの敵…ビッグヘッドと呼称される正体不明の存在…
そして其の下僕であるベルトン国内閣総理大臣ディノラシオールだ。
ディノラシオールはビッグヘッドから直接の命令を受け、ベルトン国を発展させたのである。
言わば表の支配者。裏で実際にベルトンを支配しているのはビッグヘッドの方だ。
ならばディノラシオールを押さえる事がビッグヘッドの正体を探る一番の近道のようにも見えるが、
実の所、ディノラシオール自身ですら其の正体は知らず、密かに行った調査にも失敗しているという。
ベルトン国軍務大臣である魅神がゼロの許へ来たのは其の調査失敗直後。
ゼロとビッグヘッドの因縁を知ったベルトンは、ゼロと協力してビッグヘッドを打倒したいというのである。
併しゼロからすればビッグヘッドの下僕であるディノラシオール一味もまた敵。
かといってゼロだけではビッグヘッドの許に至れないというのも事実だ。
「まぁそうですね…BNウェイレアの方にも色々手伝って貰う事になるかも知れません。
彼等とて…大なり小なり己に疑問を抱いている筈ですし、
自ずとベルトン…そしてビッグヘッドと対峙する構図になるでしょう」
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